LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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お知らせです。

第175話の『戦車』にあるシャルルの予言シーンに、ちょっと今後の展開に関わる台詞を付け足しました。

ご確認よろしくお願いいたします。



さて今回はサブタイで分かるとおりあの男…いやあの漢のバトルパートです。


感想お待ちしております。


漢の雄叫び

 

 

 

 

 

大魔闘演武2日目の第2試合…ザフィーラ対バッカスの試合は、激闘の末ザフィーラの勝利で幕を閉じた。

 

 

そして続けて第3試合の組み合わせが発表されようという頃……妖精の尻尾(フェアリーテイル)の医務室では……

 

 

「くあーーよく寝た」

 

 

「ふわぁ……おはようございますナツさん」

 

 

競技パートの〝戦車(チャリオット)〟でダウンして寝込んでいたナツとエリオがようやく目を覚まし、欠伸をしながら体を伸ばす。

 

 

「ん?」

 

 

「あれ?」

 

 

すると、目が覚めた2人は医務室の違和感に気がついた。

 

 

「ウェンディ? キャロ?」

 

 

「シャルル? ばっちゃん? みんなどこ行ったんだ?」

 

 

その違和感とは……医務室で眠っていたハズのウェンディとキャロ、そしてその看病と付き添いをしていたハズのシャルルとポーリュシカの姿がなかったのだ。

 

 

「ナツさん」

 

 

「ああ…部屋に知らねー奴のニオイが残ってるな」

 

 

そう言うとナツとエリオは静かに頷き合い、部屋に残っていたニオイを頼りに医務室を飛び出していったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第178話

『漢の雄叫び』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さあ!! 第2試合の興奮冷めやらぬ中、本日の3試合目の発表です!!!』

 

 

一方闘技場の方では、バトルパート3試合目の組み合わせが発表されようとしていた。

 

 

『まずは妖精の尻尾(フェアリーテイル)A──エルフマン!!!!』

 

 

「おうっ!!?」

 

 

まず妖精Aチームから選ばれたのはエルフマンであり、名を呼ばれたのが以外だったのか本人は驚いたように目を丸くしている。

 

 

「行って来い。私たちには勝つ以外の道はないのだ」

 

 

「お…おう」

 

 

エルザの言葉に頷きながら、エルフマンはどこか戸惑った様子で闘技場へと向かって行ったのであった。

 

 

『対するは、凶鳥の眷属(フッケバイン・ファミリー)──ドゥビル!!!!』

 

 

「オレか……」

 

 

対する凶鳥の眷属(フッケバイン・ファミリー)から選ばれたのは、今回の競技パートにも出場していた上半身裸の筋骨隆々とした男……ドゥビル。

 

 

「あちゃ~ツイてないねビル兄。競技パートとの連戦だなんてさ」

 

 

「問題ない。行ってくる」

 

 

「ビル」

 

 

そう言って闘技場へと向かおうとするドゥビルを、フォルティスが一旦呼び止める。

 

 

「君の場合は絶対にリアクトを使用しないようにしてください。サイファーと違って、君のリアクトした姿は後々めんどうな事になりますから」

 

 

「……わかった」

 

 

そんなフォルティスの忠告の言葉に静かに頷くと、ドゥビルは今度こそ闘技場へと足を運んだのであった。

 

それを見送りながら、フォルティスは再び口を開く。

 

 

「まぁビルならリアクトせずとも、妖精ごとき簡単に堕とせるとは思いますがね」

 

 

「それはどうだろうな」

 

 

そんな言葉を口にするフォルティスに、サイファーが異を唱えた。

 

 

妖精(やつら)を甘く見てると……堕とされるのは凶鳥(わたしたち)かもしれんぞ」

 

 

サイファーのそんな言葉が、フォルティスを含めた凶鳥メンバーの耳に入っていったのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その後……闘技場の中心で向かい合って立つエルフマンとドゥビル。

 

 

『それでは第3試合──開始!!!!』

 

 

「先手必勝!!!!」

 

 

試合開始を告げる銅鑼が鳴り響くと同時に動き出したのは……エルフマン。

 

 

「ビーストソウル・ワータイガー!!!!」

 

 

エルフマンは豹のような獣人へと変身すると、素早い動きでドゥビルへと接近し、そのまま腕を振るって鋭く尖った爪で切りかかる。

 

 

しかし……その爪を振るった先には、ドゥビルの姿はなかった。

 

 

「消えた!!?」

 

 

「後ろだっ!!!!」

 

 

「!!?」

 

 

突然ドゥビルが視界から消えた事に愕然としていると……エルザの叫びが聞こえたのか、本能的に察知したのか、咄嗟にその場で屈んで頭を下げるエルフマン。

 

 

その直後……ドゥビルの武器である片手持ちの両刃戦斧の刃が、エルフマンの頭部を通過した。

 

 

「あっぶねェ」

 

 

「まだだ」

 

 

「なっ!?」

 

 

冷や汗を流しながら素早くドゥビルから距離を取って離れるエルフマン。だが次の瞬間には、ドゥビルはエルフマンの眼前へと迫ってきていた。

 

 

「フン!!!」

 

 

「ぐはァ!!!」

 

 

そしてドゥビルはそのまま斧を振るい、エルフマンの体を横一閃に切り裂いた。

 

 

「ぐ…くぅ……!!!」

 

 

体を切り付けられたエルフマンはその痛みで片膝をつき、苦痛で顔を歪める。するとそんなエルフマンに対し、ドゥビルは静かに口を開いた。

 

 

「ずいぶんと期待外れだ」

 

 

「何だと?」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)には強者(つわもの)が揃っていると聞いて少し期待していた。だがそれは一部の者だけで、どうやらオレはハズレを引いてしまったらしい」

 

 

「ハズレ……だと?」

 

 

「そうだ。所詮妖精の尻尾(フェアリーテイル)は、その一部の強者のみで成り立っている烏合の衆にすぎん」

 

 

ドゥビルのその言葉を聞いた瞬間……エルフマンの目の色が変わった。

 

 

「漢……」

 

 

「ム?」

 

 

「オレがお前にとってハズレの相手だって侮辱されんのはまだ許せる。けどよォ……ギルドの名まで侮辱されるのは漢として許さねェ」

 

 

そしてそう言い返しながらドゥビルをギロリと睨みつけるエルフマン。

 

 

「砕け散れ──凶鳥」

 

 

「……少しはマシな目付きになったか」

 

 

そんなエルフマンの目には……先ほどとは違い「必ず勝つ」という強い覚悟が灯っていた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「くんくん……こっちだエリオ!!!」

 

 

「わかってます!!!」

 

 

一方その頃……ナツとエリオは医務室から消えたウェンディたちを探す為に、部屋に残されていた知らないニオイを追って通路を走っていた。

 

そして……

 

 

「「いたっ!!!」」

 

 

「「「!!!」」」

 

 

ナツとエリオは眠っているウェンディ・キャロ・シャルル・ポーリュシカを抱えた、いかにも怪しい覆面の男4人組を発見した。

 

 

「お前らウェンディたちをどこに連れていくんだっ!!!!」

 

 

「マズイ!!」

 

 

「急げ!!」

 

 

「待てやァーーーっ!!!!」

 

 

「うわーめちゃくちゃ速ェっ!!!!」

 

 

「コイツ…さっきの競技でトロトロ走ってた奴じゃねーのかヨ」

 

 

「オレに任せな!!」

 

 

「頼むぞ!!」

 

 

ナツが恐ろしい形相で4人組を追いかけていると、そのうちの1人が双銃を持ってナツの前に立ちはだかる。

 

 

「魔導士相手にはコイツが一番……」

 

 

「どけっ!!!!」

 

 

だがナツはそんな男など意にも介さず、顔面に拳1発を叩き込んで沈めた。

 

 

「テメェらァーーーーっ!!!! ウェンディたちを返せーーーー!!!!」

 

 

「何だアイツ!!!!」

 

 

「怖えじゃねえかコノヤロウ!!!」

 

 

「このままじゃ追いつかれるぜ。どうするよ!?」

 

 

「仕方ねえ!! 2人捨てる!!!」

 

 

「バ…バカ言うな!!!」

 

 

「依頼は〝医務室にいた少女〟だ」

 

 

その言葉を聞いたナツはピクッと反応する。

 

 

「ババアと猫は少女じゃねえ」

 

 

「じゃあ何で連れてきたー!」

 

 

「待て!! 見ようによってはこの婆さん」

 

 

「少女じゃねえよ!!!」

 

 

残った覆面3人組が逃げながらそんな会話をしていると…突然彼らを追いかけていたナツが減速し、そのまま走るのをやめて立ち止まってしまった。

 

 

「な…なんだ? 諦めたのか!?」

 

 

「何でもいい!! とにかくさっさと逃げるぞ!!!」

 

 

そんなナツを見た3人組は好機とばかりに一目散にその場から走り去ろうとする。だがナツは……口角をニヤリと吊り上げると、ゆっくりと口を開いた。

 

 

「行ったぞ──エリオ!!!」

 

 

「「「へ…?」」」

 

 

ナツの言い放った言葉に3人組が疑問符を浮かべながら正面を見てみると、そこにはいつの間にかエリオが立ち塞がっていた。

 

 

「どわーー!!!」

 

 

「い…いつの間に!!?」

 

 

そう言って驚愕している3人組を他所に……彼らの前に立ち塞がるエリオはギロリと彼らを睨みながら言い放つ。

 

 

「誰の差し金だとか色々聞きたい事はありますけど──まずはぶっ潰しますね」

 

 

「ひぇー!!」

 

 

「うあー!!」

 

 

「もうダメーーーッ!!!」

 

 

直後……激しい雷電が彼らを襲ったのであった。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

場所は戻り……エルフマンとドゥビルが戦いを繰り広げている闘技場。

 

 

「ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…」

 

 

「どうした? マシなのは威勢だけか?」

 

 

『これは一方的な試合!!! エルフマン!! ドゥビルに手も足もでない!!!』

 

 

そこでは片膝をつき、傷ついた姿で苦しげに息を乱しているエルフマンと……対照的に無傷の姿で悠々と斧を構えているドゥビルの姿があった。

 

 

すると彼らの試合を見ていたエルザが、ポツリと口を開いた。

 

 

「あのドゥビルという男……恐ろしい程に実戦慣れをしているな」

 

 

「そうなの?」

 

 

エルザが呟いた言葉にヴィヴィオが反応し、首を傾げながら彼女に問い掛ける。

 

 

「ああ。試合が始まった時、奴は短距離瞬間移動(ショートジャンプ)で攻撃を回避すると同時に、背後をとって首を狙っただろう? アレは白兵戦においてもっとも殺傷性の高い戦法の1つでな。背後は人間にとって最大の死角であり、首は致命的な急所だ。それを何の躊躇もなく行えるという事は、戦闘慣れしている事に他ならん」

 

 

「それにあの短距離瞬間移動(ショートジャンプ)……あの素早さは死角をとるだけじゃなくて、そのまま回避にも直結しますからね」

 

 

「あの巨体と斧のパワーに加えて、あの素早さは反則級だな」

 

 

エルザやティアナ、グレイのその説明を聞いたヴィヴィオやルーシィは、思わずゴクリと固唾を飲み込みながらエルフマンの試合を見守ったのであった。

 

 

「ぬおおおおおっ!!! ビーストソウル・ワータイガー!!!!」

 

 

エルフマンは再び豹のような獣人に姿を変えると、その素早さを活かした猛攻をドゥビルに仕掛ける。

 

 

「無駄だ」

 

 

だがドゥビルの短距離瞬間移動(ショートジャンプ)はそれよりも速く、エルフマンの猛攻はことごとく回避されてしまう。

 

 

「ヤロォ…!!!」

 

 

「隙だらけだ」

 

 

「うあっ!!!」

 

 

そして一瞬の隙をつかれ、ドゥビルの斧による一撃を喰らってしまったエルフマン。

 

 

「ぐ……」

 

 

「もう諦めろ。お前ではオレには勝てん」

 

 

『これはエルフマン…立ち上がれないか!?』

 

 

倒れ伏すエルフマンにそう言い放つドゥビルと、その状況を実況するチャパティの声が響く。

 

 

『因みに本日は大魔闘演武公式マスコット兼審判であるマトー君が休暇の為、私が審判を兼ねさせて頂きます』

 

 

『へえ』

 

 

『COOL!!』

 

 

「休暇!?」

「いや……中身変えりゃいいだけだろ」

 

 

そんな正直どうでもいい報告があったが……その間にエルフマンは多少フラつきながらも立ち上がっていた。

 

 

「おい凶鳥……オレたちも1つ賭けをしねェか?」

 

 

「なに?」

 

 

「オレが勝ったら、オレたちのギルドが烏合の衆だって言葉は撤回してもらうぞ」

 

 

「……オレが勝てば?」

 

 

「オレを煮るなり焼くなり好きにしやがれ」

 

 

「……いいだろう」

 

 

エルフマンのそんな提案に対し、ドゥビルは「フゥ…」と小さく嘆息しながらそれを了承した。

 

 

「その代わり──すぐに終わらせてやる」

 

 

そして次の瞬間……ドゥビルは短距離瞬間移動(ショートジャンプ)を用いて再びエルフマンの死角である背後に移動して、彼の首を狙って斧を振りかぶる。

 

 

「そう何度も同じ手が通じるかよ!!!!」

 

 

それに対しエルフマンはすぐさま体を反転させて、そのまま振り向きながら強く握った拳を振るって反撃に出ようとする。

 

 

しかしエルフマンが振り向いた先にはドゥビルの姿はなく……エルフマンの拳も空振りに終わった。

 

 

「なにっ!!?」

 

 

予想外の事に絶句していると、エルフマンは自身の背後にただならぬ気配を感じ取った。

 

 

そう…ドゥビルは振り向いたエルフマンのそのまた背後に移動していたのである。

 

 

「2段構えの連続短距離瞬間移動(ショートジャンプ)!!?」

 

 

「よけろエルフマン!!!!」

 

 

「遅い」

 

 

「しまっ──!!!」

 

 

それを見たティアナとグレイがそう叫ぶが、ドゥビルの振るった斧は確実に直撃したのであった。

 

 

 

──ガキンッ!!という硬質物同士がぶつかる音と共に……

 

 

 

「なんてなっ」

 

 

「!!?」

 

 

本来人間の首から聞こえるハズのない音が聞こえた事に対して疑問符を浮かべながら驚愕するドゥビル。見ると彼が振るった斧は、エルフマンの首を覆う硬い何かに阻まれていた。

 

 

「ビーストソウル・リザードマン」

 

 

そして気がつくとエルフマンは……全身が刺々しい硬質な鱗に覆われたトカゲのような獣人へと姿を変えていた。

 

 

「その手があったか!!?」

 

 

「リザードマンは全身が硬質な鱗で覆われた、いわゆる防御形態」

 

 

「ああして全身をガードしちまえば、死角も急所も関係ねえ!!」

 

 

そんなエルフマンの戦法を見たエルザは驚愕し、ティアナとグレイは感嘆の声を上げる。

 

 

「捕まえたぜ」

 

 

「!」

 

 

「ぬおりゃあ!!!」

 

 

「なっ…!!?」

 

 

そしてエルフマンはドゥビルの斧を持った方の腕を掴むと、そのまま斧を奪い取って自分達から離れた場所へと投げ捨ててしまう。

 

 

「放さねえぞ」

 

 

「くっ……!!」

 

 

「こうしてしっかり捕まえときゃあ、自慢の短距離瞬間移動(ショートジャンプ)も使えねーだろ」

 

 

ドゥビルは捨てられた斧を拾いに行こうとするが、エルフマンにガッチリと腕を掴まれている為、身動きも短距離瞬間移動(ショートジャンプ)も使えないでいた。

 

 

そしてエルフマンはリザードマンの姿から元の姿へと戻ると……

 

 

「オラァ!!!」

 

 

「ぐふぅっ!!」

 

 

そのまま思いっきりドゥビルの頬を殴りつけた。殴られたドゥビルは後方へ飛ばされそうになるが、エルフマンが彼の腕を掴んでいる為、飛ばされずに仰け反るだけであった。

 

 

「来いよ……こっから先は魔法もクソも関係ねえ。漢の我慢対決といこうぜ」

 

 

「!?」

 

 

「ルールは簡単……お互いに殴り合って、先に倒れた方の負けじゃい!!!!」

 

 

「ごはっ!!!」

 

 

そう言って再びドゥビルの頬を殴りつけるエルフマン。

 

 

「どうしたァ!!! かかって来いよォ!!!!」

 

 

「ぬっ……!!!」

 

 

「! ぐほォ!!!」

 

 

そんなエルフマンに対し、ドゥビルは掴まれている方とは逆の手でエルフマンへと殴り返す。

 

 

「いいだろう……ならばここで砕けて消えろ」

 

 

「へっ…そう来なくっちゃなァ。漢同士、存分に拳でやり合おうぜ!!!!」

 

 

「「うおおおおおおおっ!!!!!」」

 

 

そこからは両者の拳による激しい応酬が始まった。互いに防ぎもせず、かわしもせず、ただひたすらに相手の拳を受けながらも自身の拳を相手に叩き込んでいった。

 

 

『こ…これは凄まじい拳の応酬!!! 勝負の行方を決めるのは己の拳のみ!!!! 戦いというより意地のぶつかり合いだァ!!!!』

 

 

そんな2人の激しい殴り合いに、観客たちも息を呑みながら静かに勝負の行方を見守っていた。

 

 

そんな戦いがしばらく続き……

 

 

「ハァー…ハァー…ハァー……!!!」

 

 

「ゼェー…ハァー…ゼェー…ハァー!!!」

 

 

お互いにボロボロの姿になりながら殴り合う拳を止めて、荒い呼吸を繰り返している。どうやら2人とも体力・気力ともに限界に達してきているようである。

 

 

「ぬぅぅ……!!」

 

 

「ぐぅぅ……!!」

 

 

するとエルフマンとドゥビルはお互いに最後の力を振り絞り……ゆっくりと拳を構える。

 

 

そして……

 

 

 

「「オオオオオオオオオッ!!!!!」」

 

 

 

そんな雄叫びと共にその拳を突き出し……両者の顔面に同時に叩き込まれたのであった。

 

 

「「……………」」

 

 

その状態で硬直すること数秒……最初に動き出したのは──エルフマンであった。

 

 

「がはっ……!!」

 

 

『膝をついたのはエルフマンーーー!!!!』

 

 

エルフマンは血反吐を吐きながら掴んでいたドゥビルの手を放し、その場でガクリと膝をついてしまった。

 

 

そして誰もがこの勝負はエルフマンの敗北で決まったと思ったその時……

 

 

「エルフマン……ストラウス……」

 

 

膝をついているエルフマンを見下ろしながら、ドゥビルが静かに口を開いた。

 

 

「先の発言は撤回しよう……そしてお前はハズレではない……お前は──」

 

 

そう言いながらドゥビルの体がゆっくりと傾き始め……

 

 

 

 

 

「──漢だ」

 

 

 

 

 

そのまま地面に仰向けに倒れたのであった。

 

 

『ドゥビルダウーーーン!!!! 勝者エルフマン!!!!!』

 

 

「オオォォォォォォォォオオッ!!!!!」

 

 

会場中から激しい戦いを制したエルフマンを賞賛する歓声が上がる中……それに負けず劣らずの漢の雄叫びが会場に響き渡ったのであった。

 

 

「ウソだろ……ビル兄が負けるなんて……」

 

 

「リアクトを禁止にしていたとはいえ、予想外ですね」

 

 

「言っただろう? 甘く見ると堕とされると」

 

 

「……ハッ、いいじゃねーか。ようやく面白くなってきやがったぜ」

 

 

ドゥビルが負けたという事実に、アルナージは絶句し…フォルティスは顔をしかめ…サイファーは苦笑し…ヴェイロンは好戦的な笑みを浮かべたのであった。

 

 

「データ収集完了……っと♪」

 

 

「ぐがぁぁ…ずびぃぃ……」

 

 

そんな彼らの隣りでは、同じく凶鳥チームのヴェーラがどこか嬉しげにそう呟き、ウルフは相変わらず爆睡していたのであった。

 

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)

2ポイント→12ポイント

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「うおっ!!!! すげえ歓声!!!!」

 

 

「エルフマンさんが勝ったんですね!!!!」

 

 

「さすが」

 

 

「やりましたね!!!! エルフマンさん!!!!」

 

 

そんな試合の様子をナツとエリオ…そして2人が救出したウェンディやキャロたちが眺めていた。

 

 

「ウェンディ、キャロ、もう大丈夫なの?」

 

 

「うん!! もう平気だよ!!」

 

 

「グランディーネもありがとう」

 

 

「だからその呼び方はやめな」

 

 

シャルルの問い掛けに対してすっかり元気になったウェンディとキャロはそう答えると、治療を施してくれたポーリュシカにお礼を言った。

 

 

「それよりさっきの連中」

 

 

「はい」

 

 

そんな彼らの頭をよぎるのは、ウェンディやキャロたちを誘拐した覆面集団の言葉。

 

 

『オレたちは頼まれただけなんだよ、大鴉の尻尾(レイヴンテイル)の奴等に!!』

『医務室にいた少女を連れて来いって』

 

 

そんな証言をしたあと、覆面集団は王国兵たちに連衡されていったのだった。

 

 

大鴉の尻尾(レイヴンテイル)

 

 

「あいつらはまた卑怯な事を……!!」

 

 

「医務室にいた…少女」

 

 

「い()…って事は、過去形」

 

 

「2人いたじゃないか……ナツとエリオを運んできた……」

 

 

「ティアナと──ルーシィ」

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その頃……ドムス・フラウの関係者以外は入れない奥の間。

 

 

「作戦は失敗です」

 

 

「バカモノ、そもそも対象を間違えるとは。外見の特徴は伝えなかったのか?」

 

 

「申し訳ありません」

 

 

そこでは騎士団団長のアルカディオスと、覆面集団を連行した兵士が話し合っていた。

 

 

「まあよい、計画をプランBに移行するだけの事。実行犯どもは?」

 

 

「我々が捕らえ、牢へ送りました」

 

 

「バレてはいまいな」

 

 

「は! 依頼主は大鴉の尻尾(レイヴンテイル)という事に」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)大鴉の尻尾(レイヴンテイル)の確執はこのように使わねばな。そのスキに我々は星霊魔導士を手に入れる」

 

 

 

 

 

──エクリプス計画の為に。

 

 

 

 

 

大魔闘演武の水面下でとんでもない思惑がうごめいている事を……ナツたちはまだ知らない。

 

 

 

 

 

つづく

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