LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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次回からオリ競技パート&オリバトルパートですので、更新が遅くなるかもです。

感想お待ちしております。


夜襲

 

 

 

 

 

「ぷはーっ!! 食った食った」

 

 

「あんたは毎度毎度食べ過ぎなのよバカナツ」

 

 

「オイラもお腹一杯」

 

 

「あんたも食べ過ぎよ」

 

 

「まぁまぁ、宴会だったんだし」

 

 

「宿はこの辺なんですか?」

 

 

「うん!! もうすぐよ」

 

 

もうすっかり夜となったクロッカスの街。

 

そこでは酒場での宴会を終えたナツ・ティアナ・ルーシィ・ウェンディ・エリオ・ハッピー・シャルルは、妖精Aチームの宿であるハニーボーンに向かって歩いていた。

 

 

「もしかして、みんな同じ部屋なんですか?」

 

 

「本当……最悪なのよ。ナツはイビキうるさいし、グレイはすぐ裸になるし、エルザはあたしのベッドに入ってくるし。まともなのはティアナとヴィヴィオくらいよ」

 

 

ウェンディの問い掛けにルーシィが「やれやれ」と溜息をつきながら語った。するとシャルルが、エリオに対して問い掛ける。

 

 

「ってゆーか、何でエリオまでこっちに来てるのよ? アンタは別の宿でしょ?」

 

 

「ナツさんたちが一緒とはいえ、君やウェンディが襲われないとも限らないからね。キャロの方にもリニスについて行ってもらってるよ」

 

 

「わざわざゴメンね、エリオ君」

 

 

「いいんだよ。ウェンディは絶対に僕が守るから」

 

 

「エリオ君……」

 

 

申し訳なさそうにするウェンディにそう笑いかけるエリオ。その笑顔を見ながらウェンディは、頬を朱色に染めたのだった。

 

 

「でぇきてぇる」

 

 

「水差さないの」

 

 

そんな様子を見てそう呟いたハッピーは、シャルルに咎められた。するとルーシィが、この場にいない他のメンバーについて問い掛ける。

 

 

「そういえばエルザとグレイは?」

 

 

「グレイは気の毒ね。乱入してきたリオンにつかまったみたい」

 

 

「ギンガさんとシェリアって子も一緒でしたね」

 

 

「なのはさんとヴィヴィオもね」

 

 

ルーシィの疑問に答えながらシャルルとティアナとエリオは苦笑する。どうやらグレイが宿に帰るのは遅くなりそうである。

 

 

「エルザは?」

 

 

「そういえば見てないわね」

 

 

「もしかしてちゅっちゅちゅっちゅ」

 

 

「はぁ?」

 

 

「1人になるなとか自分で言ってたのにね」

 

 

「ま、仮に何があってもエルザさんなら大丈夫だと思うけど」

 

 

「あのエルザさんですからね」

 

 

「1人じゃないと思うな、オイラ」

 

 

そんな会話をしながら一行は宿へと足を進めて行く。そして宿が見えてくると、ナツとウェンディとエリオが何かに気がついた。

 

 

「ん? 宿の前に誰かいるぞ」

 

 

「あ、本当ですね」

 

 

「うん。あの人は…」

 

 

「目ぇいいわねアンタら」

 

 

「誰かしら? こんな時間に」

 

 

そう言いながらルーシィとティアナは目を凝らして宿の方を見てみると、3人の言うとおり宿の前には、誰かが1人佇んでいた。

 

 

「お前は」

 

 

剣咬の虎(セイバートゥース)の」

 

 

「星霊魔導士」

 

 

「確か名前はユキノ……だったわね」

 

 

その人物とは……今日の最終戦でアミタと戦って敗北した、ルーシィと同じ星霊魔導士……ユキノ・アグリアであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第181話

『夜襲』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「用事? あたしに?」

 

 

「はい。ルーシィ様に大切な用事があり、伺いました」

 

 

あの後……宿の前で待っていたユキノを、一行は彼女の話を聞く為に宿に招き入れたのであった。そして話を聞いてみると、ルーシィに用事があるのだと言った。

 

 

「セイバー何の用だよ」

 

 

「バカ、あからさまに敵意むき出しにしてんじゃないの」

 

 

「ナツさん、話くらいは聞いてあげましょうよ」

 

 

セイバーに対してあまりいい感情を持っていないナツはユキノにキツく当たるが、ティアナとウェンディに戒められる。

 

それに対してユキノは、特に気にした様子もなく、ルーシィのへの用事を告げた。

 

 

「あつかましい申し出ではありますが、これを──双魚宮の鍵と天秤宮の鍵。この2つをルーシィ様に受け取っていただきたいのです」

 

 

「え!?」

 

 

そう言ってユキノがテーブルに置いたのは、自身が所有する2本の黄道十二門の鍵。それを受け取って欲しいと言われたルーシィは目を丸くする。

 

 

「そんな…無理よ。貰えない」

 

 

「1日目、あなたを見た時から決めてました。大会が終わったら、この鍵をお渡ししようと」

 

 

「大会終わってねーじゃん」

 

 

「私の大会は終わりました。私の替りにはおそらく、ミネルバ様が加わるでしょう。これで剣咬の虎(セイバートゥース)を変えた〝最強の7人〟が揃います」

 

 

「それって……」

 

 

「アンタは入ってなかったのね」

 

 

セイバーが強くなるキッカケになったと言われる7人の最強魔導士。その中にユキノは含まれていなかったようである。

 

 

「私などはまだ新米でした。仕事中だったミネルバ様の代わりを任されたにすぎません」

 

 

「でもどうして鍵をルーシィさんに? それは大切な星霊じゃないんですか?」

 

 

「だからこそ、私より優れた星霊魔導士であるルーシィ様の許において頂いた方が、星霊たちも幸せなのです」

 

 

「嬉しい申し出だけど……やっぱりあたしには…」

 

 

「あなたはすでに黄道十二門の鍵を10コも揃えています。この2つと合わせて──十二の鍵全てが揃うのです。世界を変える扉が開く」

 

 

「世界を変える扉?」

 

 

遠慮するルーシィに対してそう言い放つユキノ。その言葉を聞いて、ルーシィは疑問符を浮かべる。

 

 

「ただの古い言い伝えです。私にもその意味はわかりません。もうお気づきかもしれませんが、この数年で星霊魔導士の数は激減しました。先日のゼントピアの事件もあり、もはや星霊魔導士は私たちだけかもしれません。あなたは星霊に愛され、星霊を愛する方です。十二の鍵を持って、星霊と歩むべきです」

 

 

そう言って2つの鍵を受け取る事を強く勧めるユキノ。だがしかし、それでもルーシィの返答は決まっていた。

 

 

「やっぱり受け取れない」

 

 

「!?」

 

 

「星霊魔法は絆と信頼の魔法……そんな簡単にオーナーを替わる訳にはいかない」

 

 

「──簡単……な決意ではないのですが」

 

 

「え?」

 

 

ユキノが小さくボソリと呟いた言葉は、ルーシィの耳には届かなかった。

 

 

「いいえ……あなたならそう言うと思っておりました。いずれ時が来れば、おのずと十二の鍵は再び揃うでしょう」

 

 

立ち上がりながらそう言うユキノの言葉に、ルーシィは笑みを浮かべながらコクリと頷く。

 

 

「またお会いできるといいですね」

 

 

そしてそう言い残して……ユキノはハニーボーンを後にしたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「もったいない事したわね」

 

 

「せっかく全部鍵が揃うチャンスだったのにね」

 

 

「ホント…がめついアンタにしては珍しいわね」

 

 

「がめつい言うなっ!!!」

 

 

ユキノが帰ったあと…ルーシィとティアナ、ウェンディとシャルルの4人は一緒にお風呂に入る為に脱衣所で服を脱ぎながらそんな会話をしていた。

 

 

「昔はね……全部揃えてやるんだーって思ってたけど、今はそうでもないんだー。剣咬の虎(セイバートゥース)の人とはいえ……あの人も星霊をとても大切に想っている。あたしにはあの人と星霊の絆は切れない……ううん、切りたくないの」

 

 

そんなルーシィらしい言葉に、ティアナたち3人は思わず顔を見合わせて笑ってしまった。

 

 

「そういえばナツとハッピーはどこ行ったのかしら」

 

 

「あの2人ならユキノを追いかけて行ったわ。何か言い忘れたーとか言って」

 

 

「エリオ君も宿に帰るついでだと言ってついて行きましたよ」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「ユキノさーーーん!!!」

 

 

「おーーい!! 待ってくれーっ!!!」

 

 

「待ってー!!」

 

 

「! ナツ様、ハッピー様、エリオ様」

 

 

宿を出て行ったユキノを追って、彼女を呼び止めるナツとハッピーとエリオの3人。それに気づいたユキノは振り返りながらその場で立ち止まる。

 

 

「いやー悪ィ悪ィ、お前悪ィ奴じゃねーんだよな」

 

 

そう言って突然謝罪の言葉を述べるナツに目を丸くするユキノ。

 

 

「ホラ……ナツってば剣咬の虎(セイバートゥース)ってだけで悪者だって決め付けちゃってさ」

 

 

「そうですよ、ユキノさんは何にも悪い事してないのに、あんなにキツく当たって」

 

 

「だからこーして謝りに来たんだろーが」

 

 

「謝る?」

 

 

「ごめんなー」

 

 

「「軽っ!?」」

 

 

どうやらナツは先ほど宿でセイバーというだけでユキノにキツく当たってしまった事を謝罪しに来たようである。謝罪自体はかなり軽いが……

 

 

「ごめんね、これでも少しは大人になったんだよナツは。エリオの方がまだ大人だけど」

 

 

「どーゆー意味だよそれっ!!」

 

 

「あはははっ」

 

 

「わざわざその為だけに、私を追って……?」

 

 

「お前、ずいぶん暗い顔してっからさ。オレ…気分悪くさせちまったかな……って」

 

 

「いいえ…すみません」

 

 

「いやいやいやいや、謝られても困るんだけど」

 

 

するとユキノは突然、両目からポロポロと涙を流して泣き始めてしまった。

 

 

「泣かれても困るんだけどーーー!!!」

 

 

「ユ…ユキノさん!!?」

 

 

「ど…どうしたのー!?」

 

 

当然いきなり泣き始めたユキノにナツたちは戸惑う。

 

 

「もう…ダメです。私……人にこのように気を遣われた事がないもので……」

 

 

その場でへたり込みながらそう言うユキノに、今度はナツたちが目を丸くする。

 

 

「私…ずっと剣咬の虎(セイバートゥース)に憧れていました。去年やっと入れたのに……私はもう…帰る事は許されない」

 

 

「はぁ?」

 

 

「どういう事ですか?」

 

 

「たった1回の敗北で……やめさせられたのです」

 

 

ユキノのギルドをやめさせられたと言う言葉を聞いて、ナツとエリオは目を見開く。

 

 

「大勢の人の前で裸にされて…自らの手で紋章を消さねばならなくて……悔しくて、恥ずかしくて…自尊心も思い出も全部壊されちゃって……それなのに私には帰る場所がなくて……!!!!」

 

 

大粒の涙を流しながら辛そうに叫ぶユキノの言葉を聞いて……目の色が変わったナツとエリオはギリッと歯噛みしながら口を開く。

 

 

「悪ィけど、他のギルドの事情はオレたちにはわからねえ」

 

 

「ナツ」

 

 

「はい…すみません。私…つい……」

 

 

「でも……〝同じ魔導士〟としてならその気持ち、よくわかります。辱められて…紋章を消されて…どれだけ悔しくて悲しかったか……痛いほどよくわかる」

 

 

「仲間を泣かせるギルドなんて──そんなのギルドじゃねえ」

 

 

「(仲間…)」

 

 

怒りの表情を露にしてそう言い放つナツとエリオの2人を……ユキノは涙を浮かべながら見上げていたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方その頃……ミリアーナと別れたエルザは、クロッカスの街並みを見下ろせる高台で1人物憂げな表情を浮かべていた。理由はもちろん、未だにジェラールを憎んでいるミリアーナの事であった。

 

 

「エルザさーん!」

 

 

「どうしたエルザ、こんなトコで」

 

 

「グレイ、ヴィヴィオ」

 

 

するとそこへ、ちょうど帰りだったのであろうグレイとヴィヴィオの2人がやって来た。

 

 

「いや……何でもない。お前たちの方こそ、今帰りか?」

 

 

「今までリオンとジュビアとなのはの意味のわかんねーやり取りに付き合わされてたんだよ」

 

 

「意味がわからん……だと? その場にいなかった私ですら、何となく話の内容がわかるぞ」

 

 

「そうだよパパ。いい加減ジュビアさんやなのはママの気持ちには気づいてるんでしょ? そろそろちゃんと向き合ってあげないと」

 

 

「う……」

 

 

(ヴィヴィオ)にまでそう言われておるのだ。ハッキリしてやらんか」

 

 

エルザやヴィヴィオに痛い所を突かれたグレイはバツが悪そうに顔をそむける。

 

 

「なんてな。愛も憎しみも、私が語るには荷が勝ちすぎるか……」

 

 

「エルザさん?」

 

 

「何かあったのか?」

 

 

「いいや。もう遅い。宿に戻ろう」

 

 

結局エルザは心の内をグレイやヴィヴィオに明かす事無く、話を切り上げて宿へと向かって歩き出したのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

そしてもう一方……華灯宮メルクリアスにある資料部屋では……

 

 

「十の鍵を持つ少女と、二の鍵を持つ少女。

 

十二の鍵が揃う!!!! エクリプスは完全に起動する!!!!

 

ゼレフ…ゼレフ…ゼレフ! ゼレフ!!

 

ふふふ…はははははははははははははっ!!!!!」

 

 

その部屋では、アルカディオスの不気味な笑い声のみが木霊していたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

そして剣咬の虎(セイバートゥース)の宿…クロッカスガーデン。

 

 

ドゴォォオオン!!!! ドゴォォォオオン!!!!

 

 

メンバーのほとんどが寝静まった頃……突然の破壊音が宿全体に響き渡る。

 

 

「何だ?」

 

 

「う~?」

 

 

その破壊音によって眠っていたスティングとレクターが飛び起きると、その部屋に慌てた様子のローグとアインハルトとフロッシュが駆け込んできた。

 

 

「スティングさん大変です!!!」

 

 

「レクター起きて!!」

 

 

「侵入者だ!!!」

 

 

「侵入者!? 剣咬の虎(セイバートゥース)の全メンバーがいる宿だぞ!!」

 

 

侵入者という言葉を聞いて、スティングは驚愕しながらもローグとアインハルトと共に部屋を飛び出す。

 

 

「何者だ!?」

 

 

「さぁな…だが生きて帰るつもりはないんだろうな」

 

 

「お2人とも、あそこです!!!」

 

 

侵入者を探して通路を走っていると、その現場を発見したアインハルトがその場所を指差す。

 

 

するとそこにいたのは……

 

 

 

 

 

「「マスターはどこだぁぁああ!!!!!」」

 

 

 

 

 

セイバーのメンバーたちを次々と薙ぎ倒しながらそう叫んでいるナツとエリオの姿があった。

 

 

予想外の侵入者の正体に、スティングもローグもアインハルトも、愕然とした表情で立ち尽くしている。

 

 

そしてナツとエリオがメンバーのほとんどが集まった広場へと到達すると、そこへ騒ぎを聞きつけたジエンマが現れた。

 

 

「ワシに何か用か、小童ども」

 

 

「お前がマスターか。1度の敗北でクビだって? なかなか気合入ってんなァ」

 

 

「ア?」

 

 

「だったらお前も……オレに負けたらギルドやめんだな!!!」

 

 

ナツはジエンマに対しそう言い放つと同時に、その手に灼熱の炎を灯す。

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)?」

 

 

「ナツ…さん」

 

 

「エリオ・モンディアル」

 

 

「マスターにケンカを売りにきただと?」

 

 

「何故そんな事を……」

 

 

「自殺行為だ」

 

 

「フローもそーもう」

 

 

セイバーのマスターであるジエンマにケンカを売る為に宿にまで乗り込んで来たというナツとエリオの行為に、主力メンバーも愕然とする。

 

 

「本気でぬかしておるのか? 小童ども」

 

 

「冗談でこんなトコ来る訳ないだろ。僕たちは自分の所の仲間を仲間と思わない人は──許せないんだ」

 

 

「(ユキノの事を言っているのか?)」

 

 

「(まさかわざわざその為に……!?)」

 

 

「(アンタらには関係ねえ事だろ!! そんな事で乗り込んで来るかよフツー)」

 

 

「何の話かはわからぬが、貴様らには貴様らなりの(ことわり)があっての行動という事か」

 

 

「何の話か──」

 

 

「わからねえだと?」

 

 

ジエンマのその言葉に、ナツとエリオはさらなる怒りを燃やす。

 

 

「ドーベンガル、適当に相手してやれ」

 

 

「は」

 

 

すると、ジエンマの命令によって忍者装束を身に纏った魔導士……ドーベンガルがナツたちの前に立ちはだかった。

 

 

「逃げんのか」

 

 

「ギルドの兵隊ごときが100年早いわ。上のモンと戦ろうってなら、それなりの資格があるのか見せてみろよ」

 

 

まるでナツやヴィヴィオを見下したような態度でそう言い放つジエンマ。

 

 

「マスターには近づけさせん」

 

 

「ナツさん、ザコは僕に任せてください」

 

 

向かってくるドーベンガルに対し、エリオが1歩前に出て、拳を構える。

 

 

「ザコとは言ってくれる。このドーベンガル、大魔闘演武にこそ出ていないが……実力では選手になった者にも劣らぬつもりだ。剣咬の虎(セイバートゥース)の力を思い知らせてやろう!!!!」

 

 

そう言いながらドーベンガルは、魔力を纏った手刀でエリオに向かって鋭い突きを放つ。

 

 

だがエリオは……その攻撃を正面から軽々と掴んで受け止めたのであった。

 

 

「なっ!!?」

 

 

「邪魔です」

 

 

驚愕するドーベンガルの掴んだ手を放さずに、静かにそう言い放つエリオ。そして次の瞬間、エリオの体に電撃が(ほとばし)り……

 

 

「ぐあぁぁぁあああああああ!!!!」

 

 

そのままエリオの体から放たれた雷撃がドーベンガルへと流れ、彼はそのまま黒コゲとなって意識を手放して倒れたのであった。

 

 

「ザコに用はないんですよ」

 

 

「ウソだろ!!?」

 

 

「ドーベンガルがっ!!!」

 

 

「ウチで10番以内に入る強さなんですよ!」

 

 

「うわああ!」

 

 

セイバーの中でも実力者だったドーベンガルがエリオに呆気なく倒された事で、セイバーの面々に衝撃が走る。

 

 

「オレと勝負しろォォォ!!!!」

 

 

邪魔者がいなくなった事で、ナツは一直線にジエンマへと向かって駆け出す。

 

 

「マスター、ここはオレが」

 

 

「手を出すな」

 

 

「!」

 

 

そんなナツを迎え撃とうとしたスティングを、ジエンマが制する。

 

 

「ウチにはいないタイプの小童どもよ。面白い」

 

 

そう言うと、ジエンマはナツの炎を纏った拳を腕で軽々とガードする。

 

 

「その程度……かっ!!!!」

 

 

体から発する魔力でナツを吹き飛ばそうとするジエンマ。しかしナツはそれに怯む事無く、拳を低く構え……

 

 

「!! ぬぐっ!!!?」

 

 

その拳をジエンマの腹部へと深く叩き込んだ。

 

 

だがナツの攻撃はそれで終わりではない。続けてさらなる拳の連撃をジエンマの顔面や体に休む事無く次々と叩き込んでいく。そして……

 

 

 

「雷炎竜の……撃鉄!!!!!!」

 

 

 

トドメと言わんばかりに炎と雷を纏った拳で強烈な一撃を繰り出し、その瞬間……宿の一部が吹き飛ぶほどの爆風と衝撃が巻き起こったのであった。

 

 

そして爆風が止むとそこには……ナツとジエンマの間に立ち、ナツの攻撃を魔法で打ち消したと思われる1人の女性が立っていた。

 

 

「ミネルバ!!?」

 

 

「御嬢……」

 

 

「ミネルバ様……」

 

 

その女性……ミネルバの登場にジエンマは驚愕し、その様子を見ていたスティングとアインハルトが小さく呟く。

 

 

「今宵の宴も、この辺でお開きにしまいか?」

 

 

「ア?」

 

 

「どういう事ですか?」

 

 

ミネルバの言葉に対して怪訝な表情を浮かべるナツとエリオ。

 

 

「ミネルバ貴様……勝手な事を」

 

 

「もちろん、このまま続けていても父上が勝つであろうな。しかし世の中には体裁という言葉があるものでな、攻めてきたのがそちらであったにせよ、ウチのマスターが大魔闘演武出場者を消したとあっては、我々としても立つ瀬がない。父上も部下の手前、少々熱が入り、引くに引けぬと見えた。どうだろう? ここは妾の顔を立ててくれまいか?」

 

 

そこまで言うとミネルバは、両手に纏った魔力を使用して何かの魔法を発動する。

 

 

「さすれば、この子猫は無傷でそなたに返す事もできよう」

 

 

「ごめんナツ~エリオ~」

 

 

「「ハッピー!!!!」」

 

 

すると次の瞬間、ミネルバの手には拘束され、人質状態にされたハッピーが現れた。

 

 

「くそっ!」

 

 

「部下が何人かやられてはいるが、妾が今回の件、不問に付してもよいと言っている。そなたらに大人の対応を求めようぞ」

 

 

「……………!!!」

 

 

「………ナツさん」

 

 

「……あぁ、わかってる」

 

 

ナツは怒りの表情を浮かべていたが、ハッピーを人質に取られてしまってはもはや手の出しようがない為……その怒りを飲み込んでナツとエリオはミネルバの提案を受け入れたのであった。

 

 

「オイラ……入り口で捕まっちゃって……ゴメン」

 

 

「いいんだハッピー、オレたちの方こそ放っておいて悪かった」

 

 

「帰りましょう」

 

 

「あい」

 

 

そう言ってハッピーを抱かかえたナツとエリオは出入り口へと向かって歩き出す。

 

 

「なかなか骨のある小童どもだ」

 

 

「決着は大魔闘演武でつけよう。存分にな」

 

 

去り行く2人の背中に向かってそう言葉を口にするジエンマとミネルバ。

 

 

「あなたたちに何か負けませんよ」

 

 

「つーかオレたちには追いつけねえ」

 

 

その言葉に対してそう言い返すナツとエリオ。そしてナツは振り返りながら、一番言いたかった事を彼らに言い放った。

 

 

 

「ギルドなら仲間、大切にしろよ。オレたちが言いてえのはそれだけだ」

 

 

 

その言葉を最後に、ナツとエリオは今度こそその場を立ち去って行ったのであった。

 

 

「(仲間……オレたちのギルドにはない絆なのか……)」

 

 

「(そしてその絆こそが……彼らの強さの源……)」

 

 

ナツの言葉を聞いて、ローグとアインハルトは顔を俯かせながら考え込む。

 

 

「(こ…こんなに強かったのか……ナツ・ドラグニル……)」

 

 

そしてそんな2人とは対照的に……スティングは興奮したような面持ちで「くくく…」と声を漏らして笑みを浮かべていたのであった。

 

 

 

 

 

つづく

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