LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

190 / 240
今回はちょっと駆け足気味です。

なので少々雑な部分もあるかと思いますが、どうかご容赦ください。

感想お待ちしております!!


覇王アインハルト

 

 

 

 

 

大魔闘演武4日目・バトルパートの第1試合であるナツとエリオ試合は、激しい激闘の末……両者共に戦闘不能の引き分けという結果で幕を閉じたのであった。

 

 

「ただいま」

 

 

「ただいま戻りました」

 

 

「おかえり! ナツとエリオの様子はどうだった?」

 

 

試合後……負傷したキズの手当の為に妖精の尻尾(フェアリーテイル)の医務室へと運ばれたナツとエリオ。本来はAチームとCチームの部屋は別なのだが、一括でポーリュシカに診てもらう方がいいという事で同じ医務室となった。

 

 

そしてそんな2人の容体を確認しに行って戻って来たティアナとウェンディに、ルーシィがそう問い掛ける。

 

 

「どうって……ねぇ?」

 

 

「あはは……」

 

 

「「「?」」」

 

 

その問いに対して何故か呆れたように嘆息するティアナと、苦笑いを浮かべるウェンディ。そんな2人の反応に疑問符を浮かべているルーシィやヴィヴィオたちに、2人は医務室での出来事を説明した。

 

 

 

 

 

『今日は引き分けだったがチョーシに乗んなよコノヤロウ。次やる時はオレが勝つ!!』

 

 

『それはこっちのセリフです。次は僕のスピードに慣れるヒマもなく瞬殺してやりますからね』

 

 

『んだとコラァ!!! 言うようになったじゃねーかエリオ!!! 何だったら今ここで決着つけてやろーかァ!!?』

 

 

『望むところですよ!!! ナツさんこそあとで吠え面かかないでくださいね!!!』

 

 

 

 

 

「ってな感じで、2人して元気に取っ組み合いのケンカしてたわ」

 

 

「最後にはお2人とも、グランディーネ……ポーリュシカさんに叱られていましたけど」

 

 

「あ…あはは……げ、元気そうでなによりね! うん!」

 

 

「つーか喧しいのが2人に増えてねーか、それ?」

 

 

「確かに、今までエリオがナツさんとケンカするなんて1度も無かったのにね」

 

 

「今までエリオは、どこかナツに遠慮していたからな。今回の戦いを経て、それがなくなったのだろう」

 

 

ティアナとウェンディの話を聞いて、Aチームの面々はそれぞれそんな反応を示していたのであった。

 

 

そして妖精Aチームがそんな会話を繰り広げている間にも……バトルパートはつつがなく進行していく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第190話

『覇王アインハルト』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『さあ!!! 第1試合の興奮も冷めやらぬ中、続いて第2試合!!!』

 

 

第2試合

青い天馬(ブルーペガサス)

一夜=ヴァンダレイ=寿

  VS.

凶鳥の眷属(フッケバイン・ファミリー)

アルナージ

 

 

『──は……残念ながらアルナージが棄権の為、一夜の不戦勝となります』

 

 

『『『えぇぇえええええっ!!!!』』』

 

 

まさかの第2試合が戦わずして終了してしまった事に、観客たちは落胆とブーイングが入り混じった声を上げる。

 

 

「アル……お前せめて戦ってこいよ」

 

 

「イヤだっ!!! あいつは生理的にムリ!!! あんなキモイ奴と戦うくらいなら棄権した方がマシだっつーの!!!」

 

 

「まぁ、試合の勝ち負けにはこだわりませんからいいんですけどね」

 

 

棄権した理由がただ単に一夜が生理的に受け付けないという事に、ヴェイロンは嘆息し、フォルティスは苦笑を浮かべたのであった。

 

 

そしてそうとは知らない一夜は……

 

 

「戦わずして勝ってしまうとは……なんと罪深き香り(パルファム)!! メェーン」

 

 

「「「さすが隊長!!!」」」

 

 

トライメンズの3人にもてはやされていたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

気を取り直して行われたバトルパート・第3試合。

 

 

蛇姫の鱗(ラミアスケイル)

チンク・ナカジマ

  VS.

四つ首の仔犬(クワトロパピー)

イェーガー

 

 

その組み合わせはラミアのチンクと、1日目の競技に出ていたパピーのイェーガーの試合であった。そして目の前の闘技場では……

 

 

「動くな。余計なキズを増やしたくないだろう?」

 

 

「ワ…ワイルド……」

 

 

すでにチンクによって地面に組み伏せられ、さらにスティンガーを突き付けられて身動きを封じられたイェーガーの姿があった。大柄な男が小柄な少女に押さえつけられているという光景は、何ともシュールである。

 

 

これにより、第3試合はチンクの勝利が決定した。

 

 

「ほう、チビのくせにやるなアイツ」

 

 

「当たり前だろ、チンク姉はナンバーズだった頃から実力はアタシより上だったし、ギルドに入ってからますます強くなってるからな」

 

 

妖精Bチームの陣営では、チンクの戦闘を見て感心したような声を上げるガジルに、彼女の妹であるノーヴェが誇らしげにそう言った。

 

 

そして続く第4試合。

 

 

第4試合

人魚の踵(マーメイドヒール)

キリエ・フローリアン

  VS.

大鴉の尻尾(レイヴンテイル)

ナルプディング

 

 

その組み合わせは、3日目の競技パートで好成績を収め、マーメイドの中でも実力者であるキリエ……そして1日目の競技パートでグレイを苦しめたナルプディングの試合であった。

 

 

「女とはいえ容赦はしないでサー」

 

 

「あら…女だと思って甘く見てるとケガするわよアゴのおじさん。降参する時は早めに……出来ればなるべくみっともなく泣いて謝りながら言ってね? 運がよければ手加減が間に合うから」

 

 

「……生意気な女でサー」

 

 

キリエを挑発するつもりが、逆に挑発されたナルプディングは怒りで額に青筋を浮かべる。対するキリエは飄々とした態度を崩さず、余裕そうな顔つきである。

 

 

『それでは…試合開始!!!!』

 

 

「先手必勝でサー!!!」

 

 

試合の開始を告げる宣言と銅鑼の音が響き渡ると同時に……ナルプディングが勢いよくキリエに飛び掛かる。

 

 

「ニードルブラスト!!!」

 

 

そしてナルプディングはそのまま鋭いトゲを生やした腕をキリエへと振るうが……

 

 

「よっ、はっ、ほいっと」

 

 

キリエはその攻撃を軽々と体をそらしながら回避していた。

 

 

「この…ちょこまかと……!!」

 

 

「スキだからけよ♪」

 

 

「なにっ──ぐはぁっ!!!」

 

 

するとキリエはナルプディングの攻撃を回避すると同時に彼の懐に潜り込み、自身の武器であるピンク色の装飾が施された銃剣……ヴァリアントザッパーの刀剣でナルプディングの体を斬り裂いた。

 

 

「まだまだ行くわよ~♪」

 

 

さらにキリエの攻撃はそれだけでは終わらず……

 

 

「ダンシングザッパー!!!!」

 

 

「ぐおぉぉぉおおおお!!!!」

 

 

まるで踊っているかのような軽やかな動きで二刀のヴァリアントザッパーを振るい、ナルプディングの体を何度も斬り付けたのであった。

 

 

「がはっ…!!!」

 

 

それを喰らい、一瞬でボロボロになったナルプディングはそのまま意識を失い、地面に倒れたのであった。

 

 

「だから言ったでしょ? 降参する時は早めに──って♪」

 

 

そしてそんなナルプディングに対し、キリエは茶目っ気たっぷりの笑顔でそう言い放ったのであった。

 

 

こうして第4試合はキリエの勝利で終わったのであった。

 

 

「あのレイヴンのアゴ野郎を瞬殺…か」

 

 

その試合を控室等で観戦していたグレイは、1日目の競技で自身に煮え湯を飲ませたナルプディングがあっさり敗北した光景に複雑そうに呟いた。

 

 

「昨日の射的での銃の腕前も見事だったが、剣の腕もたいしたものだな」

 

 

「ですね。昨日の競技パートといい、今回といい……一見飄々としてるけど、実力は本物です」

 

 

キリエの実力を垣間見てそう呟くエルザと、ティアナがそれに同意するように頷いた。

 

 

「次が最後の試合……ってアレ?」

 

 

「そういえば残ってるのって……」

 

 

『さあ!! いよいよ本日の最終試合!!!』

 

 

そう言ってルーシィとウェンディが何かに気がついたかのように呟くと……実況席のチャパティの口から今日最後の試合である第5試合の組み合わせが発表される。

 

 

『まずは、剣咬の虎(セイバートゥース)──アインハルト・ストラトス!!!!』

 

 

最初に名を呼ばれたのは、剣咬の虎(セイバートゥース)の〝覇王〟の異名を持つ少女……アインハルト・ストラトス。

 

 

『対するは、妖精の尻尾(フェアリーテイル)B──ノーヴェ・ナカジマ!!!!』

 

 

そしてその対戦相手となるのは、今回参加している妖精メンバーの中でも新人でありながらも、その実力は他のメンバーにも引けを取らないノーヴェであった。

 

 

「おっしっ!! やっとアタシの出番か!!!」

 

 

「がんばってね、ノーヴェ!!」

 

 

「ですが相手はあの剣咬の虎(セイバートゥース)

 

 

「油断しないようにね」

 

 

「わかってる。アタシの妖精の尻尾(フェアリーテイル)としての初陣の相手にはちょうどいい」

 

 

なのはとジュビアとミラジェーンによる応援と忠告の言葉を聞きながら、ノーヴェは闘技場へと向かって行ったのであった。

 

 

『両者共に格闘系の魔法を使う者同士、面白い組み合わせになりましたね』

 

 

『あのノーヴェとかいう娘は、(たス)かゲン坊が引き取った養子(ようス)じゃなかったかの?』

 

 

『ああ、昔はちょっとやんちゃしてたが、今では立派なうちの6人姉妹の五女だぜ』

 

 

『姉妹だけでもすごい大家族ですねー』

 

 

実況席の3人がそんな雑談のような会話を繰り広げている間に、アインハルトとノーヴェの2人が闘技場の中心で向き合うように対立していた。

 

 

「格闘系魔法〝ストライクアーツ〟の使い手……ノーヴェ・ナカジマさんですね?」

 

 

「あん?」

 

 

急にそう話しかけてきたアインハルトに対し、ノーヴェは訝しげな表情を浮かべる。

 

 

「ぜひ貴女とは戦って確かめたいと思っておりました。貴女の拳と私の拳……一体どちらが強いのか」

 

 

「ハッ、面白ェ」

 

 

アインハルトのその言葉に対し、パキパキと拳を鳴らしながら好戦的な笑みを浮かべるノーヴェ。

 

 

『それでは──試合開始!!!』

 

 

そして2人の会話が終わると同時に、試合開始を告げる宣言と銅鑼の音が響き渡った。

 

 

──ドガァンッ!!!!

 

 

「!!?」

 

 

その瞬間……開始と同時に放たれたノーヴェの膝蹴りによる一撃がアインハルトを襲い、それに対してアインハルトは目を見開きながらも腕でそれをガードする。

 

 

「オオオオラァァ!!!」

 

 

「っ……!!!」

 

 

ノーヴェはさらに続けて強く握り締めた拳をガードの上からアインハルトに叩き込み、彼女の体を思いっきり後方へと後退させた。

 

 

「(チッ……アタシの攻撃をガードの上からとはいえ受け切りやがったか。さすがに剣咬の虎(セイバートゥース)最強の7人に数えられてるだけの事はあるか)」

 

 

不意打ちを混ぜた連続攻撃を完全にガードされた事にノーヴェは内心で舌打ちをしながらも、アインハルトの実力が相当なものだと確信する。

 

 

「ジェットエッジ」

 

 

するとノーヴェは小さくそう呟くと、換装魔法で自身の両足にローラーブーツ型の装備である『ジェットエッジ』が……そして右手には簡素な篭手の『ガンナックル』が装着され、完全な戦闘装備へと変わった。

 

 

「来いよ覇王様!!! お望み通り全力で相手してやらァ!!!!」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

そう言ってノーヴェに対して感謝の言葉を述べながら戦闘の構えを取るアインハルト。するとそれを見たノーヴェは怪訝な表情を浮かべる。

 

 

「(構えた? この距離で?)」

 

 

ノーヴェとアインハルトの間の空間はかなり広がっており、とても格闘技が使える距離ではない。にも関わらず、拳を構えるアインハルトを見て、ノーヴェは警戒しながら彼女の動きを観察する。

 

 

そしてアインハルトがゆらりと動き始めたその瞬間……

 

 

「なっ──!!?」

 

 

ノーヴェが気がつく頃には、すでにアインハルトは彼女の眼前へと迫ってきていた。

 

 

「(速ッ……この距離を一瞬で!!? エリオと同じスピード型……!!?)」

 

 

顔面へと振るわれたアインハルトの拳を、ギリギリで顔をそらして紙一重で回避しながら彼女の背後へと回るノーヴェ。

 

 

しかしアインハルトはすぐに体を反転させると、再び素早くノーヴェへと向かって攻撃を仕掛けて行く。

 

 

「(いや違う…エリオみてーに速い訳じゃねえ!! 動き出す際の歩法(ステップ)をうまく使って、そう錯覚させてるだけだ!!!)」

 

 

アインハルトの動きを分析しながらも、彼女の追撃をガードする為に腕をクロスにして身構えるが……

 

 

「ハァッ!!!」

 

 

「がっ……!!!」

 

 

アインハルトは腕のガードの間にあった僅かな隙間を見抜き、そこへ拳を放つ事でガードをすり抜け、その拳はノーヴェの腹部へと叩き込まれたのであった。

 

 

「ゲホッ……やるなァ」

 

 

「!?」

 

 

だがしかし、その攻撃を受けたノーヴェは逆に笑みを浮かべていた。

 

 

「あいにく体質上、体の頑丈さには自信があるんだよ」

 

 

「くっ……!!」

 

 

そう言いながらノーヴェは自身の腹部に叩き込まれていたアインハルトの腕を強く握る。すぐさま離れようとするアインハルトだが、掴まれた腕を振り払う事が出来ずに逃げられない。

 

 

「お返しだ!! ガン・ストライク!!!!」

 

 

そしてノーヴェはガンナックルを装着した手で拳を作り、それを渾身の力でアインハルトに叩き付けたのであった。

 

 

「ぐっ…つ……!!!」

 

 

それを喰らったアインハルトは後方へ大きく吹き飛ばされながらも、空中で体制を立て直して何とか倒れずに地面に着地した。

 

 

「……いい拳です。一片の迷いもない実に強力な一撃でした」

 

 

そう言いながらノーヴェに対して賞賛の言葉を送るアインハルト。だがその表情は変わらぬ無表情であり、それどころか、どこか落胆したような色が見えていた。

 

 

「ですが……私の拳には遠く及ばない。今の攻防で確信しました。貴女の〝格闘技(ストライクアーツ)〟では、私の〝覇王流(カイザーアーツ)〟には決して届かないと」

 

 

「……言ってくれんじゃねえか」

 

 

アインハルトの言葉に不機嫌な表情で彼女を睨むノーヴェだが、アインハルトは怯む事もなくポツリと呟くように口を開く。

 

 

「やはり貴女も……私の拳を受け止める相手にはなりえない」

 

 

「ああ?」

 

 

彼女が小さく呟いた言葉に、ノーヴェは眉をひそめる。

 

 

「もう──終わらせましょう」

 

 

そして小さくそう言い放つと同時に、アインハルトは再びノーヴェから離れた状態で拳を構えた。

 

 

「(また遠くから構えやがった……今度はアイツの歩法(ステップ)に注意して……)」

 

 

先ほどのように一瞬で懐に入られない為にアインハルトの動きを注視して身構えるノーヴェ。しかし……

 

 

「覇王・空波弾!!!!」

 

 

アインハルトから放たれたのは……何と彼女が振るった拳から発生した拳圧による衝撃波であった。

 

 

「なにっ!? ぐあぁっ!!!」

 

 

予想もしなかった攻撃に、ノーヴェは衝撃波による攻撃をまともに喰らってしまった。

 

 

「(魔力も使わずに拳圧を飛ばしただと……!!?)」

 

 

「ハァァア!!!」

 

 

ノーヴェが驚愕している間にも、アインハルトの攻撃は止まらない。衝撃波によって怯んだ一瞬のスキをついて再びノーヴェの懐に潜り込むアインハルト。

 

 

昇月(しょうげつ)!!!」

 

 

「ぐがっ!!!」

 

 

そのまま拳を振り上げて強烈なアッパーでノーヴェの顎を打ち抜く。

 

 

だがアインハルトの攻撃はまだ終わってはいない。彼女はさらに間髪入れずにノーヴェの体に打撃を叩き込み……

 

 

崩天輪(ほうてんりん)!!!」

 

 

「ぐあぁぁぁああああ!!!」

 

 

連撃からの強力な一撃によって、ノーヴェの体を勢いよく吹き飛ばしたのであった。

 

 

『これは一方的な展開!!! これが剣咬の虎(セイバートゥース)最強の格闘魔導士……覇王アインハルトの力なのかーーー!!?』

 

 

「チッ……くそっ!!!」

 

 

チャパティの実況と観客たちの歓声が響く中で、舌打ち混じりに立ち上がるノーヴェ。

 

 

「驚きました。まだ立ち上がれるのですね?」

 

 

「頑丈さには自信があるっつったろ?」

 

 

「ですがいくら立ち上がろうと、貴女は私には勝てませんよ」

 

 

「知るかよっ!!!」

 

 

アインハルトの警告に近いその言葉に対し、ノーヴェは強く反発する。

 

 

「勝ち目があろうがなかろうが関係ねえっ!!! アタシは今、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士としてここに立ってんだ!!! ギルドの名を背負ってる以上、敵に背を向けたりはしねえ!!!!」

 

 

力強くそう言い放ったノーヴェの言葉を聞いて、アインハルトは大きく目を見開き、そして控室等で観戦している各妖精チームの面々は小さく笑みを浮かべていた。

 

 

「……ギルドの絆……それが妖精の尻尾(フェアリーテイル)の強さの源…ですか」

 

 

「テメェにはねぇのかよ? ギルドの為に戦うとかそういう覚悟はよ?」

 

 

「……ありません」

 

 

ノーヴェのそんな問い掛けに対し、アインハルトは淡々と否定の言葉を口にする。

 

 

「私が剣咬の虎(セイバートゥース)に属しているのは、もっと強くなる為……そして、私の先祖の願いを叶える為。それ以外に理由はありません」

 

 

「先祖の願いだと?」

 

 

「はい……覇王流の力を、天地に覇をもって轟かせる……それが私の祖先……400年以上前に実在したと言われる巨大国家……ベルカ王国の王が1人──〝覇王イングヴァルト〟の悲願なんです」

 

 

アインハルトの話の中に出てきた〝ベルカ王国〟という聞き覚えのある言葉を聞いて、目を見開くノーヴェ。それは彼女だけでなく、妖精Aチームのヴィヴィオも同じ反応を示していた。

 

 

「私の中には覇王の血だけでなく、彼の身体資質や400年分の悲願がある。だからその悲願を果たす為に、まず──貴女方のギルドに属している聖王オリヴィエのクローンを倒す」

 

 

「!!?」

 

 

聖王オリヴィエのクローンを倒す……それはつまりヴィヴィオを倒すという事を示していた。それを聞いたノーヴェはピクリと眉をひそめる。

 

 

「かつて覇王イングヴァルトが勝利する事ができなかった、武技において最強を誇った王女…聖王オリヴィエ。そのクローンを倒して、私はもっと強くなりたい……400年の戦乱では成し得なかった、覇王流が最強だと証明する為に」

 

 

胸の前まで持ってきた右拳を強く握り締めながらそう言い放つアインハルト。それに対してノーヴェは……

 

 

「くだらねェ」

 

 

吐き捨てるようにそう言った。

 

 

「先祖の願いだか何だか知らねえが、お前はそんなモンに振り回されて生きてんのかよ。お前の言うアイツだって、今はもう普通にギルドの一員として暮らしてんだ」

 

 

そう言いながらチラリと妖精Aチームの控室等にいるヴィヴィオに視線を向けるノーヴェ。それに対してアインハルトは……

 

 

 

「弱い王なら──この手でただ屠るまで」

 

 

 

と…静かにそう言い放ったのであった。

 

 

「ふっ…ざけんなァ!!!!」

 

 

そしてそれを聞いた瞬間、ノーヴェの目が怒りで染まる。

 

 

「聖王も覇王も…戦乱もベルカ王国も…全部400年も昔に終わってんだろーが!!!! それを今更テメェの都合で──蒸し返してんじゃねえっ!!!!」

 

 

吼えるように怒りの言葉を叫びながら、ジェットエッジの機動力で真っ直ぐとアインハルトに向かって駆けて行くノーヴェ。

 

 

そして……

 

 

 

「リボルバー・スパイク!!!!!」

 

 

 

ジェットエッジの機能と出力をフルに使った渾身の蹴りを叩き込んだのであった。

 

 

しかし……

 

 

「──終わってないんです」

 

 

「!!?」

 

 

ノーヴェの渾身の力を込めた一撃は……アインハルトの手によって受け止められていた。それでも多少ダメージは通っているものの、彼女の口から僅かに血が流れている程度であった。

 

 

「私にとってはまだ何も──終わっていない」

 

 

そう言うとアインハルトは掴んでいたノーヴェの足を思いっきり振り回して、彼女の体を空中へと投げ出す。それと同時に……強く握り締めた拳を静かに構える。

 

 

そして……

 

 

 

「覇王断空拳!!!!!」

 

 

 

これまでの比ではないほどの凄まじい威力の拳が、ノーヴェの体へと直撃したのであった。

 

 

「かっ…がぁ……っ!!!!」

 

 

それを喰らったノーヴェは断末魔すら叫ぶ事も出来ずに吹き飛ばされ……闘技場の壁へと激突したのであった。

 

 

そして壁に激突したノーヴェは、壁に背を預けながらズルズルと音を立ててゆっくり地面に座り込み……そのまま動かなくなったのであった。

 

 

『き…決まったーーーー!!!! 試合終了!!! 勝ったのは剣咬の虎(セイバートゥース)、アインハルト・ストラトスーーー!!!!』

 

 

それが決定打となり……アインハルトの勝利が決定したのであった。

 

 

「弱さは罪です。弱い拳では……誰の事も守れないから」

 

 

最後にそう言い残して……アインハルトは闘技場から退場していったのであった。

 

 

「っ……!!!」

 

 

その様子を……妖精Aチームの控室等で、ヴィヴィオが睨むように見据えながら拳を強く握り締めていたのであった。

 

 

『いやー、最後も白熱した試合でしたねー』

 

 

『ゲン坊の娘さんは残念だったけどな』

 

 

『負けちまったのは父親としては残念に思うが、大会はまだあと3日もある。これからの活躍に期待だな。もちろん、ラミアの娘2人にもな』

 

 

『ではこれにて、大魔闘演武4日目終了ー!!!』

 

 

こうして大魔闘演武3日目は幕を閉じ……そして3日目の結果は以下のようになったのであった。

 

 

 

 

 

―4日目結果―

大鴉の尻尾:48ポイント

剣咬の虎:47ポイント

蛇姫の鱗:46ポイント

人魚の踵:43ポイント

青い天馬:44ポイント

凶鳥の眷属:41ポイント

妖精の尻尾A:39ポイント

妖精の尻尾B:39ポイント

妖精の尻尾C:36ポイント

四つ首の猟犬:27ポイント

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「ぐっ……ハァ…ハァ……!!」

 

 

一方……闘技場から退場したアインハルトは、何やら苦しげに息を乱し、体を押さえながら引きずるように通路を歩いていた。

 

 

「うっ…!!」

 

 

そして彼女の体にズキリと痛みが走った瞬間、ガクンと足から力が抜けてその場で倒れ込みそうになるアインハルト。

 

 

だがその時……そんなアインハルトの体を1人の青年が優しく受け止める。

 

 

「おい、大丈夫か?」

 

 

「アインー」

 

 

「……ローグさん…フロッシュさん……」

 

 

その青年とは、彼女と同じ剣咬の虎(セイバートゥース)の魔導士であり、双竜の一角と言われているローグであった。その傍には彼の相棒であるフロッシュの姿もある。

 

 

「どうしてここに…?」

 

 

「別に……フロッシュがお前を迎えに行きたいと言うから、付き添いで来ただけだ」

 

 

「アイン…だいじょーぶ?」

 

 

「ええ…大丈夫ですよ、フロッシュさん」

 

 

アインハルトの問い掛けに対してローグは淡々とした声色でそう答える。そして心配そうな表情で自分を見上げるフロッシュを見て、アインハルトは大丈夫だと微笑みかける。

 

 

「それにしても、ずいぶんとフラフラだな。そんなに苦戦したようには見えなかったが」

 

 

「おそらく…あの最後の一撃でしょう」

 

 

ローグの言葉にそう答えながら、アインハルトはノーヴェが最後に放った強烈な蹴りによる一撃を思い出す。

 

 

「すごい打撃でした……もし当たり所が悪ければこの試合、負けていたのは……」

 

 

「……勝ちは勝ちだろう」

 

 

「フローもそーもう!」

 

 

「……ありがとうございます、ローグさん、フロッシュさん」

 

 

そんな会話をしながら、アインハルトはローグに体を支えてもらい、フロッシュと共に通路の奥へと消えて行ったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

そして大魔闘演武4日目の日程が終了してから数時間後……妖精の尻尾(フェアリーテイル)の医務室。

 

 

「あーあ、せっかくの妖精の尻尾(フェアリーテイル)としてのデビュー戦がこんな結果とは情けねえぜ……お前もそう思うだろ──ヴィヴィオ」

 

 

「…………」

 

 

そこにはノーヴェとヴィヴィオの2人の姿があり、ベッドで横になっているノーヴェはヴィヴィオに対して問い掛けるが、ヴィヴィオは顔を俯かせたままであった。

 

 

「体の調子は…大丈夫なの?」

 

 

「ああ。ポーリュシカさんが言うには、一晩安静にしときゃあ明日出ても問題ねーってよ」

 

 

「そっか……」

 

 

ノーヴェの言葉に安堵したように息を吐くヴィヴィオだが、それでも彼女の顔色は優れない。そんなヴィヴィオに対し、ノーヴェが真剣な表情で問い掛ける。

 

 

「アインハルトの事……考えてんのか?」

 

 

「……うん」

 

 

暗い表情で俯きながら頷くヴィヴィオ。

 

 

「スティングが言ってたんだ……私とアインハルトさんにはちょっとした因縁があるって。その因縁がまさか、400年前の聖王と覇王の因縁だとは思わなかったけどね」

 

 

「時代を超えての再戦……か」

 

 

「うん……でも、私はオリヴィエじゃないから、正直アインハルトさんとどう向き合えばいいのかわからないよ」

 

 

「……だろうな」

 

 

ヴィヴィオの弱気な言葉に対してノーヴェは小さく嘆息しながらそう言うと「けどな…」と言って言葉を続ける。

 

 

「少なくともアタシは、あいつと向き合えるのはお前だけだと思ってる。同じベルカ王国の王族の血を持つお前にしか出来ねぇ事だ。それであいつを救ってやれとは言わねえ……ただ正面から、思いっきりぶつかってやればいい。妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士らしく…な!」

 

 

「ノーヴェ……うん、そうだね」

 

 

ノーヴェのそんな言葉を聞いて行くうちに、ヴィヴィオの表情から段々と先ほどまでの不安そうな暗い色が消えて行き、やがて意を決したような顔つきへと変わった。

 

 

 

「もしこの大魔闘演武でアインハルトさんと戦う事があったら…全力で戦うよ。聖王とか覇王とか関係なく──妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士、高町ヴィヴィオとして!!!」

 

 

 

「おう! その意気だ!!!」

 

 

自身の手のひらに拳を打ち付けながら強くそう言い放つヴィヴィオの言葉を聞いて、ノーヴェは満足気に二カッと笑ったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ところでヴィヴィオ、さっきセイバーのスティングがどうとか言ってたが、どんな関係なんだ?」

 

 

「それは秘密♪」

 

 

 

 

 

つづく




次回からようやく原作沿いに戻ります。
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