LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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さあ今回は、かなり久しぶりの3連投稿です!!!

例に沿って1時間おきに1話ずつ投稿されますので、どうぞお楽しみください。

感想お待ちしております!!!


想いが交差する夜

 

 

 

 

 

 

大魔闘演武3日目・バトルパート最終試合…ウェンディとシェリアの戦いは、両者共に全力を尽くし、制限時間まで戦い抜いて引き分けとなり、その後2人に友情が芽生えるという結果に終わった。

 

 

だがその裏側では……

 

 

「(これは…!! 戦いが終わったというのに、禍々しい魔力が消えていない!!? この魔力の正体はシェリアではなかったのか!!?)」

 

 

観客席でウェンディの試合を最後まで見届けたミストガンに扮したジェラールは、戦いが終わってもなお消えていないゼレフに似た魔力を感じ取って目を見開く。

 

 

「(! 向こうからだ!!! 出口にむかっている)」

 

 

まだ漠然とだが、その魔力の出所が移動している事に気がついたジェラールは、試合が終わって帰ろうと出口に向かっている観客たちの流れに乗りながら魔力の出所を追う。

 

 

だがその後ろには、評議員であるドランバルトとアルフが、少し距離を置いて追跡をしていた。

 

 

「チッ」

 

 

それに気づいたジェラールは小さく舌打ちをすると、流星(ミーティア)を発動させて飛び上がり、一瞬でその場から去って行った。

 

 

「消えた!!?」

 

 

「気づかれたか!!? しかし…!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第194話

『想いが交差する夜』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(謎の魔力の正体……)」

 

 

ドランバルトとアルフを撒く事に成功したジェラールは、会場内の広い通路を歩きながら、魔力の出所を追っていた。

 

 

そしてついに……まだ遠目で姿はハッキリとはわからないが、人ごみの中にその魔力の出所と思われる人物がいるのを発見した。

 

 

「(奴だ!!! 見つけた!!!)」

 

 

すぐさまその人物に向かって駆けだそうとするジェラール。

 

 

「!!」

 

 

だがその瞬間……そんなジェラールの目の前に、先ほど撒いたハズのドランバルトとアルフが突然現れた。

 

 

「(いつの間に!!?)」

 

 

「アタシの鼻と、ドランバルトの瞬間移動(ダイレクトライン)をナメるんじゃないよ」

 

 

「逃がさねえぞ」

 

 

どうやらアルフの魔人狼(ワーウルフ)特有の嗅覚でジェラールを索敵し、発見と同時にドランバルトの瞬間移動(ダイレクトライン)で回り込んだ……という事らしい。

 

 

自分の目の前に立ち塞がるドランバルトとアルフ…そして魔力の正体が遠のいて行く事にジェラールは「クッ」と表情を歪める。

 

 

「(すぐそこに謎の魔力の正体がいるのに……!!)」

 

 

「お前は何者だ」

 

 

「さっさと吐かないと容赦しないよ」

 

 

「(コイツらを気絶させて……いや…今のオレは妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士という事になっている。評議員に手を出す事など)」

 

 

この状況をどうやって打破するかを考えるジェラール。しかし……

 

 

「ドランバルト、アルフ、何の騒ぎだ」

 

 

偶然その後ろから、数人の部下を引き連れたラハールがやって来てしまった。さらなる状況の悪化に、ジェラールは内心で「クソ」と毒づく。

 

 

「お前がミストガンじゃない事はわかっている。誰なんだ?」

 

 

「すまない、急いでいるんだ」

 

 

「そうはいかないよ」

 

 

ドランバルトの問いに答えず、その脇を抜けようとするジェラール。だが当然それはアルフに止められる。

 

 

「ミストガンはこの世界(アースランド)にはいない」

 

 

「私はミストガンだ」

 

 

再び問い掛けるドランバルトに対し、そう答えるジェラール。

 

 

すると次の瞬間……ドランバルトの手がジェラールの顔を覆っている覆面へと迫る。

 

 

「何を!!」

 

 

「お前は誰だ!!?」

 

 

いきなりの事にジェラールも対処が間に合わず、彼の顔を覆っていた覆面はドランバルトの手によって剥がされてしまう。

 

 

「しまっ……」

 

 

「「「ジェラール!!!?」」」

 

 

そして多くの評議員の前で、ジェラールの素顔が曝されてしまった。万事休すかと思われたその時……

 

 

「おーーこんな所におったのかね、ミストガン君」

 

 

そう言ってその場に現れたのは、元評議員であるヤジマであった。

 

 

「ヤジマさん!!」

 

 

「!」

 

 

思わぬ人物の登場に、ジェラールだけでなくドランバルトたちも目を見開く。

 

 

「ラハール君、ミストガン君が顔を隠スとる理由がわかったじゃろ」

 

 

「え?」

 

 

「あのズラールと同ズ顔を思って生まれてスまった不運。察スてやってくれんかの」

 

 

「別人……だと!!?」

 

 

目の前にいるジェラールが別人だと言い張るヤジマに驚愕するラハール。

 

 

「エドラスという世界(スかい)()ってるかね?」

 

 

「ええ……部下より聞いています」

 

 

「その世界(スかい)とこの世界(スかい)は繋がっておる。同ズ顔をスた人間が存在する」

 

 

「では、あなたはエドラスの人間だと?」

 

 

「……ああ」

 

 

ラハールの問い掛けに、ジェラールはヤジマの話に乗るように頷いたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

そしてその少し離れた場所では……人魚の踵(マーメイドヒール)の面々がちょうど出口に向かって通りかかっていた。

 

 

通路の真ん中で起こっている騒ぎに何事かと何気なく視線を向けたカグラ。するとそんな彼女の目に、遠目にだがジェラールの姿が映った。

 

 

「ジェラール…!!!」

 

 

その姿を見た瞬間、カグラの心臓がドクンと強く跳ね上がる。

 

 

「うっ…うぶっ!!」

 

 

「カグラ!?」

 

 

「カグラさん!?」

 

 

「ちょっと!! どうしたんだい!?」

 

 

「カグラちゃん!!」

 

 

「大丈夫!!?」

 

 

突然口元を手で押さえ、その場で膝をついたカグラに、マーメイドのメンバーたちは何事かと思いながら彼女へと駆け寄る。

 

 

「ううう…ううううう……!!!」

 

 

まるで極寒の地にいるように全身を震えさせながら呻き、不倶戴天を握る手にメキメキと力を入れていくカグラ。

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ」

 

 

「カグラさん!! しっかりしてください!!!」

 

 

「ちょっと誰か!! 早く救護班を呼んでっ!!!」

 

 

「カグラちゃんが!」

 

 

アミタが震えるカグラを落ち着かせるように寄り添い、キリエとミリアーナが周囲の野次馬にすぐに救護班を呼ぶように叫ぶ。

 

 

するとそんなミリアーナの目にも……ジェラールの姿が映った。

 

 

「ジェラ……!!」

 

 

その瞬間、表情を一変させて、今にもジェラールに襲い掛かりそうな形相になったミリアーナを……カグラが腕を掴んで止めた。

 

 

「もうよい、落ち着いた」

 

 

「でも…!! あそこに……!!!」

 

 

「わかっている。もう大丈夫だ、すまない」

 

 

ミリアーナと仲間たちにそう言いながら、スッと何事もなかったかように立ち上がるカグラ。だがそんな彼女の表情は……どこまでも冷たいモノへと変貌していた。

 

 

「奴等がかくまっていたのか」

 

 

「ジェラールが妖精の尻尾(フェアリーテイル)に? どうして? エルちゃん……」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方…そんな事があった事など知る由もないジェラールは、ヤジマの助言で何とか自分はエドラスのジェラールであるとラハールたちに納得してもらった。

 

 

「理解していただいて感謝する」

 

 

「いえ……私の方こそ、事情を知らず失礼しました」

 

 

「ジェラールは私にとっても邪悪な存在。見つけたら必ず報告する。では」

 

 

そう言うとジェラールは再び覆面で顔を隠してミストガンに扮すると、その場から歩き出す。

 

 

《恩に着ます、ヤジマさん》

 

 

《1度だけじゃ。マー坊に迷惑がかかる前に出ていけ》

 

 

《はい……大会が終わる頃には必ず》

 

 

その際にヤジマと念話でそんなやり取りをしたあと……ジェラールはその場を後にしたのであった。

 

 

そしてそれを見送ったあと、ラハールはドランバルトとアルフにだけ聞こえるように耳打ちする。

 

 

「あれは本物だ」

 

 

「「!!」」

 

 

「アルフ、奴のニオイは覚えたな?」

 

 

「ああ。いつでも追跡できるよ」

 

 

「ここはヤジマさんの顔を立てておくが──逃がしはしない」

 

 

そう言って、ラハールはジェラールが去った先を鋭い目つきで睨み付けていたのであった。

 

 

そして一方……評議員の手から逃れて会場の外へとやって来たジェラールはすぐに謎の魔力の原因であろう人物を探すが、もうすでに人影どころか魔力すらも感じられない。

 

 

「(見失ったか……あれはゼレフのようでゼレフではない魔力……何者なんだ)」

 

 

そんな疑問と共に、ジェラールは人ごみに紛れて姿を消したのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その夜……クロッカスにある広場では、ラクサスとマカロフが2人で話している姿があった。話の内容は当然、イワンが言っていたルーメン・イストワールについてである。

 

 

「じじい、ルーメン・イストワールって何だ?」

 

 

「イワンから聞いたのか?」

 

 

「欲しがってるようだったな」

 

 

「まったく…あのガキは……」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の闇とか言ってやがったぞ」

 

 

ラクサスのその言葉に答えずに沈黙するマカロフ。

 

 

「闇ではありません」

 

 

「初代!!」

 

 

「!」

 

 

するとそこへ、真剣な面持ちのメイビスが2人の前に現れた。

 

 

光の神話(ルーメン・イストワール)──これは我がギルドの〝光〟なのです」

 

 

「初代、いけませんぞ!」

 

 

「わかっています。これはギルドのマスターになった者しか知る権限がないもの。ラクサス、わかっていただけますか?」

 

 

「変なモンじゃねーなら、別に詮索しねーよ」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

そう言って納得してくれたラクサスに、メイビスはお礼の言葉を述べる。

 

 

「しかしイワンの奴はどこでその情報を掴んだのか……」

 

 

二代目(プレヒト)でしょうね」

 

 

「うむぅ、ありえん話ではないな」

 

 

「まさか二代目(プレヒト)が闇に落ちるとは…私の浅はかな人選の結果が、情報の漏洩を生んだ」

 

 

「いいえ、初代のせいではありませんぞ」

 

 

「私のせいです。私が………ふぐぅ、えぐっ」

 

 

「「!!」」

 

 

目尻に涙を浮かべて泣き出したメイビスに、マカロフとラクサスは戦慄する。

 

 

「泣いてなんかないです、全然…泣いて…なんか……ふええ」

 

 

「初代がーっ!!! ラクサス!! あやせっ!!! ホレッ!!」

 

 

「ハードル高すぎんぞそれっ!!!!」

 

 

強がりながらも思いっきり泣きじゃくっているメイビスを相手に、マカロフとラクサスは慌てふためくしかなかったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「「「カンパーーイ!!!」」」

 

 

その頃……クロッカスにある酒場『BAR SUN』では、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーたちが飲み食いしながらドンチャン騒ぎをしていた。

 

 

「今日は気持ちよかったなー!」

「あい!!」

「ギルドじゃないんだから、モノを壊すんじゃないわよバカナツ」

「グレイ様、今日も素敵でした!!」

「オレ…何もしてねーけど」

「やっぱはやてはギガ強だぜー!!」

「ヴィータも今日はがんばったやろ」

「見たかい私の実力ー!!」

「あんなのチートじゃねえかっ!!」

「「「わははははははははっ!!!」」」

 

 

楽しく大騒ぎしながら笑い合い、酒場はギルドメンバーたちの歓喜の声に包まれていた。

 

 

「それにしても、すごい回復力ねエルザ」

 

 

「ウェンディとシャマル、それにポーリュシカさんがいるからな」

 

 

「その3人のパワーでも回復しないエルフマンって……」

 

 

「情けないわね~」

 

 

今回の競技パートで大ケガを負ったハズのエルザのキズは、3人の治癒魔導士によってほとんど治っているのにも関わらず、未だにキズが癒えずに会場の医務室で寝たきりのエルフマンに、ミラジェーンは苦笑し、リサーナは呆れて頭を抱えていた。

 

 

「せっかくエルザさんが快勝したのに…私勝てなかったなあ」

 

 

「何言ってんの、よくやったわよ」

 

 

「皆、驚いていたぞ」

 

 

「うん!! すごかったよウェンディちゃん!!」

 

 

「そうです、もっと自信を持つべきですよ」

 

 

「それに今日の試合があったから、シェリアとも友達になれたんじゃないか」

 

 

今日の試合で勝てなかった事に落ち込むウェンディだが、そんな彼女をシャルルとリリー、キャロとリニスとエリオがそう言って励ましている。因みにその傍らにはガジルが爆睡しており、そんな彼の隣には当然のようにルーテシアが座っていた。

 

 

「酒樽サーフィンだーーーっ!!」

 

 

「あいさー!」

 

 

「うわっ! 危ねっ!」

 

 

「やめろナツ―!」

 

 

するとそこへ、ナツがメニュー板の上に乗って酒樽の上をサーフィンのようにゴロゴロと転がりながら突っ込んでくる。

 

 

「ぶほー!!」

「うぎゃ!!」

「うわっ!!」

「きゃー!!」

 

 

そしてそのままナツはガジルとエリオとウェンディを巻き込みながら思いっきり転倒した。

 

 

「何すんだテメェ!!!」

 

 

「危ないじゃないですかっ!!!」

 

 

「お前らもやるか?」

 

 

そんなナツに怒鳴るガジルとエリオだが、本人は特に悪びれた様子はなかった。

 

 

「おし!! オレがやる!!!」

 

 

「グレイ様がんばってー♡」

 

 

「パパかっこいいー!!」

 

 

「ヴィヴィオはマネしちゃダメだよ?」

 

 

続いてグレイが酒樽サーフィンに挑戦するが……

 

 

「ぐはっ!!」

 

 

「どーなってんだお前の服!!」

 

 

あえなく転倒し、おまけに何故かパンツ一丁になっていた。

 

 

「ならば次は私がやろう!! とう!!」

 

 

「あっ、ズルイでエルザさん!! 次は私がやろーと思ってたのに!!」

 

 

「危険ですからお止めください主!!」

 

 

「つーか危ねーっての!!」

 

 

「だれかやめさせろ!!!」

 

 

「「「あははははははは!!!」」」

 

 

さらにはエルザまでもが酒樽サーフィンに挑戦し、酒場はさらなる喧騒と笑い声に包まれた。

 

 

「まったく、みんなハシャぎすぎよ」

 

 

「ティアも混ざってくれば?」

 

 

「無理よ、スカートだし」

 

 

「エルザはスカートでも全力で転んでるけどね」

 

 

呆れたようにそう言うティアナとリサーナだが、その顔には楽しそうな笑顔が浮かんでいたのであった。

 

 

 

 

 

7月3日

 

 

みんなで騒いで歌って、食べて踊って、歓喜に溢れた5日目の夜。

 

 

そしてそれぞれの想いが交差する夜。

 

 

彼らはあの日(・・・)へと向かって行く。

 

 

 

 

 

運命の日まであと4日。

 

 

 

 

 

つづく

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