LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

203 / 240
2話目です。

感想お待ちしております。


ヴィヴィオvsアインハルト

 

 

 

 

 

 

「そろそろ……終わりにしましょうか」

 

 

威風堂々とした佇まいで静かにそう言い放つのは剣咬の虎(セイバートゥース)最強の格闘魔導士と呼ばれ〝覇王〟の異名を持つ少女……アインハルト・ストラトス。

 

 

「くっ…ハァ…ハァ……!!!」

 

 

そんなアインハルトの前では、片膝をついて辛そうに息を乱し、歯を食いしばりながら彼女を見据えているヴィヴィオの姿があった。

 

 

『あーーーっと!!! グレイがルーファスに勝利したのも束の間……妖精の尻尾(フェアリーテイル)のヴィヴィオが、剣咬の虎(セイバートゥース)のアインハルトに追い詰められているーーー!!!』

 

 

チャパティの実況を聞いて、先ほどまでグレイとルーファスの激闘に注目してた観客たちも、今度はヴィヴィオとアインハルトの戦いに注目し始める。

 

 

「(強い……!! この人は……本当に強いっ!! だけど──)」

 

 

内心でそう呟きながらアインハルトの顔を見据えているヴィヴィオ。しかし彼女の瞳には、強い覚悟と信念が映し出されていた。

 

 

 

 

 

「(私は絶対に──負けない!!!)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第203話

『ヴィヴィオvsアインハルト』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっ…うぅ……!!」

 

 

足にグッと力を入れてゆっくりと立ち上がり、拳を構えるヴィヴィオ。

 

 

「ハァァアア!!!」

 

 

そしてヴィヴィオは勢いよく一直線に駆け出し、アインハルトへと向かって拳を放つ。

 

 

「…………」

 

 

その攻撃に対してアインハルトは腕でガードしつつ、それを受け流す。

 

 

「まだまだっ!!!」

 

 

ヴィヴィオはさらに続けてパンチやキックなどの打撃を連続で放つが、アインハルトは涼しげな表情でそれをガードし、受け流していく。

 

 

「(真っ直ぐな技…真っ直ぐな心…センスもある。だけど──)」

 

 

するとアインハルトは、ヴィヴィオが放った拳をガードではなく、体を少し横にズラして避ける。そして……

 

 

「(私の敵では──ないっ!!!)」

 

 

無防備となっていたヴィヴィオの胸部に、強烈な掌底を叩き込んだのであった。

 

 

「がっ……!!!」

 

 

それを喰らったヴィヴィオは大きく吹き飛ばされ、民家の壁に強く叩き付けられる。

 

 

「~~~~!!!」

 

 

体に走る激痛に顔を歪めながら壁を支えにして立ち上がるヴィヴィオ。

 

 

「もういいでしょう」

 

 

「!!」

 

 

そんなヴィヴィオに対し、アインハルトが淡々とした声色で言い放つ。

 

 

「これまでの打ち合いでよくわかりました。貴女はオリヴィエのクローンではありますが、本物のオリヴィエには遠く及ばない。貴女では……私には勝てません。降参してください」

 

 

そう言ってどこか失望したかのような瞳でヴィヴィオを見据えながら、彼女に降参を薦めるアインハルト。それに対してヴィヴィオは……

 

 

 

「イ・ヤ・ですっ!!!」

 

 

 

べーっと小さく舌を出しながらそう言って、彼女の薦めを拒否したのであった。

 

 

「確かに私はアインハルトさんから見れば弱いかもしれない。だけど私は今…妖精の尻尾(フェアリーテイル)の名前を背負ってこの場に立っているです!!! 降参なんてしない……体が動かなくなるその時まで戦い続けるんだ!!!!」

 

 

再び拳を構えながら強くそう言い放つヴィヴィオ。そんな彼女の覚悟が宿った言葉を聞いて、アインハルトは一瞬目を丸くするが、すぐに鋭い目つきで彼女を見据える。

 

 

「いいでしょう……ではせめて苦しませず、すぐに終わらせて差し上げます」

 

 

そう言うと同時に一気に駆け出し、容赦なくヴィヴィオへと拳を振るうアインハルト。

 

 

「終わらないよ!! だって──まだ見せてませんから!!!」

 

 

しかしヴィヴィオは腕をクロスさせて、その威力に顔をしかめながらもアインハルトの拳をガードして受け切った。

 

 

だがアインハルトはそれを見越していたかのように、すぐに反対の拳で追撃を仕掛ける。だがヴィヴィオはその攻撃も、腕で受け流すようにガードする。

 

 

「(この子……さっきより動きが……!!?)」

 

 

休まずに次々と連続でヴィヴィオに攻撃を仕掛けるアインハルトだが、ヴィヴィオはそれをガードや回避で捌いていく。そんなヴィヴィオの先ほどまでとは違う動きに、戸惑いの表情を浮かべるアインハルト。

 

 

「私の……高町ヴィヴィオの──全力を!!!」

 

 

そしてヴィヴィオの放った強烈な一撃が……アインハルトの胸部を捉えた。

 

 

「かっ…!!!」

 

 

その一撃を喰らって、後方へと吹き飛ばされるアインハルト。地面に両足をつけてガリガリと音を立てながらブレーキをかけて勢いを押し殺す。

 

 

「私は聖王でもオリヴィエでもないっ!!!」

 

 

「!!」

 

 

だがヴィヴィオはそこを狙って一気に駆け出し、すかさずアインハルトへと距離を詰める。

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の高町ヴィヴィオとして──貴女に勝つんだっ!!!!」

 

 

力強くそう言い放ちながら、渾身の力で拳を放つヴィヴィオ。しかしその攻撃は、アインハルトがクロスに構えた腕によってガードされてしまった。

 

 

「(この子は……どうして……)」

 

 

すかさずヴィヴィオに打撃を叩き込み、反撃に出るアインハルト。

 

 

「~~~ッ!!!」

 

 

だがヴィヴィオも負けじと、アインハルトの突き出された拳を回避すると同時に、自身の拳をクロスカウンターで彼女に叩き込んだのであった。

 

 

「ハァァアア!!!」

 

 

そこから両者の格闘技による激しい攻防戦が始まった。互いに攻撃を繰り出しながらも、相手の攻撃をガードする打撃の応酬である。

 

 

『両者共に凄まじい攻防戦!!! 息つく暇もない拳の応酬!!! なんて激しい格闘戦だーーーっ!!!』

 

 

そのあまりの激しさに、観客たちも息を呑んでその戦いを見守っている。

 

 

「どうして……」

 

 

「?」

 

 

「どうして…こんなに一生懸命になるのですか? ギルドの為…? それとも仲間の為に…?」

 

 

その攻防戦の中で、アインハルトは何故ヴィヴィオがここまで必死になって喰らいついてくるのか理解できず、その疑問を彼女自身に問い掛ける。

 

 

対するヴィヴィオは……攻防戦を続けながら、自身の脳裏にグレイやなのは…そして妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーたちとギルドで過ごした日々が浮かび上がらせながら、その問いに答えた。

 

 

「大好きで…大切で…守りたい人たちがいる…守りたい居場所がある!! 小さな私に強さと勇気を教えてくれた…世界中の誰より幸せにしてくれた…強くなるって約束した…だから──」

 

 

 

 

 

 

──強くなるんだ!! どこまでだって!!!!

 

 

 

 

 

「あああぁっ!!!!」

 

 

そんな決意と覚悟を秘めたヴィヴィオの拳は……アインハルトに直撃し、それを受けたアインハルトは吹き飛ばされて民家の壁に激突したのであった。

 

 

『ヴィヴィオの渾身の一撃がアインハルトを直撃ーーーー!!!!』

 

 

「やったぁ!!」

 

 

「決まったぜ!!」

 

 

その戦いの様子を魔水晶映像(ラクリマヴィジョン)で見ていた妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーたちは歓声を上げる。

 

 

しかし……

 

 

「よく…わかりました」

 

 

「!!?」

 

 

立ち込める土煙の中から現れたのは……体にダメージを負ってもなお、威風堂々とした佇まいで立ち上がっているアインハルトの姿であった。

 

 

「貴女のギルドに対する想いも…仲間への想いも…よくわかりました」

 

 

アインハルトはポツポツとそう言葉を紡ぎながら、ゆっくりとした足取りで歩き、再びヴィヴィオの前へと立つ。

 

 

「ですが……私の拳は、貴女のその想いごと打ち砕きます」

 

 

そう言って拳を構えるアインハルトからは凄まじい威圧感が放たれていた。。そんな彼女の威圧感の前に、ヴィヴィオは思わず息を呑んだ。

 

 

「(すごい威圧感……アインハルトさんはまだまだ本気を出していない。でも…怯んでなんかいられない!!! 一気に畳みかける!!!)」

 

 

アインハルトから放たれる威圧感をグッとこらえ、片手に魔力を集めながらアインハルトに向かって走り出すヴィヴィオ。

 

 

それを見てアインハルトも構えるが、ヴィヴィオはいくつかのフェイントの動きをいれた後、彼女の頭上へと飛び上がる。

 

 

「ディバインバスター!!」

 

 

「(砲撃魔法!?)」

 

 

彼女の拳から放たれた砲撃に、アインハルトは後ろに飛んで回避する。

 

 

「はぁぁああっ!!」

 

 

しかしその隙をついて、ヴィヴィオはアインハルトに向かって鋭い蹴りを放った。空中にいるため回避の出来ないアインハルトは腕でそれをガードする。

 

 

「っ…はぁ!!」

 

 

「!?」

 

 

ガードした事により腕に走る衝撃に、アインハルトは歯を食い縛りながら耐える。そしてすぐさま、ヴィヴィオの軸足を蹴って彼女のバランスを崩した。

 

 

「てやぁぁあっ!!!」

 

 

「うあぁっ!!」

 

 

そしてそのままヴィヴィオの胸部に思いっきり拳を叩き込み、それを喰らったヴィヴィオは吹き飛ばされて宙を舞った後、ギリギリで体勢を立て直して何とか地面に着地した。

 

 

「……なるほど、どうやら貴女は技や心だけでなく、魔法も真っ直ぐなのですね。ですが覇王流に──生半可な魔法は通用しません」

 

 

そう言ってヴィヴィオを見据えながら、ゆっくりと構えるアインハルト。

 

 

「(この距離で構えた!? ノーヴェとの試合で見せた拳圧での中距離攻撃!? でも、魔法の撃ち合いなら!!)」

 

 

それを見たヴィヴィオも、魔力を放出しながら構える。

 

 

「ソニックシューター!」

 

 

「覇王流・旋の構え」

 

 

自身の周りにいくつかの魔力弾を生成するヴィヴィオ。それに対して静かに構えるアインハルト。

 

 

「ファイアッ!!」

 

 

そして一斉に放たれるヴィヴィオの魔法弾。それに対し…アインハルトはゆっくりと動き始める。

 

 

「(よし!! アインハルトさんが受けに入る!! 足を止めてくれれば、着弾の隙に回り込める!!!)」

 

 

そう考えたヴィヴィオは、発射した魔法弾とほぼ同時に走り始める。

 

 

しかし……そんなヴィヴィオの予想に反して、アインハルトはその全ての魔力弾を素手で受け止めたのだった。

 

 

「う…受け止めた!!?」

 

 

驚愕するヴィヴィオをよそに、アインハルトは受け止めた魔法弾をスッと振りかぶり……

 

 

「覇王流……」

 

 

「(これってまさか!?)」

 

 

「旋衝波!!!」

 

 

「きゃあっ!!!」

 

 

そのまま全ての魔法弾をヴィヴィオへと投げ返した。

 

 

「投げ返し──!?」

 

 

まさかの反撃に戸惑うヴィヴィオ。その隙にアインハルトが一気に距離を詰め…そのままヴィヴィオに渾身の拳を叩き込んだのだった。

 

 

「きゃああああっ!!!」

 

 

それによりヴィヴィオは吹き飛ばされ、地面に思いっきり叩きつけられる。

 

 

「何だ!? 今アイツなにしたんだ!?」

 

 

「ヴィヴィオちゃんの魔法弾を、受け止めて投げ返したように見えましたけど……」

 

 

「そんな事できんのかよ!?」

 

 

先ほどのアインハルトの動きを見て、ヴィータとジュビアとエルフマンがそんな声を上げる。するとそんな彼らの疑問にマカロフが答える。

 

 

「格闘魔導士なら理論上は可能じゃ。じゃがあの年齢にてここまでの技術……」

 

 

「相当苛烈な鍛錬を積んできたのでしょうね」

 

 

アインハルトの並々ならぬ技術に、マカロフもメイビスも思わず唸る。

 

 

すると……

 

 

「っ……!!!」

 

 

突然右肩の部分を押さえて顔をしかめるアインハルト。

 

 

『おや? 一体どうしたのでしょうかヤジマさん?』

 

 

『見えてなかったのかね? あの子の反撃』

 

 

実は先ほど、アインハルトが拳を叩き込むその瞬間にヴィヴィオも同時にカウンターの拳を放っていたのだ。もし当たり所がズレていたら、結果は逆だったかもしれない。

 

 

「(あのタイミングで、あのカウンター……!!)」

 

 

思わぬ反撃を受けたアインハルトは、ヴィヴィオに対して初めて脅威を感じていた。

 

 

そしてふとヴィヴィオへと視線を向けると、立ち上がったヴィヴィオがアインハルトに向かって拳を構えていた。

 

 

「まだまだ…これからですよ!!」

 

 

「……いいでしょう」

 

 

そう言ってお互いに拳を構えるヴィヴィオとアインハルト。そしてしばらく睨みあったあと、最初に動き出したのはアインハルトだった。

 

 

アインハルトの一撃を、腕をクロスさせて防ぐヴィヴィオ。それを皮切りに…再び激しい攻防戦が始まる。

 

 

「(相手の攻撃を覚えて対策する持ち前の学習能力…速くて精密な動作…そして何より相手の攻撃を恐れずに前に出て撃ち込める勇気……これが彼女の戦闘スタイル──カウンターヒッター!!!)」

 

 

アインハルトがヴィヴィオの戦闘スタイルを見極めたその瞬間、ヴィヴィオのカウンター攻撃が彼女を直撃し、その一撃によりアインハルトは体勢を崩した。

 

 

「(ここっ!)」

 

 

当然ヴィヴィオはそれを見逃さず、即座に拳に魔力を込め……

 

 

 

「アクセルスマーーッシュ!!」

 

 

 

渾身の一撃を秘めた拳が……彼女の顎を撃ち抜いた。

 

 

「(当たっ──)」

 

 

それを見てヴィヴィオが気を抜いたその瞬間、アインハルトが放った蹴りがヴィヴィオに直撃した。

 

 

「ぐっ…!!」

 

 

「あぁっ…!!」

 

 

その相打ちにより、ほぼ同時に後方へと下がってお互いに距離を取るヴィヴィオとアインハルト。

 

 

「ハァ…ハァ…ハァ……!!」

 

 

「…………ッ!!」

 

 

肩で息をするヴィヴィオに対して、アインハルトの呼吸は落ち着いてはいる。だがその表情は険しく、相当なダメージを負っているようである。

 

 

「まだ…戦えますよね?」

 

 

「当然です」

 

 

ヴィヴィオの問いに倒してアインハルトがそう答えると、2人は拳を構えて睨みあう。

 

 

「ジェットステップ」

 

 

次の瞬間……数メートル離れていたハズのヴィヴィオは、すでにアインハルトの眼前へと迫り、蹴りを放とうとしていた。

 

 

「!!?」

 

 

アインハルトは咄嗟の動きで両腕を構えてヴィヴィオの蹴りをガードする。だがガードしたその腕はミシミシと音を立てていた。

 

 

「ハァ!!!」

 

 

突然襲ってきたヴィヴィオの攻撃に驚愕しながらも、続けてヴィヴィオが放った拳を何とかガードするアインハルト。

 

 

「せやぁぁあ!!!」

 

 

すぐに反撃にでて拳を振るうアインハルトだが、その攻撃はヴィヴィオには当たらず避けられてしまう。それでもアインハルトは構わず攻撃を続ける。

 

 

「(回避主体のカウンターヒッターである彼女の防御は繊細で脆い。ここは攻撃を喰らいながらでも、技術を生かせる距離を殺せば──)」

 

 

アインハルトはヴィヴィオの攻撃をガードしながらも前へと踏み出し、彼女との距離を詰めていく。

 

 

「あんな強引に……」

 

 

「だけど正解だ」

 

 

応援席でその戦いを見守っていたリサーナがその光景を見てそう呟くと、同じくヴィヴィオの戦いを見守っていたノーヴェが口を開く。

 

 

「ヴィヴィオの打撃力じゃあ、アインハルトを倒すにはクリーンヒットしかない。突き放そうと強打を撃てばスキが出来る……おそらくアインハルトなら、そのスキを見逃さねえ」

 

 

そしてノーヴェの言う通り……近づいて来たアインハルトを突き放そうとヴィヴィオが大振りに拳を振るった瞬間…アインハルトはその拳を回避し、スキができた彼女の脇腹に痛烈な一撃を叩き込んだ。

 

 

──ハズだった。

 

 

「(硬いっ…!!?)」

 

 

拳から伝わって来たのは壁を殴ったかのような硬い感触……そしてよく見ると、アインハルトの拳が撃ち込まれたヴィヴィオの脇腹には、魔力の盾が展開されていた。

 

 

「セイクリッドディフェンダー」

 

 

「(魔力障壁!!? 私が撃ち込もうとした箇所をピンポイントで!!?)」

 

 

予想外の方法で攻撃を防がれ、大きく目を見開くアインハルト。

 

 

「ここっ!!!」

 

 

「しまっ──」

 

 

すかさず反撃に出たヴィヴィオに対して防御の構えを取ろうとするアインハルトだが……

 

 

 

 

 

「アクセルスマッシュ・(ダブル)!!!!」

 

 

 

 

 

瞬間的に2発もの拳を渾身の力で叩き込み……それを喰らったアインハルトは地面に倒されたのであった。

 

 

「ぐっ…くぅ……!!」

 

 

「アインハルトさん……貴女は強いです」

 

 

仰向けに地面に倒れて呻くアインハルト。するとそんな彼女に向かって、ヴィヴィオが口を開く。

 

 

「パワーも技術も、私をずっと上回ってる……たぶん10回勝負したら、そのうち9回は私が負けると思います。だけど今は──その1回の勝利をもぎ取ってみせます!!」

 

 

「ッ……!!!」

 

 

並々ならぬ迫力でそう言い放つヴィヴィオを目の当たりにして、アインハルトは思わず息を呑む。だがそれも一瞬で、すぐに落ち着きを取り戻し、体を起こして立ち上がる。

 

 

「やぁああっ!!」

 

 

それを確認したヴィヴィオはすぐさま駆け出してアインハルトに追い打ちを仕掛ける。そしてガードされるも1発2発と拳を放つと、クルリと体を旋回させる。

 

 

「(上段廻打……蹴り!!)」

 

 

その動きから次のヴィヴィオの攻撃は頭を狙った後ろ回し蹴りだと判断したアインハルトは、両腕で頭をガードする体勢を取る。

 

 

「──そこぉっ!!!」

 

 

「!? がっ…!!!」

 

 

だがその瞬間……ヴィヴィオは振り上げていた足を引き戻し、即座に無防備となっていたアインハルトの脇腹に蹴りを叩き込んだのであった。

 

 

「(可変蹴り……!!?)」

 

 

完全に意表をつかれたアインハルトはまともにその蹴りを喰らったダメージで体制を崩された。

 

 

「はあああっ!!!」

 

 

そこを畳みかけるように拳の連打を叩き込むヴィヴィオ。アインハルトは何とかそれを両腕でガードしていく。

 

 

「っ……ハァッ!!」

 

 

「!?」

 

 

するとアインハルトはヴィヴィオが突き出した拳の側面を左腕で叩いて弾き、すぐさま反対の右手で拳を作り、ヴィヴィオの顔面に叩き込んだ。

 

 

「ああああああっ!!!!」

 

 

そしてそのまま勢いよく拳を振り切り…ヴィヴィオを後頭部から地面に叩き付けたのであった。

 

 

「かはっ……!!!」

 

 

後頭部から地面に叩き付けられ、そのまま力なく地面に倒れるヴィヴィオ。

 

 

『決まったーーーっ!! アインハルトの痛烈な一撃の前に、ヴィヴィオダウーーン!!!』

 

 

「ヴィヴィオ!!!」

 

 

「そんな…!!」

 

 

「くそっ……!!!」

 

 

魔水晶映像(ラクリマヴィジョン)に映し出されている仰向けに倒れたまま動かないヴィヴィオに、応援席にいるなのはが声を上げ…ジュビアとエルフマンが悔しそうに俯く。

 

 

『これで剣咬の虎(セイバートゥース)に1P入り、再び同点に──』

 

 

「待って!!!!」

 

 

『!?』

 

 

「!!」

 

 

チャパティがアインハルトを勝者として、剣咬の虎(セイバートゥース)にポイントが入れられようとした瞬間……ヴィヴィオが張り上げた大声によってそれは阻止される。

 

 

 

「まだ──やれます!!!」

 

 

 

膝をガクガクと震わせ…飛びそうになる意識をムリヤリ繋ぎ止めながらも、ヴィヴィオはしっかりと立ち上がって戦闘続行可能だという事を証明した。

 

 

『た…立ち上がったーーーっ!! 何という執念だーーーっ!!!』

 

 

すでにヴィヴィオの姿はボロボロであり、彼女の表情にも苦痛の色が見て取れている。だがそれでも……ヴィヴィオは戦う為に立ち上がった。

 

 

「どうして……どうしてそこまでして……立ち上がれるのですか!!?」

 

 

そんなになってまで戦おうとするヴィヴィオに、アインハルトは戸惑いの表情を浮かべながら彼女に問い掛ける。

 

 

「……私は大昔に聖王オリヴィエのクローンとして生み出され、7年前までずっと封印されていました」

 

 

するとその問いに対して、ヴィヴィオはポツポツと自身の事を語り始めた。

 

 

「オリヴィエの記憶は受け継いでいないけど、体質は受け継いでた。聖王のゆりかごを起動させる『鍵』として私は、ある闇ギルドに狙われた。私は訳もわからないまま連れ去られて…大好きだった人も大ケガを負わされて…でも小さかった私には何も出来なくて…どうしたらいいかわからなくて……」

 

 

そう語るヴィヴィオの表情は、当時の事を思い出しているのか悲痛なものへと変わっていく。

 

 

「だけど……助けてくれた人たちがいたんです。こんな私を傷だらけになっても助けようとしてくれて…私の涙も痛みも運命も受け止めてくれた人たちが」

 

 

ヴィヴィオの脳裏に思い浮かぶのは、ナツやティアナ…ルーシィにハッピー…ウェンディにシャルル…ガジルやエリオ……そしてグレイとなのは……大好きな妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーたちの顔。

 

 

「私がその人たちから教わったのは……家族の温かさと仲間との絆……そして、どんな時でも──私は1人じゃないって事!!! たとえどんなに離れていても伝わってくる…みんなの想いや気持ちが……!!」

 

 

そう言いながらヴィヴィオは右手を胸の前へと持ってきて、ギュッと強く握り締める。

 

 

 

「仲間の声が私に戦う勇気をくれるんだ!!! だから私は──何度だって立ち上がってみせる!!!!」

 

 

 

「!! 仲間……」

 

 

力強くそう言い放つヴィヴィオの言葉に、アインハルトは衝撃を受けたように大きく目を見開く。

 

 

「はあああああっ!!!」

 

 

「!! ぐっ……!!」

 

 

するとヴィヴィオは拳を構えてアインハルトへと突進を仕掛け、それを見たアインハルトはすぐさま腕を構えて防御態勢を取るが、防御が間に合わずにヴィヴィオの拳を喰らってしまう。

 

 

さらにヴィヴィオの攻撃はそれだけでは終わらず、1発2発と間髪入れずに素早く連続でアインハルトに拳を叩き込んでいく。

 

 

そして……

 

 

 

 

 

「聖拳・七連舞!!!!」

 

 

 

 

 

合計7発もの拳を渾身の力で叩き込んだのであった。

 

 

「かっ…あぁ……っ!!!!」

 

 

それを喰らったアインハルトは殴り飛ばされて大きく宙を舞う。

 

 

「(仲間……それが彼女の強さの源……今の私と彼女の差……)」

 

 

そして宙を舞いながら……アインハルトは思う。

 

 

「(私が剣咬の虎(セイバートゥース)に入ったのは、最強と名高いギルドに身を置く事で自分自身を鍛える為……ギルドの人たちに仲間意識を持った事はないし、剣咬の虎(セイバートゥース)自体がそういうギルドだったから、それに疑問を持つ事もなかった。

 

スティングさんとローグさんは歳が近い事もあって割とよく話すことはありましたが、それでも1度も心を開いた事はなかった……私にとって覇王の悲願が全てだったから。

 

もし…私にも仲間がいれば……彼女のように強くなれたのでしょうか……1人でも…仲間が……!!)」

 

 

そんな事を思いながらアインハルトの意識は暗闇へと飲み込まれていき、宙を舞っていた体がそのまま重力に従って地面へと落ちていく。

 

 

「(私は──!!!)」

 

 

だがその時……地面に体が衝突する瞬間に咄嗟に受け身をとって地面に着地するアインハルト。

 

 

「ハァ…ハァ…ハァ…!!」

 

 

そして激しく息を切らしながらも、ゆっくりと立ち上がり……

 

 

「まだ──やれます」

 

 

拳を構え、目の前のヴィヴィオを見据えながらそう言い放った。そんなアインハルトの表情はどことなくスッキリとしており、虹彩異色の瞳には一点の曇りもなくなっていた。

 

 

「(雰囲気が……変わった?)」

 

 

アインハルトのそんな変化に気がついたヴィヴィオは、疑問符を浮かべながらも拳を構える。

 

 

「先ほどの連撃……とてもいい攻撃でした。おかげで今の私に何が足りないのか……少しわかったような気がします」

 

 

するとアインハルトは、拳を構えながらヴィヴィオに対してそんな事を言い放つ。

 

 

 

「感謝の想いは拳に載せます。受けていただけますか──ヴィヴィオさん」

 

 

 

「!!?」

 

 

その言葉を聞いたヴィヴィオは大きく目を見張る。何故ならアインハルトが、聖王でもオリヴィエでもなく……初めてヴィヴィオ本人の名前を口にしたのだから。

 

 

「──もちろん!!! 全力で!!!」

 

 

ヴィヴィオはアインハルトの申し出を快く承諾し、嬉しそうな笑みを浮かべながら拳を構え直す。

 

 

「では……行きます!!」

 

 

「はいっ!!!」

 

 

そう言うとヴィヴィオもアインハルトも、残った魔力を自身の右手に集中させ始める。

 

 

「「……………」」

 

 

お互いの姿を見据えながら、牽制し合うように腕を構えたまま硬直するヴィヴィオとアインハルト。

 

 

そして次に動き出したのは──ほぼ2人同時であった。

 

 

互いに目の前の相手に向かって一直線に駆け出し、魔力の篭った右拳を振り上げる。

 

 

 

「一閃必中ッ!!!」

 

 

「剛拳粉砕ッ!!!」

 

 

そして……

 

 

 

 

 

「セイクリッドスマッシュ!!!!」

 

 

「覇王断空拳!!!!」

 

 

 

 

 

両者の魔力を帯びた渾身の一撃が……激突した。

 

 

「ハァァァァアアアアアアアッ!!!!」

 

 

「アァァァァアアアアアアアッ!!!!」

 

 

ヴィヴィオとアインハルトを中心に凄まじい衝撃が巻き起こり、その衝撃はクロッカス全域に広がるほどであった。

 

 

両者の拳は激しくせめぎ合い、拮抗していたかのように思われた。だがその終わりは突然にやって来た。

 

 

「いっ…けぇぇーーー!!!!」

 

 

「!!?」

 

 

そんな雄叫びと共に、ヴィヴィオの拳が少しずつアインハルトの拳を押し返し始めている。

 

 

 

「全力──全開ィィ!!!!」

 

 

 

そしてついに……ヴィヴィオの拳がアインハルトの拳を押し返し、彼女の腕を弾いたのであった。

 

 

「っ…あぁぁぁぁああああああっ!!!!」

 

 

そのままヴィヴィオの一撃はアインハルトの顎の部分を撃ち抜いたのであった。

 

 

「(これが……持つ者と持たざる者の…覚悟の差…──完敗…です)」

 

 

それを喰らったアインハルトは、どこか満足そうに小さな笑みを浮かべながら膝から静かに崩れ落ち……そのままゆっくりと地面に倒れて意識を手放したのであった。

 

 

 

 

 

『決着ーーーーッ!!!! 覇王アインハルトを打ち破り勝利をもぎ取ったのは!!! 妖精の尻尾(フェアリーテイル)のヴィヴィオだーーーーッ!!!!!』

 

 

 

 

 

こうして……2つの因縁の対決は、2人の妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士の勝利によって幕を閉じたのであった。

 

 

しかし……これはまだまだ前哨戦に過ぎなかった。

 

 

大魔闘演武の激しさは、ここからさらに加速していったのであった。

 

 

 

 

 

妖精の尻尾:78P→79P

 

 

 

 

 

つづく




ヴィヴィオの最後の技「セイクリッドスマッシュ」は、原作Vividでいう「エクシードスマッシュ」と同じです。

この小説では、(エクシード)をスマッシュするという意味合いになりそうでしたので改名させていただきました。

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