LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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本編の前にちょっとしたお知らせです。

自分はしばらくは大学の卒業論文制作のスパートの為にかかりっきりになりますので、更新速度はガタ落ちしてしまうと思います。

今回はそのお詫びも兼ねて3話連続投稿にいたしました。例のごとく1時間おきに投稿されます。

一応制作中の息抜きも兼ねてちょいちょい書いて、出来上がったら更新しようとは思っております。どうかご了承ください。

感想お待ちしております!!


餓狼騎士団

 

 

 

 

 

『あのルーファスとアインハルトが倒れたーーー!!! これで7人とも健在なのは妖精の尻尾(フェアリーテイル)だけとなりましたね!!』

 

 

『かなり有利になったね』

 

 

『うわーん!! 無敵のルーファスと覇王のアインハルトがー!!』

 

 

「よっしゃーーっ!!!」

「さすがだぜー!!」

「グレイ様ー!! ステキすぎます~!!」

「やったねヴィヴィオー!!!」

「このまま一気に行けーーー!!!」

 

 

大魔闘演武・最終戦。剣咬の虎(セイバートゥース)攻略のキーとなるルーファスをグレイが撃破し、さらにセイバー最強の7人の一角を担う覇王アインハルトをヴィヴィオが撃破した事で、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の応援席は大いに盛り上がる。

 

 

「やられたのかルーファス、アインハルト」

 

 

「フッ…やはり強いな、妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

 

「しかし…ガジル、お前を倒すまでは……」

 

 

ルーファスとアインハルトが敗れた事に、街に散らばっている剣咬の虎(セイバートゥース)のメンバーたちは少なからず驚嘆する。

 

 

「アイン……ルーファス……」

 

 

そしてセイバーの応援席で1人ポツンと佇むフロッシュは、2人が敗北した事にしゅんっと項垂れる。

 

 

「崩れていくのか、この剣咬の虎(セイバートゥース)が。それとも……スティング……」

 

 

小さく笑みを浮かべながらそんな言葉を口にするミネルバ。

 

 

そしてクロッカスの街の路地裏で俯きながら、1人俯いているスティング。

 

 

「レクター」

 

 

そんなスティングの脳裏には、レクターを失った6日目の夜の出来事が浮かんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第204話

『餓狼騎士団』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時はさかのぼり……大魔闘演武6日目の夜・クロッカスガーデン

 

 

「ぐはぁ!! あがが……!!!」

 

 

「よくも…よくもレクターを……」

 

 

大切な相棒であるレクターを手にかけたマスタージエンマに対して怒りの一撃を叩き込み、その腹部を貫いたスティング。

 

 

「スティング」

 

 

「スティングさん」

 

 

「うわああああ」

 

 

そんなスティングの姿に、ローグとアインハルトとフロッシュ…そして他のメンバーたちも戦慄する。

 

 

「それでよい」

 

 

「!」

 

 

そんな中…ミネルバだけが微笑を浮かべて、スティングの行動を褒め称えるようにそう言った。

 

 

「父上の恐怖統制は今ここで終わりを告げよう。父上の力をも超えるスティングこそ、新たなるマスター候補にふさわしい」

 

 

「ミネルバ貴様…何を言って…」

 

 

「黙るがよい。負け犬などいらぬのであろう、自論に従うなれば」

 

 

「むぐ……」

 

 

実の娘であるミネルバに冷たくそう言い放たれ、押し黙るジエンマ。

 

 

「スティング…そなたに無く、ナツという者にあるもの。それこそが〝想いの力〟だ」

 

 

「想いの力……」

 

 

「知らず知らずのうちに父上に感化されていたようだな。〝仲間などいらぬ〟〝力こそが全て〟。だがそなたの本質は違う。レクターを想う気持ちが力になる。そなたはその力を手に入れたのだ。そなたはナツをも超える」

 

 

ミネルバにそう説明されるスティングだが、今の彼に先ほどまでの気迫はなかった。

 

 

「お嬢…オレはもう……」

 

 

「案ずるな──レクターは生きておる」

 

 

だがそう告げたミネルバの言葉に、スティングの顔に生気が宿る。

 

 

「妾の魔法で別の場所へと飛ばした」

 

 

「ほ……本当かお嬢……」

 

 

「レクターが生きてる……」

 

 

「ありがとう!!! ありがとうお嬢!!! 早くレクターを元に戻して…本当に…ぅぐ……ありが…とう」

 

 

レクターが生きているという事を知り、スティングは泣き崩れながら感謝の言葉を述べ、今すぐにレクターを戻すように懇願する。しかし……

 

 

 

「甘えるな」

 

 

 

スティングの願いは、その一言で一蹴された。

 

 

「大魔闘演武にて優勝するまでは、レクターは渡さん」

 

 

「何言ってんだよお嬢……頼むよ……今すぐレクターを返して……」

 

 

「妾は父上とは違う。しかし剣咬の虎(セイバートゥース)のあるべき姿が天下一のギルドである事に変わりはない。そなたは手に入れた力を証明せねばならん。勝つ事で民に力を誇示せねばならん。愚かな考えは起こすでないぞ。レクターの命は妾が握っていると知れ」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「オレは必ず──優勝する」

 

 

その日の出来事を思い返したスティングは……決意を固めた表情で言い放ったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その頃……ヒスイの罠に嵌り、奈落宮へと落とされてしまったナツたち救出組の一行。

 

 

「ナツ、天井も全部塞がってるよ」

 

 

「出口はなさそうね」

 

 

「くそっ! せっかくここまで来たのに!!」

 

 

「迂闊だったわね」

 

 

「ミイラ取りがミイラに…って事ね」

 

 

「情けないです……」

 

 

「こんな事なら、体に地図でも描いてくるんだったな」

 

 

「地図があったとしても、ここから抜け出すのは容易ではなさそうですけどね」

 

 

ハッピーとシャルルに頼んで落ちて来た穴を見てきてもらったが、どうやらすでに塞がれていたらしく、完全に退路を断たれてしまっていた。それを知ったナツとティアナは毒づき、ミラジェーンとウェンディが困ったように呟く。リリーとリニスも頭を悩ませていた。

 

 

「そういえばナツ、あんた大会は?」

 

 

「エリオと替わったんだ」

 

 

「コイツが目の前で仲間を連れ去られて黙ってる訳ないもの。実際暴れられて面倒だったし」

 

 

本来出場メンバーであるハズのナツがここにいる事に今更だが気がついたルーシィがそう問い掛け、ナツはエリオと交代したと伝え、ティアナが軽く呆れたようにそう続ける。

 

 

「ユーノなんか、絶対にルーシィを助けるんだーって張り切ってたよ」

 

 

「まあね」

 

 

「やだっ、もう照れるじゃない」

 

 

ハッピーがからかうようにそう言った言葉に、ユーノはあっさりと肯定し、それを聞いたルーシィは恥ずかしそうに両頬に手を当てた。

 

 

「お前の事も忘れてた訳じゃねえぞ」

 

 

「いえ…私は別に……」

 

 

ナツがユキノに対してそう告げると、ユキノは戸惑ったように言葉を詰まらせる。

 

 

「このコ……なんとなくリサーナに似てない?」

 

 

「え?」

 

 

「そういえば」

 

 

「確かに……特にその銀髪のショートヘアが」

 

 

ミラジェーンがユキノの肩を後ろから掴みながらそう問い掛けると、ルーシィとティアナが同意するように頷く。

 

 

「リサーナ様とは?」

 

 

「私の妹よ」

 

 

そう言って優しく笑うミラジェーンの笑顔に、ユキノはただただ戸惑うしかなかった。

 

 

「みんな!! こっちに通路があったわ!」

 

 

「お」

 

 

「さすがシャルル!」

 

 

「行こう!」

 

 

すると、シャルルが通路を発見したらしく、ナツたちはすぐにその場から移動を始めたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「狭いわね」

 

 

「我慢しなさい…」

 

 

「ここを抜ければ……」

 

 

シャルルが発見した通路はひどく狭く、人1人横向きで入ってがギリギリ通れる程であった。それでもそこしか通路がない為、ナツたちは苦戦しながらも狭い通路を進んで行く。

 

 

「! 誰かいますよ」

 

 

すると、一番に通路を抜けたウェンディが、ある人物を発見した。その人物とは……

 

 

「アルカディオス様!!」

 

 

「この前の……」

 

 

「(白い騎士!)」

 

 

ルーシィとユキノと共に王国兵に捕まったアルカディオスであり、彼はボロボロの姿で地面に倒れていたのであった。それを発見したナツたちは急いで彼に駆け寄る。

 

 

「オイ!! 大丈夫か! しっかりしろ!!」

 

 

「一応この人も王国側の人間でしょハズ……」

 

 

「何でこんなトコに」

 

 

「あたしたちと同じように落とされた?」

 

 

捕まったとはいえ、王国の騎士であるアルカディオスがボロボロで倒れている事に疑問符を浮かべるティアナとルーシィ。

 

 

「う……逃げ…ろ」

 

 

すると、薄く目を開いたアルカディオスが絶え絶えの小さな声で、ナツたちにそんな言葉を口にしたその時……

 

 

 

「ぱーーん」

 

 

 

「「「!!?」」」

 

 

そんな声と一緒に、いつの間にかナツたちの背後に大柄の男が立っていた。

 

 

「ジュワー」

 

 

「うお!」

 

 

「きゃ!」

 

 

その大男は突然ナツたちに向かって、何やら液体のようなものを放つと、それに気がついたナツたちは慌ててその液体を回避する。

 

 

「これは……」

 

 

「酸だ!!」

 

 

その液体はどうやら酸らしく、降りかかった岩が溶け出していた。

 

 

「タイタイターイ!! タイ?」

 

 

「ひい!?」

 

 

するとそこへ、また1人の男が現れる。

 

 

「大漁ォ~~!!!! ターーーイ!!!!」

 

 

「うあああああ!!」

 

 

「あああああ!!」

 

 

「きゃああああ!!」

 

 

そしてその男が『大漁』と書かれた旗を掲げた瞬間、ナツたちの体が浮かび上がり、そのまま地面に叩き付けられる。

 

 

「何だコイツら…」

 

 

突然現れた奴等にナツたちが戸惑っていると、今度は地面から草が生え…その草はみるみる成長して巨大な花となり…その花の中から1人の女性が現れた。

 

 

「また増えた!?」

 

 

続けてどこからか飛んできた何枚もの紙が大量に集まり…その紙が1つに集束して、やがて女性の姿へと変わる。

 

 

「また!!?」

 

 

さらには霧のような煙と共に男が1人現れ…さらにはもう1人男が音もなくその場に姿を現す。

 

 

「次から次へと…!!」

 

 

「何だこいつらは!!?」

 

 

ナツたちが次々と目の前に現れるその集団に戸惑っていると、アルカディオスが弱々しく口を開く。

 

 

「陰から王国を支える独立部隊……王国最強の処刑人〝餓狼騎士団〟。奈落宮から生還が不可能なのは、奴等がいるからだ」

 

 

 

 

 

「餓狼騎士団──一五〇〇(ヒトゴーマルマル)任務開始」

 

 

 

 

 

そう言ってナツたちの前に立ちはだかる餓狼騎士団と名乗る7人の集団。

 

 

「フィオーレ独立部隊餓狼騎士団特別権限により、これより罪人の死刑を執行する」

 

 

7人の中でリーダー格の背中に二振りの大鎌を背負った男……カマがそう言い放つ。

 

 

「ぶはっ! ぶはははははっ!!」

 

 

すると、そんな彼らに対して突然大笑いを始めるナツ。

 

 

「あははははははっ!!!」

 

 

「こんな時に何笑ってんのよバカナツ」

 

 

「だってどう見ても〝騎士団〟ってナリじゃねーだろ!!」

 

 

「「確かに」」

 

 

「特にお前」

 

 

「タイ」

 

 

騎士団を名乗ってはいるが、特に甲冑などを身に纏っている訳でも、剣や槍などの武器を持っている訳でもない彼らはどう見ても〝騎士〟には見えない。そんなナツの言い分に、思わずユーノとルーシィも同意する。

 

 

「見た目に惑わさるな……奴等の使う魔法は……人を殺す為の魔法だ」

 

 

そんなナツたちに対してアルカディオスがそう警告する。

 

 

「なるほどね。まぁ見た目はともかくとして、私が気になるのは……奴等の中に2人ほど知った顔がいるのよね」

 

 

そう言うとティアナは、目の前にいる7人の中で……黒髪を獣のように逆立たせて顎に無精髭を蓄えた男と、メガネをかけた優男風の男に視線を向けた。

 

 

「へへっ」

 

 

「お久しぶりですね」

 

 

その男たちの姿を見た瞬間、ハッピーとシャルルが驚いたように声を上げる。

 

 

「こいつ等は!?」

 

 

悪霊の札(デーモンカード)の……!!」

 

 

「誰だ?」

 

 

ナツは覚えていないようだが…ティアナの言う見覚えのある2人の男とは、かつてナツたちが戦った闇ギルド悪霊の札(デーモンカード)の四天王と言われていた2人……幻獣のガワラと不死身のオルバであった。

 

 

「何で元闇ギルドのこいつらが王国に!?」

 

 

「僕とガワラは悪霊の札(デーモンカード)が壊滅した際に逮捕されたのですが、魔法の腕を買われて餓狼騎士団にスカウトされたのですよ」

 

 

「今じゃ王国に忠誠を誓っている身だ。そして王国の為に、テメェらを処刑する」

 

 

彼らの疑問に答えるようにそう言い放つオルバとガワラ。更生…とまではいかないだろうが、今は王国の為に餓狼騎士団に所属しているようである。

 

 

「上等!!!!」

 

 

「出口が向こうから歩いてきたわね」

 

 

「そうね、出口を教えてもらうのに丁度いいわ」

 

 

「ルーシィさんとユキノさんは鍵ないんですよね!?」

 

 

「危ないから2人は少し離れてて」

 

 

「ハッピー、シャルル、下がってろ」

 

 

「ここは私たちが」

 

 

「オイラだって」

 

 

「やめときなさい」

 

 

そんな餓狼騎士団に対し、ナツたちは逃げようとする様子も見せずに、逆に意気揚々と戦う姿勢を見せる。

 

 

「こいつら……やり合うつもりなのか……」

 

 

「餓狼騎士団を前に臆さぬとは……無知なる罪人め。フィオーレ国王の土へと還れ」

 

 

戦う姿勢を見せるナツたちにアルカディオスは驚愕し、カマは忌々しげにそう言い放った。

 

 

「行くよコスモス」

 

 

「私とカミカの美しい舞……ね」

 

 

すると、カミカと呼ばれる女性が1枚の赤い紙を取り出し、それをフッと吹いて飛ばす。

 

 

「紙吹雪・赤の舞!!!!」

 

 

その瞬間、その紙は大量の紙吹雪となってナツたちを襲う。

 

 

「紙の魔法か…相手が悪かったな。んなものは燃やして……やるァ!!!!」

 

 

それに対してナツは紙吹雪を燃やし尽くそうと炎を放つが……

 

 

「あ?」

 

 

「燃えてない!?」

 

 

その紙吹雪はナツの炎でも燃える事無く、炎の中を突き進んでいた。

 

 

「赤い紙は炎の神。舞い散るがよい!!!!」

 

 

そしてそのまま赤い紙吹雪はナツへと迫っていく。

 

 

「天竜の咆哮!!!!」

 

 

しかしウェンディが放った竜巻のブレスが、炎もろとも赤い紙を吹き飛ばす。

 

 

「美しいわ。美しく踊る人形……」

 

 

「!」

 

 

「それは血の咲く(なきがら)の花」

 

 

だがその瞬間……コスモスと呼ばれる女性がウェンディの足元に食人植物を召喚し、そのままウェンディの体をバクリと飲み込んでしまった。

 

 

「ウェンディーーー!!!」

 

 

「人の心配をしている場合ではないですよ」

 

 

「!?」

 

 

植物に飲み込まれてしまったウェンディの身を案じるナツだが、その背後にナイフを構えたオルバが音もなく現れ、ナツの首を切り裂こうとナイフを振るう。

 

 

「ナツ!! しゃがんで!!!」

 

 

「! おうっ!!」

 

 

突然聞こえてきた声に従い、迷わずその場で屈むナツ。するとそんなナツの頭上を1発の魔法弾が通り過ぎ、オルバのナイフを弾いた。

 

 

「っ…チッ!!」

 

 

「サンキューティア!!!」

 

 

ナイフを弾かれてしまったオルバはすぐに瞬間移動でナツから離れる。そしてナツは先ほどの魔法弾を放ったティアナに礼を言う。

 

 

「ウェンディは!?」

 

 

「もうミラさんが助けたわ」

 

 

見るとウェンディの方もミラジェーン・シュトリとなった彼女によって救出されていた。

 

 

「!?」

 

 

すると何かに気がついたユーノがルーシィとユキノの方へと視線を向けると、2人の背後からコスモスの触手のような植物が襲うとしていた。

 

 

「2人とも伏せて!!!」

 

 

「「え?」」

 

 

「チェーンバインド!!!」

 

 

そんなルーシィとユキノに伏せるように言い放つと同時に、ユーノは彼女たちを襲おうとしていた触手を魔力の鎖で縛って動きを止める。

 

 

「リリー!!」

 

 

「任せろっ!!」

 

 

そしてそのユーノが止めた触手を、戦闘モードとなったリリーが身の丈ほどの大きさとなった大剣で斬り裂いたのであった。

 

 

「パーーーン」

 

 

そんなリリーの背後から、ビンを咥えた大柄の男……ネッパーが酸を放ち、襲い掛かる。

 

 

「!!」

 

 

リリーはその攻撃を飛んでかわし、目標を外したネッパーの酸は地面を溶かす。

 

 

獣魂(じゅうこん)散弾獣(さんだんじゅう)!!!」

 

 

するとそこへ…ガワラが数十発もの獣の頭部のような魔法弾を放つ。

 

 

「プラズマスピアッ!!!」

 

 

それに対して人間モードとなったリニスが、杖であるシンフォニアタクトを振るって槍型の光弾を放ち、ガワラの魔法弾を全て撃ち落とす。

 

 

魔導士vs処刑人の戦いは乱戦となり、段々と激しさを増していく一方であった。

 

 

「紙吹雪・紫の舞!!!!」

 

 

すると、カミカが放った紫の紙吹雪がナツたちを覆い、彼らの体へ纏わりつく。

 

 

「何だ!?」

 

 

「体が動かない!!」

 

 

「状態異常の魔法か!!」

 

 

紫色の紙が体に張り付いた瞬間、全員体の自由が利かなくなり動きを止める。

 

 

「紫の紙は縛りの神」

 

 

「これぞ美しき連携──グロウ・フロウ!!!!」

 

 

そしてカミカに続いてコスモスが、動けないナツたちの頭上に巨大な食人植物の花を召喚した。

 

 

「でかっ!!」

 

 

「召喚系の魔法!!?」

 

 

天井を覆い尽くさんといわんばかりの大きさの花に、驚愕するナツとティアナ。

 

 

「食せ、美しく、罪人の命を」

 

 

コスモスのその言葉に応えるように、巨大な花は凄まじい吸引力で彼らを吸い込もうとする。

 

 

「くっ…!!」

「吸い込まれる!!」

「うああああ!」

「きゃああ!」

「ユキノ!!」

「この…体が動けば……!!」

 

 

ナツたちは紫の紙によって動きを封じられてしまっている為、その吸引力の前に成す術なく吸い込まれそうになる。

 

 

「体の不自由を解除!!!! 状態異常回復魔法・レーゼ!!!!」

 

 

すると、ウェンディが吸引に耐えながらナツたちに回復魔法を施す。すると、彼らを縛っていた紫の紙が剥がれて体が自由になった。

 

 

「治った!」

 

 

「けどあれ……」

 

 

体の自由は取り戻したが、巨大花に吸い込まれそうになっている状況は変わらない。

 

 

「どうする!!?」

 

 

「やる事は1つだ──壊す!!!!」

 

 

「「「「OK!!」」」」

 

 

ナツが迷わずそう言い放ち、それにティアナとミラジェーン、リリーとリニスが賛同して全員が一斉に巨大花へと攻撃を放った。

 

 

 

 

 

ドガァァァァアアアアアアアン!!!!!

 

 

 

 

 

その瞬間……凄まじい爆音と爆風が、奈落宮に響き渡ったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その頃……ナツたちを奈落宮へと陥れたヒスイは、窓の外を眺めながら暗い表情をしていた。

 

 

「奴等の処刑に餓狼騎士団が向かったようですな」

 

 

「おおっ!! それは頼もしい」

 

 

「え?」

 

 

その後ろで兵士たちがそんな会話をしているのを聞いて、ヒスイの表情は歪み、さらに暗いものとなる。

 

 

「(私の策は次々と裏目に出ていく……無事でいてください──アルカディオス」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

場所は戻り……奈落宮。

 

 

「ぶはっ!」

 

 

先ほどの爆発のせいで吹き飛ばされ、瓦礫に埋もれていたナツは自力で這い出るとすぐに周囲を見回す。しかしそこにはナツ以外の仲間の姿はない。

 

 

「おーい!! みんな無事かーーーっ!!! おーい!!! みんなー!!!」

 

 

大声を張り上げてそう叫ぶナツだが、その声は虚しく木霊するだけであった。

 

 

「どうやら先ほどの衝撃で、方々へと散ってしまったようだな」

 

 

「!」

 

 

するとそんなナツの前に、餓狼騎士団の隊長であるカマが現れる。

 

 

「だが私の部下は優秀だ。誰1人として生きては返さん」

 

 

「ここでルーシィと離れちゃ意味がねえってのに」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

そしてはぐれてしまった先で、処刑人と遭遇したのはナツだけではなかった。

 

 

「みなさーん!!! どこですかー!!?」

 

 

「美しい…」

 

 

「!」

 

 

「いえ…美しいというより可憐…でも処刑よ」

 

 

ウェンディの前には特殊な植物を操る処刑人コスモスが……

 

 

 

 

 

「へへへ」

 

 

「くそ……みんなとはぐれたか。ルーシィもユキノも、今は星霊魔法を使えん。早くカタをつけて助けにいかねば」

 

 

「パーン? 今なんつったぁオイ? 早くカタをつけるだァ?」

 

 

リリーの前には酸を操る処刑人ネッパーが……

 

 

 

 

 

「アンタなんか相手をしてる場合じゃないってのに……」

 

 

「心配せずともすぐ仲間に会わせてあげますよ……あの世でね」

 

 

ティアナの前には瞬間移動と再生を操る処刑人オルバが……

 

 

 

 

 

「ルーシィ!! ユキノ!! どこ?」

 

 

「よそ見してる場合じゃないわよアンタ」

 

 

ミラジェーンの前には様々な色の紙を操る処刑人カミカが……

 

 

 

 

 

「ここであなたを倒さなければ、はぐれたみなさんを助けにいけないという訳ですね」

 

 

「そういう事だ。ま…無理な話だがな」

 

 

リニスの前には実体のある幻影を操るガワラが……

 

 

 

 

 

それぞれの前に、王国最強の処刑人が立ち塞がったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「うう~」

 

 

「っつ~…」

 

 

「痛いよォ……」

 

 

先ほどの爆発で吹き飛ばされながらも、運よく瓦礫に埋もれる事を回避できたルーシィ、ユーノ、ユキノ、ハッピー、シャルル、そしてアルカディオス。

 

 

「もしかして、みんなとはぐれちゃった!?」

 

 

「みたいだね」

 

 

「よりによって戦闘員が1人しか残らないなんて…」

 

 

「鍵もないですしね」

 

 

鍵がない為魔法が使えないルーシィとユキノ…そしてケガをして動けないアルカディオス…現在この中でまともに戦えるのはユーノだけである。

 

 

「とりあえず、みんなを探そうよ」

 

 

ハッピーが全員に対してそう提案すると、突然ハッピーの体がフワリと浮かび始めた。

 

 

「!? あわわわわ!」

 

 

「ハッピー!!」

 

 

「!?」

 

 

「あそこだっ!!」

 

 

羽を出して自分の意志で飛んでいる訳でもなく、フワフワと浮いているハッピーを見て声を上げるルーシィ。そして何かに気がついたユーノが近くにあった石像の頭部を指差す。

 

 

「釣れたタイ!!」

 

 

「オイラ魚じゃないよう!!」

 

 

見るとそこには…餓狼騎士団の中でも特に浮いていた、漁師のような姿をした処刑人が座っていた。どうやらハッピーの体はこの男が浮かび上がらせていたようである。

 

 

「……本当だ」

 

 

「ぎゃっ!」

 

 

そしてハッピーが魚じゃないと知った途端、興味を失ったようにハッピーを捨てて柱に叩き付ける。

 

 

「何なのコイツ」

 

 

「処刑人ウオスケ」

 

 

「素敵な名前ね」

 

 

「こんなの魔法なくても勝てるんじゃないの!?」

 

 

「確かに」

 

 

「そんな事言ったら、怒っちゃうぞー」

 

 

ルーシィたちの言葉に対してそう言うウオスケだが、彼の表情はまったく変わっていない。

 

 

「勝てるかも!! ザコっぽい」

 

 

「どちらにしても出口を聞きださないとね。ユキノ、君は戦えるかい?」

 

 

「はい!! 魔法なしの戦闘も、訓練を受けていますから」

 

 

そう言ってウオスケと戦う姿勢を見せるルーシィとユーノとユキノ。

 

 

「い…いかん……ダメだ!!」

 

 

「「!?」」

 

 

「アルカディオス様!?」

 

 

すると、そんなルーシィたちにアルカディオスがそう言い放つ。

 

 

「戦ってはいかん…奴は…ウオスケは……処刑した者の骨すら残さぬという恐ろしい魔導士だ」

 

 

「「「え?」」」

 

 

目の前にいるウオスケが実はかなりヤバイ奴だと知った3人は、サーッと顔から血の気が引いていくのを感じたのであった。

 

 

 

 

 

果たして、バラバラに分断されてしまったナツたちは奈落宮を脱出できるのか……?

 

 

 

 

 

つづく




オルバとガワラを知らない人は、聖王編へGO!!
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