感想お待ちしております。
「本当にこっちであってるのか?」
「餓狼騎士団とかいう奴等の言葉を信じるならね」
「そういえば、ロキはどうやってここまで来たの?」
「飛び降りて」
「星霊とはいえ、後先考えるのも大事だよロキ」
餓狼騎士団を撃破したナツたちは、彼らに吐かせた奈落宮の出口へと続く道を歩いていた。
「アルカディオス様は大丈夫でしょうか?」
「大丈夫といえば大丈夫だけど……」
「むしろ溶岩の中で生きてた方が不思議だよ」
「彼の身に着けてる翡翠の宝石のおかげだろうね。強力な護符の役割をしている」
アルカディオスが身に着けている翡翠の宝石がついたネックレスを差しながら、そう説明するロキ。
「翡翠……あのドラゴン!! 翡翠竜ジルコニス」
「あのドラゴンが何か関係してるのかしら?」
「確か姫の名前もヒスイ様だったと…」
「そう言えば、ユーノの魔力光も翡翠色よね?」
「あーうん、まぁね。それよりも、アルカディオスはここを出たらヒスイ姫に会えって言ってたよね」
「エクリプスが正しいかどうか自分たちで決めるといい…だったわね」
「その姫様にこんな所に落とされたんだけどな!!!!」
「とにかく、早くここを脱出して会場の皆さんに無事を報告しましょう」
そんな会話をしながらも出口へと続く道を歩き続けるナツたち一行。すると……
「オイ!! あれを見ろ!!」
「扉だ!!!」
「出口かも!!!」
そう言ってリリーが指差した先には、奈落宮の出口と思われる大きな扉があった。
「オレに任せろ!!!」
「ちょっ、ナツ!! 別に壊す必要は……!!」
その扉を見て拳に炎を纏いながら駆け出していくナツにティアナが制止の言葉をかけるが、ナツは止まらなかった。
「火竜の……」
そしてナツがその炎の拳を扉に叩き込もうとした瞬間……扉がガチャリと音を立てて開き始めた。
「開いたーーーーっ!!?」
「うほぉーーーっ!!」
突然扉が開いた事で勢いが空回りし、地面に転んでしまうナツ。
「扉が勝手に……」
「何で?」
「待ち伏せ!?」
まるで彼らを待っていたかのように開き始めた扉を見て、敵の罠かと警戒するティアナたち。
「んがががががっ!」
そしてナツは転んだ勢いのままゴロゴロと転がっていき、開いた扉の前でバタンっとぶっ倒れる。
「!」
すると倒れたナツの目の前には、その扉を開いたと思われる人物が立っていた。
その人物とはなんと……ジェラールが追っていたハズの、ゼレフに似た魔力を帯び…黒いローブで全身を隠した謎の少女であった。
「誰だ──お前」
もちろんそんな事は知らないナツは、疑問符を浮かべながら謎の少女に対してそう問い掛けたのであった。
第206話
『明日までの国』
その頃…王宮のヒスイのいる部屋。
「姫様ー!! 大変です!!! 餓狼騎士団が全滅したとの報告が!!!」
「!」
1人の兵がそう報告すると、王国最強の処刑人が敗れた事に他の兵たちは信じられないと動揺が走る。
「(やはり……)」
そんな兵たちとは裏腹に……ヒスイはその報告にどこかホッとしたような笑みを浮かべていた。
「いけませんなぁ、そんな表情をしては」
「!?」
「考えが筒抜けですぞ」
「ダートン!?」
するとそこへ、国防大臣であるダートンが姿を現した。
「陛下と共に
「妙な胸騒ぎがして戻って来たのですが……やはりこういう事でしたか」
「それはどういう意味です!? アナタこそ…裁判も待たずにアルカディオスを奈落宮へ落とすなど……」
「そのアルカディオスを救う為に
「う…」
ダートンの鋭い指摘に、言いよどむヒスイ。
「やはりエクリプス計画の実権を握っていたのはアナタだった。アルカディオスも私の前で見事憎まれ役を買って裏にいる者……つまりアナタの存在を隠蔽していた」
「……そこまでお見通しでしたか。さすがです」
もはや言い逃れはできないと観念したヒスイは、自分がアルカディオスと共にエクリプス計画を進めていた事を認める。
「姫…今一度考え直してくだされ。あれは危険な物、世界は変えてはならないのです」
「いいえ…おそらく変えねばならないでしょう」
「おそらく?」
「これは……誰にも言ってはならないと……〝あの方〟との約束だったのですが、あなたには話しておいた方がよさそうですね──エクリプス〝
「
「本当のエクリプス計画です」
ただのエクリプス計画ではなく、その裏にあるエクリプス〝2〟計画の事を静かに語るヒスイ。
そしてその話を聞いて目を見開いているダートンに対して、ヒスイはさらなる驚愕の言葉を告げた。
「この計画が失敗すれば──明日…この国は滅びるのです」
◆◇◆◇◆◇◆◇
一方その頃……ドムス・フラウでは、大魔闘演武による凄まじい熱気と歓声に包まれていた。
『大魔闘演武最終戦!! 現在は
現在の途中経過による順位は……
妖精の尻尾:79P
剣咬の虎:77P
蛇姫の鱗:77P
人魚の踵:68P
となっていた。
「よっしゃーー!!」
「セイバーやラミアより2P優勢になったな」
「このまま行けば優勝ですね」
「初代さん、次はどうなるの?」
「私の計算が正しければ…………ヴィヴィオとギンガがぶつかります」
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ハァッ!!」
「!!」
アインハルトを倒して再び街で索敵していたヴィヴィオの目の前に、メイビスの予想通りギンガが現れ、ヴィヴィオに向かって拳を振るう。
「(初代の読み通り!!)」
その拳を咄嗟に後ろに飛んで避けながら、ギンガに対して拳を構えるヴィヴィオ。
「ずいぶんボロボロねヴィヴィオちゃん。でも容赦はしないわよ!!」
「当然!! 最後まで全力全開で戦います!!!」
そしてギンガとヴィヴィオはお互いにそう言い放つと、お互いに拳を構えて駆け出したのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ギン姉とヴィヴィオが戦うって…大丈夫なの!!?」
「ギンガはアタシらナカジマ家の中でも1番強えーし、何よりヴィヴィオは今ボロボロなんだぜ!!」
「足止めでいいのです。その間にエルザとミネルバがぶつかります」
「ちょっとドヤ顔になった!!」
自分の予想が寸分違わず命中して嬉しいのか、「フフフ」とドヤ顔で笑いながらそう説明するメイビス。
「ミネルバって……」
「あの執拗にルーシィを痛めつけていたセイバーの女か」
次はエルザとミネルバがぶつかると聞いて、応援席にいる面々はエルザの姿が映っている
◆◇◆◇◆◇◆◇
「(初代の作戦では、ここに来ればセイバーの……)」
その頃エルザは、ミネルバが現れるとメイビスが予想した場所へとやって来ていた。
「!!」
するとエルザは背後から人の気配と殺気を察知し、即座に振り返った。
だがそんなエルザに向かって来ていたのは……ミネルバではなく、怨刀・不倶戴天を構えたカグラであった。
『カグラだーーーーっ!!!!』
「(初代の読みが外れた!!?)」
ここへきて初めてメイビスの予想が外れた事に驚愕しながらも、エルザは換装で2本の刀を取り出して構え、カグラの一太刀を受け止める。
そこからエルザとカグラの剣が目にも止まらぬ速さで幾度となくぶつかり合い、凄まじい剣の応酬が繰り広げられる。
「(強い……!!!)」
「(噂に通りの武人か、見せてもらおう
◆◇◆◇◆◇◆◇
「初代…これは……」
「エルザさんの相手は、ミネルバって人だったんじゃ……」
「私の計算が…ふえ…えぐ…どこで……」
よほどショックだったのか、メイビスはそのまま泣き出してしまったのであった。
「泣いてなんかないです!! 全然泣いてなんか……」
「誰かーーー!!! 全力で初代をあやせー!!!」
◆◇◆◇◆◇◆◇
『これは面白い対決となった!!!! 最強女剣士決定戦だーーー!!!』
エルザとカグラによる剣の応酬は両者共に1歩も引かず、エルザの二振りの刀とカグラの不倶戴天がぶつかり合い、激しい火花を散らせる。
「(納刀したままでこれほどか……)」
刃を鞘に納めた状態の不倶戴天を振るい、凄まじい剣撃を放ってくるカグラ。それにに対してエルザは彼女の剣の腕に一筋の冷や汗を流しながら2本の刀で防ぐ。
だがその時……突然エルザとカグラの間の空間がグニャリと歪み始める。
「「!!」」
さらにその歪んだ空間から2本の腕が飛び出してきたかと思ったら、その腕がエルザとカグラの顔をそれぞれ鷲掴みにする。
そして次の瞬間……歪んだ空間から姿を現したミネルバが、2人の体を投げ飛ばしたのであった。
『『『なーーーーっ!!!!』』』
いきなり何もない空間から現れたミネルバに、実況席の3人が絶叫に似た驚愕の声を上げる。
「妾も混ぜてはくれまいか?」
『ミネルバ乱入ーーーー!!!!』
そんなミネルバの姿に、メイビスですら「予測…不可能…です」と呟いたのであった。
『三つ巴の戦いになったーーー!!!! 今大会屈指の女魔導士対決!!!! 生き残るのは誰だーーーっ!!!!』
そして対立するエルザ、カグラ、ミネルバの3人の女魔導士。
「誰が相手であろうと押し通る」
「(エルザ……何故ジェラールをかくまう? ミリアーナから聞いた話では、そなたがジェラールから受けた苦しみはとても許せるものでは……)」
エルザの姿を横目で見ながら、カグラの内心ではエルザに対する疑念が渦巻いていた。
「我等が
一方ミネルバは、目の前のエルザとカグラの2人を見据えながらそう言い放つ。
「我がギルドこそが最強である証明を示す為には、そなた等ごときはまとめて始末してみせようぞ」
「たいした大口だ」
「御託はいい。来い」
その言葉を最後に、3人は口を閉じて静かに闘気を放ちながら目の前の2人の敵の姿を見据える。
映像越しに伝わってくる緊迫感に、会場中の誰1人として声を発さず固唾を呑んで見守る。
次の瞬間……ほぼ同時に動き出した3人。
そして……
ドゴォォォォオオオオオ!!!!
エルザの刀…カグラの不倶戴天…ミネルバの魔法が衝突し、凄まじい衝撃が周囲に響き渡ったのであった。
それを皮切りに、3人の激しい攻防戦が始まった。
エルザは2本の刀を振るい、カグラとミネルバに同時に斬りかかる。それに対してカグラは不倶戴天で…ミネルバは両手に纏った魔力でガードする。
「フン」
「うあっ!!」
そしてお返しと言わんばかりにミネルバは魔力を纏った片手をエルザへと向け、そこから放たれた衝撃で彼女を吹き飛ばす。
しかしそのスキに素早く回り込んでいたカグラがミネルバに強烈な蹴りを叩き込む。
だがすぐに体制を立て直したエルザによってカグラも蹴り飛ばされしまう。
「くっ…あ!!」
壁を突き破るほどの威力で叩き付けられ、そのまま建物から転落してしまうカグラ。そんなカグラに追い打ちをかけようと続いてエルザも建物から飛び降りる。
「うぐ!!」
しかしカグラはうまく着地すると、追ってきたエルザに不倶戴天による一太刀を入れる。反撃を喰らってしまい着地できずに地面に墜落してしまうエルザ。
するといつの間にかカグラの目の前に立っていたミネルバが、手のひらから魔力の衝撃波を放ってカグラを吹き飛ばす。
そしてそんなミネルバの頭上には、高く跳躍して飛び掛かるエルザの姿が。
「見えておるわ」
それを察知していたミネルバはエルザを撃ち落とそうとするが……
「な!?」
先ほどの衝撃波で吹き飛ばされたハズのカグラが、納刀された不倶戴天の切っ先で鋭い突きを放ち、ミネルバの体を突き飛ばす。だがその代わりに、カグラはミネルバに放とうとしていたエルザの攻撃を受けてしまう。
「イ・ラーグド(消えろ)」
「「!!」」
すると、ミネルバが両手で印のようなものを結ぶと同時に、エルザとカグラの体が歪んだ空間の中に取り込まれて動きを封じられてしまう。
「ネェル・ウィルグ・ミオン。デルスエルカンティアス」
「ヤクマ十八闘神魔法!!?」
両手に魔力を纏いながら聞いた事もない言葉を口にし始めるミネルバ。そんな彼女の姿に、応援席のメイビスが驚愕したように叫ぶ。
そして……
「ャグド・リゴォラ!!!!!」
地面から阿修羅のような形をした巨大な石像が出現すると同時に……天にも昇るような強大な爆発がエルザとカグラもろとも周囲を吹き飛ばしたのであった。
その一撃により、戦いの場となっていたそこは瓦礫の山となって無残な姿で崩壊していた。
そしてその場所の中心に立っているのはミネルバ──だけでなく、あの爆発で多少キズを負いながらもしっかりと立っているエルザとカグラの姿もあった。
『なーーーー!!? 無事だーーーーーーっ!!!!』
「どうなってんだこの3人はー!!」
「スゲェとかそういうの超えてるよ!!」
「ヤバイってーーー!!!」
3人によるとてつもなく激しい攻防戦に、会場中が騒然とする。
「なるほど、よもやここまでやるとは計算外だ」
目の前に立つエルザとカグラの力を認めたように、そんな事を言い始めるミネルバ。
「このままではラチがあかぬ。少し趣向を変えよう」
ミネルバはそう言いながら自身の後ろに歪んだ空間を発生させる。するとその空間の中には、ある人物の姿があった。
「先ほど捕えた子猫だ」
「うう…う……」
「「ミリアーナ!!!」」
その人物とは、カグラと同じ
「見えるか? この娘の苦しむ姿が。この空間の中で常に魔力を奪い続けておる」
「う…うう……」
閉じ込められた空間の中で、苦しそうに呻くミリアーナ。
「安心するがよい、人質をダシに屈服させるつもりはない。趣向を変えると言ったであろう」
そう言うミネルバの視線の先には……怒りに染まった表情でこちらを睨む、エルザとカグラの姿があった。
「そうだ、その表情が見たかった」
それに対してミネルバが、不気味な笑みを浮かべながらそう言い放ったのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
一方…ヒスイからエクリプス〝2〟計画の真相を聞かされたダートンは驚愕を露にし、唇を震わせながら言葉を紡いだ。
「そのような事が…そのような事がもし真実ならば……大魔闘演武など即刻中止に……!!!」
「なりません」
ダートンの進言に対して首を横に振るヒスイ。
「私とて〝あの方〟の言葉は半信半疑なのです」
「いえ…たとえ真実でなくとも国民に危険が迫るのならば…」
「〝あの方〟は未来を知っています。大魔闘演武の結果を知っているのです」
「?」
ここでなぜ大魔闘演武の結果などが話に出てくるのか理解できず、ダートンは疑問符を浮かべる。
「あるギルドが、ありえない結果で優勝すると聞いています」
「ありえない結果?」
「特殊な結果ゆえ予測は不可能……もしもこの結果が現実になる事があれば……私は〝あの方〟を信じようと思うのです」
「国の未来を大魔闘演武の結果で動かそうというのですか!?」
「それに足る〝結果〟なのです。私は未だにその〝結果〟を信じられないのです」
「もしも…その姫に助言した者の言う通りの〝結果〟になれば……」
「〝あの方〟の言う未来は、全て真実と言ってもよいでしょう──私はエクリプスの扉を開きます」
◆◇◆◇◆◇◆◇
「誰だお前」
その頃…奈落宮の出口の前で、ナツたちを待っていたかのように現れた黒いローブで全身を隠した少女。その少女に対してナツが何者かと問い掛けると、突然少女の頬に涙が伝う。
「グス…ごめん…」
その少女の言葉を聞いた瞬間、ナツが何かに気づいたように反応する。
「力を…貸して……」
泣きながらそう懇願するような少女の言葉を聞き、ナツの後ろに控えていたティアナたちも驚いたような表情を浮かべた。
「その声……」
「アンタは……」
「え?」
「君は……」
「そんな…まさか……!!」
そして少女は涙を拭うと、自身の顔を隠していたフードに手をかけ……ゆっくりとそれを取り払い、その顔を露にした。
「「「!!!!?」」」
その顔を見た瞬間……ナツたちは信じられないものを見るような表情で、大きく目を見開いた。何故なら……
「ルーシィ!!!?」
「えええええええっ!!!?」
その少女の正体は……今もナツたちと一緒にいるルーシィとは別の──もう1人のルーシィ・ハートフィリアだったのであった。
「あの方は…未来から来たと言ってました」
つづく