LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

208 / 240
2話目です。


絶望へ加速する未来

 

 

 

 

 

 

エルザとカグラの壮絶な戦いは、激闘の末カグラが負けを認めるという形で決着がつこうとしていた。だがその瞬間、またもや乱入してきたミネルバが不意打ちでカグラを撃破し、ポイントを掠め取ったのであった。

 

 

「あ…あ…」

 

 

「貴様……」

 

 

「次はそなただエルザ。しかし……そのケガでは勝負は見えておるか」

 

 

エルザは先ほど落ちてくる瓦礫からカグラを助けた際に右足を負傷してしまっており、立ち上がる事もままならないという状況である。

 

 

「ミリ…アを……」

 

 

「!」

 

 

「ミリアーナを…頼む……」

 

 

「ああ」

 

 

だがカグラの涙ながらの頼みに、エルザはケガなど関係ないと言わんばかりに強く頷いたのであった。

 

 

「ミリアーナ? あの子猫か?」

 

 

それを聞いていたミネルバは、歪んだ空間からボロボロの姿のミリアーナを取り出すと、もはや用済みと言わんばかりに地面に投げ捨てた。

 

 

「すでに戦闘不能だ。得点を妾に」

 

 

剣咬の虎:80P→81P

 

 

そんな倒れているミリアーナのもとに、右足を引きずりながら駆け寄るエルザ。

 

 

「ミリアーナ…」

 

 

「あれ……エル……ちゃん?」

 

 

「しっかりしろ!! ミリアーナ!!」

 

 

そしてミリアーナの体を抱き起すエルザだが、ミリアーナの体に触れたエルザの手には彼女の血がベットリと付着していた。

 

 

それを見たエルザはミリアーナが背中に身に着けているマントをめくると、その背中にはおびただしいほどのキズが刻まれていた。

 

 

「待つのも退屈だったのでな、痛めつけて遊んでおったのだ。よい悲鳴であった」

 

 

ミネルバのその言葉を聞いた瞬間……エルザの顔は今までに見た事がないほどの怒りに染まっていたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第208話

『絶望へ加速する未来』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラァ!!!!」

 

 

「くっ…うあっ!!!!」

 

 

その頃…ガジルとローグの戦いは、やはり実力的にはガジルの方が勝っており、ローグはすでに防戦一方であった。

 

 

「1日やそこらで力の差は埋まらねえ。諦めろ、2人がかりで火竜(サラマンダー)に勝てねえようじゃオレは倒せねえ」

 

 

ローグに対してそう言い放つガジルだが、対するローグはゆっくりと立ち上がりながら静かに口を開く。

 

 

「お前はナツ・ドラグニルほどではない」

 

 

「──なんだと」

 

 

その一言はガジルの怒りに火を着け、ガジルはピキッと青筋を浮かび上がらせながらローグを睨んだのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「もう終わりか? さっきまでの威勢はどうした?」

 

 

「チッ…やはり強いな……2対1でこれとは……!!」

 

 

「まだまだこれからだよチンク!! がんばろっ!!」

 

 

そしてラクサスとチンク&シェリアの戦いでは……ラクサスは多少ダメージを負ってはいるがまだまだ余裕そうな顔つきで腕を組んで佇んでおり、対するチンクとシェリアは辛そうに息を乱してはいるが、その顔からはまだ闘志は消えていない。

 

 

「仕方ない……シェリア、〝アレ〟をやるぞっ!!!」

 

 

「OK!!〝アレ〟だね!!!」

 

 

するとチンクとシェリアは何か勝算があるのか、スティンガーと黒風を構えながら睨むようにラクサスを見据える。

 

 

「フン」

 

 

それを見たラクサスは、受けて立つと言うように小さく笑みを浮かべたのであった。

 

 

だがその時……

 

 

 

「なるほど……両者ともにいい闘志だ」

 

 

 

「「「!!?」」」

 

 

突然聞こえてきたそんな声と共に感じた威圧感に、ラクサスとチンクとシェリアはゾクリと身を凍らせた。

 

 

「もしよければ──オレも混ぜてはもらえないだろうか?」

 

 

そしてその声がした方へと視線を向けるとそこには……〝鬼神〟の異名を持ち、歴戦の戦士の風格を漂わせる剣咬の虎(セイバートゥース)の魔導士……ゼスト・グランガイツが静かに佇んでいたのであった。

 

 

「き…貴様は……鬼神・ゼスト」

 

 

「こいつはまた…とんでもねーのが出てきやがったな」

 

 

ゼストから放たれる凄まじい威圧感に、ラクサスとチンクは冷や汗を滴らせながらそう呟いたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…やはり強いですね、ハヤテさん」

 

 

「ホント…ハヤテちゃんってば見かけによらずやるぅ」

 

 

「そらぁこれでも夜天の書に選ばれた〝夜天の主〟やからな。ちょっとやそっとや負けへんよ」

 

 

そしてまた別の場所で繰り広げられている、はやてとフローリアン姉妹の戦い。両者ともに一歩も譲らず、互いに牽制し合うように睨みあっていた。

 

 

「どうやらカグラさんもミリアーナさんもやられてしまったようですから、ここで私たちも負ける訳にはいきません」

 

 

「私たちが人魚の踵(マーメイドヒール)最後の砦って訳ね」

 

 

「かかって()ぃ」

 

 

そう言ってヴァリアントザッパーを構えるアミタとキリエに対し、不敵な笑みを浮かべながらはやてもシュベルトクロイツを構える。

 

 

そして両者が再び激突するかと思われたその時……

 

 

「ほほう…女子(おなご)ばかりとはいえ、これはよき強者どもに出会えた……」

 

 

そんな言葉と共に現れる、新たな乱入者。

 

 

 

「ワシも手合せ願おうか──久しぶりに血が滾るわい」

 

 

 

その乱入者とは……今大会の出場者の中でも最強と呼び声が高い蛇姫の鱗(ラミアスケイル)に所属する〝聖十大魔道〟の称号を持つ魔導士……ジュラ・ネェキスであった。

 

 

「うっそーん……」

 

 

「聖十の…ジュラさん……」

 

 

「こらまた……シャレにならん怪物が出てきてもうたな」

 

 

そんなジュラの姿を見たはやて、アミタ、キリエの3人はとてつもない戦慄を覚えたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「中々やるわねヴィヴィオちゃん。さすがノーヴェの弟子ね」

 

 

「えへへ、まだまだこれからです!!」

 

 

そして一方ヴィヴィオとギンガの戦いでは……ヴィヴィオが手傷を負いながらもギンガを相手に善戦していた。すると……

 

 

「ギンガがここまで苦戦するとはな」

 

 

「くそっ!! めんどくせートコに来たな……」

 

 

突然背後から聞こえてきた声に、ヴィヴィオとギンガはパァっと表情をしながら振り返り、それぞれその人物の名を口にする。

 

 

「リオン君!!!」

「パパ!!!」

 

 

その人物とは、ルーファスとの戦いを終えたグレイと…彼の兄弟子であるリオンであった。

 

 

「どうしたグレイ……ボロボロじゃないか」

 

 

「ヴィヴィオ、2人で一気に片づけんぞ」

 

 

「うん!! パパ!!」

 

 

そう言うと、ヴィヴィオは嬉しそうにグレイの横に並び立ち…対するギンガもリオンの隣に移動する。

 

 

「そう言えば、3日目のタッグバトルもパパと一緒だったよね」

 

 

「今回はオレも思いっきり戦わせてもらうけどな。覚悟しろよリオン、ギンガ」

 

 

「望むところよ!! ねえリオン君!!!」

 

 

「そうだな…オレたちはここで勝利してジュビアを──そしてその娘であるヴィヴィオを我がギルドに迎え入れる!!!」

 

 

「「「なんか悪化してる!!!?」」」

 

 

リオン1人だけ何かがズレていたが……この戦いは何はともあれヴィヴィオのギンガの戦いから……グレイ&ヴィヴィオとリオン&ギンガの戦いに変わったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「まいったな」

 

 

「迂闊だったわね」

 

 

「まさか迷子になるとはね」

 

 

「困ったわね」

 

 

「私もお城様の構造についてはちょっと…」

 

 

「お城様!?」

 

 

「早く脱出してみんなに知らせたいのにな」

 

 

「ですね」

 

 

「あい」

 

 

一方その頃……奈落宮から無事に脱出したナツたちだが、今度は複雑に入り組んでいる城の中で迷子になってしまい、現在は食堂のような場所で休憩をとっていた。

 

 

「めんどくせぇから、兵士の中突っ切ろうぜ」

 

 

「ケガ人もいるのよ、ダメに決まってるじゃない」

 

 

「これだけいれば何とかなるんじゃないかな?」

 

 

「ううん…それだけじゃない……私たちのギルドは今、大魔闘演武で戦っている。王国主催の大会よ、王国軍に私たち(FT)の印象を悪くしちゃいけないと思うの」

 

 

「処刑人の皆さんやっつけちゃったし……もう手遅れかも」

 

 

そう言ってナツとハッピーの発案を却下するティアナとミラジェーン。ただミラジェーンの言い分に関してはかなり今更な気もするが……

 

 

そんな中……1人思い詰めたように未だに意識を失っている未来のルーシィを見つめている現代のルーシィ。

 

 

「ルーシィ、そんなに思い悩む事ないよ」

 

 

「うん」

 

 

「たとえ君が2人になっても、僕は両方愛する事ができるから」

 

 

「はいはいロキ、君は少し空気を読もうね~」

 

 

そう言ってルーシィを慰めながら口説こうとするロキを、ユーノが戒めたのであった。

 

 

「うぅ……」

 

 

「!」

 

 

「お」

 

 

「気がついたのね」

 

 

「大丈夫? 未来ルーシィ」

 

 

すると、ようやく気がついた未来ルーシィの目がゆっくりと開かれた。

 

 

「ここは?」

 

 

「わからん」

 

 

「食堂…って事まではわかるけどね」

 

 

「まだ…城の中なのね……」

 

 

自身の問い掛けに答えてくれたナツとティアナの言葉を聞くと、未来ルーシィは頭に手を置いて自身の記憶を辿る。

 

 

「あたしの記憶だとね……奈落宮を脱出したあと…みんな……王国軍にまた捕まっちゃうの。だからその前に知らせようと……」

 

 

「未来のルーシィが体験した事実…と言う訳か」

 

 

「何言ってんだ、あんな奴等に捕まる訳ねーだろ」

 

 

「そうね……さすがにやられる気がしないわ」

 

 

確かにナツたちの実力ならば簡単には捕まったりしないだろう。なのでルーシィはそうなってしまった理由についても説明する。

 

 

「あたしたちは逃走中にエクリプスに接近しちゃうの。そのせいで魔法が使えなくなって、全員捕まっちゃう」

 

 

「確かに魔法が使えなくなったら、あとは多勢に無勢……捕まるのも無理ないかもね」

 

 

未来ルーシィの説明を聞いて、納得したように頷くユーノ。

 

 

「それはとんだドジを踏んだわね」

 

 

「運が悪かったとしか…」

 

 

「(不運……)」

 

 

苦笑するティアナにそう答えた未来ルーシィの言葉を聞いて、ユキノが何か思い当たるのか人知れず表情を暗くしていた。

 

 

「〝あの時〟が来るまで、あたしたちは牢の中にいた」

 

 

「あの時?」

 

 

「あの……ルーシィさんはどうして未来からやって来たんですか?」

 

 

未来ルーシィの言う〝あの時〟という言葉にリニスが首を傾げ、ウェンディがなぜ未来から来たのかその理由を問い掛ける。

 

 

すると未来ルーシィは、怯えるようにガクガクと体を震わせながらその問い掛けに答えた。

 

 

「最悪の未来を変える為」

 

 

「最悪の未来だぁ?」

 

 

「一体……何があったの?」

 

 

未来ルーシィの言葉にナツが疑問符を浮かべ、再びユーノがそう問い掛ける。

 

 

そして未来ルーシィは……自身の身に起こった信じられない出来事を語ったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「あの方は私に告げました」

 

 

一方ヒスイも……ダートンと共に大魔闘演武を観戦しながら〝あの方〟という者が告げた未来の出来事を口にした。

 

 

 

 

 

「この先に待つのは絶望──1万を超えるドラゴンの群れがこの国を襲ってくる」

 

 

 

 

 

最悪の未来……それは1万ものドラゴンによる滅びの未来であった。

 

 

「街は焼かれ、城は崩壊し…多くの命が失われる」

 

 

「その言葉は誠か虚偽か」

 

 

「あの方はその答えを私に委ねました。大魔闘演武の結果が──私の決断を導くのです」

 

 

その未来を信じるか否か……その全ては大魔闘演武の結果次第であった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「な ん じゃ…そりゃー!!!」

 

 

「声が大きいわよバカナツ!!!」

 

 

「うごっ」

 

 

未来ルーシィの告げた最悪の未来の話を聞いて絶叫するナツと、そんなナツをゲンコツで鎮めるティアナ。

 

 

「大変だー!!!」

 

 

「1万を超えるドラゴン……」

 

 

「そのドラゴンの群れが…この国を滅ぼす……」

 

 

「何でそんな事に……」

 

 

「もしかして(ドラゴン)のお墓と関係あるのかな」

 

 

「どうかしらね」

 

 

「さすがに無関係…とは断言できませんね」

 

 

「何という事だ……」

 

 

未来ルーシィの話を聞き、全員が表情を歪めて驚愕する。

 

 

「とにかくこうしちゃいられねえ!! 戦闘準備だ!!!」

 

 

「戦うの!!?」

 

 

「無理があるよ!」

 

 

「あとその装備はどっから持って来たのよ」

 

 

どこからか持ってきたヘルムと槍を抱えながら戦闘順だと騒ぐナツに、ルーシィとハッピーとティアナがツッコミを入れる。その光景を見て……何故かポカンとしている未来ルーシィ。

 

 

「みんな……信じてくれるの?」

 

 

「ウソなのか!!?」

 

 

「違う!!! けど……こんな話、誰も信じてくれないんじゃないか…って」

 

 

確かに1万のドラゴンが襲ってくるなんて話…普通だったら信じられるハズがない。しかし……

 

 

 

「何でルーシィの言葉を疑うんだよ」

 

 

 

その話をしてくれたのは他でもないルーシィである。彼らが仲間(ルーシィ)の言葉を疑う訳がないのだ。

 

 

「未来の自分ながら情けない…もっと仲間を信じなさいよ」

 

 

「自分に説教? でも……そうだよね」

 

 

自分自身に説教されるという妙な状況であったが、未来ルーシィはルーシィの言葉を受け入れたのであった。

 

 

「(これで繋がったわ、崩壊する(メルクリアス)……城の中で歌う……いいえ……あれは泣き叫ぶルーシィ。泣く…? 何で!!? それに城の中で叫ぶティアナは一体……?)」

 

 

未来ルーシィの話を聞いて、シャルルは自身の予知で見た光景は1万のドラゴンが起こした悲劇なのだと思い至った。だがその中で少々不可解な点があったので、未来ルーシィに問い掛ける。

 

 

「ねえ……ドラゴンが来た時……同じ城の中にいた私たちはどうなったの?」

 

 

シャルルのその問いに対して、答え辛そうに俯く未来ルーシィ。

 

 

「シャルル……察してあげよう」

 

 

「そうね……たぶんその未来で私たちはもう……」

 

 

「死んじまうのか……!?」

 

 

「そんな…」

 

 

「オイラたち、死んじゃうの」

 

 

「(私といたから? 不運にも……)」

 

 

未来で自分たちが死ぬ……そう察したウェンディとティアナの言葉にナツたちは愕然とする。

 

 

「何日経ったか覚えてない。目を覚ましたあたしは……エクリプスの事を思い出した。起動方法なんてわからなかったけど、無我夢中で扉を開けた。過去に戻れるかもしれないって信じて。そしたらね…本当に過去に戻っちゃったんだ。X791年7月4日に」

 

 

「4日って、つい最近じゃないか」

 

 

「エクリプスって、そんなちょっとした過去に行けないの?」

 

 

「わからない……一部壊れてたからそのせいかもしれないし……」

 

 

ポツポツと自身の身に起きた出来事と、その後の行動をナツたちに語る未来ルーシィ。だがその話を、彼ら以外にも聞いている人物がいた。

 

 

「(なるほどな……姫に助言した謎の未来人とはコイツの事だったのか……しかし…気になるな……)」

 

 

その人物…アルカディオスは気を失っているフリをしながら未来ルーシィの話を聞いており、ヒスイが言っていた〝未来人のある方〟の正体がルーシィだと推測する。だがそんな未来ルーシィの話を聞いて、不可解な点を感じたアルカディオスはそのまま話を聞いている。

 

 

「街には大魔闘演武を撮影してる魔水晶(ラクリマ)が配置されている。地下を通ってジェラールたちと合流してほしいの」

 

 

「ジェラール?」

 

 

「彼には全部話してある。今……対策を練ってるハズだから」

 

 

「対策を練るって……」

 

 

「今…?」

 

 

「ごめんね。あたしは未来から〝対策〟を持ってきた訳じゃない。あの事態をどうすれば回避できるかわからないの」

 

 

未来ルーシィでもこれから起こる最悪の未来を回避する為の対策はわからないという。そんな彼女の言葉を聞いてティアナやルーシィは目を見開き、聞き耳を立てていたアルカディオスは「やはり…」と自身が感じていた不可解な点を確信に変えた。

 

 

 

 

 

『あの方は言いました…エクリプスのもう1つの使い方〝エクリプス2〟』

 

 

『2……? それは一体……』

 

 

『大魔闘演武を使い、7年もの間この扉に魔力を蓄積してきました。こうして集まった7年間の魔力はエーテリオンに匹敵する魔力となっています』

 

 

『魔法評議院の保有する〝聖なる光〟。一国をも消滅させると言われるアレと同格ですと?』

 

 

『それをドラゴンの大群に向けて放出するのです。それがエクリプス2計画』

 

 

 

 

 

ヒスイにエクリプス2計画の事を教えた未来人がルーシィだとすれば、ドラゴンに対する〝対策〟を持っていないというのはウソという事になる。

 

 

「(お前が姫にエクリプス2を助言したハズ。それと〝4日〟に来たというのもウソだ。何の為に仲間にウソをつく!?)」

 

 

そんな未来ルーシィを、アルカディオスは疑念の目で見据えていたのであった。

 

 

「本当……ゴメン。これじゃあたし……何の為に来たのか……今日までどうしていいかもわからずに街をウロウロしてた……」

 

 

「いや……十分だよルーシィ」

 

 

「……ユーノ」

 

 

謝罪の言葉を口にする未来ルーシィに対して、ユーノが優しい笑みを浮かべながら彼女に歩み寄る。

 

 

「君がこうして僕たちのもとへとやって来てくれて、危険を教えてくれた。それだけでもう未来は動き始めている……あとは現代(いま)の僕たちが何とかする」

 

 

そう言うとユーノは未来ルーシィの後頭部にそっと手を置いて、自分の額と彼女の額を密着させる。

 

 

 

「ありがとう──僕たちの未来の為に」

 

 

 

そしてユーノは未来ルーシィに感謝の言葉を述べ……それを聞いた未来ルーシィは静かに大粒の涙を流したのであった。

 

 

「必ず未来を変えてみせる」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「全てが真実とは限らない?」

 

 

「それって未来のルーシィがウソをついてるって事?」

 

 

「1万を超えるドラゴン……エクリプス……魔力……いくつかつじつまの合わない事があるんだ。ルーシィの言葉が虚偽なのか、ルーシィそのものが虚構の存在なのか」

 

 

未来ルーシィからの情報の中に感じたいくつかの矛盾。それを何なのかと考え込むジェラール。

 

 

彼の言う通りルーシィがウソをついているのか……未来ルーシィの存在そのものがまやかしなのか……それとも……

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「もう一遍言ってみろやコラ。誰が誰ほどじゃねえって?」

 

 

「ハァ…ハァ…ハァ……」

 

 

視点は戻りクロッカスの街の一角……そこにはガジルとローグの姿があり、ローグの方はすでにガジルに叩きのめされたのか、ボロボロの姿で跪いている。

 

 

「少しずつわかってきた気がする……お前が何で妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入ったのか」

 

 

「何の話だ」

 

 

突然跪きながらそんな事を言い始めたローグに、疑問符を浮かべるガジル。

 

 

「憶えてないのも無理はない……オレは坊主頭で、ルーテシアやアギトと同い年のガキだった。お前のいたギルド幽鬼の支配者(ファントムロード)に憧れるただのガキだった」

 

 

それを聞いてガジルの目が僅かに見開かれるが、ローグはそれに気づかずに話を続ける。

 

 

「オレも大きくなったら幽鬼の支配者(ファントムロード)に入りたかったんだ。だが……妖精の尻尾(フェアリーテイル)との抗争に敗れ、ギルドは解散。こともあろうかお前はルーテシアやアギトと共に妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入った。信じられなかった……よりによって幽鬼の支配者(ファントムロード)を潰したギルドに入るとはな……けど……そこには意味があるハズ。お前が妖精の尻尾(フェアリーテイル)にいる意味。それがわかってきたんだ……」

 

 

ローグはそこまで語ると、一旦言葉を止めて一呼吸置いてから再び口を開き……

 

 

 

「仲間……だろ?」

 

 

 

口元に僅かな笑みを浮かべながらそう言い放った。

 

 

剣咬の虎(セイバートゥース)にそんな意識はない。オレたちはマスターの兵隊であり、命令は絶対であり、勝利が絶対であった」

 

 

そう…絶対であったハズの剣咬の虎(セイバートゥース)の理念。しかしその理念は大会2日目の夜にギルドの宿に殴り込んできたナツの言葉によって覆された。

 

 

『ギルドなら仲間、大切にしろよ』

 

 

その言葉を聞いてから、ローグの中ではずっとある疑念が渦巻いていたのだ。

 

 

「ギルドって何なんだ…仲間って…オレは何の為に戦っているのか……お前たちが強い理由も今ならわかる。オレたちじゃ勝てない訳だ」

 

 

地面に両膝と両手をつきながらそう語り終えたローグ。すると、そんなローグの話をずっと黙って聞いていたガジルが口を開く。

 

 

「立て」

 

 

「!」

 

 

「お前は何もわかっちゃいねえ」

 

 

自身を見下ろしながらそう言うガジルに戸惑いの表情を浮かべるローグ。

 

 

「ギヒッ」

 

 

そしてガジルは笑みを浮かべると、ローグにズイっと顔を近づけて……

 

 

 

「カエルは──仲間だろ」

 

 

 

そう言い放ったのであった。

 

 

「カエル?」

 

 

カエルと聞いてローグの頭に真っ先に浮かんだのは、いつも自分と一緒にいるカエルの着ぐるみを着たフロッシュの姿。

 

 

「フロッシュは猫だ!!」

 

 

「正確にはエクシードだ」

 

 

立ち上がってガジルを睨むローグだが……ガジルが諭すような顔で「な?」と問い掛けると、その表情を綻ばせた。

 

 

「そうだ、フロッシュはオレの仲間だ」

 

 

ずっと疑問に思っていた〝仲間〟という存在……その答えが自分のすぐ側にあった事に気がついたローグは、小さく笑みを浮かべた。

 

 

「かなわないな」

 

 

そしてローグが負けを認めようとしたその時……

 

 

 

《ローグ!!》

 

 

 

「!!」

 

 

突然どこからか、そんな不気味な声が聞こえてきた。すぐに周囲を見回すが、今この場にはローグとガジル以外誰もいない。

 

 

《前を見ろ》

 

 

「!?」

 

 

《敵はまだ、目の前に立っている》

 

 

「誰だ!? どこにいる!?」

 

 

「あ? どうした?」

 

 

ガジルには聞こえていないのか、いきなり狼狽え始めたローグに疑問符を浮かべている。

 

 

《ローグ……ガジルを殺せ。それがお前の運命だ》

 

 

「オイ!! どこにいるんだ!!! どこに……」

 

 

《バカめ……》

 

 

「!!!」

 

 

その声を聞いてローグは自身の足元へと視線を移す。するとそこには……

 

 

 

《オレはお前の影だ》

 

 

 

ローグの影が……ジッとローグ本人の姿を見据えていたのであった。

 

 

 

 

 

《力を貸してやる──ガジルを殺せ》

 

 

 

 

 

つづく

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