LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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開戦

 

 

 

 

 

フィオーレ王国の北東・オークの街。

 

その街に存在する魔導士ギルド『幽鬼の支配者(ファントムロード)

 

 

「だっはー! 最高だぜー!!」

 

 

「妖精の尻尾(ケツ)はボロボロだってよ!」

 

 

「ガジルの奴、その上三人もやったらしいぜ」

 

 

「ヒュー!!」

 

 

「そういやマスターの言ってた〝奴〟って誰よ?」

 

 

「さあ?」

 

 

「手は出すなとか言ってたな」

 

 

「どうでもいいさ。みじめな妖精どもに乾杯だ!!」

 

 

「今頃羽をすり合わせて震えてるぜ!」

 

 

昨日襲った妖精の尻尾(フェアリーテイル)の悲劇を肴に酒を呑む魔導士たち。すると、一人の男が席を立つ。

 

 

「あ! いけね、こんな時間だ」

 

 

「女かよ?」

 

 

「まあまあいい女だ。依頼人だけどな。脅したら報酬を二倍にしてくれてよぉ」

 

 

「オレなら三倍はいけるよ」

 

 

「言ってろタコ」

 

 

そんな会話をしながら男は仕事へ行くために出入り口へと向かう。その時……

 

 

 

ゴッ!!

 

 

 

『!!!』

 

 

突如扉が吹き飛び、仕事に行こうとした男がテーブルを巻き込んで吹き飛ばされた。そしてギルド内の全員が出入り口の方向を見る。そこに居たのは……

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)じゃああっ!!!!」

 

 

 

マスター・マカロフを筆頭とした妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士たちであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第二十一話

『開戦』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おおおああ…らあっ!!!」

 

 

「「「ぐああああっ!!!」」」

 

 

手始めにナツが近くにいた魔導士たちを吹き飛ばす。

 

 

「誰でもいい!! かかって来いやぁ!!!」

 

 

「調子にのるんじゃねえぞコラ!!!」

 

 

「やっちまえーーー!!!」

 

 

ナツの言葉にファントムの魔導士たちに火が着き、集団となって一斉に襲い掛かってくる。

 

 

「ストラグル・バインド!!!」

 

 

そんな集団の一部の足元に、ユーノが拘束魔法で捕縛する。

 

 

「ウェイブ・ゲイザー!!」

 

 

ドゴォォォォオン!!!

 

 

「「「ぎゃああああっ!!!」」」

 

 

そして捕縛した集団の足元に魔法陣を展開し、その魔法陣から魔力の衝撃波を放ち、その衝撃波で集団を吹き飛ばす。

 

 

「でりゃああああっ!!!」

 

 

スバルもマッハキャリバーの機動力を活かしながら魔導士たちを殴り倒していく。そして集団の前で止まると、リボルバーナックルに魔力を込め……

 

 

「リボルバァァァア……キャノン!!!!」

 

 

ドオォォォォオン!!!

 

 

「「「うあぁぁぁあああ!!!」」」

 

 

魔力を纏った強力な拳を放ち、集団を吹き飛ばす。

 

 

「貰ったぁああ!!」

 

 

「っ!?」

 

 

すると、スバルの背後から魔法剣を持った男が切り掛かる。だが…

 

 

ドォン!

 

 

「ぐはっ!!」

 

 

それは飛んできた魔力弾に阻止された。スバルは魔力弾が飛んできた方向を見ると、そこにはティアナが立っていた。

 

 

「ティア!」

 

 

「詰めが甘いのよバカスバル」

 

 

そう言ってティアナは自分の周囲に大量の魔力弾を生成する。

 

 

「クロスファイアー……フルバーストッ!!!」

 

 

そしてそれを全方位に向かって発射した。

 

 

「「「ぐあぁぁあ!!」」」

 

「「「ぎゃぁぁあ!!」」」

 

 

ティアナが放った魔力弾の雨は味方には当たらず、的確にファントムのみに直撃していった。

 

 

「マスター・マカロフを狙え!!!」

 

 

やがて、ファントムたちは一斉に大将であるマカロフを狙い始める。

 

 

「かぁーーーー!!!!」

 

 

するとマカロフは一瞬で巨大化し、ファントムたちを叩き潰した。

 

 

「ぐああっ!!」

 

 

「ばっ…バケモノ!!!」

 

 

「貴様等はそのバケモノのガキに手ぇだしたんだ。人間の法律で自分(てめぇ)を守れるなどと夢々思うなよ」

 

 

「ひっ…ひぎ…」

 

 

マカロフの圧倒的な強さと威厳…そして殺気に当てられ、男は恐怖で涙を流す。

 

 

「つ…強ぇ!!!」

 

「兵隊どももハンパじゃねえ!!!」

 

「こいつらメチャクチャだよ!!!」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士たちの強さに、ファントムは恐れを抱く。

 

 

「ジョゼーー!!! 出て来んかぁっ!!!」

 

 

「どこだ!! ガジルとエレメント4はどこにいる!?」

 

 

敵を薙ぎ払いながらマカロフとエルザはファントムの主力たちを探す。そんな様子を、天井の組み木の上から見ている影が四つ。

 

 

「あれが…妖精女王(ティターニア)のエルザか……」

 

 

「他の奴等もハンパねーな」

 

 

「うん……凄い」

 

 

「ギルダーツ、ラクサス、ミストガン、クロノは参加せず…か。なめやがって」

 

 

上からゼスト、アギト、ルーテシア、ガジルの順で口を開く。どうやらこの四人は現在傍観に徹するようである。

 

 

「しかし…これほどまでマスター・ジョゼの計画通りに事が進むとはな……せいぜい暴れ回れ…クズどもが…」

 

 

そう言って不気味な笑みを浮かべるガジル

 

 

「……………」

 

 

そして下の様子を、ゼストだけが複雑そうな表情で眺めていた。

 

 

場所は戻って下の階では……

 

 

「火竜の咆哮!!!」

 

 

「アイスメイク…〝槍騎兵(ランス)〟!!!」

 

 

「ディバイィィン…バスタァーー!!!」

 

 

ナツ、グレイ、なのはがファントムたちを一掃する。そこへエルザ、ティアナ、スバル、ユーノが合流し、全員で背中合わせになる。

 

 

「こいつ等、数ばかりでたいしたことないわ!」

 

 

「どうする? このまま押し切る?」

 

 

「もっちろん!!!」

 

 

ティアナがそう言い、ユーノが問い掛けると、スバルが元気良く答える。どうやらまだまだ戦えるようだ。

 

 

「エルザ!! ここはお前たちに任せる。ジョゼはおそらく最上階。ワシが息の根を止めてくる」

 

 

「お気をつけて」

 

 

ジョゼを仕留めるために最上階に向かうマカロフをエルザはそう言って見送った。

 

 

そしてその様子を見ていたガジルたちは……

 

 

「へへっ…一番厄介なのが消えたトコで…ひと暴れしようかね。ゼスト、テメェはどうする?」

 

 

「……遠慮させてもらう」

 

 

「旦那が行かねーならアタシもいいや」

 

 

「チッ…ノリの悪ぃ奴等だな。ルーテシアはどうする?」

 

 

「……ガジルが行くなら…行く」

 

 

「そうかい…んじゃ行くかぁ!!!」

 

 

そう言ってガジルとルーテシアはゼストとアギトを残して下へと飛び降りた。

 

 

「はぁーーー!!!」

 

 

ガジルは腕を鉄棒に変形させて、近くに居た味方ごと相手を殴り倒した。

 

 

「来いい!! クズ共!! 鉄の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)ガジル様が相手だ!!!」

 

 

そう言うと、ガジルに向かって殴りかかる男が一人。

 

 

「漢はぁーー!! クズでも漢だぁ!!!」

 

 

それは、腕に魔物を接収(テイクオーバー)させたエルフマンであった。そんなエルフマンの攻撃を、ガジルは腕を鉄に変換させて防ぐ。

 

 

「む」

 

 

「ギヒッ」

 

 

ガジルは笑みを浮かべると、再び腕を鉄棒に変形させて攻撃するが、避けられる。そして二度目の攻撃も避けられ、三度目の攻撃は受け止められた。

 

 

「ほう……中々やる」

 

 

「漢は強く生きるべし」

 

 

そう言って睨み合うガジルとエルフマン。

 

その様子を、ルーテシアは静かに傍観したあと、目の前にいるティアナとスバルに向き直った。

 

 

「こ…子供!?」

 

 

「アンタも…ファントムの一員なの?」

 

 

「そう」

 

 

相手が幼い少女だと言う事にスバルは驚き、ティアナの問い掛けに静かに頷くルーテシア。

 

 

「なら悪いけど、容赦はしないわよっ!!」

 

 

そう言ってルーテシアにクロスミラージュを向けるティアナ。しかしルーテシアはまったく動じず、右手に嵌めた紫色の宝石が埋め込まれた手袋…〝アスクレピオス〟をゆっくりと翳す。

 

 

「「っ……!」」

 

 

それを見て身構えるティアナとスバル。そしてルーテシアはゆっくりと口を開いた。

 

 

「召喚……来て…ガリュー」

 

 

その瞬間、ルーテシアの目の前に魔法陣が出現し、そこから人型の姿をした黒い蟲『ガリュー』が現れた。

 

当然、驚愕するティアナとスバル。

 

 

「な…なにあれ!?」

 

 

「あれは…〝召喚魔法〟!!?」

 

 

「召喚魔法?」

 

 

「異界の生物を喚び出す失われた魔法(ロスト・マジック)の一種よ! ルーシィの星霊魔法の鍵がないバージョンって言ったら分かりやすいかしら?」

 

 

「なんとなくだけどね……」

 

 

そんな会話をしながら二人は目の前にいるルーテシアとガリューを見据える。

 

 

 

ヴヴ…

 

 

 

「っ!?」

 

 

「消えた!?」

 

 

次の瞬間、ガリューの身体がブレ、気がつけば姿が消えていた。そして……

 

 

「きゃあっ!!」

 

 

「ティア!? うああっ!!」

 

 

最初にティアナが、次にスバルが殴り飛ばされた。そして見ると、ガリューは先ほどの場所に何事もなかったかのように立っていた。

 

 

「は…速い……!」

 

 

「まったく見えなかったわね」

 

 

ガリューの圧倒的なスピードに驚きを隠せない二人。再び立ち上がってガリューと対立する。すると……

 

 

 

ゴゴゴゴゴゴゴ……

 

 

 

突如、ギルド全体が揺れ始めた。

 

 

「な…何だ!?」

 

 

「地震!?」

 

 

「やべーなこれぁ」

 

 

「な…な…なにがだよ!!?」

 

 

グレイの呟きにファントムの一人が問い掛ける。

 

 

「これはマスター・マカロフの〝怒り〟なの」

 

 

「巨人の逆鱗…もう誰にも止められない」

 

 

「それが漢、マスター・マカロフ」

 

 

「覚悟しろ! マスターが居る限り、我等に負けはない!!!」

 

 

上からなのは、ユーノ、エルフマン、エルザの順番でそう言うと、妖精の尻尾(フェアリーテイル)全体の士気が向上する。

 

 

 

 

 

だがその時……

 

 

 

 

 

ズドン!!

 

 

突然天井から何かが落ちてきた。

 

 

「何だ!?」

 

 

「何か落ちて…」

 

 

「あ、あれって……」

 

 

「そんな…まさか……!!?」

 

 

その落ちてきたものを見て、一同は驚愕する。何故ならそれは……

 

 

 

「あ…あ…う…あ……ワ…ワシの…魔力が……」

 

 

 

弱々しい姿となったマカロフであったからだ。

 

 

「じっちゃん!!」

 

 

「マスター!!」

 

 

マカロフの周りに戦いを中断したナツ達が駆け寄る。

 

 

「ど…どうなってるの!!? マスターから魔力を感じない!!!」

 

 

「ありえない…一体どうやって!!?」

 

 

魔力を失ったマカロフを見て動揺するティアナとユーノ。

 

 

「いけるぞ!!これで奴等の戦力は半減だ!!!」

 

 

「今だぶっ潰せ!!!」

 

 

動揺する妖精の尻尾(フェアリーテイル)に対し、それを好機と見て意気揚々と襲い掛かってくるファントムたち。その勢いに、しだいに追い詰められる。

 

 

「(いかん…戦力だけではない……士気の低下の方が深刻だ)」

 

 

涙を拭い、そう判断したエルザは……

 

 

「撤退だーー!! 全員ギルドへ戻れーー!!!」

 

 

そう命令を出した。

 

 

「!!!」

 

 

「バカな!!!」

 

 

「漢は引かんのだーー!!!」

 

 

「エルザさん! 私たちまだ戦えます!!」

 

 

「私も!!」

 

 

当然反対する一同。それでもエルザは曲げない。

 

 

「マスターなしではジョゼには勝てん!! 撤退する!! 命令だ!!!」

 

 

エルザのその言葉に、納得は出来なくも撤退を始める妖精の尻尾(フェアリーテイル)たち。その様子を天井に張り付いてるガジルとガリューの肩に乗ったルーテシア。そしてゼストとアギトが見ていた。

 

 

「あらあらもう帰っちゃうのかい? ギヒヒ」

 

 

「なんでぇ、根性のねえ奴等だな」

 

 

「いや……マスターがやられたことによって奴等の士気が著しく低下している…もはや結果は火を見るより明らかだ。妖精女王(ティターニア)の判断は正しい」

 

 

口々にそう言うガジルたち。すると、彼等の側にスウっと目隠しをした巨漢の男が現れる。

 

 

「悲しい…」

 

 

「うわっ!? テメェ急に現れんな!!!」

 

 

「アリア……相変わらず不気味なヤローだ」

 

 

突然現れた男…アリアにアギトは驚きながら怒鳴り、ガジルは組み木に座りなおす。

 

 

「よくあのマスター・マカロフをやれたな」

 

 

「全てはマスター・ジョゼの作戦。素晴らしい!!!」

 

 

「いちいち泣くな」

 

 

ゼストの問いに答えながら大量の涙を流すアリア。

 

 

「で……ルーシィとやらは捕まえたのかい?」

 

 

「〝本部〟に幽閉している」

 

 

そんなガジルとアリアの会話を聞いている男が二人いた。

 

 

「っ……何だって?」

 

 

「ガジルーー!!!」

 

 

ユーノとナツの二人であった。

 

 

「いずれ決着をつけようぜ…火竜(サラマンダー)

 

 

そう言い残して、ガジルたちはアリアの魔法によってその場から消えた。

 

 

「ルーシィが捕まった?」

 

 

「え!!?」

 

 

ルーシィが捕まったと言う事に驚くハッピー。

 

 

「撤退だ!! 退けぇ!!!」

 

 

「逃がすかぁ!!! 妖精の尻尾(フェアリーテイル)!!!」

 

 

撤退しようとする妖精の尻尾(フェアリーテイル)に追い討ちを掛けようとするファントムたち。すると……

 

 

「お?」

 

 

「一緒に来てもらうよ」

 

 

ユーノがその内の一人の男の襟首を掴む。

 

 

「行くよナツ!!!」

 

 

「おう!!」

 

 

「どうするの!!?」

 

 

「決まってんだろ!!」

 

 

「「ルーシィを助けに行く!!!」」

 

 

ナツとユーノは声を揃えてそう言い、ルーシィを助けに向かった。

 

 

「こんな所で退けるかよ!!! レビィたちの仇をとるんだ!!!」

 

 

撤退にも関わらす戦おうとするグレイ。そんなグレイを、なのはが抱き締めて止めた。

 

 

「お願い…グレイ……」

 

 

「なのは……」

 

 

「悔しいのはみんな一緒なの…でも…マスターが抜けた穴は大きすぎる……今は退くしかないの……」

 

 

「くっ……!!」

 

 

なのはの説得に、グレイは悔しそうに歯を食い縛りながら撤退を始めたのだった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その頃…街の外れではユーノがファントムの男を引きずりながらナツとハッピーと共に歩いていた。

 

 

「教えて…ルーシィはどこに居るの?」

 

 

「し…知らねえよ……誰だそれ……」

 

 

ユーノの問いに男がそう答えた瞬間……

 

 

 

ドゴォォォン!!

 

 

 

「がぁぁっ!!!」

 

 

男は地面に強く叩きつけられ、ユーノに首を鷲掴みにされる。

 

 

「言え……ルーシィの身に何かあったら……君の首をへし折ってしまいそうだ」

 

 

メガネの奥から冷たい眼光を輝かせながら低い声でそう問い詰めるユーノ。男の首を掴んでいる手にも力が入り、ミシミシと嫌な音が出ている。

 

 

「し…知ら…ねえ……そんな奴…本当に知らねえ……けど…オレたちの〝本部〟は…この先の丘にある……そ…そこかも……」

 

 

そこまで言うと、男は口からブクブクと泡を吹いて気絶した。それを聞いたユーノは男の首から手を離す。

 

 

「だ、そうだよ。行こうナツ、ハッピー」

 

 

そう言ってファントムの本部へと向かうユーノ。

 

 

「ユ…ユーノのキレた所……久しぶりに見たけど…やっぱおっかねえな……」

 

 

「あい……」

 

 

先ほどのキレたユーノに恐怖するナツとハッピー。

 

 

「早く行くよっ!!!」

 

 

「「あいさー!!!」」

 

 

ユーノに怒鳴られ、ナツとハッピーは急いでユーノについて行った。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方その頃、幽鬼の支配者(ファントムロード)の本部では……

 

 

「…ん? え? え!? ちょ…何コレ!? どこぉ!!?」

 

 

ルーシィは両手を縛られた状態で独房のような所で目覚めた。

 

 

「お目覚めですかな。ルーシィ・ハートフィリア様」

 

 

すると、独房に一人の男が入ってくる。

 

 

「誰!?」

 

 

幽鬼の支配者(ファントムロード)のギルドマスター、ジョゼと申します」

 

 

男の正体は全ての元凶である男…ジョゼ・ポーラであった。

 

 

「ファントム!!?(そうだ……あたしエレメント4に捕まって……)」

 

 

ルーシィは自分がエレメント4の手によって捕まったことを思い出す。

 

 

「このような不潔な牢と拘束具……大変失礼だとは思いましたが、今はまだ捕虜の身であられる。理解のほどをお願いしたい」

 

 

「これ解きなさい!! 何が捕虜よ!! よくもレビィちゃんたちを!!」

 

 

「あなたの態度次第では捕虜ではなく〝最高の客人〟としてもてなす用意も出来ているんですよ」

 

 

「何それ…」

 

 

ジョゼの言葉にルーシィが疑問を感じていると、彼女の足にムカデが這う。

 

 

「ひゃあっ!!」

 

 

「ね? こんな牢はイヤでしょう? おとなしくしていればスイートルームに移してあげますからね」

 

 

「な…何であたしたちを襲うのよ?」

 

 

「あたしたち?ああ、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の事ですか? ついでですよ、ついで」

 

 

ルーシィの問い掛けにジョゼは顎を撫でながら意地の悪い笑みを浮かべて言った。

 

 

「私たちの本当の目的はある人物を手に入れる事です。その人物がたまたま妖精の尻尾(フェアリーテイル)にいたので、ついでに潰してしまおう……とね」

 

 

「ある人物?」

 

 

「あのハートフィリア家のお嬢さんとは思えないニブさですねぇ」

 

 

ジョゼはムカデを踏み潰しながら続けた。

 

 

 

「あなたの事に決まってるでしょう。ハートフィリア財閥(コンツェルン)令嬢…ルーシィ様」

 

 

 

ジョゼがそう言うと、ルーシィは恥ずかしそうに顔を赤くする。

 

 

「な…何でそれ知ってんの?」

 

 

「あなた…ギルド内では自分の身分を隠していたようですねぇ。この国を代表する資産家の令嬢がなぜに安く危険な仕事をしているのかは知りませんがね」

 

 

「誘拐…ってこと?」

 

 

「いえいえ滅相もございません。あなたを連れてくるよう依頼されたのは、他ならぬあなたの父上なのです」

 

 

それを聞いたルーシィの表情は驚愕に染まる。

 

 

「そんな…ウソ……なんであの人が…」

 

 

「それはもちろん可愛い娘が家出をしたら捜すでしょう、普通」

 

 

「しない!! あの人はそんな事気にする人じゃない!!! あたし絶対帰らないから!! あんな家には帰らない!!!」

 

 

「おやおや、困ったお嬢様だ」

 

 

ジョゼは溜め息混じりに言う。

 

 

「今すぐあたしを解放して」

 

 

「それは出来ません」

 

 

ルーシィの申し出をジョゼは即答で却下する。すると、ルーシィは焦ったような表情を見せる。

 

 

「……てか、トイレ行きたいんだけど」

 

 

「これはまた随分古典的な手ですね」

 

 

「いや…マジで…うぅ……助けて~~」

 

 

「どうぞ」

 

 

そう言ってジョゼが指差したのは、独房に備え置かれていたバケツであった。

 

 

「ほほほ……古典ゆえに対処法も多いのですよ」

 

 

「バケツかぁ……」

 

 

「するんかいっ!!!!」

 

 

もぞもぞとしているルーシィを見てジョゼは驚く。まさか本当にしようとするとは思わなかったのであろう。

 

 

「な…なんてはしたないお嬢様なんでしょう!! そして私はジェントルメン!!」

 

 

しばらく百面相したあと、そう言って後ろを向くジョゼ。それを見たルーシィはニヤリと笑い……

 

 

 

「えいっ」

 

 

「ネパァーーーーー!!!!!」

 

 

 

何と男の急所を思いっきり蹴り上げた。これには流石のジョゼも溜まらずに倒れ込む。

 

 

「古典的な作戦もまだまだ捨てたもんじゃないわね。今度小説でつかお♪」

 

 

「ぬぽぽぽぽ!!!」

 

 

「それじゃ! お大事に♪」

 

 

苦しむジョゼにウィンクしながら独房から出ようとするルーシィ。しかし、出口の前で動きを止めた。何故なら……

 

 

「え?」

 

 

ルーシィの居た独房は空高く立った塔にあり、下はとても降りられるような高度ではなかった。

 

 

「残念……だったねぇ…ここは空の牢獄…」

 

 

腰をトントンと叩きながら何とか起き上がるジョゼ。

 

 

「よくも…やってくれましたねぇ……」

 

 

「う…」

 

 

目の前にはジョゼ…後ろは断崖絶壁。逃げられる状況ではなかった。

 

 

「さあ……こっちへ来なさい…お仕置きですよ…幽鬼(ファントム)の怖さを教えてやらねばなりませぬ」

 

 

そう言ってゆっくりとルーシィへ歩み寄るジョゼ。すると、ルーシィはやがて決心したような顔付きになり……

 

 

 

たんっ

 

 

 

何と、塔から飛び降りたのだ。

 

 

「な!?」

 

 

当然驚愕するジョゼ。

 

 

「(声が聞こえたんだ!!! 絶対…いる!!!)」

 

 

そしてルーシィは真っ逆さまに落下しながら、頭の中に浮かんだ人物の名を叫んだ。

 

 

 

 

 

「ユーノさーーん!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チェーン・バインド!!!!」

 

 

 

その瞬間、ルーシィの体に鎖型のバインドが巻き付き、何かに引き寄せられた。目を閉じていたルーシィが目を開けると、そこには……

 

 

「まったく…無茶する人だね……君は」

 

 

ルーシィをお姫様抱っこして優しく笑いかけるユーノの姿があった。

 

 

「やっぱり…いると思った……」

 

 

そんなユーノを見たルーシィは顔を赤くしながら微笑んだ。

 

 

「ルーシィが降ってきたーーー!!!」

 

 

「オイ!! 大丈夫か!?」

 

 

そんな二人にナツとハッピーが駆け寄る。

 

 

「うん…なんとか」

 

 

両手に巻かれたロープをユーノ解いてもらいながらルーシィは答えた。

 

 

「よかった!! オイラたちもギルドに戻ろう!!!」

 

 

「はぁ? ここが本部だろ? だったら…」

 

 

「エルザは撤退って言ってたよ」

 

 

「ビビってんだよ!! オレはこんな奴等ちっとも怖くねえ!!!」

 

 

「マスターだって重症なんだよ!!」

 

 

「じっちゃんの仇も取るんだよ!!!」

 

 

「ナツ一人じゃ無理だよ!!」

 

 

「何だと!?」

 

 

「無理だよ!」

 

 

「二回言うな!!」

 

 

「みんなケガしてんだよ!!」

 

 

「オレはしてねー!」

 

 

「ナブなんか骨折して…」

 

 

「弱ぇんだアイツは!」

 

 

「ウォーレンだって……」

 

 

ナツとハッピーが戻るか戻らないか激しく口論する。そんな口論を聞いていたルーシィが段々と表情を暗くする。

 

 

「ごめん…」

 

 

「「「?」」」

 

 

突然のルーシィの謝罪に三人は首を傾げる。

 

 

「全部…あたしのせいなんだ……」

 

 

そう言うルーシィの声は段々と涙声になり、そして……

 

 

「それでもあたし……ギルドにいたいよ……妖精の尻尾(フェアリーテイル)が大好き」

 

 

大粒の涙を流しながらそう言った。

 

 

「ルーシィ? どうしたの!? 何の話!!?」

 

 

「いればいいって!! 何だよそれ……」

 

 

「ナツ…戻ろうよ」

 

 

「お…おう。しゃあねえな……」

 

 

ルーシィの涙を見たナツは折れ、そのままギルドへと戻ることになったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その後、ギルドに戻って来た妖精の尻尾(フェアリーテイル)は……

 

 

「痛て…」

 

「あーくそっ!!」

 

「まさかオレたちが撤退するハメになるとは!!!」

 

「悔しいぜえ!!」

 

「ギルドやレビィたちの仇も取れてねえ!」

 

「ちくしょお!!!」

 

 

ファントムに勝つことが出来なかったことで悔しがる者…

 

 

「奴等の本部はここだ」

 

「南西の高台から遠距離魔法で狙撃すれば」

 

「今度は爆弾魔水晶(ラクリマ)、ありったけ持っていくんだ!!」

 

所持(ホルダー)系魔導士用の強力な魔法書を倉庫から持って来い!!」

 

 

今度こそファントムを潰そうと奮起する者がいた。その様子を、ルーシィは浮かない表情で見ていた。

 

 

「どーした? まだ不安か?」

 

 

そんなルーシィにグレイ、なのは、スバル、ティアナ、エルフマンが歩み寄る。

 

 

「ううん…そう言うのじゃないんだ……なんか…ごめん……」

 

 

「まあ金持ちのお嬢様は狙われる運命よ。そしてそれを守るのが漢」

 

 

「エルフマン…そういう事言わないの」

 

 

エルフマンの発言をティアナが注意する。

 

 

「でも驚いたの…まさかルーシィがあのハートフィリア家の娘だったなんて……どうして黙ってたの?」

 

 

なのはの問いにルーシィは顔を俯かせながら口を開く。

 

 

「隠してたわけじゃないんだけど…家出中だからね…あまり話す気にもなれなくて……一年間も家出した娘に関心なかったクセに…急に連れ戻そうとするんだもんな……パパがあたしを連れ戻すためにこんな事したんだ…最低だよ。でも…元を正せばあたしが家出なんかしたせいなんだよね……」

 

 

「それは違うよ!! 悪いのルーシィのお父さ…」

 

 

「バカスバル!!」

 

 

「あ…いや……ファントムだよ!!!」

 

 

ティアナに怒鳴られ、すぐに訂正するスバル。

 

 

「あたしの身勝手な行動で……まさかみんなにこんなに迷惑かけちゃうなんて…本当にゴメンね…あたしが家に戻れば済む話なんだよね」

 

 

「そーかなあ」

 

 

ルーシィの話を聞いて、今まで黙っていたナツが口を開く。

 

 

「つーか『お嬢様》ってのも似合わねえ響きだよな。この汚ねー酒場で笑ってさ……騒ぎながら冒険してる方がルーシィって感じだ」

 

 

「そうだね」

 

 

ナツに続いて、ユーノも口を開く。

 

 

「ルーシィ、帰ってくる前に…ここにいたいって言ったよね? 戻りたくない場所に無理に戻る必要はないんだ。君は妖精の尻尾(フェアリーテイル)のルーシィだ。ここが君の家であり…帰るべき場所なんだよ」

 

 

「……グス……ユーノさぁん……」

 

 

ユーノにそっと頭を撫でられ、ルーシィは再び目に涙を浮かべる。

 

 

その光景を全員が微笑ましく見ていた。

 

 

その時……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その通りやぁーーー!!!!」

 

 

ドバンッ!!

 

 

『!!!?』

 

 

そんな叫びと共に地下への出入り口が乱暴に開かれ、全員が身構える。すると、複数の足音が階段を降りてくる。

 

 

「いやーギルドがボロボロになってたのを見た時は驚いたけど、まさかこないな事になっとるとはなぁ。話は全部聞かせてもろたで!! けど安心しいや!! 私らが来たからにはもう大丈夫や!!」

 

 

階段を降りてきた集団を見て、ギルド全体が騒然とした。

 

 

一人はピンク色の髪をポニーテールにして、凛とした雰囲気を持つ女性。

 

一人は緑の衣服を身に纏い、優しげな表情をした金髪の女性。

 

一人は赤い髪を二又の三つ編みにし、赤いゴスロリ風の服に身を包んだ少女。

 

一人は筋骨隆々とした身体つきに、何故か犬のような耳と尻尾を生やした男性。

 

一人は輝く長い銀髪に血のような赤い瞳を持った女性。

 

そして最後に…茶色の短髪にヘアピンを着け、一冊の本を持った女性。

 

 

 

 

「私…『八神はやて』が率いる妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強チーム……〝ヴォルケンリッター〟が来たからにはなぁっ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

ついに満を持して…真の最強チームが参戦したのであった。

 

 

 

 

 

 

つづく

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