LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

218 / 240
FAIRY TAILのフィギュア欲しいな……ナツとティアナを並べて飾りたい。

感想お待ちしております。


人と人、竜と竜、人と竜

 

 

 

 

 

「本当にうまくいくの!?」

 

 

「任せとけ!!! なんとかなる!!!!」

 

 

思わぬ助っ人……無限の欲望(アンリミテッドデザイア)のインヴェルノにドラゴンの1頭であるギルクゥザを任せたナツは、とある作戦を実行する為にハッピーと共に空を駆け抜けて行った。

 

 

「ナツ~、ハッピ~、待ってよ~」

 

 

「もう見えなくなっちゃったね」

 

 

「お着換えに少々時間がかかりすぎかと」

 

 

「もぉっ」

 

 

そしてその場に取り残されたルーシィとユーノ。因みにジルコニスによって服を消されてしまったルーシィはバルゴに持ってきてもらった星霊界の服に着替えている。

 

 

「それにしても…ナツは本当にメチャクチャな作戦を思いついたね」

 

 

「でも……何とかしてくれるって期待しちゃうのよね、ナツには」

 

 

「ははっ…同感!」

 

 

そう言ってユーノとルーシィはお互いに笑い合いながらナツが飛んで行った方向を眺める。そんな2人に対してバルゴが「でぇきてぇるぅ」と口にして、2人そろって赤面したのは割愛しよう。

 

 

「あ…そうだルーシィ、これ……」

 

 

「?」

 

 

すると、ユーノは思い出したようにポケットから先ほどギルクゥザに襲われた際に拾ったメモ帳を取り出してルーシィに見せる。

 

 

「あたしのメモ帳? 何でユーノが?」

 

 

「さっきの廃材置き場で、ドラゴンに襲われた時に拾ったんだ。ルーシィが使ってたメモ帳に似てたからもしかしてと思って」

 

 

「あたしのメモ帳が何で廃材置き場なんかに……?」

 

 

そう言って頭に疑問符を浮かべながらユーノからメモ帳を受け取ったルーシィは、そのメモ帳を広げて書かれている内容を確認する。すると、ある事に気がついた。

 

 

 

「これ……未来のあたしのメモ帳……!?」

 

 

 

そう…そのメモ帳は未来のルーシィがこの時代で落としたメモ帳だったのである。

 

 

そして……そのメモ帳が人類の未来を切り開く鍵となる事は、今はまだ誰も知らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第218話

『人と人、竜と竜、人と竜』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういやぁハッピー……未来のローグと一緒に、仮面をつけた奴もいたよな?」

 

 

「うん、いたよ」

 

 

「そいつはどうした?」

 

 

「あの仮面の奴なら、ティアナが相手してくれてるよ」

 

 

「……そうか……ティアが……」

 

 

ナツの問い掛けにハッピーがそう答え、その言葉を聞くと……ナツは複雑そうな表情で目を伏せる。

 

 

「どうかしたのナツ? あの仮面の奴に心当たりでもあるの?」

 

 

「……いや……ティアが相手してるってんなら大丈夫だろ!! オレたちはオレたちの戦いをすんぞハッピー!!!」

 

 

「あいさーー!!!」

 

 

ナツがそう言うとハッピーは元気に返事を返し、ナツと共に猛スピードで空を駆け抜けて行ったのであった。

 

 

 

「(ティア……絶対に負けんじゃねえぞ。もしそいつからしたニオイが間違いなかったら……そいつは……!!!!)」

 

 

 

だがそんなナツの表情には……一抹の不安が浮かんでいたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「待ちなさいっ!! この仮面男!!!」

 

 

「ククク…」

 

 

一方その頃……ティアナは未来ローグと共にいた仮面の男・ロストを追って、街外れの岩場の丘までやって来ていた。

 

 

「いつまで逃げ回るつもり!!!?」

 

 

「逃げているのではない。戦いの場所を変えているだけだ」

 

 

ロストを追いかけながらクロスミラージュから魔法弾を放つティアナだが、ロストはそれを軽々と回避しながら岩場を走り続ける。

 

 

「……この辺りか」

 

 

「!!」

 

 

すると、突然ロストはそう呟いてピタリと立ち止まったかと思うと……クルリと体を反転させてティアナの方を向く。

 

 

そしてティアナに向かってローブの袖に隠れた両腕を向けると……その隠れた両腕の袖から、数十発もの黒い魔法弾がまるで機関銃のように放たれた。

 

 

「くっ…!!!」

 

 

それに対してティアナはクロスミラージュをダガーモードにして魔法弾を切り裂いて何とか防いでいく。しかしとめどなく降り注ぐ魔法弾の雨に、次第に防ぎ切れなくなっていき……

 

 

「きゃああっ!!!!」

 

 

数発の魔法弾が、ティアナの体に被弾した。

 

 

「痛っ……!!」

 

 

ロストの攻撃を喰らったティアナは、体の魔法弾が当たった箇所を押さえる。だが当たる直前で何とか回避行動をとっていた為か、そのほとんどが掠り傷程度でたいしたダメージではなかった。

 

 

「ここは……」

 

 

そして周囲を見渡すと……そこはもう完全に人気のない岩場の丘であった。少し視線をそらせば、戦場となっているクロッカスも見渡せる。

 

 

「ここならば誰にも邪魔される事なく、誰に見られる事もなく戦う事ができる。オレが戦うには打ってつけの場所だ」

 

 

「……ずいぶんと遠くまで逃げたわね。そこまでして人目に付きたくないのかしら?」

 

 

「こう見えてシャイな性分なのでな」

 

 

「なるほど。確かにそうじゃなきゃ全身を隠したり、趣味の悪い仮面をつけたりしないわよね」

 

 

「そう言う事だ」

 

 

ティアナの皮肉に対しても特に気にしたようすもなく、冷静にそう言葉を返すロスト。

 

 

「上等よ……ますますその仮面を引っぺがして、アンタのツラを拝んでやりたくなったわ」

 

 

「やれやれ……無粋な奴だ」

 

 

そしてティアナは好戦的な笑みを浮かべながらクロスミラージュを……ロストは小さく嘆息しながら両腕の袖から黒い魔力の刃を出し、それぞれ構えたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「闇の文字(エクリテュール)──絶影!!!!」

 

 

「プラズマランサー!! ファイア!!!!」

 

 

「レブラホーン!!!!」

 

 

「バリオンフォーメーション!!!!」

 

 

「雷竜の…咆哮ォ!!!!」

 

 

その頃、アトラスフレイムと戦うラクサスと雷神衆は……それぞれ自身の魔法を全力でアトラスフレイムへと放つ。しかし……

 

 

「効かぬ効かぬ!!!! 我が獄炎は魔法を焼き尽くす!!!!」

 

 

アトラスフレイムの燃え盛る炎の前に、無力と化していた。

 

 

「くそ!!!!」

 

 

「ラクサスとは相性が悪いな」

 

 

「私たちの魔法も全然効かない……」

 

 

魔法がまったく効かないアトラスフレイムを前に毒づくラクサスとフリードとフェイト。

 

 

「水の滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)はいないの!?」

 

 

「炎ならあそこにいるけど」

 

 

「「「!?」」」

 

 

エバーグリーンの言葉に対してビックスローがそう言うと、全員が上空へと視線を向ける。

 

 

「ナツ!!!?」

 

 

するとそこには、ハッピーに抱えられて空を飛んでいるナツの姿があった。

 

 

「おりゃああーーーっ!!!」

 

 

「ぬっ!!?」

 

 

そしてハッピーが抱えていたナツの体を放して彼を投下すると、そのままナツはアトラスフレイムの頭上へと着地した。

 

 

「見つけたぞ、炎のドラゴン!!!!」

 

 

「何だ貴様は!?」

 

 

「オレはナツ。今からお前を──食う」

 

 

そう言うとナツは、何とアトラスフレイムの炎の体にガブッと食らいついたのであった。

 

 

「「「んなーーーー!!!」」」

 

 

「さすがナツだね、こんな事誰も思いつかないよ」

 

 

思いもよらないナツの行動にラクサスや雷神衆たちは驚愕し、事前に作戦を知っていたハッピーは感心したように呟いた。

 

 

「我を食う──ほざきおってぇっ!!!!」

 

 

「食うったら食う!!!! うまい炎だな」

 

 

「離れんかぁっ!!!!」

 

 

「やだ」

 

 

当然アトラスフレイムは憤慨し、頭上のナツを振り落とそうと暴れ始める。だがそれでもナツは負けじとアトラスフレイムの炎に食らいつく。

 

 

「ナツ!! テメェどういうつもりだ!!」

 

 

「コイツは、オレが、もらう!!」

 

 

「もらうって……」

 

 

「城に行ってくれラクサス! ウェンディを助けてくれ!!!」

 

 

「!」

 

 

炎を食らいながらそう言い放つナツの言葉に、反応するラクサス。

 

 

「確かに滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)とはいえ、ウェンディは幼いわ」

 

 

「ウェンディ1人じゃ大変かもしれないね。あ、じゃあエリオの方も……」

 

 

「エリオなら大丈夫だろ。あいつマジで強くなってんだし」

 

 

「ラクサス」

 

 

「そいつはお前に任せていいんだな」

 

 

「コイツを食ってパワーアップしてやるんだ!!」

 

 

「よし!!! 城へ行くぞ!!!」

 

 

「「「了解!!!」」」

 

 

「ハッピーもついてけ」

 

 

「あい!!」

 

 

そしてラクサスと雷神衆たちは、アトラスフレイムをナツに任せて、ウェンディの援護をする為にハッピーと共に城へと向かったのであった。

 

 

「いい加減にせよ!! 小僧!! 我を怒らすな!!!!」

 

 

すると、アトラスフレイムが怒声を上げながら、先ほどよりも激しく暴れ始める。

 

 

「んぎぃぃぃっ!!!」

 

 

「我の炎を食うなど…人間ごときが!!!!」

 

 

ナツを振り下ろす為に、建物や地面などに頭をぶつけながらメチャクチャに暴れ回るアトラスフレイム。だがナツは離れる事無く、必死にアトラスフレイムの炎を食らい続けている。

 

 

「!?」

 

 

するとその瞬間……不思議な感覚がアトラスフレイムを襲った。

 

 

「(この感じ、まさか……)」

 

 

突然感じた身に覚えのある不思議な感覚に、アトラスフレイムは暴れるのをやめて動きを止めた。

 

 

「(いや……ありえん……しかしこの感じは、まさしく──)」

 

 

 

 

 

──炎竜王イグニール!!!!

 

 

 

 

 

そしてアトラスフレイムの目には、頭に乗っているナツの姿が……イグニールと重なって映ったのであった。それを感じ取ったアトラスフレイムは、ナツに向かって問い掛ける。

 

 

「小僧……お前は一体……イグニールとどんな関係が」

 

 

「イグニール? お前イグニールを知ってるのか!?」

 

 

「我が友にして、炎竜の王」

 

 

それを聞いたナツは、二カッと笑いながらアトラスフレイムの問いに答えたのであった。。

 

 

「そっか、イグニールはオレの父ちゃんだ」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

「ハァァァアア!!! 覇王・空波弾!!!!」

 

 

一方、小型竜の群れと魔導士たちの戦場とし化したクロッカスの街中では……アインハルトが1人小型竜の群れを相手に奮闘していた。

 

 

彼女の拳から放たれる強烈な拳圧による衝撃波が、何体もの小型竜を吹き飛ばして倒していく。だが倒したそばから次々と小型竜が湧きだし、アインハルトの表情には疲労の色が浮かんでいた。

 

 

「ハァ…ハァ……倒しても倒してもキリがない……早くはぐれてしまったローグさんの援護に向かわなければいけないのに……!!!」

 

 

顔をしかめながら目の前の小型竜の群れを睨み、そう呟くアインハルト。すると、1体の小型竜が彼女の背後に立ち、口からレーザーのようなブレスを放とうとしていた。

 

 

だがアインハルトは目の前の群れに集中している為、それに気づかない。そして小型竜がレーザーを放とうとしたその時……

 

 

「アクセルスマーーッシュ!!!!」

 

 

「!!?」

 

 

そこへ現れたヴィヴィオが小型竜を殴り飛ばし、彼女の危機を救ったのであった。

 

 

「ヴィヴィオさん!?」

 

 

「アインハルトさん!! 大丈夫ですか!!?」

 

 

「ええ、ありがとうございます」

 

 

ヴィヴィオが殴り飛ばした小型竜を見て、自分が危機に瀕していた事を自覚したアインハルトは、彼女に感謝の言葉を述べた。

 

 

「スティングや剣咬の虎(セイバートゥース)のみんなは?」

 

 

「みんな、ドラゴンと戦っております。私もローグさんと共に戦っていたのですが、小型の相手をしている間にはぐれてしまって……」

 

 

「そうなんですか……」

 

 

ヴィヴィオとアインハルトがそんな会話をしていると、いつの間にか先ほどよりも多くの小型竜が彼女たち2人を囲んでいた。

 

 

「「!!」」

 

 

それに気がついた2人は、咄嗟に背中合わせになってそれぞれ拳を構える。

 

 

「とりあえず今はここを切り抜けましょう!!」

 

 

「そうですね。みなさんと合流するのはその後です」

 

 

「背中は任せましたよ、アインハルトさん」

 

 

「こちらこそ、ヴィヴィオさん」

 

 

そう言って聖王(ヴィヴィオ)覇王(アインハルト)はお互いに笑みを浮かべながら頷き合い、それぞれ目の前の敵へと向かって行ったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「素晴らしい!! これがドラゴンの力、なんたる破壊の力。この力があれば、必ずアクノロギアを殺せる。そしてオレがこの世界を支配する」

 

 

戦場となってすっかり変わり果ててしまったクロッカスの街を、マザーグレアの背に乗って上空から眺めながらそう言葉を口にする未来ローグ。

 

 

「裂けよ大地、燃えよ大空、消えゆけ命の灯火。我は竜の王、竜王祭にて誕生せし新たなる王」

 

 

圧倒的な力を持つドラゴンに立ち向かう滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)と、マザーグレアの生み出した小型竜の大群を相手に奮闘するギルドの魔導士たち……そんな彼らを見渡しながら、静かに語る未来ローグ。

 

 

 

「影はここに光となる──絶対的な光となりて世を照らそう」

 

 

 

ルナティックにより赤く染まった月の光を浴びながら……未来ローグは高らかにそう宣言したのであった。

 

 

だがその時……

 

 

「そんな汚え光はいらねえな!!!!」

 

 

「! ナツか」

 

 

背後から聞こえてきたそんなナツの声。それを聞いた未来ローグは、またか…と言いたげな表情で振り返るが……その表情はすぐに驚愕に染まった。

 

 

 

 

 

 

「オレたちの光は心の中にあるんだ!!!! お前の照らす光じゃ──何も見えねえんだよ!!!!」

 

 

 

 

 

 

そこには……力強く叫ぶナツを乗せて未来ローグへと向かっているアトラスフレイムの姿があったのである。

 

 

そして衝突するアトラスフレイムとマザーグレア……2頭のドラゴン。

 

 

「なぜナツがドラゴンに乗って……裏切ったのかアトラスフレイム!!?」

 

 

「我が心に従ったまで」

 

 

驚愕する未来ローグに対してそう言い放つアトラスフレイム。

 

 

「イグニールの子は我が友の子」

 

 

「よろしくな、オッチャン」

 

 

「オッチャン…」

 

 

ナツの呼び方にやや不満がありそうだが……アトラスフレイムは友であるイグニールとの縁もあって、未来ローグの操竜魔法を打ち破り、その子であるナツと共に戦う事を決意したのである。

 

 

「オレの操竜魔法が……何をした!? ナツ!!」

 

 

「我の意識を遮った魔法か」

 

 

「友達になっただけだ。な?」

 

 

「ウム」

 

 

「友達……だと!!?」

 

 

人間とドラゴンが友達になった……平然とそう言ってのけたナツの言葉に対して、信じられないという表情を浮かべる未来ローグ。

 

 

「行くぞオッチャン!!!!」

 

 

ナツがそう言うと同時に、アトラスフレイムはマザーグレアの体に強く噛みつく。そしてそれを引き剥がそうと、体を大きく振るうマザーグレア。

 

 

「よし!!! 回り込め!!!」

 

 

「マザーグレア!! 後ろを取られるな!!」

 

 

すると未来ローグの指示を聞いたマザーグレアは、自身の体に噛みつくアトラスフレイムの体にブレスを放ったのであった。そのブレスはアトラスフレイムの炎の体を貫き、そのまま山1つを消し飛ばすほどの威力を見せる。

 

 

「我が炎の体にブレスなど効かぬ」

 

 

「私の金剛の体は炎では焼けまい」

 

 

マザーグレアのブレスはアトラスフレイムに効いた様子はなく、逆にアトラスフレイムの燃え盛る炎の牙も、マザーグレアには効いていなかった。

 

 

「我が獄炎を侮るでないぞ。地獄より噴き荒し巨人の炎。そしてそれを喰らった──」

 

 

その瞬間、全身に炎を纏ったナツがアトラスフレイムの頭から高く跳躍して飛び立つ。

 

 

 

 

 

「我が(ともがら)の竜炎を」

 

 

 

 

 

そして……アトラスフレイムの炎を喰らって更なる力を得たナツの凄まじい巨大な竜炎が……マザーグレアの体に叩き込まれたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「陛下……あれは……」

「ドラゴン同士が戦っているのか!?」

「す…すげえけど、何で……!!?」

 

 

その光景を地上から兵たちと共に目にした国王は、目を見開きながら静かに語り始める。

 

 

「美しかった花の都は血で穢れ、混沌(カオス)となった。

 

 

 人と竜と魔の祭。

 

 

 人と人が戦い──竜と竜が戦い──人と竜が戦う

 

 

 これは古の厄災──竜王祭に他ならない」

 

 

そう語り終えると同時に、国王はその場で膝をつき、絶望の表情を浮かべたのであった。

 

 

「止められぬ…もう…何もかも元には戻らぬ……」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「ハァ…ハァ…ハァ……」

 

 

一方で体の至る所にヒレのようなものを生やしているドラゴンを相手に奮闘するローグだが、やはりその圧倒的な力に苦戦を強いられ、息を乱していた。

 

 

「この辺でよかろうローグ。ドラゴンには勝てぬ」

 

 

「な…なぜオレの名を」

 

 

「お前だけは殺すなと命を受けておるからな」

 

 

突然ドラゴンに名を呼ばれ、自分は殺さないという言葉に困惑するローグ。

 

 

「大人しくするがよい、この絶望的な世界でお前だけは生き残れる。そして王になる」

 

 

「何の話だ!! オレは王になどなりたくない!! 誰の命令で動いている!?」

 

 

「お前自身ではないか、ローグ。我々ドラゴンを召喚し……世界の王となるとする者。全ては7年後のお前の計画だ」

 

 

今、この惨状を引き起こしたのは7年後の未来の自分……そう言われたローグは愕然とし、大きく目を見開く。だがそれでも、そんな訳がないと自分に言い聞かせてその話を否定する。

 

 

「そんなバカな話……」

 

 

《真実だ》

 

 

「!!!」

 

 

だがその瞬間……ガジルと戦っていた時と同じように、ローグの影からそんな声が聞こえてきた。

 

 

《全て真実。オレはもう1つの可能性の未来。お前の影であり、お前の心の闇でもある》

 

 

「黙れ!!!! 黙れ黙れ!!!!」

 

 

それ以上聞きたくないと言わんばかりに、自身の影を何度も踏みつけるローグ。

 

 

「受け入れよ、お前の心は闇に染まっている。いや……これから染まるというべきか。運命は受け入れるしかない。お前はここでは死ねない」

 

 

「うう……あ……ウソだ…そんなのはウソだ……」

 

 

そしてついに……ローグは絶望のあまり頭を抱え、その場で地面に膝をついてしまったのだった。

 

 

「ローグ」

 

 

そんなローグの様子を、ウルティアが離れた場所から見据えていた。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

時は遡り……1時間前。王宮の地下道。

 

 

『ナツ!! しっかり!!』

 

 

『まだ動いちゃダメよ!!』

 

 

未来ローグの影に囚われそうになっていたナツは、何とか自力で乗り越え、ウルティアとメルディの2人に応急処置を受けていた。

 

 

『ルーシィ……は……』

 

 

だがナツはフラフラとした足取りで立ち上がると、すでに息を引き取った未来ルーシィへと歩み寄った。

 

 

『ルーシィ……うう……グスッ…う……くそぉ……』

 

 

未来の住人とはいえ、目の前で仲間を殺されたという事実に涙を流すナツ。

 

 

『さっきの奴等は誰なの?』

 

 

『…………ローグって言ってた。7年後の』

 

 

『もう1人の未来人って訳ね。目的は?』

 

 

『わからねえ』

 

 

『敵なの?』

 

 

『ルーシィを……敵だ』

 

 

ウルティアとメルディの問い掛けに対し、ハッキリとそう告げるナツ。

 

 

『もう1人の、あの仮面をつけた奴は?』

 

 

『……それは……言えねえ』

 

 

『何で!?』

 

 

『顔を見た訳じゃねえし、確証もねえからだ。オレだってまだ……信じられねえんだ』

 

 

そう言って震える拳を強く握り締めて仮面の男の正体を話したがらないナツの姿を見て、ウルティアとメルディは諦めて話を進めた。

 

 

『仮面の奴はともかく、相当な魔導士に成長してるみたいね、ローグは』

 

 

『でも未来というなら弱点はある。この時代のローグを殺せば、未来のローグは存在しなくなる』

 

 

『でもタイムパラドックスをつきつめていくと、未来のローグが存在している以上……過去においてローグは絶対殺せない……という説もある』

 

 

『それは〝時〟が正常に流れてる場合よ。今は〝時〟が乱れてる。〝未来ルーシィ〟や時の乱れを知る私たちは全て、正常を破る虚数となりえる』

 

 

『じゃあ』

 

 

『可能性は高いわ。現在のローグを殺せば、未来のローグは消滅する』

 

 

『未来のローグが消滅すれば、そこにいるルーシィももしかして……』

 

 

『ダメだ』

 

 

『『!』』

 

 

現在のローグを殺すという事を前提で話を進めようとするウルティアとメルディの案を、ナツがそう言って否定した。

 

 

『未来のローグはオレが倒す』

 

 

『怒りに身を任せてはダメよ』

 

 

『違う。未来のローグはどこかで道を間違えたんだ。あれは今のローグじゃねえ。今のローグには何の罪もねえだろ。殺す……とか、オレたちまで道を間違えるつもりかよ』

 

 

そう言い放つナツの言葉に、メルディは息を呑み……ウルティアは静かに頷いた。

 

 

『そうね……約束するわ。現在のローグには手を出さない』

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「ナツ…もう……どうしようもないわ……」

 

 

あの時はナツの言葉を尊重し、そう約束を交わした。だが、今のクロッカスの惨状を見ては……そうも言っていられない状況なのは明らかである。

 

 

「ローグが今回の件の全てのトリガーになっている。つまりローグが未来から来なければ(エクリプス)は開かない。ドラゴンは襲ってこなかった」

 

 

ウルティアは1人そう呟き、ある決意を下す。

 

 

 

 

 

「世界を元に戻すには──ローグを殺すしかない」

 

 

 

 

 

そう言い放つウルティアの瞳は……とても不気味で、冷たい眼をしていたのであった。

 

 

 

 

 

つづく

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。