長かった。思えば大魔闘演武編が始まってから半年以上……ってかあと2ヵ月続いてたら1年ですよ1年。
えらく長い事かかりましたが、ようやく今回で全ての戦いが決着します。
ここまで応援してくださった読者の方々には、謹んでお礼を申し上げます。
正直もう気分は最終回です。
でもまだまだ終わりません。フェアリーテイルが続く限り。
それでは、感想お待ちしております!!!
その名を知る者は少なく、一般的にも空想の存在とされているが……その一族の末裔は確かに存在している。
だが年月を重ねる度にその力は衰退し……いつしかその末裔である一族ですら、
しかし100年に1度……その一族の中で
そしてその正統後継者だけが扱えると言われている奥義が1つ……星の輝きをもって魔を滅すると言われる光の力。
その名も──
「スターレイヴァー……!!?」
目の前で凄まじい魔力を帯びた姿で佇む過去の自分自身の姿に、驚愕するロスト。そんな彼女を他所に、ティアナは自身の状態を確認しながら口を開く。
「初めてやってみたけど……どうやらうまくいったようね」
その言葉を聞いたロストは、さらに目を見開きながら問い掛ける。
「あなたまさか…自分の意志で!!?」
「まあ、ほとんど一か八かの賭けだった上に……そんなに長くは発動できそうにないけど」
今までティアナがスターレイヴァーを発動させたのは、シモンの死やジェラールから受け取った魔力が切っ掛けとなっている。つまり今まで自分の意志で発動させることは出来なかった。しかしどうやら今回、ティアナは初めてスターレイヴァーを己の意志で引き出したようである。
「そんな…ありえない……!! だってこの頃の私はまだそんな事……!!」
「じゃあ、もうアンタの知る私じゃないって事ね」
ロストのティアナに対するアドバンテージは、経験の差や洗練された技だけでなく……何より過去の自分ゆえに手の内を知り尽くしている事にあった。しかしティアナがスターレイヴァーを発動したのはロストにとって完全に予想外であり、何よりこの時代の自分はまだそんな芸当はできないハズだった。
「アンタ言ってたわよね? いつか私はアンタと同じ運命を辿る事になるって。でも、これで確信したわ……未来には無限の可能性がある。私は今……その可能性の1つを掴んだ」
「……何が言いたいの?」
「私は──アンタと同じにはならない!!!」
「!!?」
ティアナの言い放ったその言葉に、衝撃を受けたように愕然とするロスト。
「私は私の未来を突き進む!!! それは絶望の未来でも、アンタが創る新しい世界の未来でもない!!! 私だけの──未来を!!!!」
そしてスターレイヴァーを纏ったティアナは、強い想いを込めた言葉でそう言い放ったのであった。
第222話
『新しい未来へ』
「ハァァァァアア!!!!」
最初に動き出したティアナは、普段よりも遥かに早いスピードで駆け出し、クロスミラージュに纏った魔力刃でロストに斬りかかる。
「くっ…!!!」
そんな魔力刃を素早く振るうティアナに対して、顔をしかめながらも同じくダークミラージュに纏わせた魔力刃で防御するロスト。
そして両者がしばらく魔力刃で斬り合うと……突然ティアナが後方へと向かって空高く跳躍してロストから距離を取った。
「クロスファイアー……!!」
すると次の瞬間、ティアナは滞空中に数十…いや数百にもおよぶ魔法弾を一瞬で自身の周りに生成する。そして……
「シューーット!!!!」
「うあああああっ!!!」
そのまま数百もの魔法弾を一斉に発射し、まるで雨のように降り注ぐ魔法弾がロストを襲う。
「(魔法弾の展開スピードも威力も…さっきまでとは段違い……同じ技を展開する余裕がない!!)」
降り注ぐ魔法弾の雨を何発か被弾しながらも、何とか回避しているロストは内心で毒づく。
「(スターレイヴァーは発動者の魔力や身体能力を格段に向上させる技だけど……まさかここまで……)」
そんな事を考えながら魔法弾を回避し続けるロスト。だが彼女は気づいていなかった……地面に着地していたティアナが、いつの間にか眼前に迫ってきた事に。
「!!? しまっ──」
それに気づいたロストはすぐにティアナから距離を取ろうとするが、すでにティアナはクロスミラージュの2つの銃身に纏った魔力刃を1つに集約させ……まるで長刀のような形になった魔力刃を構えていた。
「ファントム・セイバーーッ!!!!」
そしてティアナその長刀の魔力刃をそのままロストに向かって横薙ぎに振るった。
「くっ…ぐぅ……!!!」
その攻撃をロストは咄嗟に構えたダークミラージュの魔力刃でガードして受け止めるが……
「あああああああっ!!!!」
あまりの威力にガードし切れず、そのまま大きく吹き飛ばされて地面に体を強く打ち付けたのであった。
「このっ……!!!」
だがそれでもロストは、忌々しげに歯を食いしばりながら立ち上がる。
「負けられない……!! 私はもう……後には引けないのよ!!!」
そして力強くそう言い放つロスト。するとその瞬間……彼女が懐に入れていたエンドレスの心臓が妖しく輝き始める。
「アアアアアアアアアアッ!!!!」
「!!?」
エンドレスの心臓から溢れ出したドス黒い闇色の魔力がロストの体へと流れ込んでいく光景を見て、目を見開くティアナ。
さらにロストはそのドス黒い魔力をティアナへと向けて構えたダークミラージュの2つの銃口へと集束させていき……
「
魔力の集束が終わった次の瞬間……
「ダークエンド・ブレイカァーーーー!!!!!」
ダークミラージュから放たれるドス黒い魔力で構成された特大の闇の集束砲。
「……………」
だが迫り来る黒い集束砲を前にして……ティアナは恐怖など微塵も感じさせない表情で一歩も引かずにクロスミラージュを構える。
「星覇光来──」
そのままスターレイヴァーによって増幅された魔力をクロスミラージュの銃口へと集束していき、その魔力は星の光を帯びていた。
「スターレイヴ・ブレイカァーーーー!!!!!」
そして……星の魔力を集束したロストに負けないほどの特大の光の集束砲を放ったのであった。
次の瞬間……光と闇──2つの魔力が衝突したのであった。
「「アアアアアアアアアッ!!!!」」
ティアナとロストが咆哮のような声を上げながら魔力を放出し続け、それに呼応するかのように激しくせめぎ合う2つの閃光。
「この計画は……果てしなく深い絶望の中でようやく掴んだ希望なの!!!」
するとロストがさらに魔力を放出しながら叫ぶようにそう口を開く。
「世界を創り変える……それが今の私の全てなの──邪魔をしないで!!!!」
そして……両目から涙を溢れさせながら、そう言い放ち……次第にティアナの集束砲を押し返し始めたのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
一方で、アトラスフレイムと戦っているマザーグレアの背で未来ローグを相手に奮闘するナツ。
「お前は自分の時代に──帰れ!!!!」
「ぐっ!!」
そう言って炎を纏った蹴りを未来ローグに叩き込むナツ。
「戻るつもりはない」
「それじゃ今のローグはどうなるんだ!!」
「いずれオレとオレは1つになる。影と影が重なるように」
そう言うと同時に体を影へと変換してナツの足元を這い始める未来ローグ。
「ローグの未来も奪う気か!!!!」
「未来などない!!! アクノロギアがいる限り!!! だからオレが未来を作りに来たのだ!!!」
その瞬間、影から放たれた白いレーザーのような一撃がナツの体をかすめた。
「がっ!!」
それでもナツにダメージを与えるには十分な威力であり、それを喰らったナツは呻く。
「あああああああ!!!」
するとマザーグレアの体が傾き、ナツはそのまま転がり落ちそうになってしまうが、ギリギリでマザーグレアの体の一部を掴んで落下を免れた。
「くくく」
「がはっ! ごほっ!」
そんなナツを見て薄く笑う未来ローグ。そして血反吐を吐きながら咳き込むナツ。
「フロッシュは……」
ナツがそう問い掛けた瞬間、僅かに未来ローグの顔つきが変わった。
「死んだ」
「生きてるぞ……今……この瞬間は怯えてるだろうな……お前のせいで」
「死ぬよ……フロッシュは。どうせ死ぬ。1年後かな……」
「守らねえのか……」
「守れなかった」
「今…生きてんだぞ!!!!」
「どうでもいい。オレはネコ1匹と戯れていた頃のオレじゃない」
「お前……!!!」
吐き捨てるようにそう言い放つ未来ローグに憤慨し、彼に向かって駆け出すナツ。
「絶望を知らぬ者にはわかるまい──やっと手に入れた希望にすがる者の凶気など!!!!」
そんなナツに向かって、未来ローグは光と影の魔力を槍状にして散弾のように放ったのであった。
そしてこの瞬間……2つの戦場に響く声が重なる。
「お前の希望は過去を絶望に変える事なのかァ!!!!」
「そんなのは希望なんかじゃない!!!! 多くの人たちを犠牲にするやり方が希望であっていいハズがない!!!!」
ナツは光と影の魔力弾を躱しながら……ティアナは集束砲に魔力を込めながらそう言い放つ。
「何かを得る為には、相応の何かを犠牲にしなくちゃいけない時があるのよ!!!!」
「全ての人々が平等に幸せになどなれんのだ!! 大人になれ、ナツ・ドラグニル!!!!」
そんなナツとティアナに対してさらなる光と影の魔力弾を放つ未来ローグと、ティアナの集束砲を押し始めるロスト。
だがそれでも……2人の強い意志は変わらない。
「たとえそうだったとしても……誰にだって未来を選ぶ資格がある!!!!」
「オレたちは自分で選んだ未来を進んで行く!! お前の選んだ未来じゃねえ!!!!」
アトラスフレイムの手によって爆炎と共に未来ローグへと向かって押し出されるナツ。
自身の体を包むスターレイヴァーが輝きを増し、同時にロストの集束砲を押し返し始めるティアナ。
「「明日なんてわからなくていい!!!!」」
そして……
「「今日を全力で生きる為に!!!!!」」
ナツの強大な爆炎を纏った体当たりが未来ローグに直撃し……ティアナの集束砲がロストの集束砲を打ち消したのであった。
「「ああああああああああっ!!!!!」」
そしてそれを喰らった未来ローグはマザーグレアと共に炎に包まれたまま墜落し……ロストはティアナの光の閃光の中に飲み込まれたのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「なんて頑丈な扉なの……」
「僕たちの力を合わせてもビクともしないなんて」
一方で
すると……
「え……? アレ……」
「!!! 離れて!!!! みんな扉から離れて!!!!」
ユキノが何かに気がつき、ハッピーがその場にいた全員に
すると次の瞬間……ナツに敗れた未来ローグと共に落ちて来たマザーグレアの体が
「扉が壊れた!!!!」
「「ナツ!!!!」」
その光景を見たルーシィとユーノとハッピーが歓喜の声を上げる。
「ハァー、ハァー、ハァー」
辛そうに息を乱すナツの目の前には、彼に敗れて力なく倒れている未来ローグの姿があった。
「信じられん!! マギナニウム合金の扉を……」
「この後…どうなるのですか!?」
「未来のルーシィさんが残した手帳の言葉が正しいのなら、未来において扉が使えなくなる」
「つまりローグはこの時代に来れない」
「歴史が元に戻る」
リニス、リリー、シャルルがそう言った瞬間……倒れているマザーグレアの体が輝きだした。
「ドラゴンの体が……」
「光り出した!!!」
それはマザーグレアだけでなく、上空にいるアトラスフレイムも同じ現象が起きていた。
「元の時代へ、帰るのか」
そしてそれはラクサスとウェンディが戦っていたジルコニスにも起こっていた。
「ぬおおおお!! 何だこれは!?」
「ドラゴンが……」
「消えていく……!?」
「ぬおお!! 人間ごときが……!!! 人間ごときがァ!!!!」
腕で地面を殴りながら憎々しげにそう叫ぶジルコニス。
するとそんなジルコニスの前に、なんとヒスイが歩み寄る。
「ごめんなさい」
「危ないですよ!!」
「姫様!!!」
ウェンディとアルカディオスがそう声をかけるが、ヒスイは構わずにジルコニスに対して謝罪の言葉を述べる。
「時を繋ぐ扉を建造したのは私です。あなた方の自然の時の流れを乱してしまった。あなたは400年前に生きる者。我々は現在に生きる者。本来……争うべき理由がまったくない者同士。それを歪めてしまったのは私なのです」
「何だ貴様は」
「ヒスイ・E・フィオーレ」
「ヒスイ?」
「そう……あなたの体の色と同じ翡翠です」
「同じ……だと?」
「同じです──翡翠の竜よ」
そう言ってジルコニスに笑いかけるヒスイ。
「翡翠の竜……悪くない響きだな──ん? うわっ、ちょっと待て!!! くそっ!!! ハメられた!!!! オレは……」
そしてその言葉を最後に……ジルコニスは元の時代へと消えていったのであった。
「お前の事は忘れんぞ、ナツ・ドラグニル」
「ありがとな、オッチャン」
それに続くように、アトラスフレイムも元の時代へと消えていったのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「小型が消えていくぞ!!!」
「やったのか!!」
「よくわからねえけど終わったんだ!!」
街の方でも、マザーグレアが生み出した小型竜が次々と消滅していっていた。そしてそれは街で暴れていたドラゴンも同じであった。
「ドラゴンが消えていく…」
「終わった…の?」
「やったねガジル!!」
「ああ……だが……」
ドラゴンが消えていくのを見て、ホッと息をつくルーテシアと純粋に喜ぶレビィ。だがガジルの顔はどこか納得のいかない表情だった。
「素直には…喜べそうにないや」
「気に入らねえな」
「……………」
街の各地でドラゴンと戦っていたエリオ、コブラ、インヴェルノの
「
その様子を上空から見守っていたメイビスがそう呟く。そう…結局戦いは終わったものの、誰もドラゴンを倒す事は敵わなかったのである。
「情けねえよな」
「
スティングとローグも、ドラゴンを倒せなかった事にショックを隠せなかった。
「それだけ強ェんだよドラゴンってのは……おそらくアクノロギアはさらに……」
「かもしれないけど……今はやめとこうよ、2人とも」
「そうですよ」
するとその2人を元気づけるように、ヴィヴィオとアインハルトが彼らに笑いかける。そんな2人の言葉に、スティングとローグも釣られて笑う。
「そうだな。勝利……って感じじゃねーが、ひとまず戦いは終わったんだ」
「勝利さ。仲間を守れたんだ」
そしてローグはどこか誇らしげな表情でそう言ったのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
視点は戻り…ナツに敗れた未来ローグも、ドラゴンと同じように元の時代に戻ろうとしていた。
「オレの知ってるローグは〝お前〟にはならねえ」
「影……」
「?」
「影が……オレを取り込もうとする……何度も何度もオレにつきまとう。オレの中の闇は消えない。そしてフロッシュを失ったあの日……オレは影と1つになった」
「フロッシュは死なない」
「1年後だ。必ず〝オレ〟に伝えろ。1年後……フロッシュを守れと」
そう言うと、未来ローグはフロッシュを殺した者の名をナツに告げる。
「……………に、フロッシュは殺される」
「!!?」
その名を聞いた瞬間、ナツの目が見開かれた。
そしてその言葉を最後に、未来ローグは消えていったのであった。
「………………!」
しばらく呆然と立ち尽くしていたナツだが、突然思い出したかのように顔を上げる。
「ハッピー!!!」
「あい!!」
いきなりナツに呼ばれたのでビクッとしながら返事を返すハッピー。
「オレをティアんトコに連れてけ!!!」
「え? でも…ティアナがどこにいるか……」
「あっちだ!!! 急げ!!!」
「あ…あいさー!!!」
「あ、ちょっとナツ!!!」
その後ろでルーシィの声が聞こえた気がしたが、ナツは気にも止めずにハッピーと共にティアナがいるであろう方向へと向かって飛んで行ったのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「……帰るのね……元の時代へ……」
ティアナに敗れ、地面に仰向けに力なく倒れるロストは自身の透けていく体を見てそう呟く。
「きっと誰かが
「そうよ」
微笑を浮かべながらそう呟くロストに、ティアナがそう告げる。
「私はアンタにはならない……アンタが経験した未来は私たちが変えてみせる」
「……そう。あなたなら出来るかもしれないわね。私にも出来なかった事をやってのけたあなたになら……」
ティアナのその言葉を聞いて、どこか安堵したかのような笑みを浮かべるロスト。
「そんなあなたに、1つだけいいコトを教えてあげる」
「?」
「私の世界を滅ぼした
そう前置きをして、ロストは語り始める。
「それは〝世界を破壊する力〟と相反する〝世界を創造する力〟……つまり、
「!!?」
その言葉に大きく見開かれるティアナの瞳。
「そんな…!! じゃあ何でアンタは……!!?」
「私には……出来なかった」
ティアナの疑問に対しそう答えるロストの目からは、大粒の涙が溢れだしていた。
「憶えておきなさいティアナ・ランスター……遠くない未来、あなたは究極の選択を迫られる」
「究極の…選択?」
「そう…それは……──………──……」
「なっ!!!?」
ロストの口から語れた究極の選択……それを聞いたティアナの表情が驚愕に染まる。
「これを聞いて、どう選択するかはあなたの自由……もしその時が来れば……後悔しない選択をしなさい」
そしてそう言い残して……ロストは元の時代へと消えていったのであった。
「………………」
その場に残ったティアナは呆然とした表情のまま立ち尽くしている。すると……
「ティアーー!!」
「ティアナーー!!」
「! ナツ…ハッピー……」
そこへ、ナツとハッピーがティアナのもとに駆け付けた。
「ティア……あの仮面の奴は」
「………倒したわ」
「……そっか」
「さすがティアナ!!」
ロストを倒したと聞いて、ハッピーが嬉しそうな声を上げるが……ナツとティアナの表情は優れなかった。
「お前…あいつに何か……!!」
そしてナツがティアナに問い掛けようとしたその瞬間……ティアナが自分からナツの胸に飛び込み、顔を隠すようにナツの肩に頭を置いた。
「ティア?」
「ゴメン……少しだけ…こうさせて……」
「………ああ」
消え入りそうな声でそう言うティアナの声は震えており、それを聞いたナツは何も聞かずに黙って彼女に胸を貸したのであった。
それからしばらく……その場にはティアナのすすり泣く声だけが木霊していたのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ここは…どこ?」
未来のローグによってその命を奪われた未来のルーシィ。
しかし気がつくと……ルーシィは金色に輝く草で覆われた黄金の草原にいた。しかも服装も死ぬ前に身に纏っていた黒いローブではなく、普段着ている普通の服であり、さらには失われたハズのギルドマークを刻んだ右手も元に戻っていた。
見た事もないキレイな草原や自身の体の変化に戸惑いつつも、しばらくその草原を歩くルーシィ。すると……
「おーいルーシィ!!」
後ろから彼女を呼ぶそんな声が聞こえてきた。聞き覚えのあるその声にルーシィが振り向くと……
「早く来なよ。みんな待ってるから」
運命の日に失ったハズの、彼女にとってはかけがえのない仲間であり、そして最愛の人でもある人物が元気な姿でルーシィに笑いかけていた。そしてその後ろには…見覚えのある大勢の仲間たちの姿もあった。
「さあ行こう──冒険の続きへ」
そしてその人物……ユーノはルーシィの手を取って、待っている仲間たちのもとへと向かって走り出した。
「──うん」
それに引っ張られるようにルーシィも走り出し、笑顔を浮かべながら大粒の涙を流したのであった。
そしてその光景を……遠くから眺めているもう1人の人物がいた。
「よかったわね……ルーシィ」
その人物とは、ロストこと未来のティアナであり……彼女もルーシィと同じく気がついたらここ黄金の草原に立っていた。さらには服装や姿も若返ったように昔の姿に戻り、真っ白な髪もオレンジ色に戻っていた。
ここがどこなのか…なぜこんな所にいるのか…どうして昔の姿に戻っているのか……疑問は尽きないが、ティアナの中では1つだけハッキリしている事があった。
──今の私にあそこに行く資格はない。
「…………」
そんな思いを胸に秘めたティアナは、ルーシィが仲間たちのもとへ戻ったのを見届けると、彼女たちに背を向けてどこかへ歩き出そうとする。
「どこ行くんだよ?」
「!!」
そんなティアナを……彼女がよく知る人物が呼び止める。
「ナツ……」
ティアナは自分を呼び止めた人物……ナツの姿を見て、表情を歪める。
「行くぞ。みんな待ってる」
「……私は…行けない……」
そう言ってナツが差し出した手を、ティアナは拒絶するようにして後退る。
「私は……ギルドの信念も…名前も…何もかもを捨てて…大きな罪を犯した……みんなとの絆や思い出も…この手で消そうとした……そんな私が…今更どのツラさげて……!!」
両目からポロポロと涙を零し、自分の体を抱き締めながら悔いるようにそう告げるティアナ。
「ティア」
「!!」
すると、そんなティアナにナツが優しく語り掛ける。
「お前がどんだけ辛ェ思いをしたかは知ってる…お前がどんだけ寂しい思いをしたかは知ってる……それを1人で抱え込んで、ずっと苦しい思いをしてきたのも……ゴメンな、そんな時に一緒にいてやれなくて」
「なんで…ナツが謝るのよ……? 謝らなくちゃいけないのは…私なのに……!!」
「けど今はもう──1人じゃねえ」
そう言うと、ナツはティアナの手を強く掴み取った。
「お前の罪も苦しみも…オレたちが一緒に背負ってやる!! もう二度と、お前を1人なんかにはしねえ!! だから……帰って来いよ、ティア」
「ナ…ツ……!!!」
ナツのその言葉に、ティアナは感極まったようにさらに涙を溢れさせる。
「……いいの……? こんな罪を背負った私でも……また…一緒にいて…いいの……?」
「当たりめーだろ。忘れたのか? 罪には慣れてんだぜ、
そう言うと、ナツは握っていたティアナの手を引き寄せるように強く引っ張る。
「さあ行こうぜ──オレたちの新しい未来へ!!!!」
そしてナツはまるで太陽のような暖かな笑顔を浮かべてティアナにそう言い放つ。
「……うん!!!」
それを聞いたティアナは強く頷きながら目元から流れる涙を拭って満面の笑顔を浮かべ、ナツと手を握ったまま仲間たちの待つ方向へと走り出した。
「おかえり──ティア」
「──ただいま」
帰るべき場所へと向かって……
つづく