LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

224 / 240
2話目です。

感想お待ちしております。


贈り物

 

 

 

 

 

 

ドラゴンの脅威が去ったクロッカスの街。

 

 

その中でも特に破損が酷く、関係者以外は立ち入りを禁じられている場所で、ジェラールとメルディがウルティアを探して歩いていた。

 

 

「ウル……見つからないね…」

 

 

「ああ」

 

 

「ケガ……してなきゃいいけど…」

 

 

「ケガは〝時〟でも治せんようだからな。扉を壊して〝時〟を修復したと聞いたが……」

 

 

そう言うとジェラールは、崩壊した街を見回しながら言葉を続ける。

 

 

「ローグやドラゴンは元の時代に戻った。この時代で命を落とした未来のルーシィはわからんが。しかし我々の記憶や傷、壊された街はそのままだ。本来なら全てが〝なかった事〟になるハズなのだが」

 

 

「時が捻じれすぎたせいで、全てを元には戻せなかったんだよ」

 

 

「確かに記憶が残っているのは助かるが、まずい部分もあるな」

 

 

「え?」

 

 

「事もあろうに、王室の黒魔法が評議院に知られたんだ。大事にならなければ……」

 

 

そんな心配をしていると、ジェラールの目の前に、とある2人組が立ち塞がった。

 

 

「! ドランバルトに…アルフ」

 

 

その2人組とは、今まさにジェラールが口にしていた評議院に所属しているドランバルトとアルフであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第224話

『贈り物』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「評議員の記憶を消しただと!?」

 

 

「そうだ……関係者全ての記憶を改ざんした」

 

 

クロッカスの街から離れた人目につかない岩場。そこでドランバルトから語られた、記憶操作の魔法で現場にいた評議員全員の記憶を消したという話に、ジェラールは驚愕した。

 

 

「驚いたな…そんな力があるとは」

 

 

「その魔法での潜入捜査がオレの仕事だからな」

 

 

「しかし…一体どういう風の吹き回しだ」

 

 

「〝エクリプス〟ってのはゼレフ書の魔法の1つだ。王室が黒魔術に関与してたなんて世間に知られたらマズイだろ。国民の信を失い……王制崩壊の危機だ」

 

 

「さすがにアタシらだってお家転覆なんてゴメンだからね~」

 

 

「評議員の端くれとして思う所はあるが、中には『見ぬふり』が必要な時もあるだろ」

 

 

「よくあのラハールを説得できたな」

 

 

「いや…あいつの記憶も改ざんした。あいつはエラくなる奴だ、汚ねえ事はさせたくねえ。本当ならアルフの記憶も改ざんしようとしたんだが……」

 

 

「妙なマネしようとしたからガブッといってやったのさ」

 

 

「…………」

 

 

そう言われてよく見ると、ドランバルトの顔に噛み痕のような見えたが……そこはジェラールも見ぬふりをしておいた。

 

 

「お前みたいな奴が評議院にいたとはな」

 

 

「アンタみてーな悪党も評議院にゃいたろーが」

 

 

「アタシも元悪党みたいなモンだしねぇ」

 

 

そう言うと、アルフの目に膝を抱えて俯いているメルディの姿が映った。

 

 

「ウルティアって奴はまだ見つからないのかい?」

 

 

そう聞くと、メルディはコクリと頷く。

 

 

「何も言わず、姿を消すとは思えんのだが」

 

 

「まあ、オレたちには関係ねえ事だが……アンタらの心配をするようじゃヤキが回ったかな」

 

 

「待て」

 

 

「貸しにしとく。面倒は御免なんだ。オレたちは顔を合せなかった。いいな?」

 

 

「その件については感謝している」

 

 

「勘違いは困るな。今回だけだ」

 

 

「コブラと無限の欲望(アンリミテッドデザイア)は……あいつらはどうなった」

 

 

ジェラールが問い掛けたのはドラゴン撃退の為に自分が呼ぶように頼んだコブラの件と、ウルティアが要請した無限の欲望(アンリミテッドデザイア)のチーム・シーズンの件。その話に対してドランバルトは一瞬だけ沈黙すると、再び口を開いてその問い答える。

 

 

無限の欲望(アンリミテッドデザイア)については知らないよ。アンタからの話を聞いて、一応アタシらも捕まえようとしたんだけど、もうとっくに逃げられてたよ。コブラは……」

 

 

「あっさり戻って来たよ」

 

 

「!」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

数日前……事件が終息した直後の話である。

 

 

『あーあ……呼ばれといてドラゴンの1頭も始末できねえってんじゃ、情けねえよまったく』

 

 

『本当に戻って来るとは……』

 

 

『悪党のくせに約束守るのかオメーは』

 

 

『意外と律儀な奴だねぇ』

 

 

『外はいい……久々に多くの〝声〟を吸収した。キュベリオス、お前の声も聴こえたぞ』

 

 

『声?』

 

 

『今は大人しく、愛しの牢獄に戻るよ』

 

 

──六魔全員を救う為にな!!

 

 

『何を聴いた?』

 

 

『さぁな。冥府の門が開くぜ──その時までオレの記憶はいじらねえ事だ』

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

翌日……ドランバルトとアルフと分かれたジェラールとメルディの2人は、街を離れて道中を歩いていた。

 

 

「冥府の門……タルタロス。悪魔の心臓(グリモアハート)無限の欲望(アンリミテッドデザイア)六魔将軍(オラシオンセイス)と並ぶバラム同盟の一角。何の情報をつかんだのかは知らないが、それを免責の交渉カードに使うつもりか」

 

 

「タルタロス」

 

 

「全てが謎の不気味なギルド。動くのか」

 

 

ドランバルトから聞いたコブラの話を思い出しながら、ジェラールは何か嫌な予感を感じ取っていた。すると……

 

 

「もし…」

 

 

「「!」」

 

 

そんな2人の進む先から、1人の老婆が声をかけて来た。

 

 

「まずい、人が来た」

 

 

「うん」

 

 

あまり姿を人目につかせたくないジェラールとメルディはすぐに老婆の前から立ち去ろうとするが、その行動は老婆の次の一言で止まった。

 

 

「ジェラールさんとメルディさんですかな?」

 

 

「「え?」」

 

 

なぜ見るからに一般人である老婆が自分たちの名前を知っているのかと困惑するジェラールとメルディ。すると老婆は、1通の手紙を2人の前へと差し出す。

 

 

「ある女性から手紙を預かっているのですが」

 

 

「手紙!?」

 

 

「まさか!!!!」

 

 

その手紙の主である女性が誰なのかすぐに思い浮かんだメルディは、すぐに老婆から手紙を受け取って封筒を開封して中身を読み上げる。

 

 

──────────

 

 

ジェラール、メルディ、ごめんなさい

 

 

──────────

 

 

「やっぱりウルだ!!!」

 

 

その手紙の送り主はウルティアであり、彼女が無事だった事に喜びながら、メルディは続きを読む。

 

 

──────────

 

 

先の戦いで、私はある魔法に失敗したの。そのせいで私の命はあと僅かとなってしまった。でも……どうしても最後にお別れが言いたくて。

 

 

私の旅はここまでよ。想い半ばで先逝く事になってしまったけど、魔女の罪(クリムソルシエール)の精神を忘れないで。

 

 

それは罪を忘れない事。

 

 

それは罪に押しつぶされない事。

 

 

それは罪が許される日を信じる事。

 

 

それは人を愛する事を止めない事。

 

 

本当の戦いはここからよ……ゼレフを倒さねば、また魔導士が悲しみに染まってゆく。

 

 

私の分まで生きて──そして戦って。

 

 

あなたたちの旅が……みんなを幸せにすると願うわ。

 

 

──────────

 

 

「ウル…」

 

 

「時を奪う魔法……か」

 

 

手紙を読み終わったメルディは、静かに涙を流した。その手紙に書かれていた事が本当だとするなら、ウルティアの命はもう長くないという事なのだから。

 

 

「老人…この手紙はいつ……」

 

 

ジェラールがそう問い掛けようと老婆へと視線を移すが、そこにはもうすでに老婆の姿はなかった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方その頃……クロッカスの街を離れ、マグノリア行きの馬車に乗って道中を走っているナツたち一行。

 

 

「なんか名残惜しいわね」

 

 

「バイバイ、クロッカス!」

 

 

「うぷっ…気持ち悪……」

 

 

「馬車乗んなよ、走れっての」

 

 

「ずいぶんと長く滞在していたような気がするな」

 

 

「そうですね。ほんの一週間くらいだったのに」

 

 

「色々あったね」

 

 

「そうだね。シェリアちゃんって友達もできたしね」

 

 

「だけどちょっとボロ酒場が恋しいわ」

 

 

「オイラもオイラもー!」

 

 

「ナツ! てめ……こっち来んな!!」

 

 

「吐くなら外で吐きなさいよ!!」

 

 

「うぷ」

 

 

「そういえばジェラールは?」

 

 

「さぁな。とっくに姿を消したよ」

 

 

騒がしくしながらも馬車に揺られて帰路を行くナツたち一行。

 

 

するとその馬車は、前を歩いていた1人の老婆を追い越した。その老婆は、先ほどジェラールたちに手紙を渡した老婆であった。

 

 

「!」

 

 

何気なく窓の外を見たグレイの目に、その老婆の姿が映る。

 

 

そしてその老婆が自分に向かって笑顔を向けた瞬間……グレイは気づいた。

 

 

 

あの老婆は──ウルティアだと。

 

 

 

確証はないが…何故かそう確信できたのだ。

 

 

「止めろ!!! 馬車を止めろ!!!!」

 

 

「どうしたの!?」

 

 

「何ですか急に?」

 

 

すぐに馬車を止めるように叫ぶグレイだが、老婆となったウルティアが首を横に振っているのを見て「いや……」と言いよどむ。

 

 

そしてもう1つ……グレイの中でずっと謎だった1つの疑問が解けた。

 

 

「アンタだったのかよ……」

 

 

それはグレイが自分が小型竜に殺されるという未来を見た時。あれはただの未来ではなく、実際に起きた事であり、自分は1度死んだ。だが彼女が命を賭してそれを救ってくれたのだと……かつてのウルティアの母……ウルのように。

 

 

「親子そろってオレを……なんで……」

 

 

それを知ったグレイは、静かに涙を流したのであった。

 

 

 

 

 

そしてそんなグレイを乗せた馬車を見送ったウルティアは、厚い雲の隙間から降り注ぐ星霜のような光りを見上げていたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

私はいつも自分の人生を呪っていた。

 

 

抑えきれない不安と怒り、そして憎悪。

 

 

だけど……立ち止まって空を見上げた時、私は自分の小ささを知った。

 

 

そこに広がるのは無限の世界。

 

 

降り注ぐ彩光が、小さな私を照らす。

 

 

まるで私の罪を浄化してくれるかのような、優しい時雨の光。

 

 

私は生まれてよかったと初めて思ったの。

 

 

私はきっと幸せだった。

 

 

最期の最期に……やっと自分を許す事ができたの。

 

 

 

 

 

さようなら──私の愛する人たち。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

マグノリアの街。

 

 

そこでは大勢の人たちで賑わっていた。

 

 

その理由はもちろん……

 

 

「来たぞ!!! 帰って来た!!!」

「早くー! みんなこっちこっち!」

「待ってましたー!!!」

「おかえりみんなー!」

「みなさーん!!! 大魔闘演武優勝ギルドをぉ、盛大な拍手で迎えましょう!!!」

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)凱旋ーーーーー!!!!!」

 

 

 

大魔闘演武で優勝したギルド──妖精の尻尾(フェアリーテイル)が帰って来た事であった。

 

 

「たっだいまーー!!!」

「あいさー!」

「すごい人の数……」

「マグノリア近隣からも集まっているようだな」

「イェーイ! 優勝じゃーい!」

「おおっ!! これはすごい!!」

「そりゃそうだろ! 優勝したんだからな!!」

「オレたちが1番だーーーっ!!!」

「みなさん、応援ありがとうございました」

「もう!! シャキッとしなさいよ」

「祝い酒だーーーっ!!」

「まだ飲む気なんかカナちゃん!?」

「いい加減にしろよカナ」

 

 

マグノリアの町民や近隣の人たちの歓迎を受けながら街を歩くメンバーたち。

 

 

だがその中で、1人浮かない顔をしているグレイ。

 

 

「グレイ、どうかしたの?」

 

 

「顔色悪いよ?」

 

 

「何でもない」

 

 

なのはとヴィヴィオが問い掛けるが、グレイは素っ気なく返すだけであり、そんな彼の様子に2人は怪訝な表情を浮かべていた。

 

 

「ミラちゃん、こっち向いて~」

 

 

「はーい」

 

 

手を振りながら愛想のいい笑顔を振りまくミラジェーン。

 

 

「ルーシィ、よくやったね!」

 

 

「あ! 大家さん!」

 

 

「だけど家賃の話は別!!」

 

 

「はぁ」

 

 

優勝しても相変わらず家賃にはシビアな大家さんにため息をつくルーシィ。

 

 

「ティアナさ~ん!! 射的(シューティング)かっこよかったです~!!」

 

 

「ありがとう」

 

 

自分に向けられた声援を、手を振りながら応えるティアナ。

 

 

「「「エリオくーーん!!!」」」

 

 

「え? はい?」

 

 

「「「キャーーー♡」」」

 

 

「???」

 

 

「あらあら、モテモテですね♪」

 

 

女性たちから黄色い声援を向けられて戸惑うエリオに、そんな様子を微笑ましく眺めているリニス。

 

 

「エルザさ~ん、伏魔殿(パンデモニウム)最高でしたよ~!」

「いやカグラ戦だろ!!」

「ミネルバ戦だよ!」

 

 

「照れるものだな」

 

 

あまり慣れていないのか街の人たちから声援に、恥ずかしそうに頬を染めるエルザ。

 

 

「はやてちゃーん! ジュラ戦アツかったぜー!!!」

「シグナムさーん!! 負けちゃったけど素敵でした~!!」

「ザフィーラの旦那ー!! イカしてたぜーー!!」

「リインフォースちゃんもクールだったー!!」

「シャマルちゃんは……何かやってたっけ?」

「ヴィータも小っちゃかったぞー!!」

 

 

「いや~そう言われると恥ずかしいわぁ…」

 

 

「むう……やはり気恥ずかしいな」

 

 

「そうだな…少しこそばゆいか」

 

 

「フフッ……だが、悪い気持ちではないな」

 

 

「どーせ…どーせシャマルさんは影が薄いですよーだ」

 

 

「つーか今誰だ小っちゃいつったの!! 身長と大会は関係ねえだろ!!!」

 

 

街の人たちの声援を受けて、様々な反応を見せるヴォルケンリッターの面々。

 

 

「街のみんなにいいモン見せてやるぞ──じゃーーーん!!!」

 

 

そう言ってナツが持っていた袋から取り出したのは、何と国王が被っていた冠であった。

 

 

「国王の冠!!?」

 

 

「とってきちゃったんですか!!?」

 

 

「あ……コレじゃねえや」

 

 

「とってきちゃったんですか~!?」

 

 

ウェンディが涙目でそう問い掛けるが、ナツは一切取り合わずに、冠を袋に仕舞って今度こそ見せたいものを取り出した。

 

 

 

「優勝の証──国王杯!!!!」

 

 

 

それは大魔闘演武で優勝したギルドのみに与えられる、巨大なトロフィーであった。

 

 

「信じらんね…未だ信じらんねーよ」

「オレたちが優勝だぜ」

「ずっと最下位だったオレたちが……」

「「「優勝したんだーーーっ!!!!」」」

「「「わーいわーい!!!」」」

 

 

それを見て7年間ずっと苦汁を舐めてきたメンバーたちは歓喜の涙を流した。

 

 

「ホラ!! ロメオ、もっと高く上げろーっ!!」

 

 

「オウ!!!!」

 

 

メンバーたちが街の人たちと共に大いに盛り上がっている中……やはり浮かない顔をしているグレイ。

 

 

「ねえグレイ…何があったのかはわからないけど、そんな顔をしてたら街のみんなに悪いよ」

 

 

「そうだよパパ!! せっかくみんながお祝いしてくれてるんだから、笑わないと!!!」

 

 

「……そうだな。あいつの分まで笑ってなきゃな」

 

 

そう言うと、なのはとヴィヴィオの言葉を聞いたグレイはそっと口角を吊り上げて、優しい笑顔を2人へと向ける。

 

 

「ありがとう」

 

 

「え…あ…うん……どういたしまして」

 

 

「あれれ~? ママったら顔真っ赤~♪」

 

 

「ヴィヴィオ!!」

 

 

グレイに笑顔を向けられたなのはは思わず赤面し、その様子を見たヴィヴィオにからかわれていたのだった。

 

 

「えーこれより、マグノリア町長から記念品の贈呈です」

 

 

「コホン」

 

 

すると、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の前にマグノリアの町長が現れる。

 

 

「記念品とな? そんな気を遣わんでも」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の皆様…どうぞこちらへ」

 

 

そう言って町長に案内された場所。それを見た瞬間、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーたちは騒然とした。何故なら……

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)は我が街の誉れであります。よってギルドを修繕して贈呈したいと思います」

 

 

 

その記念品とは、黄昏の鬼(トワイライトオウガ)によって差し押さえられていたハズの、かつてのギルドの建物だったのである。

 

 

「ギルドが元通りだーーーっ!!!!」

 

 

「あいさーーーっ!!!!」

 

 

「町長……あんたって人は……」

 

 

「いやいや、この街の者みんなで協力して直したのですよ」

 

 

それを聞いたマカロフは感激のあまり、ぐもぉぉっと泣きながら堪らず叫ぶ。

 

 

「ワシはこの街が大好きじゃ~~~~!!!!」

 

 

それからしばらくマグノリアの街は、暖かな喧騒に包まれていたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「キキッ」

 

 

そんな妖精の尻尾(フェアリーテイル)の様子を離れた場所から覗いている者がいた。

 

 

それは、大鴉の尻尾(レイヴンテイル)のオーブラの肩に乗っていた小さな悪魔のような小動物。

 

 

「キヒヒッ」

 

 

その小さな悪魔はその場から離れると、そのまま街を抜けて…街から離れて行き…マグノリアから少し離れた森まで走って行った。

 

 

そしてその森の中で1人静かに地面に座り込んでいる青年の肩へと飛び乗った。

 

 

その青年とは──なんと歴史上でも最悪とされている黒魔導士・ゼレフであった。

 

 

「やはり大魔闘演武を見ていたのですね──ゼレフ」

 

 

するとそこへ、幽体であるメイビスが空から降りて来て、彼に話しかけた。

 

 

「声は聴こえず、姿は視えず、だけど僕にはわかるよ。そこにいるんだね──メイビス」

 

 

本来なら妖精の尻尾(フェアリーテイル)の紋章を持たぬ者にはメイビスを認識する事ができない。それはゼレフも例外ではないが、何故か彼はメイビスの存在だけは確かに感じ取っていた。

 

 

「7年前、あなたは私の近くにいた」

 

 

「7年前、君は僕の近くにいた」

 

 

そう言ってゼレフを見つめるメイビスと、微笑を浮かべるゼレフ。

 

 

「ユーリは…元気ですか?」

 

 

「元気だよ。今は少し別行動をしているけどね」

 

 

「そうですか……」

 

 

それを聞いてどこか残念そうにするメイビスだが、すぐに表情を引き締めて本題を切り出す。

 

 

「あなたはまだ自分の死に場所を探しているの?」

 

 

「死に場所はもう決まっている。僕は何百年もの間……時代の終わりを見続けてきた。人々の争い、憎しみ、悪しき心。新たなる時代において、それらの浄化をいつも期待する。もう何度目だろう……人々は繰り返す。何度でも同じ過ちを」

 

 

「それでも人は生きていけるのです」

 

 

「生きていない、本当の意味では。人と呼べる愛しき存在はもう絶滅している」

 

 

ゼレフのその言葉に、悲しげな表情を浮かべるメイビス。

 

 

「もう……待つのはやめたのですか」

 

 

「そうだね。7年も考えて出した結論なんだ」

 

 

そう言ってゆっくりと立ち上がり、メイビスを向き合うゼレフ。

 

 

「世界が僕を拒み続けるならば、僕はこの世界を否定する」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)はこの世界を肯定するでしょう」

 

 

「これは僕からの贈り物。世界の調和、そして再生」

 

 

「戦いになるのですか?」

 

 

「──いいや」

 

 

そして……

 

 

 

 

 

「一方的な殲滅になるよ──誰1人として生かしてはおかない」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)が阻止します──滅びるのはあなたの方です」

 

 

 

 

 

ゼレフとメイビス……2人が対立してそう言い放つと同時に、周囲の草木が枯れ果てていった。

 

 

そしてゼレフは小さく笑いながら思う。

 

 

 

 

 

──ナツ……決戦の時は迫っているよ。

 

 

 

 

 

つづく




大魔闘演武編・完結!!!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。