LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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今回から少し過去話に入ります。と言ってもそんな『~~編』のようなガッツリした感じではなくて、サブタイでもわかるように前後編に分かれております。

リリカルキャラの過去話を書くのはティアナ以来で、しかもオリジナルなので少し粗い部分もあるかと思いますが、ご容赦ください。

感想お待ちしております。


八神はやて 前編

 

 

 

 

 

「オラァ!! どんどんかかって来いやーーっ!!!」

「オイ!! またナツが暴れてるぞー!!」

「ぎゃはははは!!!」

「笑ってねえで誰か止めろー!!!」

「ティアナだ!! ティアナを呼べぇ!!!」

 

 

マグノリア町長から大魔闘演武優勝の記念品としてギルドを贈呈されてから早数日……その数日の間にギルドメンバーの人口は格段に増え、妖精の尻尾(フェアリーテイル)はかつての賑やかさを取り戻していた。

 

 

「グビグビグビ……ぷはーっ」

 

 

そんなギルドの喧騒をカウンター席に座って眺めながら酒を飲んでいるマカロフ。するとそんなマカロフに、ミラジェーンがパタパタと足音を立てながら近寄って来た。

 

 

「マスター、評議院からお手紙が来てますよ」

 

 

「何じゃと?」

 

 

それを聞いたマカロフは、また誰かが何かやらかしたのか…と、若干うんざりしながら封筒を受け取って開封し、その内容を目で読み始める。

 

 

「んー?」

 

 

するとその手紙を読み進めるにつれて、マカロフの顔がうんざりしていた表情から、意外なものを見る目へと変わる。

 

 

「ほほう……評議院も思い切った事をしよるわい」

 

 

そして手紙が読み終わると同時に、マカロフはニンマリと笑みを浮かべながらそう呟いたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第227話

『八神はやて 前編』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーいはやて、ちっとぉ」

 

 

「ん? はーい!」

 

 

手紙を読み終えたマカロフは、未だにバカ騒ぎしているメンバーの中からはやてを手招きで呼び出し、呼ばれたはやても首を傾げながらマカロフのもとへと向かう。

 

 

「どないしたんマスター? また指名の依頼かー?」

 

 

大魔闘演武以降、魔導士を指名する依頼が急増している為、はやてはまたその類の仕事なのかと尋ねる。

 

 

「ふむ……実はのうはやて。今しがた評議院からお主に関する手紙が──これ、どこへ行く気じゃ」

 

 

評議院と聞いた途端に脱兎のごとく逃げ出したはやてを、マカロフは魔法で伸ばした手で彼女の首根っこを捕まえて止める。

 

 

「はーなーしーてーやー!!! どうせまた私があれ壊したとかそれ壊したとかいう苦情やろぉ!! 反省しとるから勘弁してやぁ!!!」

 

 

バタバタと手足を動かして逃げようとするはやてに溜息をつきながら、マカロフは話を続けようとする。

 

 

「安心せい。今回はそういう話ではないわい」

 

 

「イーヤーやー!!! どっちにしても評議院からの手紙なんてロクなもんやないって!!!」

 

 

だが一向に暴れて話を聞こうとしないはやてに、ついにマカロフが意を決したように言い放つ。

 

 

 

「評議院からお主を聖十大魔道に任命するという手紙が来とるんじゃ」

 

 

 

「ほーら見てみぃ!!! やっぱりロクなもんやあらへん!!! 私を聖十大魔道なんかに任命するなんて絶対に…って──ほえ?」

 

 

マカロフが言った言葉を理解した瞬間、暴れるのを止めて目を丸くする。そして何かの聞き間違いかと思ったはやては、若干声を震わせながらマカロフに尋ねる。

 

 

「い…今なんて……?」

 

 

「じゃから、お主を聖十大魔道に任命するという手紙が評議院から来とると言うとるんじゃ」

 

 

だが聞き間違いではない事にはやてはポカンとし……さらにはその話を聞いていたギルドメンバーたちも、先ほどの喧騒がウソのようにシン…っと静まり返る。

 

 

そして……

 

 

「えええええええーーーーーっ!!!?」

 

 

「「「何ィーーーーーっ!!!?」」」

 

 

次の瞬間、ギルド全体を揺るがすような大絶叫が響いたのだった。

 

 

「はやてが聖十大魔道に選ばれた!!?」

 

 

「マジかよ!!?」

 

 

「マスターと同じ称号をはやてさんが!!?」

 

 

「はやてちゃんすごいの!!」

 

 

「おめでとうございます!!!」

 

 

「はやてさん、スゴイです!!」

 

 

上からルーシィ、グレイ、ティアナ、なのは、ウェンディ、キャロが騒ぎ立てる中…エルザがマカロフに確認するように問い掛ける。

 

 

「マスター、その話は本当ですか?」

 

 

「うむ。手紙の内容はこうじゃ」

 

 

エルザの問いに答えながら、マカロフの評議院からの手紙を読みあげる。

 

 

「八神はやて……お主は先の大魔闘演武にて、聖十大魔道序列5位のジュラを下した。その実力とお主の経歴や素行、性格、人間性、人望、魔力資質、さらには伝説と呼ばれる〝夜天の書〟に選ばれ、それを使いこなすという特異な才能……そしてお主が倒したジュラ本人からの推薦……それら全てを評価した結果──お主に聖十大魔道の称号を授与える事になった……という訳じゃ」

 

 

「……………」

 

 

そう言ってマカロフの説明が終わるが、はやて本人は未だにボーっとしている。

 

 

「何だよはやて、嬉しくないのかい?」

 

 

「いや…嬉しいんやけど、ちょっと現実味がなくてやな……」

 

 

「まぁ仕方ないだろう。大陸でもっとも優れた魔導士10人のうち1人に選ばれたんだ」

 

 

自分が聖十大魔道に選ばれたという事に呆然としているはやてにカナが問い掛け、エルザがそんな彼女の心情を察したようにそう言う。

 

 

「スゲーぞはやてーー!!!」

 

 

「おめでとうございます!! 我が主!!」

 

 

「やったわねはやてちゃん!!!」

 

 

「さすがです」

 

 

「うむ」

 

 

そして彼女を慕うヴィータたちヴォルケンリッターがはやてを囲みながらそう言うと、他のギルドメンバーたちも騒ぎ始める。

 

 

「はやてが聖十大魔道に選ばれたぞーー!!!」

「このギルドに2人も聖十大魔道が!!」

「スゲェー!!!」

「おめでとう!! はやてー!!!」

「ズリィぞはやて!! 今すぐオレと勝負しろーー!!!」

 

 

そう言ってギルドメンバーたちがはやてを祝って騒ぎ立てる中……マカロフが「んんっ」と咳払いをすると、それに伴ってメンバー全員が口を閉じ、再びギルドが静寂に包まれる。

 

 

そしてマカロフは静かにはやてを見据えながら、彼女を諭すように語り掛ける。

 

 

「よいかはやて……聖十大魔道に選ばれたという事は、お主の実力が認められたという事じゃ。しかし聖十の称号は決して軽いものではない……それに加えて、お主はまだ若い。時にはその名を背負う重みが重圧となって、お主を押し潰そうとするかもしれん。名を1つ背負う事にも、相応の覚悟が必要になる」

 

 

「……………」

 

 

「心せよ……聖十の称号を持つという事の意味を。その魔力を正しい事に使い、さらに若い世代の儀表となれ。これはギルドマスターとしてではなく……同じ聖十の称号を持つ対等な魔導士としての言葉じゃ」

 

 

「──はい!!!」

 

 

マカロフのその言葉をしっかりと胸に刻んで、グッと引き締めた表情で力強くそう返事を返すはやて。それを聞いて、マカロフも安心したようにニンッと笑った。

 

 

「っとまぁ、堅っ苦しい話はここまでにして……」

 

 

するとマカロフは今までの真剣な表情を緩め、勢いよくカウンターの上に立ち上がると……高らかに宣言した。

 

 

 

「何はともあれ今日はめでたい日じゃ!!! 飲めィ!!! 騒げェ!!! 笑えガキ共!!!! 今夜は宴じゃーーーー!!!!」

 

 

 

「「「オオオオーーーーッ!!!!」」」

 

 

そんなマカロフの宣言と共に、再びギルドは騒がしい喧騒に包まれたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

そしてその夜……妖精の尻尾(フェアリーテイル)では既に騒ぎ疲れたギルドの面々が、散らかった部屋でテーブルやイス、床などに寝転がって盛大な寝息を立てていた。

 

 

「はぁ…みんなバカ騒ぎし過ぎや。釣られてちょい飲み過ぎてもうたやないか~」

 

 

そんな中……今回の主役であるはやては、1人目を覚まし、酔いを醒ます為にギルドの展望台にて夜風に当たっていた。

 

 

「それにしても、私が聖十の魔導士か……ギルダーツに言うたらどんな顔するんやろ。喜んでくれるかなぁ……」

 

 

はやては今は度に出ていない、ギルダーツの事を思いながら、夜空に浮かぶ月を眺める。

 

 

「そう言えば……こんな月の日の夜やったなぁ……私とギルダーツが出会ったんわ」

 

 

そう言うとはやては、ゆっくりと目を閉じて……幼き日の思い出を振り返り始めたのであった。

 

 

そう……己の人生を変えてくれた、大切な人との出会いを……

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

時は遡り……X774年

 

 

そこはフィオーレ王国の中でも片隅の方に位置する小さな村。

 

 

その名も──『ナニワ村』

 

 

森に囲まれた田舎の方に位置する為、商業などはあまり盛んではなかったが、村の住民たちはみんな明るく活気に満ちていた。

 

 

そんな村に、彼女はいた。

 

 

「~~~♪」

 

 

大きめの籠を持って鼻歌まじりで村を歩く1人の小さな少女……この少女こそが、のちに〝夜天の主〟として名を轟かせる事になる当時の『八神はやて』である。

 

 

「よぉ、はやてちゃん!!」

 

 

「おでかけかい?」

 

 

「おじさん、おばさん、こんにちは♪」

 

 

するとそんなはやてを見つけた村に住む熟年の夫婦が笑顔で話しかけ、はやても老夫婦に対して笑顔で挨拶を返した。

 

 

「ちょっと夕飯の材料が少ないから、森に山菜採りに行くんや」

 

 

「1人で大丈夫かい? 夕飯くらいならおばさんの家で食べてってもいいんだよ」

 

 

「ありがとうおばさん。せやけど今日は作ってみたい料理があるから、また今度お呼ばれするわ」

 

 

「そうかい? 気を付けて行くんだよ」

 

 

「特に森の奥には絶対に近づくんじゃねーぞ、モンスターが出るからな」

 

 

「わかっとるって♪ ほな行ってきま~す!!」

 

 

夫婦2人にそう言うと、はやては元気よく森の方へと向かって行った。

 

 

「ホント、いい子だねぇはやてちゃんは。明るくて、小さいのにしっかりしてて……」

 

 

「ああ…ひと月前に両親を事故で亡くした時ぁ塞ぎ込んでたが、今じゃすっかり立ち直って元気になったなぁ」

 

 

そしてそんなはやてを優しい表情で見送った夫婦が感慨深そうにそう言うと……

 

 

「それは少し違うな」

 

 

「「村長!」」

 

 

そこへ、この村の村長である初老の男性……『ギル・グレアム』がやって来てそう言った。

 

 

「あの子はまだ、両親を失った悲しみから完全には立ち直ってはいない。私たちに心配をかけないように明るく振る舞っているが、まだ9歳の子供だ。あの子が立派に成長するまで、私たち大人がしっかりと支えてやらねばな」

 

 

優しい笑みを浮かべながらそう語るグレアムの言葉に、夫婦2人も同意するように強く頷いたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「うーん…しまったなぁ……」

 

 

はやてが山菜を採る為に森に入ってから十数分後……はやては山菜が入った籠を片手に困ったように佇んでいた。

 

 

「山菜が集まったんはええけど、つい夢中になって森の奥まで来てしもうたなぁ……はよ帰らなグレアムおじさんに怒られてまうわ」

 

 

忠告を受けていたにも関わらず、森の奥地に来てしまったはやては、忠告してくれたおじさんに申し訳なく思いながらも帰路につこうとした。

 

 

だがその時……

 

 

「ウホ?」

 

 

「えっ?」

 

 

そんなはやての目の前に、1体の巨大なサル型のモンスター……『森バルカン』が現れた。

 

 

「……………」

 

 

「…………?」

 

 

すると森バルカンはジッとはやての事を見ていると……

 

 

「ウホッ♡」

 

 

「え‟っ!!?」

 

 

突然目がハートになった森バルカンを見て、はやての全身に悪寒が走った。

 

 

「イヤァァァアアアアア!!!!」

 

 

そしてはやては、すぐさま森バルカンに背を向けてその場から逃げだした。当然、その後を追いかけてくる森バルカン。

 

 

「ウホー!! オデ、オマエ気に入った!! オデの嫁さんにする!!」

 

 

「お断りやーーっ!!! こっち来んなロリコンザルーーー!!!!」

 

 

まさかの森バルカンからの求婚を拒絶しながら全力疾走で森の中を逃げ回るはやて。しかし……

 

 

「あっ…!!」

 

 

はやては地面から突き出していた木の根に躓いてしまい、そのまま地面に転んでしまう。はやてはすぐに起き上ろうとするが、すでに森バルカンははやての目の前へと迫って来ていた。

 

 

「ウホー!!! つっかまーえたーー!!!!」

 

 

「き…きゃあああああああっ!!!!」

 

 

転んだはやてにチャンスとばかりに飛び掛かる森バルカン。それを見たはやては涙を浮かべながら悲鳴を上げて蹲る。

 

 

「(もう…アカン……!!)」

 

 

そしてはやてが諦めて硬く目を閉じたその時……

 

 

 

 

 

「オイオイ……ずいぶんと物騒なサルだな」

 

 

 

 

 

「!!?」

 

 

突然聞こえてきた聞き慣れない声を聞いて、はやては閉じていた目を恐る恐る開けてみた。

 

 

するとそんなはやての視界に入って来たのは……体全体を覆うマント姿にオールバックの髪型をした中年男性が、なんと片手で森バルカンの巨体を軽々受け止めている光景であった。

 

 

「ウ…ウホ!? な…なんだオマエ……!?」

 

 

「ったく…こんなかわいいお嬢ちゃんを泣かしてんじゃねえよ──失せろ」

 

 

そして男がギンッ!!と、まるで射殺すかのような眼で森バルカンを睨んだ瞬間……とてつもない殺気と言い知れぬ威圧感が森バルカンの全身を駆け巡った。

 

 

「ヒッ!! し…失礼しましたーーっ!!!」

 

 

それによって完全に萎縮した森バルカンは一目散に森の奥へと逃げていったのであった。

 

 

「ふう」

 

 

「……………」

 

 

やれやれと言いたげに嘆息する男と、地面に座り込みながらその光景を呆然と眺めていたはやて。すると男はクルリと体を反転させて、はやての方へと顔を向ける。

 

 

「ようお嬢ちゃん……大丈夫だったか?」

 

 

「あ…えっと……はい!」

 

 

そう言って優しく笑いかけてくる男の顔に、はやては少し見惚れながら返事を返したのであった。

 

 

 

 

 

これがまだ魔法も知らない幼き頃の『八神はやて』と……のちに彼女の人生を変える事になる妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強の男……『ギルダーツ・クライヴ』の出会いであった。

 

 

 

 

 

つづく




原作ではジュラに勝ったラクサスを聖十大魔道に任命しようかという話があったが、素行の問題で保留になったという。

でもはやてなら問題なく任命されてもおかしくないですよね?
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