LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

230 / 240
すみません、前回の前書きで今回から冥府の門編だと書きましたが、間違えました。

その前に太陽の村編ですよね、冥府の門編と繋がり過ぎてすっかり忘れてました(-_-;)

と言う訳で今回から新章です!!!

大魔闘演武編に負けないくらい盛り上げていくつもりですので、よろしくお願いします!!!

感想お待ちしております!!!


太陽の村編
新たな冒険の朝


 

 

 

 

 

「~♪~~♪」

 

 

「まさかギルド内に大浴場なんてね~」

 

 

「造ってくれた街の人たちに感謝だね~」

 

 

「んーーー気持ちいい~~」

 

 

「最高ね」

 

 

大魔闘演武から早数ヶ月。再建された妖精の尻尾(フェアリーテイル)内に増築された大浴場では、ティアナやルーシィをはじめとした女性メンバーがそろって入浴していた。

 

 

「こんなモン造られちゃ、仕事やる気なくなっちゃうよ」

 

 

「大魔闘演武以来…ウチに仕事の依頼すごいんだってね」

 

 

「魔導士を直接指名する依頼もあるから、結構大変だよね~」

 

 

「もう…目が回るくらい忙しいわね」

 

 

「たまにはのんびりしないと、体が持たないしね~」

 

 

「あれ? レビィちゃん、今日仕事じゃなかった?」

 

 

「どーゆー訳か、ジェットとドロイがたまには2人で行ってくる……って、張り切ってたよ」

 

 

因みにそのジェットとドロイの2人はレビィにいいトコを見せる為に、何故かガジルとリリーとルーテシアが受けた仕事に無理矢理ついて行き、足手まといになっている事は知る由もない。

 

 

「そう言えば、ナツとグレイさんも珍しく2人だけで仕事に行ってたわね」

 

 

「ナツとグレイさんが? 珍しいね」

 

 

「最近は仲良くなってきたみたいだけど、2人だけっていうのは意外だねー」

 

 

「ハッピーも一緒ですけどね」

 

 

犬猿の仲…いや、炎と氷の仲であるナツとグレイの2人が一緒に仕事に行ったというティアナの言葉に、スバルとなのはが意外そうに声を漏らす。

 

 

「それはそうとさ、ルーシィ」

 

 

「?」

 

 

「この間、ユーノとデートしてたな?」

 

 

「!!!」

 

 

肩に手を回しながらそう告げたカナの指摘に、顔を真っ赤にして反応するルーシィ。

 

 

「お姉さん、たまたま見ちゃったんだ~」

 

 

「あ…あれは…その……!!」

 

 

「で? チチの1つでも揉ませてやったのか?」

 

 

「んな事する訳ないでしょ!!!」

 

 

「本当か~? この胸ならユーノもイチコロだと思うんだけどね~」

 

 

「やっ! ちょっとカナ……」

 

 

「ホレホレ~」

 

 

「あん、くすぐったい!」

 

 

そんなカナのセクハラを受けているルーシィの様子を見ながら、体型に自信のないレビィが呆れたように嘆息する。

 

 

「胸と言えば……ティアも最近少し大きくなったよね~」

 

 

「!!!」

 

 

するとそんなカナとルーシィのやり取りを見て、スバルは思い出したようにそう言いながら、ティアナの胸を後ろから鷲掴みにした。

 

 

「やめなさいよバカスバル!!!」

 

 

「もがっ!!? ガボガボッ……!!」

 

 

だがその瞬間、スバルは顔を真っ赤にしたティアナによって湯の中に文字通り沈められたのだった。

 

 

「まーたお胸の話かぁ~。お胸の良心ウェンディとキャロは……と」

 

 

そう言って同じ貧乳仲間のウェンディとキャロを探すレビィだが、浴場内にその2人の姿は見当たらなかった。

 

 

「ウェンディならエルザと仕事よ」

 

 

「え? そっちも2人で? 珍しい」

 

 

「なんか報酬が激レアスイーツとかで、2人とも目を輝かせちゃって」

 

 

因みに、そのエルザとウェンディにシャルルを加えた3人が受けた仕事はシェラザート劇団座長のラビアンが開く演劇の助っ人なのだが……エルザの大根役者っぷりが大ブーイングが巻き起こしているのは知る由もない。

 

 

「キャロは?」

 

 

「ロメオと仕事よ。キャロは最近、ロメオと一緒に仕事に行くのが多いみたい」

 

 

「ほほう、それは面白い事を聞いたね」

 

 

それを聞いたカナがルーシィにセクハラをしながら目を輝かせる。

 

 

「あれ? でもエルザさんなら、さっきからあそこにいるんですけど……」

 

 

「?」

 

 

「本当だ」

 

 

「もう帰って来てたのかな?」

 

 

そう言ってティアナが視線を向けた先には、その特徴的な緋色の髪を湯につけて入浴している女性の後ろ姿があった。それを見たミラジェーンとレビィとなのはが首を傾げていると……その女性がザバァっと音を立てて立ち上がる。

 

 

「金髪ぅ」

 

 

そして振り返ったその女性はエルザではなく……なんと大鴉の尻尾(レイヴンテイル)のフレア・コロナであった。

 

 

「「「!!?」」」

 

 

「レイヴンのフレア…」

 

 

「何でこんなところに……!?」

 

 

「こんの…!!!!」

 

 

「ちょっと待って!!!」

 

 

そんなフレアを見た瞬間、彼女に向かって駆け出そうとしたカナをルーシィが後ろから抱き着いて止める。その際に足を滑らせて転んでしまったが……

 

 

「何すんだよルーシィ!!! あいつは……」

 

 

「あの人……そんなに悪い人じゃない」

 

 

「は?」

 

 

ルーシィの言葉にカナが疑問符を浮かべていると、フレアはもじもじとしながら静かに口を開く。

 

 

「私…大鴉の尻尾(レイヴンテイル)なくなって……行くとこ………ない」

 

 

どうやら大魔闘演武以降、大鴉の尻尾(レイヴンテイル)は解散し、フリーの魔導士となった彼女は行き場所を求めているようである。

 

 

「マスターに頼んでみよっか」

 

 

それを聞いたルーシィは笑顔を浮かべながらフレアにそう言うと、フレアは嬉しそうに頬を染めた。

 

 

「ええええええっ!!?」

 

 

FT(ウチ)に入れるのォ!!?」

 

 

彼女を妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入れるという話に他の面々は驚愕するが……

 

 

「でも……妖精の尻尾(フェアリーテイル)には入りたくない」

 

 

「「「じゃあ出てくんなーーー!!!!」」」

 

 

フレア本人が拒否した為に、その話は無くなったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第230話

『新たな冒険の朝』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後……大浴場での入浴を終えたルーシィは、いつもの自宅へと向かう道をプルーと共に歩いていた。

 

 

「大浴場いいね~! ウチのお風呂狭いもんね」

 

 

「プーン」

 

 

「ウチと言ったら家賃! あたしも仕事行こーかな」

 

 

そう言っている間に自宅へとたどり着いたルーシィが、部屋への扉を開けると……

 

 

「おかえりなさい」

 

 

「邪魔してるぞ」

 

 

「やっほー♪」

 

 

「さっきぶりね」

 

 

何故かエルザとウェンディとシャルル、そして先ほど大浴場で分かれたハズのティアナとスバルが居座っていた。

 

 

「なんか懐かしいー!!!!」

 

 

「プーン」

 

 

ここしばらくなかったメンバーの不法侵入に、ルーシィは思わずそう叫んでしまった。

 

 

「すみません、勝手にお邪魔しちゃって」

 

 

「なかなかいい部屋じゃない」

 

 

「報酬でもらったスイーツだが…ちょっと私たちでは多すぎてな、おすそ分けに来たという訳だ」

 

 

「私はさっきそこで偶然エルザさんと会って、ついでに誘われたのよ」

 

 

「同じく♪」

 

 

「わぁ! ありがとう! じゃあ、仕事うまくいったんだね」

 

 

「え……まあ」

 

 

「バッチリだ」

 

 

歯切れが悪そうに言いよどむウェンディと、目を輝かせながら豪語するエルザ。それを見たルーシィとティアナは何となく事情を察し、苦笑を浮かべた。

 

 

「それより、ハッピーたちはまだ帰ってきてないの?」

 

 

「簡単な仕事だって言ってたのに遅いね」

 

 

「バカな……もう3日も経っているんだぞ。あいつらの分もあるというのに」

 

 

シャルルの問いにそう答えながら、ナツとグレイたちが仕事に出発してから3日も帰ってきていないという事に疑問符を浮かべる面々。

 

 

「確か2人の仕事はモンスター退治だったわね。ナツやグレイさんの実力なら、1日もあれば片付くレベルの相手のハズ」

 

 

「近場のハズだから、ちょっと見に行ってみようか」

 

 

「別に心配してる訳じゃないんだけど……」

 

 

「そうだな……あの2人の実力でこれほど遅いとなると、いささか気になる」

 

 

「何かトラブルでも……というかトラブルでも起こしたんじゃないですかね、特にナツが」

 

 

「あーうん…ありえるね」

 

 

「とりあえず、ちょっと様子を見に行きませんか、エルザさん」

 

 

「そうだな、行ってみるか」

 

 

「待って!! あたしも行く」

 

 

そう言うとティアナたち6人は帰りが遅いナツとグレイの様子を見に行く為に、2人の仕事先へと向かったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

それからルーシィの家を出たティアナ、ルーシィ、エルザ、スバル、ウェンディ、シャルルの6人はナツとグレイの仕事先である森へとやって来た。そんな彼女たちの目の前には、巨大なモンスターがボロボロ姿で横たわっている光景があった。

 

 

「でかっ!!!」

 

 

「これは……」

 

 

「依頼書のモンスターです」

 

 

「もうとっくに始末済みのようね」

 

 

「でも、あの2人の姿が見えないわね」

 

 

「すれ違っちゃったのかな?」

 

 

モンスターはとっくに退治されているのに、2人の姿が見えないので探し始める一同。すると……

 

 

「シャルル……助けてー……」

 

 

「ハッピー!」

 

 

そこへ木の棒を杖代わりにして立ち、何やらやつれている姿のハッピーが見つかった。それを見たティアナはすぐさまハッピーの体を抱きかかえて、何があったのかを問い掛ける。

 

 

「どうしたのハッピー? 何があったの?」

 

 

「それが……」

 

 

その後……ハッピーの案内によってナツとグレイがいる場所へと案内されたティアナたち。するとそこには……

 

 

 

 

 

「いい加減にしろよこのクソ炎!!!!!」

 

 

「それはこっちのセリフだヘンタイ野郎!!!!」

 

 

 

 

 

顔がボコボコの状態になりながら、殴り合いのケンカをしている2人の姿があった。

 

 

「ああ」

 

 

「いつもの事か……」

 

 

「考えてみれば当然の事ですよね」

 

 

「心配してたのに…」

 

 

「あははは……」

 

 

「3日もコレやってんの?」

 

 

「寝たりご飯食べたりはしてるよ」

 

 

「あら……可愛らしいケンカだこと」

 

 

その光景を目にして、もはや呆れ返る他ない女性陣たち。

 

 

「コラ……お前たちその辺にしないか」

 

 

見かねたエルザがそのケンカを止めるべく、パンパンっと手を叩きながら2人へと歩み寄ると……

 

 

 

「「うるせえ!!!!!」」

 

 

 

なんとナツとグレイはそんなエルザを思いっきり殴ってしまった。

 

 

「「「!!!!?」」」

 

 

その光景を見て表情を青くさせるティアナとルーシィとスバルとウェンディ。

 

 

「──ほう」

 

 

そして殴られたエルザは鼻血を流しながら、ギロリと殺気立った瞳で2人を睨む。その瞬間、ナツとグレイは今しがた殴った相手がエルザだとようやく認識する。

 

 

「エルザーーーー!!!!」

 

 

「何でここにーーーーっ!!!!」

 

 

 

 

 

その直後……この2人の断末魔が森に響き渡ったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「「「あははははははは!!!」」」

 

 

「もうコイツとは仕事行かね」

 

 

「こっちから願い下げだバカヤロウ」

 

 

「仕方ねえな2人とも」

 

 

「もーパパったら…子供じゃないんだから」

 

 

それからギルドへ戻って来たナツとグレイの話を聞いて、エルフマンとヴィヴィオは呆れたようにそう言い、他のメンバーは大笑いしていた。

 

 

「マスター、緊急の依頼書回ってきました」

 

 

「んー」

 

 

そのギルドのカウンターでは、カウンター席の上に胡坐をかいでいるマカロフのもとに、ミラジェーンが今しがた届いた依頼書を届ける。

 

 

「大魔闘演武以来……魔導士を指名してくる依頼が依頼書が増えたのう」

 

 

「みんな人気者になりましたからね」

 

 

そう言うとマカロフは依頼書を一目見て、それに記されている指名の魔導士を呼び上げる。

 

 

「ナツ!! グレイ!! またお前ら2人を指名の依頼書じゃ!!」

 

 

「「またかよ!!!」」

 

 

マカロフにそう言われてナツとグレイは声を荒げる。

 

 

「なるほど……それであの2人が一緒の仕事に」

 

 

「せっかくの指名だ!! 今度は仲良く行ってこい」

 

 

それを聞いていたティアナは何故仲の悪いあの2人が一緒の仕事だったのかを納得し、エルザは先ほどの事を根に持っているのか強く釘を刺すようにそう言った。

 

 

「む? むむむ……これは…!!」

 

 

すると、その依頼書を読み進めているうちに、マカロフの表情が変わった。

 

 

「何だよじっちゃん」

 

 

「オレはもうこいつとは行かねー」

 

 

「オレも行かねー」

 

 

「さわんな」

 

 

そう言っていがみ合うナツとグレイに対して、マカロフは重苦しい表情で口を開く。

 

 

「いや…行かねばならん……そして…絶対に粗相のないようにせよ……」

 

 

そしてマカロフは、その依頼書に記された依頼者の名前を告げる。

 

 

 

 

 

「依頼者の名はウォーロッド・シーケン──聖十大魔道序列4位、イシュガルの四天王と呼ばれる方々の1人じゃ」

 

 

 

 

 

それを聞いた瞬間、ギルド全体が騒然して騒めきたつ。

 

 

「聖十大魔道の1人が依頼人!!?」

 

 

「しかも…イシュガルの四天王!!?」

 

 

「どういう事?」

 

 

「何でそんなすごい人が……」

 

 

「何事なんだ」

 

 

聖十大魔道にしてイシュガルの四天王の1人であるウォーロッド・シーケンからの依頼……その話を聞いただけでも、エルザたちはただ事ではないという事を感じ取っていた。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

緑あふれるのどかな平原……指名されたナツとグレイに加えて共について来たティアナ、ルーシィ、エルザ、スバル、ウェンディ、ハッピー、シャルルの妖精の尻尾(フェアリーテイル)一行は、依頼主であるウォーロッド・シーケンの家へと向かっていた。

 

 

「のどかな所だね~♪」

 

 

「うん、空気もおいしいし」

 

 

「天気も気持ちいいくらいの晴天ね」

 

 

「風も心地いいな」

 

 

「エリオ君も一緒に来れればよかったのにね…」

 

 

「仕方ないわよ、エリオもリニスも別の仕事があるんだから」

 

 

普段では決して味わう事のできないのどかな自然の風景を楽しみながら平原を進むティアナたち。

 

 

「何かピクニックみたいで楽しいよね」

 

 

「そうね──アレがなければね」

 

 

「オレの肉食っただろォ!!!」

 

 

「テメェのモンなんか食うかよ!!!」

 

 

「てか服着ろよ!!!」

 

 

「髪の色が目に痛ェ!! なんとかしろよ!!!」

 

 

そんなのどかな風景にも関わらず、相変わらずナツとグレイはケンカが絶えなかった。

 

 

「いい加減にしないか。これからとても位の高い人に会うんだぞ」

 

 

「2人だけじゃ心配だからついてきたけど……」

 

 

「これじゃあ先が思いやられるわね」

 

 

そんな2人に対してエルザは叱咤し、ティアナとルーシィは呆れ返っていた。

 

 

「聖十大魔道っていえば、評議院が定めた大陸で最も優れた魔導士10人……だっけ?」

 

 

「そうだ。ウチのマスターやラミアのジュラもその1人だ。最近では、はやても任命されたな」

 

 

するとルーシィが思い出したようにそう言うと、話題は聖十大魔道の話へと移る。

 

 

「かつてはファントムのジョゼ、ジェラールもその称号を持っていた。中でも序列上位の4人はイシュガルの四天王と呼ばれる大魔導士だ」

 

 

「ちょっと緊張してきたかも……」

 

 

「イシュガル?」

 

 

「この大陸の古い名前よ」

 

 

「そんなすごい人が何で……あんなのをご指名で……」

 

 

そう言うルーシィの視線の先には、またもや口喧嘩をしているナツとグレイの姿があった。

 

 

「テメェなんかエルザに食われちまえ!!!」

 

 

「テメェこそエルザのクソにまみれてろよ!!!」

 

 

「今……私がディスられているのか」

 

 

しかも地味にエルザにまで被害が及んでいた。

 

 

「あ! 見てください、あそこに家があります」

 

 

そう言ってウェンディが指差した先には、丘の上にポツンと立つ一軒家があった。

 

 

「ここか……聖十大魔道序列4位──ウォーロッド・シーケンの家」

 

 

ようやく依頼主であるウォーロッドの家にたどり着いた一行は、ドアノブに手をかけて扉を開き、ゆっくりと家の中へと足を踏み入れた。

 

 

「ごめんください」

 

 

「魔導士ギルド、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の者です」

 

 

そしてルーシィとティアナがそう尋ねると……

 

 

「しー…静かに」

 

 

「「「!」」」

 

 

「?」

 

 

中にいた1人の老人が、部屋中に植えられている草木に水をやりながら口元に人差し指をあててそう言った。

 

 

「草木は静寂を好む。理解したならその忌々しい口を閉じよ」

 

 

「「「………………」」」

 

 

まるで咎めるかのような重々しい口振りに、異様な迫力を感じたナツたちは一斉に口を噤んで押し黙る。

 

 

そして……

 

 

「──なんてな」

 

 

老人がそう呟いた瞬間、部屋中の草木からキレイな花々が咲き誇った。

 

 

 

「冗談じゃよ冗談!! 草木も花も人間の声は大好きなんじゃ!! わはははははっ!!!」

 

 

 

「………木?」

 

 

「みたいな頭……」

 

 

「なんだこのじっちゃん?」

 

 

「本当にスゲー奴なのか?」

 

 

そう言って先ほどの重々しい声とは打って変わって陽気な声で笑い飛ばす樹木のような頭を持つ老人に、ナツたちは呆気に取られる。

 

 

「いやぁよく来てくれたねぇ、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士たちよ。ナツ君とグレイ君と言うのはどちらかね? ややっ!! 予想よりネコっぽいな!」

 

 

「「……………」」

 

 

そう問い掛けながら老人が抱き上げたのは、何故かハッピーとシャルル。

 

 

「冗談じゃよ冗談!! わははははっ!!!」

 

 

「テンションの高いおじいさんね」

 

 

「ええ、ずっと1人で楽しそうにしてるわ」

 

 

1人で賑やかな老人の様子に、少々ゲンナリとしながらそう呟くルーシィとティアナ。

 

 

「おっと、喉が渇いた。うははははははっ!!」

 

 

「ああああああ……」

 

 

そして豪快にジョウロの水を飲み始める老人に、ウェンディは言葉を失ったのであった。

 

 

「失礼ですが、あなたが聖十大魔道のウォーロッド・シーケン様ですか?」

 

 

「いかにも!! (ワッシ)こそがウォーロッド・シーケン」

 

 

エルザの問いに対して声高々にそう名乗る老人……ウォーロッド。

 

 

「冗談だけどな」

 

 

「「「えーーーーっ!!?」」」

 

 

「……というのは冗談じゃ」

 

 

「疲れるじいさんだ」

 

 

あまりにもつかみ所のない飄々としたウォーロッドに、ナツたちは依頼の話を聞く前から疲れ始めていたのであった。

 

 

それから一同はいったん家の外に出て、そこにあったテーブルに腰かけながらさっそく依頼の話に入った。

 

 

「ワッシは引退してからずっと砂漠の緑化活動を続けてきた」

 

 

「えっ? 引退って事は、ウォーロッドさんも昔ギルドにいたの?」

 

 

「はっはっは、いいギルドじゃったよ」

 

 

「スバル、話の腰を折らないの」

 

 

「あ、ゴメン…」

 

 

途中で少し話を脱線させたスバルをティアナが咎めながら、ウォーロッドは話を続けた。

 

 

「ワッシの『緑の魔法』をもって砂漠の広がりを食い止める。慈善活動と言えば聞こえはいいが、実はただの趣味じゃ。そんな訳で何年のあちこちの砂漠を旅しておるのだがね、この前奇妙な村を見つけてのう。文献によればそこは『太陽の村』。永遠に燃え続ける炎を守護神とし、信仰していた村だった」

 

 

「永遠に燃え続ける炎?」

 

 

「そう……だがその村は凍りついていた」

 

 

「!?」

 

 

永遠に燃える炎と聞いてナツが…その村が凍りついていたと聞いてグレイが、それぞれ反応する。

 

 

「天災なのか人災なのか、人も動物も植物も……建物も川も……村を守護する永遠の炎さえも凍りついていた」

 

 

「炎が凍りついて!?」

 

 

「信じがたいわね……」

 

 

「そんな……」

 

 

その村の何もかも…炎ですら凍っているという話を聞いて、驚嘆するルーシィとティアナとウェンディ。

 

 

「その村で何があったかはわからん。だが……氷の中で村人は生きておった」

 

 

「氷の中で生きてるなんて…」

 

 

「どういう事なの?」

 

 

「生きた村人が凍りついている。放ってはおけん、その村を救ってほしい。それがワッシの依頼じゃ」

 

 

「なるほど!! それなら簡単だ!!! オレの炎で全部の氷溶かしてやる!!!」

 

 

ウォーロッドの依頼内容を聞いて、ナツは意気揚々とそう言い放つ。

 

 

「そーゆー事なら、オレは必要ねーだろ」

 

 

「いや…あれはただの氷ではない。君の力も必ず必要になる」

 

 

氷を溶かす仕事なのに氷の魔導士が必要になる……そんなウォーロッドの意味深な言葉の真意は、今のグレイには分からなかった。

 

 

「お言葉ですがウォーロッド様、あなたほどの魔導士ならばご自分で解決できる事件では……」

 

 

「君たちは何か勘違いをしているかもしれんな」

 

 

「「「?」」」

 

 

疑問符を浮かべるエルザたちに対し、ウォーロッドは語る。

 

 

「聖十大魔道といえど万能ではない。評議院が勝手に定めた10人にすぎん。この大陸(イシュガル)にはワッシ以上の魔導士は山ほどいるし、大陸(イシュガル)を出たらそれはもうワッシなどとても小さな存在。現にワッシは攻撃用の魔法はほとんど知らぬ。若者と武力で争っても勝てる自信もない」

 

 

「ですが…」

 

 

「誰にも得意不得意はある。それを補い合えるのが仲間──ひいてはギルドであろう」

 

 

仲間で互いを補い合うギルドの意味を語るウォーロッドのその言葉に、ナツたちは一斉に顔を見合わせ……

 

 

 

「おっしゃる通りです」

 

 

「その依頼、引き受けた!!」

 

 

「おう!!」

 

 

「あたしたちに任せてください!!」

 

 

「仲間との絆と……」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の名にかけて…ね!!」

 

 

 

その言葉の意味を正しく理解し、ナツたちは改めて快くウォーロッドの依頼を引き受けたのであった。そしてそんなナツたちの様子に、ウォーロッドも満足そうに笑う。

 

 

「それで、その村はどこにあるんですか?」

 

 

「ここから2千kmほど南じゃ」

 

 

「結構あるわね」

 

 

「なーに、移動くらいは手伝ってやろう。そこに集まって、荷物も忘れんようにな」

 

 

そう言ってウォーロッドは腰を上げて立ち上がると、ナツたちを一か所に集める。

 

 

「回れ右……というのは冗談じゃ」

 

 

「「「オイ!!!」」」

 

 

こんな時でも冗談が絶えないウォーロッドにナツたちはツッコミを入れる。

 

 

そんなやり取りがありながらも、ウォーロッドは杖を地面に突き立てると同時にブツブツと呪文を唱え始める。

 

 

「え?」

 

 

「何これ?」

 

 

「うわ!」

 

 

するとその瞬間……ナツたちの足元から苗が生え始め、それはグングンと巨大な木へと急成長しながら大きな葉にナツたちを乗せてどんどん伸び始める。すでにその大きさは、周囲の山々などを軽く超えるほどに巨大なものになっていた。

 

 

「頼んだぞ、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の若者たち」

 

 

そしてその木はナツたちを乗せたまま目的地へと向かって急激に伸びていったのであった。

 

 

「うほーーーっ!!!」

 

 

「木が生き物のように…」

 

 

「すげぇ!!」

 

 

「こんな魔法見た事ない……」

 

 

「わぁ♪」

 

 

「わーい!」

 

 

「ウォーロッドさんの家が、もうあんなに遠くにある!!」

 

 

「まるで乗り物ですね」

 

 

「落ちるわよ」

 

 

「謙遜されてはいるが……やはりたいしたお方だ。大自然を操る魔法とは……」

 

 

ウォーロッドの魔法の規模に舌を巻きながらも、ナツたちは快適に依頼の場所である『太陽の村』へと向かって行ったのであった。

 

 

「流れておる……な」

 

 

すでに見えなくなったナツたちが乗った木が伸びた先を見ながら、ウォーロッドは1人そう呟く。

 

 

そんなウォーロッドの脳裏をよぎるのは……彼がまだ若かった100年以上昔の記憶。

 

 

当時の仲間と共に1から魔導士ギルドを創り上げ……そのギルドのマスターとなった小さな少女と共に記念撮影をした忘れもしない特別な日。

 

 

その少女の名は──メイビス・ヴァーミリオン。

 

 

そして彼女と共に作ったギルドの名は──妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

 

「あれから105年か……」

 

 

懐かしき日を思い出したウォーロッドは…空を仰ぎ、天に向かって静かに語り掛ける。

 

 

 

 

 

「メイビス……あなたの想いは──若者たちに受け継がれておりますぞ」

 

 

 

 

 

つづく

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