LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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リリなのイノセントの新刊で大人マテリアルズが登場しましたね。ちょうどエドラス編のマテリアルズもあんな感じです。

今回はいつもより早めに投稿できました。今回で一気に進みます。

感想お待ちしております。


炎の声

 

 

 

 

 

夢魔の眼(サキュバス・アイ)の大男……ドリアーテと遭遇したグレイは〝退化ノ法〟によって子供の姿となってしまい、同時に子供時代のトラウマともいうべき記憶を呼び起こされて錯乱状態に陥ってしまう。

 

しかし彼に優しく語り掛けるウルティアの声を聞き、正気を取り戻したグレイは子供の姿のままドリアーテと交戦する。

 

退化ノ法によって全ての能力を低下させられたが、グレイは氷と造形魔法の真骨頂である自由な発想を武器にしてドリアーテと渡り合う。

 

しかしグレイの挑発にして激怒したドリアーテの姿が一変し、悪魔のような姿へと変貌したのであった。

 

全ての能力が低下した状況で、悪魔と化してパワーアップしたドリアーテに劣勢を強いられるグレイ。そんな中……グレイはドリアーテが太陽の村を覆う氷に触れる事を避けている事に気がつき、その氷の特殊な魔力が弱点である事に気づく。

 

 

「オレの体を貸してやる!!!! 通っていきやがれ!!!! オオオオオオオオッ!!!!!」

 

 

そしてグレイは自身の体を魔力の通り道にして、氷に宿る特殊な魔力をドリアーテにぶつけたのであった。その一撃によってドリアーテは倒れ、グレイも魔法が解けて元の姿に戻ったのであった。

 

 

「グレイ、大丈夫?」

 

 

「ああ」

 

 

「さっきの何したの?」

 

 

途中で合流したハッピーとシャルルの声を聞きながら、グレイは自身の手に目を向ける。

 

 

「(この氷……何なんだ一体……不気味な魔力には変わりねえが……なんかこう……それに奴の正体も気になる)」

 

 

「くくく…」

 

 

「!」

 

 

すると、倒れてるドリアーテが小さく笑い声を上げる。

 

 

「お前らは開いちまったんだわ……冥府の門を……もう後戻りはできない。そして……」

 

 

意味深な言葉を口にするドリアーテが更に言葉を紡ごうとしたその瞬間……空から降りてきた一つ目の怪鳥がバクリとドリアーテの体を飲み込んでしまったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第234話

『炎の声』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「でかくなったり小さくなったり、やっぱアイツ倒しとくべきだったかな」

 

 

「でもこうやって元に戻ったって事は、その術者はもう誰かが倒したんじゃないの?」

 

 

「何!? 誰にだ!!?」

 

 

「知らないわよ」

 

 

そんな会話をしている元の姿に戻ったナツとティアナの2人は、目的地である巨大な山のふもとへとやって来ていた。

 

 

「ナツ!!」

 

 

「ティア!!」

 

 

「「!」」

 

 

「よかった!! 合流できて」

 

 

「ティアも一緒だ~♪」

 

 

「桜髪…橙髪…」

 

 

「もお! 勝手に走っていかないでよ」

 

 

するとそこへ、ルーシィとウェンディとスバル、そしてフレアとトーマとリリィが合流した。

 

 

「お前ら!!!」

 

 

大鴉の尻尾(レイヴンテイル)!!?」

 

 

「「ひっ!!」」

 

 

「!!」

 

 

トーマたち3人を見たナツとティアナが声を荒げると、それに怯えたフレアとリリィは揃ってルーシィとトーマの背中に隠れ、トーマは身構える。

 

 

「大丈夫、敵じゃない。フレアはこの村の出身なんだって」

 

 

「トーマとリリィも、さっきのドロボウたちから私たちを守ってくれたんだよ」

 

 

そんな3人を庇うように、ルーシィとスバルが事情を説明する。

 

 

「じゃあお前も巨人なのか?」

 

 

「んな訳ないでしょバカナツ」

 

 

「巨人さんに育てられた人間なんです」

 

 

「……………」

 

 

「な…何……!?」

 

 

ナツはフレアの顔をジッと見つめていたかと思うと、ゆっくりと口を開いた。

 

 

「だったらこの村の状況……つれえよな。ギルドの名にかけて、オレたちが必ず元に戻してやるから」

 

 

そう強く言い放ったナツの言葉に聞いて、フレアは呆気に取られるように彼の顔を見つめた。

 

 

「それからお前ら!!」

 

 

「!」

 

 

「………なに?」

 

 

いきなりトーマとリリィを指差しながら大声を張り上げるナツに対して、警戒心を露にするトーマと軽く怯えるリリィ。するとナツはそんなトーマとリリィに向かって二カッと笑顔を浮かべると……

 

 

「ありがとな……オレたちの仲間を守ってくれて」

 

 

「「!!」」

 

 

そんな感謝の言葉を言い放ち、それを聞いたトーマとリリィも呆気に取られた表情を浮かべたのであった。

 

 

そんな事もありながら、一行はすぐに話を戻す。

 

 

「〝永遠の炎〟なら村を元に戻せるかもしれないんです」

 

 

「それでフレアに案内してもらってたの」

 

 

「で…ここにたどり着いたんだけど……」

 

 

「そっか……オレの手がかりの声はこの山で聞こえたと思うんだけどな」

 

 

「でも私とエルザさんは一度この山に登ったけど、何もなかったわよ」

 

 

「山じゃない…」

 

 

「あ?」

 

 

「村の守護神、永遠の炎──これが永遠の炎」

 

 

「え!!?」

 

 

「ウソ!?」

 

 

「「「!!?」」」

 

 

目の前にそびえ立つ巨大な山そのものが永遠の炎だと聞いて、ナツたちは驚愕する。

 

 

「山じゃねえのか!!?」

 

 

「巨大な炎が凍りついて山に見えてるんだ」

 

 

「灯台下暗しね。道理で登っても何もないハズよ」

 

 

「炎が凍りつくなんて…」

 

 

「永遠の炎なら村を元に戻せるかもって希望があったけど……そうだった…その炎さえ凍りついてるんだ」

 

 

「じゃあまずはこの炎の氷をどうにかしないとだね。でもどうしたらいいんだろう……」

 

 

頼みの綱の永遠の炎すら凍っているという事実に、ナツたちはどうするか考え込む。すると……

 

 

「お前ら逃げろーーーっ!!!!」

 

 

「「「!!」」」

 

 

「グレイ!!」

 

 

「ハッピーにシャルルも」

 

 

何やら必死の形相でこちらへと向かって走ってきているグレイとハッピーとシャルル。そしてそんな彼らの後ろからは、巨大な一つ目の怪鳥が追いかけてきていた。

 

 

「なあああああ!!?」

 

 

「カイブツーー!!?」

 

 

「何……アレ……!?」

 

 

「わかんないけど……オイラたちを食べるつもりだよ!」

 

 

「敵よ敵!!」

 

 

「倒せばいいだろ!! グレイ!!」

 

 

「無駄な魔力を使ってる場合じゃねえんだ!」

 

 

「あ?」

 

 

「この村の氷…もしかしたら溶かせるかもしれねえ!」

 

 

そう言い放ったグレイの言葉に、ナツたちは目を丸くする。

 

 

「本当?」

 

 

その言葉に真っ先に反応したフレア。

 

 

「レイヴンの? 何であいつらが」

 

 

「んな事ァいい!! この氷溶かせるんだなっ!!?」

 

 

「確実じゃねえが…やるさ!! やってやる!!!」

 

 

「おし!! そういう事ならあの鳥はオレがやる!!! この山が永遠の炎なんだ!! お前はこれを溶かしてくれ!!」

 

 

「何!!?」

 

 

「できるかっ!!?」

 

 

「おし!!!」

 

 

「「頼んだぞ!!!!」」

「ナツ!!」

「グレイ!!」

 

 

ナツとグレイは互いにそう言ってハイタッチを交わすと、ナツは怪鳥へ…グレイは凍った永遠の炎へとそれぞれ向かって行った。

 

 

「うらああああああ!!!!」

 

 

そして怪鳥の一つ目に勢いよく炎の蹴りを叩き込むナツ。それを喰らった怪鳥は後ろに大きく吹き飛ばされるが、特に効いた様子もなく両の翼を広げて空中に留まる。

 

 

「!」

 

 

次の瞬間、ナツは猛スピードで空から接近してきた怪鳥の爪に捕まってしまう。

 

 

「うああああああ!!!」

 

 

「ナツ!!」

 

 

ナツはそのまま空中に放り投げられてしまい、それを見たティアナが叫ぶ。

 

 

「オレは大丈夫!! 氷を……永遠の炎を復活させるんだ!!!!」

 

 

そう言って両手に炎を灯して身構えるナツ。そして……

 

 

 

「きっと〝炎〟がこの村を救ってくれる!!!!」

 

 

 

そう言い放つと同時に、怪鳥の一つ目に炎の一撃を叩き込んだのであった。

 

 

「任せとけ!!!」

 

 

その言葉を受けて、グレイも強くそう言い放つ。

 

 

「この村を覆う氷は得体が知れない。操る事も溶かす事もできなかったが、オレの体を通す事はできた。これは同じ氷の属性ゆえなのかはわからねえが」

 

 

「氷の魔力を体に通す?」

 

 

「魔力を体に通して…どうするの!?」

 

 

グレイの言葉に首を傾げるルーシィとスバル。

 

 

氷造形(アイスメイク)だ。この村の氷をオレの形に造り変える」

 

 

「村中の氷を…造り変える?」

 

 

「すごい…そんな事が……」

 

 

村中を覆う氷を造り変えて溶かすというグレイの発案に、トーマとフレアが感嘆の声を上げる。

 

 

「できるかはわからねえ、だから巨人に使うのは後だ! まずはこの山……永遠の炎を溶かしてみせる! みんな離れてろォ!!!!」

 

 

そしてグレイは凍った永遠の炎に両手をつけると、自身の体に氷の魔力を通して、その形を造り変えようとする。

 

 

「オオオオオオオオオ!!!!」

 

 

雄叫びを上げて奮起するグレイ。すると、永遠の炎を覆う氷から蒸気が上がり始める。

 

 

「氷が蒸発してる!!!」

 

 

「溶けだしてきたんだ!!!」

 

 

「おし!!!!」

 

 

「やったーー!!!」

 

 

「氷が溶けるわ!」

 

 

次の瞬間……氷が完全に蒸発して、凄まじい蒸気がその場を覆った。

 

 

 

そして蒸気が晴れるとそこには──何も無かった。

 

 

 

「あれ…?」

 

 

「どういう事!?」

 

 

「炎が……ない……」

 

 

「ウソ……」

 

 

「バカな……」

 

 

「何で……」

 

 

「そんな……」

 

 

「「フレア!」」

 

 

確かに氷が溶けたハズなのに、炎が存在しない事にグレイたちが愕然とし、茫然自失として地面に座り込むフレアをトーマとリリィが支える。

 

 

「!」

 

 

そんな中でただ1人、ウェンディだけが何かを感じ取ってゾクリと体を震わせた。

 

 

「(何……!!? この感じ……この魔力は……)」

 

 

何か体をぞくぞくとさせる魔力を感じ取ったウェンディ。

 

 

「永遠の炎が消えた…!!?」

 

 

「そんな…そんなぁ……」

 

 

「凍らされた時点で消滅しちゃったのかしら……」

 

 

「あり得るわね……そもそも氷が溶けたら炎が復活するなんて考え自体が甘かったのかもしれないわ」

 

 

「いや……オレが失敗したのかもしれねえ……これじゃ……巨人の氷を溶かすのは無理だ……」

 

 

「何百年も燃え続けた炎が消えるなんて……この村はもう……ダメ……なの…?」

 

 

最後の希望であった永遠の炎が存在しない事に一同は落胆し、表情を暗くさせる。

 

 

「消えてません!!!!」

 

 

「「「!!」」」

 

 

すると、その暗い雰囲気を吹き飛ばすかのようにそう叫ぶウェンディ。

 

 

「強力な残留思念!!!! これは生きてる証拠です!!!!」

 

 

「生きてる……て何が!?」

 

 

「! みんな!! アレを見て!!!」

 

 

そう言ってスバルが指差す先にある、未だ立ち込める蒸気の中から出てきたモノ。

 

 

「あれは?」

 

 

「炎の祭壇」

 

 

「違う!! よく見て!!!」

 

 

スバルに言われてよく見てみると……祭壇の上にかすかに火が灯っているのが見えた。

 

 

「かすかに火が残ってる」

 

 

「でもすごく弱々しい」

 

 

「ナツさんの炎なら……ナツさんならきっとあの炎を復活できます!!!」

 

 

「そうか!」

 

 

「ナツならきっと!!」

 

 

「うん!」

 

 

「桜髪!」

 

 

「ナツ・ドラグニル」

 

 

ウェンディの言葉を聞いて、全員の視線が一斉に空中で怪鳥と戦っているナツへと向けられる。そしてそんな彼らを代表して……ティアナが力の限り、彼の名を叫んだ。

 

 

「ナツーーーー!!!!」

 

 

そしてその声をしっかりと聞き届けたナツは……

 

 

 

「ああ──任せとけ!!!!」

 

 

 

笑みを浮かべながら強くそう応えたのであった。

 

 

「!」

 

 

すると、怪鳥がぐるりと体を回転させて、体にしがみついていたナツを振り下ろす。

 

 

「ぐっ……!!!」

 

 

さらに怪鳥は尻尾を鞭のようにしならせてナツへと叩き付けるが、ナツはダメージを負いながらもその尻尾をしっかりと掴んでいた。

 

 

「うおあああああ!!!」

 

 

そしてナツはそのまま怪鳥の体を振り回し、地面に向かって投げ飛ばす。

 

 

しかし怪鳥は翼を広げて落下の勢いを減速させると、その特徴的な一つ目からレーザーを放った。

 

 

「ぐぁあ!!!」

 

 

「ナツ!!!」

 

 

そのレーザーに飲み込まれるナツと、その様子を見て声を上げるルーシィ。するとその声に反応したのか、怪鳥はそのままレーザーをルーシィたちへと向ける。

 

 

「くっ!」

 

 

「きゃあ!」

 

 

それを何とか回避するルーシィたちだが、レーザーはそのまま凍っている巨人たちへと向かって行く。

 

 

「巨人に当たっちゃう!!」

 

 

「スバル!!!」

 

 

「わかってる!!!」

 

 

それを見たウェンディがそう叫んだその時……ティアナとスバルが同時に動き出した。

 

 

ティアナは構えたクロスミラージュの銃口に魔力を集束し、スバルは右手に装着したリボルバーナックルに魔力を込める。

 

 

そして……

 

 

 

「「ファントム・ストライク!!!!!」」

 

 

 

ティアナとスバルが同時に放った砲撃魔法が怪鳥のレーザーに直撃し、巨人に当たる寸前に軌道を変えて逸らしたのであった。

 

 

「巨人は私たちが守る!!!」

 

 

「アンタはいつも通り…思いっきり暴れなさい!!!! ナツ!!!!」

 

 

「おっしゃあァ!!!!」

 

 

スバルとティアナの言葉を聞いて、気合を入れるように叫ぶナツ。

 

 

「オッチャン、頭借りるぞ!!!」

 

 

そして凍った巨人の後頭部に着地すると、それを足場にして思いっきり踏み出し……炎を纏った体で怪鳥に体当たりを喰らわせた。

 

 

「火竜の…煌炎!!!!」

 

 

続けて両手に纏った炎の一撃を叩き込み、怪鳥を祭壇の上へと叩き落すナツ。

 

 

「オオオオオオラァ!!!!」

 

 

更に追い打ちをかけるように手から投げつけるように放った炎を怪鳥に命中させるナツ。だがナツは攻撃はまだ終わっていない。

 

 

「まだまだァ!!!!」

 

 

今度は両手を使って炎を乱射するナツ。その攻撃は凄まじく、村中にその衝撃が響く程であった。

 

 

「滅竜奥義……」

 

 

そして……

 

 

 

 

 

「紅蓮爆炎刃!!!!!」

 

 

 

 

 

ナツの渾身の炎の一撃が叩き込まれたのであった。

 

 

それによって怪鳥は黒コゲになって倒れ……そして……

 

 

「炎が……守り神が……灯った」

 

 

ナツの炎によって息を吹き返した永遠の炎が……雄々しく燃え盛っていた。

 

 

「オレが聞いた声……」

 

 

「私が感じた残留思念……そっか……」

 

 

その炎を見たウェンディは、合点がいったようにそう呟くと、両手を合わせて魔法を発動させる。

 

 

その瞬間……永遠の炎の中から、ナツたちにとって見覚えのある存在が姿を現した。

 

 

「え?」

 

 

「あれって……」

 

 

「永遠の炎ってまさか……」

 

 

「そう言う事だったのね……」

 

 

「お前だったのか」

 

 

その存在を見てティアナたちは驚愕し、ナツは笑みを浮かべた。

 

 

 

「400年ぶりか……イグニールの子よ……」

 

 

 

その存在とは……かつて未来のローグによって現代に召喚され、ナツと共に戦ったドラゴン──炎竜アトラスフレイムであった。

 

 

「あいつは…」

 

 

「エクリプスから出てきたドラゴンの1頭」

 

 

「あのドラゴンが…永遠の炎の正体」

 

 

「でも確か、ドラゴンは全部400年前に帰ったハズじゃ……」

 

 

現れたアトラスフレイムの姿を見て、グレイとルーシィとティアナは驚愕し、スバルは何故アトラスフレイムがここにいるのかと疑問符を浮かべる。

 

 

「400年…ウム…400年…我は燃え続けておる……」

 

 

「生きてたんだな、オッチャン」

 

 

「お久しぶりです」

 

 

そう言って嬉しそうに笑うナツと、緊張気味に顔をこわばらせるハッピー。

 

 

「生きて…? いや……違うな……」

 

 

「この姿は、私の魔法(ミルキーウェイ)で具現化したものです」

 

 

「じゃあ」

 

 

「死んだ…という事か…? それも遥かなる古……」

 

 

まるで今の自分の状況が理解できていないかのように疑問符を浮かべているアトラスフレイム。

 

 

「意識がハッキリしてねーのか」

 

 

「意識…というよりは記憶が…混濁しておる……ムム…ここは…我は……」

 

 

「しっかりしろよオッチャン」

 

 

「イグニールの子は覚えておる」

 

 

「どういう事? ジルコニスの時は記憶もハッキリしてたのに!」

 

 

「氷のせいかも。元々残留思念というものは、とても強い意志に反し、とても弱い魔力なの。それが氷の魔法によって長時間凍結された事で、記憶の一部が損傷した……」

 

 

混乱するアトラスフレイムの様子を見て、そう説明するウェンディ。

 

 

「氷……ウム…氷だ…世界は氷に包まれた」

 

 

「オッチャン、この村の事言ってんのか!?」

 

 

「何が…あったのですか…あの……教えて……」

 

 

フレアの問い掛けに対して、混濁する記憶を懸命に思い出そうとするアトラスフレイム。

 

 

「ムググ……あの男は我を……何かと……間違えて…ムウウ……」

 

 

「あの男?」

 

 

「そうだ……たった1人の人間が……世界を氷に変えた」

 

 

それを聞いた瞬間、一同は驚愕を露にする。

 

 

「氷の魔導士の仕業だったのか!!」

 

 

「しかもたった1人で、この村を氷漬けにしたって言うの!!?」

 

 

「な……何の為に……」

 

 

「あの男は……我を…〝悪魔〟と思っていた……我を消す為、村中を凍らせた。悪魔祓いの魔導士──滅悪魔導士(デビルスレイヤー)

 

 

「デビルスレイヤー!!?」

 

 

「滅竜魔法や滅神魔法とも違う……滅悪魔法!?」

 

 

「悪魔を倒す魔法でしょうか?」

 

 

「そんな魔法、今まで聞いた事ないわ」

 

 

滅悪魔導士(デビルスレイヤー)という初めて耳にする魔導士の存在に、ナツたちは動揺を隠せない。

 

 

「(そうか…!!! だからあいつに〝この村の氷〟が効いたのか!!? 氷の滅悪魔導士(デビルスレイヤー)、何者なんだ!!?)」

 

 

そんな中でグレイは、なぜ悪魔と化したドリアーテに村の氷の魔力が効いたのか合点がいき、同時に氷を操る滅悪魔導士(デビルスレイヤー)の存在を気にかけていた。

 

 

「ムググ…思い出せん……我は…一体……」

 

 

「あなたはこの村の守り神!!!! 巨人の炎!!!!」

 

 

「ム……」

 

 

すると、フレアがアトラスフレイムに向かってそう叫び、それを聞いたアトラスフレイムも彼女の言葉に耳を傾ける。

 

 

「どうかお願いします!!!! この村に再び光を!!!! この村を救ってください!!!! どうか…守り神様……」

 

 

その場で膝をついて頭を下げ、村を救ってほしいと涙ながらに懇願するフレア。そんな彼女の懸命な言葉が……アトラスフレイムの記憶を揺り動かした。

 

 

「我は……そうだ……我が名は巨人の炎(アトラスフレイム)。この村を作った者」

 

 

「いいぞ!! 思い出してきたんだな!!」

 

 

「我が村の不幸は我が痛み……我が村の悲しみは我が涙……我が…魂の最後の残り香とイグニールの子の炎をもって……この村を解放せし……」

 

 

そして……

 

 

 

 

 

「我が名は炎竜アトラスフレイム──この村の守護竜なり」

 

 

 

 

 

そう言い放ったアトラスフレイムの炎の体から、凄まじい熱気が放たれた。

 

 

「オオ……」

 

 

「うわぁ!」

 

 

「何て熱気……!!」

 

 

「熱いっ!!!! グレイ冷やして~」

 

 

「私も~!」

 

 

「すげえ炎だ」

 

 

「熱いよトーマ!!」

 

 

「ああ…皮膚が焼けつくみたいだ」

 

 

「魂が消えてく」

 

 

「え?」

 

 

焼けつくようなその熱気に、ナツたちも驚愕する。

 

 

「イグニール…竜王祭…アクノロギア…ゼレフ……思い出した…思い出したぞ……!!」

 

 

「!?」

 

 

「エンドレスに並ぶゼレフ書最凶最悪の悪魔──END。400年前……イグニールはENDを破壊できなかった」

 

 

「?」

 

 

アトラスフレイムの意味深なその言葉に疑問符を浮かべるナツ。そしてその言葉を最後にアトラスフレイムは消えていき、彼の放った最後の炎が……太陽の村を覆う氷全てを溶かしたのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「氷が…溶けて…」

 

 

「やったのか、みんな」

 

 

「くぅ…!!」

 

 

氷が溶けていく光景を目の当たりにして、エルザは安堵し、ミネルバは悔しそうな表情を浮かべた。

 

 

「ん? これは珍しい。人間が村に迷い込んでおる」

 

 

「「!」」

 

 

するとそんな2人を、氷から解放された1人の巨人が覗き込む。

 

 

「ここまでか」

 

 

「ミネルバ!!」

 

 

「いずれ決着はつけようぞ。妾とそなた、最高の舞台で」

 

 

それを見たミネルバは引き際だと悟り、その場から離れて行く。そんな彼女に向かってエルザは強く言い放つ。

 

 

「闇に染まるな。お前はそんなに弱くはないハズだ」

 

 

「闇には染まらぬ。妾が世界を闇に染める」

 

 

そしてそれに対しミネルバも、強くそう言い返したのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「見て!! 村が…」

 

 

「おお」

 

 

「元に戻ってく」

 

 

「うん」

 

 

「巨人のみんなも無事だね!」

 

 

「ええ」

 

 

「オッチャン…」

 

 

「フレアの故郷は…救われたんだな」

 

 

「よかったね、フレア」

 

 

「ああ……なんてあたたかい……」

 

 

氷の呪縛から解放された村と巨人たちを見て、安堵の息を吐く妖精の尻尾(フェアリーテイル)一行とトーマ&リリィ。そして故郷が救われた事に涙を流すフレア。

 

 

「アトラスフレイムの思念は完全に消えました」

 

 

「現世に残る僅かな魂がここまでの力を出せるなんて……」

 

 

「つくづく、ドラゴンの力を思い知らされるわ」

 

 

「イグニールが破壊しようとしていた悪魔〝END〟? 初めて聞く話だな」

 

 

「あい」

 

 

何はともあれ……こうして、ナツたちの太陽の村での戦いは終わったのであった。

 

 

だがナツたちは知らない。

 

 

この村での戦いが……これから始まるであろう大いなる決戦のほんの序章に過ぎないとという事を……

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

場所は変わって……どこかの吹雪が吹き荒れる廃街。そこには3人の人影があった。

 

 

1人は雪の積もる地面に座り込みながら、目の前に立つ墓を見つめる男性。

 

 

もう1人は男性の後ろで通信用魔水晶(ラクリマ)でどこかと連絡を取っている若い青年。

 

 

そしてもう1人が吹き荒ぶ吹雪をものともせずに、腕を組んで静かに佇む女性。

 

 

「おーい旦那~! 本部から召集命令。すぐにギルドに戻って来いってさ」

 

 

「墓参りくれぇゆっくりさせろや」

 

 

「そうも言ってられないでしょ。この召集命令は九鬼門全員に出ているんだから」

 

 

「へいへい」

 

 

青年の報告に文句を言う男性だったが、女性の咎めるような言葉に渋々ながら腰を上げて立ち上がる。

 

 

「つーか、そういう連絡はフツー伝令役とか寄越すモンじゃねえのか?」

 

 

「しょうがないじゃないッスか。ギルドの中じゃあ、旦那はかなり恐れられてんだから」

 

 

「そうね、ギルドのみんなからしたらあなたの魔法は脅威でしかないわ……でしょ? 氷の滅悪魔導士(デビルスレイヤー)、シルバーさん」

 

 

「やれやれ……別にとって喰いやしねぇってのに」

 

 

青年と女性の言葉に、呆れながらもヘラヘラとした笑みを浮かべる男性。

 

 

 

「オレが喰うのは悪魔の魂だけだ」

 

 

 

その男こそ……太陽の村を氷漬けにした張本人であり、バラム同盟の一角を担う闇ギルド〝冥府の門(タルタロス)〟の幹部〝九鬼門〟の1人──絶対零度のシルバーであった。

 

 

 

 

 

つづく




次回、太陽の村編完結!!


そしていよいよ冥府の門が開かれる……
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