今回で太陽の村編は終了。次回から本格的に冥府の門編がスタートです。
仕事が忙しくて中々投稿できませんが、これからも見放さずにお付き合いください。
感想お待ちしております。
永遠の炎こと…炎竜アトラスフレイムの最後の力によって氷の呪縛から解き放たれた太陽の村と、村人である巨人たち。
そして現在その太陽の村では、ナツたちと巨人たちによる宴会が開かれていた。
「わはははははは!」
「わはははははは!」
「わはははははは!」
「「「わーっはっはっはっはー!」」」
「すっかり馴染んでるわね、あのバカコンビ……」
巨人の頭の上で巨人たちと共に笑い声を上げるナツとスバルを見て、呆れたようにそう呟くティアナ。
「小さき者に救われてしまったな」
「元に戻れてよかったな」
「その中でもさらに小さい部類ね、ウェンディは」
「わははははははっ!」
巨人たちの料理に舌鼓を打ちながら宴会を楽しむナツたちと巨人たち。そんな中で、エルザが巨人たちに対して問い掛ける。
「一体この村で何があったのだ」
「氷の
「ワシらも武器をとって立ち向かったのだが……」
「そこからの記憶がない」
「ウム」
「そいつは永遠の炎……炎竜アトラスフレイムを〝悪魔〟だと思ってこの村にやって来たらしいです」
「犯人の勘違いが起こした事件だというのか? しまらん話だな」
「いや…その犯人の真意はまだわからねえ」
「?」
ティアナの報告を聞いて拍子抜けしたようにそう言うエルザ。だがそこへグレイが口を挟む。
「サキュバスの男が言っていた」
『お前らは開いちまったんだわ……冥府の門を……もう後戻りはできない』
グレイが最後にドリアーテから聞いた意味深な言葉。そこに含まれる〝冥府の門〟という言葉を聞いて、思い浮かぶのはただ1つ。
「冥府の門ってまさか!?」
「
「ひい!」
「おそらく犯人は
「何か別の理由があって村を凍らせたって事?」
「そうね…まだ何か裏がありそうね」
「でもまぁ、難しい事はよくわかんないけど……」
「とりあえずは仕事完了だ!」
「あいさー!」
何はともあれ、太陽の村を救うという仕事は終わった。すると、ルーシィがある事に気がついた。
「そう言えばフレアやトーマたちは?」
「ああ、トーマとリリィなら向こう。フレアなら……そこよ」
「!!」
ルーシィの疑問に対して、ティアナがナツたちとは少し離れた所で座っているトーマとリリィ……そして近くの木の陰に隠れているフレアを指差しながら答えたのであった。
「何で隠れてるの? ねえフレア」
「…………」
「「「フレアだと!?」」」
「おわ!」
「ひゃあ!」
「あああ!」
ルーシィが口にしたフレアという名前を聞いて、巨人たちが一斉に立ち上がる。当然、頭の上に乗っていたナツとスバルとハッピーは振り落とされてしまった。
「そこにおるのか!?」
「…………」
「ホラ……久しぶりに帰ってきたんだし」
「私…この村を捨てた……勝手に出て行った……だから」
「大丈夫だよ、怒ってなんかないって」
そう言ってフレアを引きずり出しながら巨人を見上げるルーシィだが、巨人たちの顔つきはとても穏やかなモノには見えず、思わず「たぶん」と呟いてしまった。
「本当にフレアなのか?」
「久しいな……」
「大きくなったが、まだワシらより小さいな」
フレアの姿を見て、巨人たちがざわつきながらそう言うと……1人の巨人がフレアに問い掛ける。
「外の世界はどうだった?」
「た…楽しい事も……辛い事もいっぱい……」
フレアはその問い掛けに対して、しどろもどろになりながらもそう答えると、それを聞いた巨人たちはニッと笑った。
「それはどこにいても同じだ、生きている限りな」
「…………」
「出ていこうが戻ってこようが、ここがお前の家だ」
「自由にすればいいさ」
「ウム」
優しく彼女を諭すように、そう言葉を口にする巨人たち。
「まあ……しかし何だ…これだけは言っておかんとな……」
そして……
「「「おかえり、我等が娘よ」」」
彼らは帰って来たフレアを、快く迎え入れたのであった。
「た…ただいま……」
そしてフレアも、そんな優しい巨人たちに対して、大粒の涙を流しながらそう言葉を返して……心の底からの笑顔を浮かべたのであった。
その笑顔は……ルーシィたちまで幸せな気持ちになるほど眩しいものであった。
第235話
『Song of the Fairies』
フレアが戻って来た祝いも兼ねての宴会は大いに盛り上がっていた。しかしその宴会を少し離れた場所から見るだけで、加わってない2人がいた。トーマとリリィである。
「フレア、ちゃんと村に戻ってこられてよかったね」
「ああ。帰るべき故郷があるっていうのはいい事だからな」
今まで見た事のない笑顔で宴に加わっているフレアを見て、嬉しそうにそう呟くトーマとリリィ。するとそんな2人に、スバルが駆け寄る。
「トーマ! リリィ! 2人ともそんな所にいないで、一緒に楽しもうよ!」
「いや……オレはいいよ。元々フレアに誘われてついて来ただけで、今回の事には関係ないし。それにあまり騒がしいのも得意じゃないから」
「私も、トーマがいかないなら遠慮しとこうかな……」
「そっかー」
誘いを断られた事にスバルは苦笑しながら肩を落とす。
「2人はこれからどうするの?」
「……さあね、特に決まってないよ。オレとリリィには帰るべき故郷もないから」
「トーマ……」
スバルの問いに答えながら、暗い表情を浮かべるトーマと、そんな彼を心配そうな顔つきで見つめるリリィ。するとスバルはそんな2人に対して、ある提案を持ち掛けた。
「それじゃあさ──2人とも
「……は?」
「へ?」
それを聞いたトーマとリリィは、そろって目を丸くした。
「2人とも行くトコがないなら、ウチに来ればいいんだよ。マスターには私たちから頼んでみるからさ」
「いや…ちょっと待てよ!! オレとリリィが
「そんなの私は別に気にしないよ~」
「アンタが気にしなくても、他の奴等が納得しないだろ!!」
そう言うとトーマは、途中からスバルとトーマの会話を聞いていたナツたちに視線を向けるが……
「いんじゃね?」
「あい」
「特に反対する理由はないわ」
「うん!」
「同じく」
「何なら私がマスターに話を通してやってもいい」
「私たちも構いません。ね、シャルル?」
「そうね」
「「……………!!」」
反論するどころか、むしろトーマたちをギルドに入れるのに乗り気なナツたちにトーマとリリィは絶句する。
「何でだ……何でアンタたちは、こんな得体の知れないオレたちを…受け入れようとするんだ……?」
「わかってねーなァ」
すると……困惑するトーマにナツがゆっくりと歩み寄り、ズイッと彼に顔を近づけて言い放つ。
「お前らはオレたちの仲間を守ってくれた──だったらもうお前らも仲間だろ?」
「「!!」」
ナツのそんな言葉に、衝撃を受けたように目を見開くトーマとリリィ。
「得体なんざこれから知っていきゃいい。知ってるトコも知らねートコも、全部受け入れてこその仲間だからな」
二カッと笑みを浮かべながらそう言い放つナツの言葉を聞きながら、呆然とするトーマとリリィ。そしてそんなナツに続くように、スバルが口を開く。
「ねっ♪ みんな大歓迎だからさ。おいでよ──
そう言い放ちながら、そっとトーマとリリィに向かって手を差し伸べるスバル。すると……
「──ぷっ…ははは……あはははははははっ!!!!」
「「「!」」」
突然大声を上げて笑い始めるトーマ。同時に彼が笑う姿を初めて見たスバルたちは、何事かと思い目を丸くさせた。
「アンタら…お人好しにも程があるだろ! あははははっ!!!」
そう言って目元に涙が浮かぶまで可笑しそうに笑うトーマ。そしてひとしきり笑って息を整えると、ふと視線をスバルの方へと向ける。
「本当……相変わらずお人好しだよ──スゥちゃんは」
「へ…?」
突然トーマに自分の事を『スゥちゃん』呼ばれ、目を丸くするスバル。
「スゥちゃんって……私の事?」
「そうだよ。ってか、本当に覚えてないんだ……」
疑問符を浮かべているスバルの様子を見て、呆れたように溜息を吐くトーマ。
「なんだ? 知り合いだったのか?」
「え…ええっと……」
そしてエルザの問い掛けに対してスバルが戸惑っていると、トーマが彼女の代わりに答えた。
「親戚同士なんだよ、オレとスゥちゃんは」
「「「親戚ィ!!!?」」」
スバルとトーマが親戚だと聞いて、驚愕の声を上げるナツたち。スバル本人に至っては、ポカーンと口を開けて固まっている。
「結構遠い親戚なんだけど、オレとスゥちゃんの父さん同士が交流あってさ。一時期オレとスゥちゃん、それから幼馴染のリリィの3人で遊んだ事もあるんだけど」
「あぁーーーーーーーっ!!!!」
すると、その話を聞いたスバルが思い出したように大声を張り上げた。
「トーマって…あのトーマだったの!!?」
「やっと思い出したの? オレとリリィはひと目で気づいたのに。な?」
「うんうん」
「いやわかる訳ないよ!! 最後に会ったのは3年くらい前だし、その時は2人ともこんなに小っちゃかったのに!!」
「いや、オレとリリィにとってはもう10年も前の話だからそれ」
大体自分の腰あたりまでの大きさを手で表しながらそう反論するスバルと、それを即座に否定するトーマ。
「まぁ、スバルの記憶力の悪さはナツ並だからしょうがないわよ」
「うぐっ……ティアまでヒドイ……」
ティアナの辛辣な言葉にスバルはバツが悪そうな表情を浮かべるが、反論の余地はなかった。
「そ…それより!! 2人が
「(ムリヤリ話を戻したわね)」
スバルの急な話題転換に、ティアナがジト目で視線を送っているが、スバルはそれを笑って誤魔化した。
「確かに、スゥちゃんたちと一緒のギルドに入ったら色々と面白そうだ」
「じゃあ!!」
トーマのその言葉を聞き、期待を込めた瞳で彼を見るスバル。そして……
「ゴメン、断るよ」
普通に断られた。
「「何で!!?」」
「そこは流れ的にウチに入るって言うんじゃないの!!?」
トーマの思わぬ回答にナツとスバルが叫び、ルーシィがツッコミを入れた。そんな彼らの反応に苦笑しながら、トーマは説明する。
「実を言うとさ……オレとリリィは、ある目的があって旅してるんだ」
「目的?」
「うん……オレたちは──〝あの日の真実〟が知りたいんだ」
そしてトーマはそう答えながら、リリィと共に物憂げな表情を浮かべる。
「7年前……街が砕けて、オレもリリィも死にかけて、オレたちの大事なモノが全部壊された──ヴァイゼン遺跡鉱山でのこと」
「ヴァイゼン遺跡鉱山……聞いた事があるな。フィオーレでも有数の巨大鉱山を持つ街だったが、原因不明の事故によって壊滅したと。確か、私たちがS級試験で天狼島へ赴く5日ほど前の事だったか」
エルザが自身の持つ情報を口にすると、トーマはそれを頷いて肯定し、そのまま言葉を続けた。
「そう……公式記録じゃ事故って断定されてる。だけどオレはあの日──誰かが壊れた街の上に立っているのを見た。体に藍色の羽根のような紋章を持った、多分街を壊した誰か」
「体に紋章……どこかの闇ギルドの仕業って事でしょうか?」
「その可能性は高いわね」
「……復讐か?」
トーマの話を聞いて、ウェンディとシャルルが闇ギルドの仕業なのではと仮説を立て、エルザが目つきを尖らせながら静かに問い掛ける。それに対してトーマは否定するように首を横に振って答える。
「そんなんじゃない。言っただろ? オレたちは真実が知りたいんだ。あの出来事は本当に事故だったのか……それともどこかのギルドの仕業だったのか……真実を知って、踏ん切りをつけたいんだ」
「
そう語るトーマとリリィの言葉を、ただ静かに聞いているナツたち。
「だから……ゴメン。今はまだ
「……へっ、しゃーねーなァ」
トーマのその言葉を聞くと、ナツはニッと笑いながらドンッと拳でトーマの胸を叩く。
「待ってるぜ、トーマ」
「ああっ」
「もちろん、リリィもね♪」
「はい♪」
そう言ってそれぞれ笑い合うナツとトーマ、そしてスバルとリリィ。
「でも、これからどうするの? 何かアテでもあるの?」
「さっきはああ言ったけど、アテはまったくないわけじゃないんだ」
「実を言うと…3日後には、ある人に会う約束もしてるんです」
「そうなんだ…」
ルーシィの疑問にトーマとリリィはそう答え、それを聞いてスバルはホッと安堵したように息を吐く。
「おっしゃあ!!! んじゃあ巨人のオッチャンたちと宴の続きだァ!!」
「おぉーー♪」
「あいさー!!」
「行くぞトーマ!!!」
「行こうトーマ!!!」
「は? いやだからオレは──ぐえっ!! ちょ…待て…ナツ…スゥちゃ…首が…しまっ……!!!」
そしてナツとスバルはトーマの首根っこを掴んで、意気揚々と宴の席へと戻って行く。その際に襟首を掴まれたトーマは首が締まって苦しそうに呻いていたが、2人が気づく事はなかった。それに続くように、他の面々も宴の席へと戻って行った。
その夜……ナツたちは飲んで歌って朝まで巨人たちと騒ぎ、この日耳にした〝
◆◇◆◇◆◇◆◇
その夜……闇ギルド〝
「こ…これは……一体……」
太陽の村から本部へと戻って来たミネルバを待っていたのは、メチャクチャに荒らされ、もぬけの殻となったギルドであった。
「ど…どうなっておる!? 皆…どこに消え……!」
誰もいなくなっているギルドに動揺するミネルバ。すると、ミネルバは足元に落ちていた黒い人型のナニカが落ちているのに気付き、それを拾い上げる。
「何だこれは……」
「人じゃ」
「人……!!?」
背後から聞こえた何者かの声。それを聞いてミネルバは手に持った黒い人型が人間だと知り、驚愕する。
「此方の〝魔〟は人を強化する。だが……強化に値せぬ弱き者は、皆……そのような姿となる」
「何者!!?」
警戒心を露にしながら振り返るミネルバ。するとそこに立っていたのは……鳥のような髪型や足、尻尾が付いた仮面を被った緑色の長髪という異形な姿をしている女性であった。
「此方はキョウカ──
その女性こそ、
「(
目の前の人物が
「たかが村を奪還されただけで、ここまでの仕打ちをするとは……!!」
「何の話だ? 此方に覚えはない」
「(!!? あの村の防衛任務は、シルバーの個人的なもの!?)」
「此方は言ったハズじゃ、人を強化すると。近々……大規模な作戦が始まる。兵を集めよとのマスターの命を受けてここにおる」
「集めるべき兵を皆殺しにするとは……とんだアホウのようだな!!!」
そんな皮肉を言い放つミネルバだが、キョウカの口元には凶悪な笑みが浮かんでいた。
「強化に適応できぬ人間はいらぬ──そなたはどうであろうか」
「!」
そしてキョウカの魔の手が……ミネルバへと伸びる。
「よせっ!!! やめ……!!!」
この日……闇ギルド〝
◆◇◆◇◆◇◆◇
数日後……太陽の村での仕事を終えたナツたちはフレアや巨人たち、そして旅立ったトーマとリリィに別れを告げて、今回の依頼者であるウォーロッドの家へと戻って来ていた。
「わはははははっ! やっぱり君たちに任せて正解だったよ。いやーよくやったよくやった!!」
依頼達成の報告を受け、ウォーロッドは満足そうに笑いながらそう告げる。
「楽勝だったな」
「無事にウォーロッド様の依頼を達成できてホッとしています」
「そういや、あの盗賊の3人組は?」
「トーマとリリィがやっつけちゃった」
「2人とも『ある人に会いに行く』って言ってたけど、大丈夫かなぁ」
「こればっかりはあの子たちの問題だからね。私たちは信じて待つしかないわ」
「今回の件、
「ウム……そのあたりの調査は評議院に任せておけばよい。それより、君たちに報酬を渡さねばな」
「待ってましたー!!」
「ま、仕事もしたんだし当然よね」
聖十大魔道の中でもイシュガルの四天王と呼ばれる人物からの報酬。当然ナツたちは期待に胸を膨らませる。そしてそんな彼らにウォーロッドが差し出したのは──
「ほい」
──1個のジャガイモであった。
「ほい……って」
「ワッシの畑で採れたジャガイモ。うひゃひゃひゃひゃ!」
「「「……………」」」
あれだけ苦労してようやく達成した仕事の報酬が、まさかのジャガイモ1個という事に言葉を失うナツたち一同。
「……というのは冗談じゃ」
「よ…よかったぁー」
「だ……だよな!?」
「あは…は……」
「本当は隣の村で買ってきたジャガイモじゃ」
「ええーーっ!!?」
「どっちでもいいわー!!!!」
「金よこせコラァ!!!!」
ウォーロッドに終始振り回されっぱなしのナツたちであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
その夜……ティアナやルーシィたち女性陣は、ウォーロッドに紹介された露天風呂温泉へとやって来ていた。
「うわぁ♡ すごい!!」
「キレイねぇ」
「絶景だな」
「素敵ですね」
「だね~♪」
大自然に囲まれ、それらと星空を一望できる温泉に感嘆の声を上げるティアナたち。
「さすがはウォーロッド様、こんな秘湯を知っておられるとは」
「見てウェンディ、この湯は健康と美容にいいんですって」
「わぁ♪」
「はぁぁ…仕事の後のお風呂って最高ね~♪」
「気持ちいいよね~♡」
「疲れた心と体を癒し、また明日に向けて気持ちを切り替えられるしな」
さっそく湯に浸かり、その心地よさに身をゆだねて温泉を満喫する一同。
「でも…なんかナツさんやグレイさんに悪いですね」
「いーのよ。アイツらどうせ温泉になんか興味ないでしょうし」
ウェンディが申し訳なさそうに言ったその言葉にルーシィがそう答えると……
「いや……そうでもねえぞ」
「たまにはこういうのも気持ちいいモンだぜ」
「あい」
何故かそこで温泉に浸かっているナツとグレイとハッピーがそう答えたのであった。
「「きゃあああああっ!!!!」」
「何で女湯にいんのよこのエロナツがっ!!!!」
「先に入って来てたのはオレたちだ」
「お前らが後から入って来たんだろっ!!」
体を隠しながら悲鳴を上げるルーシィとウェンディ、そしてナツたちに怒鳴りながら桶を投げつけるティアナ。それを回避しながら、ナツとグレイは先に入ってたのは自分たちだと反論する。
「あれ? 言っとらんかったかの? 混浴じゃと」
「堂々と入ってくんなーーーーー!!!!」
そこへウォーロッドも加わり、さらに騒ぎが大きくなる。
「ちょっと男子は出ていきなさいよ」
「そうです!!! 恥ずかしいです~」
「お前の裸なんか見飽きてる」
「新鮮味はねえな」
「うわー超最低、死ぬの?」
「まあ落ち着けみんな……仲間同士だ、これくらいのスキンシップは普通だろ」
「そうだよ~、みんなと一緒の方が楽しいよ~♪」
「エルザさん、こんなスキンシップ普通じゃありませんから。あとスバル、沈められたくなかったらちょっと黙ってて」
1人冷静なエルザとお気楽そうに笑うスバルに対して、ティアナがそうツッコミを入れる。
「昔はよくナツやグレイと一緒に風呂に入ってたんだ」
「う……」
「ム……」
「それが普通じゃないんですって!!」
「久しぶりに背中を洗ってやろう」
「いっ、いいよっ!!!」
「もうガキじゃねえんだ!!!」
そんな温泉で騒ぐナツたちの姿を見て、ウォーロッドは愉快そうに笑う。
「ほっほっほっ、仲間というのはいいモンだのう」
「あんた違うでしょーが!!!!」
「おや? そうか……まだ言っとらんかったか」
ルーシィの言葉を聞いてウォーロッドは思い出したようにそう呟くと、湯の中から出した左腕をナツたちに見せるように持ち上げる。
そしてその左腕には……ナツたちとっては見慣れた紋章が刻まれていた。
「ワッシはメイビスと共に
「「「!!!」」」
「な……」
「へ……」
「え?」
「マジか…!!」
「おじいさんが昔いたギルドって……」
「
ウォーロッドがかつて在籍していたギルドが
「……というのは」
「冗談なのか!!?」
「本当じゃ」
その返答に思わずずっこけるグレイ。
「それでウチのナツとグレイを指名されたのですね」
「…………」
「ウム……いかにも…君たちがワッシの家を訪れた時、ほのかに懐かしきギルドの古木の匂いがした……というのは冗談じゃが」
「話が進みませんね……」
そう言って水面を叩きながら笑うウォーロッドだが、そこからは彼も得意の冗談抜きの言葉で語り始める。
「君たち若き妖精に会えて、ワッシは本当に嬉しいのだ。メイビスの唱えた〝和〟。血よりも濃い魂の絆で結ばれた魔導士ギルド〝
その精神は時が流れた今でも、君たちの心に受け継がれておる。それは仕事の成否にあらず、君たちを見た時に感じた事。
かつてメイビスは言った。〝仲間〟とは言葉だけのものではない。仲間とは心。無条件で信じられる相手」
そしてウォーロッドは……かつてのメイビスの言葉を若き妖精たちに伝える。
◆◇◆◇◆◇◆◇
どうか私を頼ってください。
私もいつかきっと、あなたを頼る事があるでしょう。
苦しい時も悲しい時も、私が隣についてます。
あなたは決して1人じゃない。
空に輝く星々は希望の数。
肌にふれる風は明日への予感。
さあ歩みましょう、妖精たちの
◆◇◆◇◆◇◆◇
ウォーロッドの口からメイビスの言葉を聞いたナツたちは、その言葉をしっかりと胸に刻み込んだ。
「
湯船に浸かって星空を見上げながら、しみじみとそう呟くティアナ。すると、エルザの背中を流しているナツが口を開く。
「つー事はアレか!? じっちゃんより年寄りなのか!!?」
「失礼だぞナツ」
「いや……もしかしてそんなに昔の人だとさ……ENDって悪魔の話知ってるかなって」
そう言ってナツが口にしたのは、アトラスフレイムから聞かされたゼレフ書の悪魔〝END〟の話。
「END? 終焉……」
「ゼレフ書の悪魔らしい。オレの親父のドラゴンが倒そうしてたみてーなんだ」
「ゼレフ書…また物騒な名前を……」
「そのENDってのが何なのかわかれば、イグニールの居場所のヒントになると思ったんだけどな」
「アトラスフレイムが言ってた言葉ですね」
「最凶最悪の悪魔…END。エンドレスの他にもそんなのがいるなんてね」
「ウム…すまんが知らんのう」
100年以上生きているウォーロッドですら、ENDの事は分からないらしい。
「だが昼間、
「「!!」」
悪魔崇拝と聞いて、グレイとティアナの表情が変わる。
「これは我々イシュガルの四天王の推測ではあるが、奴等は強力なゼレフ書の悪魔を保有している可能性がある」
「ギルドがゼレフ書の悪魔を保有!!?」
「もしかしてその悪魔がEND!!?」
「(やはり繋がるのか…サキュバスの男と……)」
「(もしかしたら、エンドレスとも何か関係が……)」
ウォーロッドの話を聞いてルーシィとハッピーは驚愕し、グレイとティアナは内心でそう呟く。すると……
「そっか…どこにいるのかわかんねーってんならやりようがねえなっ!!! くそっ!!! 見つけたら叩き潰して吐かせてやる!!!! こうやってギッタンギッタンに──」
イライラした気持ちを体で表すかのように、拳を振り回して何かを殴り付けながらそう叫ぶナツ。
そしてナツが殴りつけているそれを見て…ルーシィとウェンディとスバルは目を丸くし、ハッピーとシャルルは戦慄し、ウォーロッドはポカンと口を開け、ティアナは呆れたように片手で顔を覆っていた。
「おい…ナツ…」
「ア?」
グレイの呼びかけに暴れるのを止めるナツ。
そして気がついた……自分が先ほど無我夢中で殴っていたのは──よりによってエルザだという事を。
「ほう」
その直後……ナツの断末魔が夜空の彼方まで轟いたのは言うまでもない。
つづく
トーマとスバルの関係は少しムリヤリだったでしょうか?