LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

238 / 240
台風よ…なぜ仕事が休みの日に限って上陸する。おかげで最新話が完成したではないか。

という訳で朝に0から書き始めて昼過ぎ頃に完成しましたので投稿します。まぁほぼ原作沿いでしたからその分早かったというのもありますが。

感想お待ちしております!!!


白き遺産

 

 

 

 

 

 

元評議員であるミケロの護衛へとやって来たナツとティアナとウェンディ、そしてハッピーとシャルルのメンバーたち。

 

 

そこへ現れたのは……現評議員を全滅させた張本人であり、冥府の門(タルタロス)の九鬼門の1人……ジャッカル。

 

 

ついに妖精の尻尾(フェアリーテイル)冥府の門(タルタロス)の戦いが幕を開けたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第238話

『白き遺産』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何じゃアイツは!!! ワシの家を!!! ワシの家を!!!」

 

 

「おじいちゃん!!」

 

 

「アイツが冥府の門(タルタロス)

 

 

「現評議員を襲ったのもアイツ!?」

 

 

「ミケロさん! 狙われてるのはあなたです!! 早く逃げてください!!」

 

 

「言われんでもそーするわいっ!」

 

 

「ここはナツさんに任せておけば大丈夫です」

 

 

「おう!」

 

 

ティアナとウェンディがミケロとミケリアを避難させる為に先導し、そしてナツがジャッカルと対峙する。

 

 

だがジャッカルはそんなナツを見てニタァっと笑うと……その場で両腕を大きく振るい、突風のような風を巻き起こす。

 

 

「「「!」」」

 

 

そして次の瞬間……周囲にあった町が、ジャッカルが起こした大爆発に襲われた。

 

 

「きゃー!」

「何だ―!?」

「急に爆発したァ!」

「建物が爆発したんだ!」

「うわーん!」

 

 

当然、いきなり爆発に襲われた町の住民たちはパニックに襲われる。

 

 

「コイツ!! 関係ない町を……!!!」

 

 

「テメェ!!!」

 

 

何の意味も無く町を攻撃したジャッカルにナツは憤慨し、足に纏った炎をブースターにしてジャッカル目掛けて一直線に飛び上がる。

 

 

「爆!!!!」

 

 

そんなナツに向かって凄まじい爆発を放つジャッカル。そしてその爆発に飲み込まれてしまうナツ。

 

 

「直撃!!?」

 

 

「大丈夫、ナツに熱系の魔法は……効かない」

 

 

だがナツはその爆発で起きた爆炎を、バクバクと勢いよく喰らっていた。

 

 

「何やコイツ! 爆発を食……がっ!!!!」

 

 

ジャッカルが驚愕している間に、眼前へと接近したナツは、そのまま炎を纏った拳でジャッカルを殴り飛ばし、床に強く叩き付ける。

 

 

そしてナツは先ほどまでジャッカルが立っていた梁を足場にして強く蹴り出し、再びジャッカルへと向けって飛んでいく。

 

 

「危な!」

 

 

間一髪で横に飛んでそれを回避するジャッカル。攻撃が外れたナツはそのまま床に大穴を開けて突き抜ける。

 

 

「まるで火の玉やないか!」

 

 

ナツの戦い方を見てジャッカルはナツをそう評する。すると……ナツは床下を突き進みながらジャッカルへと向かって行く。

 

 

「ウソやろ──ぐっ!!!」

 

 

そして床下から飛び出して来たナツは、そのままジャッカルの顎に炎を伴った強烈な膝蹴りを命中させる。

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士の戦いを間近で見るのは初めてじゃが……これほどか!!!!」

 

 

ナツのメチャクチャ且つ凄まじい戦闘に、ミケロは驚愕で言葉を失っていた。

 

 

「クハハッ、お前おもろいやんけ!……が、1つ言っておく事があるわ」

 

 

そう言って何かを言おうとするジャッカルだが……

 

 

「ちょ……!!」

 

 

ナツは意にも介さず、そのまま放った炎の拳でジャッカルを殴り飛ばした。

 

 

「まだまだァ!!!!」

 

 

ナツの猛攻は止まらず、そのまま殴り飛ばしたジャッカルの体に馬乗りになると、何度も何度もジャッカルの顔に拳を叩き込む。

 

 

「すごい……」

 

 

その光景を見て、思わずそう呟くミケロ。すでにジャッカルは白目をむいて倒れていた。

 

 

「ナツさん、もう……」

 

 

「やりすぎよこのバカ。ソイツ今何か言いかけてたじゃない」

 

 

「そっか、アジトの場所聞くんだった」

 

 

「それと目的もね」

 

 

「…………」

 

 

当初の目的を思い出したナツはようやく攻撃の手を止める。そしてシャルルが冥府の門(タルタロス)の目的の話を口にした瞬間、ミケロの体が小刻みに震え始める。

 

 

「(もしも奴等の狙いが〝フェイス〟だとしたら……大変な事になるぞ……評議員の中でも知る者は少ない〝白き遺産〟。奴等はどうやってフェイスの事を……いや……それより身を隠す方が先か……)」

 

 

そう思い至ったミケロは、すぐさまその場から立ち去ろうと行動する。

 

 

「そいつの後始末はお前らに任せる!!!! ワシはも…元評議員の安全を確認しに行く!!!!」

 

 

「おじいちゃん?」

 

 

「ミケリア、お前も来い!!! 今すぐ!!!」

 

 

明らかに様子がおかしいミケロに対して、ナツが問い掛ける。

 

 

「じっちゃん、何か知ってるならオレたちにも教えてくれよ」

 

 

「ワシは何も知らーーーん!!!!」

 

 

「ホンマか?」

 

 

すると……先ほどまで倒れていたジャッカルが、まるで何事もなかったようにムクリと上半身を起こした。

 

 

「何かいい事(・・・)教えてくれるなら、殺さへんかもよ」

 

 

「ワシは何も知らん!!!! 他を当たってくれ!!!! 本当に何も知らんのじゃ!!!!」

 

 

「あ、そう。じゃあやっぱり死ぬんか」

 

 

「オイ!!! お前ら!!!! アイツが起き上ったぞ!!!! 早く倒せ!!!! バカモノ!!!!」

 

 

「コイツ……」

 

 

ミケロの態度に、さすがにナツも顔をしかめる。

 

 

「それとお前なァ、人の話はちゃんと聞くもんやで」

 

 

「!?」

 

 

ジャッカルがナツに対してそう言った瞬間、ナツの手と膝の部分に、何やら紋章のようなものが浮かび上がって輝きだす。

 

 

「なんだ!!?」

 

 

「オレの〝呪法〟は触れたものを爆弾に変える力や。お前……オレに何回触った?」

 

 

「くっ!!」

 

 

「ナツ!!!」

 

 

「みんなオレから離れろ!!!!」

 

 

「でも…」

 

 

「早く!!!!」

 

 

すぐにティアナたちに自分から離れるように言い放つナツ。

 

 

その瞬間…ナツの体から凄まじい大爆発が巻き起こったのであった。

 

 

「ナツーーーー!!!!」

 

 

「クハハ!」

 

 

「そんな…ナツ!!」

 

 

「ナツさん!!」

 

 

そしてその爆発をモロに受けたナツは、そのまま力なく地面に倒れたのであった。

 

 

「体が残ってるなんてすげーやないか! さすが火の玉や! クハハハ!」

 

 

倒れたナツを見て笑い声を上げるジャッカルを、ティアナが歯をギリッと強く食いしばりながらで睨み付ける。

 

 

「もうダメだ……ワシは殺される……」

 

 

「情報を渡せば殺すのは孫だけにしてやるわ。オレは優しい奴やな、クハハハ」

 

 

「ひいいっ!! ひいいいっ!!!!」

 

 

そう言って凶悪な笑みを浮かべるジャッカルを目の当たりにして完全に怯えてしまったミケロは、一目散にその場から逃げ出した。

 

 

「ミケロさん!!」

 

 

「おじいちゃん!」

 

 

ティアナとミケリアが呼び止めようとするが、ミケロは脇目も振らずに逃げて行ってしまった。

 

 

「逃がすかいな!」

 

 

「ウェンディ!!!!」

 

 

「はい!!!!」

 

 

それを追おうとするジャッカルを、ティアナとウェンディが迎撃する為に立ち塞がる。

 

 

「天竜の…咆哮!!!!」

 

 

凄まじい竜巻のブレスを放つウェンディ。だがそれに対してジャッカルは足元を爆発させ、その爆風でウェンディのブレスを相殺する。

 

 

「爆風で咆哮が!」

 

 

「クロスファイアー…シュート!!!!」

 

 

続けてティアナが複数の魔法弾を一斉にジャッカル目掛けて放つが……ジャッカルはカチリと歯を噛み鳴らすと同時に再び爆発を起こし、ティアナの魔法弾をまとめて吹き飛ばしてしまった。

 

 

「あいつ……爆風でどんな魔法もガードしちゃうんだ!!!」

 

 

「クハハ、そういやもう1つ言い忘れてた! オレたち冥府の門(タルタロス)が使うのは〝魔法〟じゃねえ──〝呪法〟──魔法の上位に存在する力」

 

 

「!!」

 

 

「魔導士ごときにゃ勝てんわ──爆螺旋!!!!!」

 

 

「「きゃああああああ!!!!」」

 

 

ジャッカルは螺旋状に炸裂する爆発を巻き起こし、その爆風でティアナとウェンディを吹き飛ばして地面に叩きつけたのであった。

 

 

「ほなさいなら~」

 

 

そしてジャッカルは軽い足取りでミケロを追って行ったのであった。

 

 

「く…うう……」

 

 

「大丈夫ですか? 私の……おじいちゃんのせいで……」

 

 

「それは違うわ……私たちはギルドの誇りの為に戦ってんのよ。あなたが気に病む事じゃない」

 

 

ミケリアにそう言い聞かせながら、何とか立ち上がったティアナ。

 

 

「ウェンディ!!! ナツを頼んだわ!!! 私はアイツを追いかける!!!!」

 

 

「はい!!!!」

 

 

そう言ってティアナはジャッカルを追って行き、ウェンディはナツの介抱へと向かったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「ひいっ!! ひいいっ!! 殺される!!! 誰か助けてくれーーっ!!!!」

 

 

一方ジャッカルから逃げ出したミケロは、必死に叫びながら町の中を走っていた。

 

 

「何だ?」

「見た事ねえじいさんだな」

「助けて……って、さっきの爆発と関係あんのか?」

 

 

そんなミケロを見て、町の住民たちは首を傾げる。ミケロはその住民の中から1人の男を捕まえて、命令するように言い放つ。

 

 

「おいオマエ!!!! 隠れられる所を探してくれ!!!!」

 

 

「な……何だよアンタ…」

 

 

「ワシは命を狙われとるんじゃ!!!」

 

 

「知るかよ」

 

 

「ワシは元魔法評議員じゃぞ!!!! オマエたちの命をずっと守ってきたァ!!!! 今度はオマエ等がワシを守る番じゃろォォォ!!!!」

 

 

命を狙われている危機感からか、そんな横暴な言葉を言い放つミケロ。

 

 

「見つけたぞじじい」

 

 

「ひいい!!!!」

 

 

だがその間にジャッカルが追いつき、ミケロは情けない悲鳴を上げる。

 

 

「よせっ!!!! ワシには関係ない!! ワシは何も知らないんだ!! ワシは孫と静かに暮らしたいだけなんじゃ!!!」

 

 

そう言ってすぐそこに橋があるのにも関わらず、目の前の川に飛び込んで泳いで渡ろうとするミケロ。

 

 

「その孫を置いて一目散に逃げ出したんは誰や? クハハ」

 

 

「……………」

 

 

ジャッカルの言葉に何も言い返せず、ミケロはただ一心不乱に川を泳いで逃げる。するとそこへ、追いついたティアナが駆け付け、ジャッカルに向けてクロスミラージュを構える。

 

 

「ファントム……」

 

 

「おっと、動かん方がええわ」

 

 

「!」

 

 

だがジャッカルはそれに気づいていたらしく、ティアナの足元に魔法陣を展開していた。

 

 

「これは…!!」

 

 

「地雷呪法や。動いた瞬間……ドーン」

 

 

「……!!」

 

 

ジャッカルの言葉の意味を理解したティアナは動きを止める。

 

 

「何の騒ぎだ?」

「魔導士のケンカよ」

 

 

「いけない!!! 早くここから離れて!!!!」

 

 

「あれ……あのコ見た事ある」

「ホラ……射的でがんばってた」

 

 

ティアナが住民たちに逃げるように警告するが、そんな彼女の意に反してザワザワと野次馬が集まってくる。

 

 

「人間が多いな……おもろい事思いついたぞ」

 

 

するとジャッカルはそう言って笑みを浮かべると、川の中にいるミケロに手をかざす。

 

 

「やめろぉ! よせぇ!」

 

 

その瞬間、ミケロは呪力の球体の中に閉じ込められてしまう。

 

 

「え? な…何コレ……」

 

 

さらにジャッカルは、野次馬の中から適当に選んだ女性にも手をかざし、同じように球体の中に閉じ込める。

 

 

「2つの爆弾や」

 

 

「ひっ!!」

 

 

「よせぇーー!!!」

 

 

どうやら2人を閉じ込めている球体は彼の呪法による爆弾らしい。

 

 

「うわーっ!」

「爆弾!!!?」

「逃げろーっ!!!」

 

 

爆弾と聞いた瞬間、野次馬たちは蜘蛛の子を散らすようにその場から逃げて行った。

 

 

「おろ? これから人間の醜さを見れる面白いショーが始まるゆうのに……爆発するのは1つだけ──オマエが選べ。片方は見逃してやる」

 

 

「なっ……!!?」

 

 

ジャッカルのその言葉に、目を見開くティアナ。つまりどちらを助けて、どちらを見捨てるか……そんな残酷な選択をティアナにさせようというのである

 

 

「助けて!! お願い!! お腹に赤ちゃんがいるの!!!」

 

 

「ワシを守りにきたんだろ!!! ワシを助けろ!!!」

 

 

片や護衛対象である元評議員のミケロ……片や何の関係もない巻き込まれただけの妊婦……そのどちらかしか助けられないという事に、ティアナは絶句した。

 

 

「今すぐ2人を解放しなさい!!!! こんな事しても何の意味もないわ!!!」

 

 

「そうや、意味なんてあらへん。人間なんてオモチャやし」

 

 

「なら正々堂々私と……」

 

 

「あと10秒や、早く選べ」

 

 

「くっ……!!」

 

 

聞く耳を持たないジャッカルに、顔を歪めて歯噛みするティアナ。

 

 

「うう…何でこんな目に……」

 

 

「何を迷う必要がある!!!! ワシは元評議員じゃぞ!!!! 命の重さが違う!!!!」

 

 

「この……」

 

 

「おっと……その銃を抜いたりしたらアンタ自体がドカーンやで。その場合爆弾2つもドカーンや。クハハハハハハ!!!」

 

 

クロスミラージュを構えようとしたティアナの行動を見越していたかのように、ジャッカルはそう言いながら高笑いを上げる。

 

 

「大丈夫…大丈夫よ…ママがついてるから」

 

 

「……………」

 

 

「ワシを助けろ!!!! ワシを!!!! この世界においてどっちの存在がより有用か!!!! 考えるまでもなかろうが!!!!」

 

 

「……………」

 

 

ミケロと妊婦の両者の言葉を聞きながら、顔を俯かせながら葛藤するティアナ。

 

 

「さあ……どっちの命を選ぶ、妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

 

そんなティアナに対して」意地の悪い歪んだ笑みを浮かべながらそう問い掛けるジャッカル。

 

 

そして……

 

 

「わかった……決めたわ」

 

 

俯いていた顔を上げて、意を決したような表情でティアナはそう言った。

 

 

「お? 決めたんや。ほな聞かせてもらおか……誰を殺すんや?」

 

 

「その前に、1ついいからしら?」

 

 

「何や」

 

 

「──後ろ危ないわよ」

 

 

「ア?」

 

 

ティアナのその言葉にジャッカルが背後を振り返る。

 

 

その瞬間……数十発もの魔法弾がジャッカルへと向かって雨のように降り注いだ。

 

 

「があぁぁぁっ!!!!」

 

 

いきなりの不意打ちにジャッカルも堪らず叫び声を上げながら地面に倒れる。

 

 

「きゃ!」

 

 

「おわっ!」

 

 

するとそのダメージで呪法が解けたのか、ミケロと妊婦が解放される。

 

 

「オマエ……一体何を……!!?」

 

 

地面から起き上り、ティアナを睨み付けながらそう問い掛けるジャッカル。それに対してティアナは得意気な笑みを浮かべながら答える。

 

 

「別に。私はただここら一帯に魔法弾をバラまいて、それを幻影魔法で隠してただけよ。アンタがスキを見てた瞬間にいつでも撃ち抜けるようにね」

 

 

「そないなモン、いつの間に……」

 

 

「バーカ、最初からよ。アンタみたいな得体の知れない奴相手に、何の対策もしないで来るわけないじゃない」

 

 

べーっと舌を出しながら小バカにしたようにそう言い放つティアナに対して、ジャッカルは憤怒の表情を浮かべた。

 

 

「この女ァァ!!!!」

 

 

そして激情をむき出しにしてティアナに向かって咆哮を上げるジャッカル。そんなジャッカルに対しても、ティアナは臆することなく言葉を続ける。

 

 

「それと、誰の命を選ぶのかまだ答えてなかったわね……私が…いえ……私たち(・・)が選ぶのは──」

 

 

そして次の瞬間……

 

 

 

「お前の首だァ!!!!!」

 

 

 

猛スピードで駆け抜けてきたナツが、ジャッカルに強烈な肘鉄を叩き込んだのであった。

 

 

「ぐほぉ!!!!」

 

 

それを喰らったジャッカルは吹き飛ばされ、川へと叩き落される。

 

 

「遅い。せっかく時間稼ぎしてあげたんだから、もっと早く来なさいよ」

 

 

「ワリ」

 

 

「大丈夫ですかティアナさん!!」

 

 

そこへナツへ続いてウェンディも駆け付ける。

 

 

「ああ…神様…」

 

 

「もう大丈夫だよ」

 

 

「安全な所まで運ぶわ」

 

 

同じく駆け付けたハッピーとシャルルは、解放された妊婦を安全な場所まで避難させた。

 

 

「た……助かった……でかしたぞ!! でかしたぞ!!」

 

 

呪法から解放されたミケロは助かった事に喜ぶが、次の瞬間にはナツの拳を脳天に叩き付けられ―ゴッ!!!!―という鈍い音と共に気絶した。

 

 

「「「!!」」」

 

 

「ハァ……まぁしょうがないわね」

 

 

ナツがミケロを殴った事にウェンディたちは驚き、ティアナ呆れたようにそう呟いた。

 

 

「ちょっとムカついたから寝てろ」

 

 

気絶したミケロにそう言い捨てながら、ナツは再びジャッカルと対峙する。

 

 

「お前も学習能力のない奴やなァ。またオレに触りよったか、クハハ」

 

 

ジャッカルがそう言うと、先ほど攻撃に使ったナツの肘に、爆発の紋章が浮かび上がる。だがナツは特に動じた様子もなく、その肘を自分の口元へと持っていく。

 

 

「コツはつかんだ」

 

 

「コツ?」

 

 

「ふん!!!!」

 

 

するとナツは紋章が爆発するその瞬間、爆発が広がる前に爆炎を口に含み、爆発を最小限に抑え込んだのであった。

 

 

「な」

 

 

「……………」

 

 

多少のダメージを負いながらも笑うナツ。そんなナツのメチャクチャな行動に、ついにジャッカルは言葉を失った。

 

 

「ないわ~、ないない、ありえんて」

 

 

「燃えてきたぞ」

 

 

「お前……何者や……」

 

 

愕然とした表情を浮かべながらそう問い掛けるジャッカル。そんなジャッカルに対してナツは……

 

 

「ナツだ!!!!」

 

 

一瞬でジャッカルの眼前へと迫り、そのまま殴り飛ばした。

 

 

「グフッ!! クハハ……また、オ…オレに触ったぞ! ドカーンや! 破裂してまえっ!!!!」

 

 

ジャッカルを殴ったナツの拳に紋章が浮かび上がる。そしてナツがその拳を自身の口へと運んだ瞬間、再び爆発が起きる。

 

 

「はは…」

 

 

それを見たジャッカルは笑みを浮かべるが……

 

 

「コツはつかんだって言ったろ。もう効かねーぞ」

 

 

爆煙の中から現れたのはまたもや爆発を食し、無事なナツの姿があった。

 

 

「…………」

 

 

その姿を見たジャッカルは驚愕を超えて戦慄し、体を震わしていた。

 

 

「(なんやコイツ……何で人間ごときオレが…震え…いや……ホンマに人間なんか? コイツ……ありえへん!!!! ありえへんわ!!!!)」

 

 

するとその時、ジャッカルに異変が起きる。

 

 

「あああああああああああああ!!!!」

 

 

「ナツさん気を付けて!!! 様子が!!!」

 

 

「!!」

 

 

雄叫びを上げると同時に、ジャッカルの体が巨体化し…さらには全身に体毛が生え…獣のような姿へと変貌していく。

 

 

「怪物になりやがった!!!」

 

 

「がああああ!!!!」

 

 

獣のような怪物の姿へと変わったジャッカルは、咆哮を上げながらナツへと殴り掛かる。

 

 

「ぐっ!!」

 

 

ナツはその攻撃をクロスした腕でガードするが、勢いまでは殺せずにそのまま後ろに押されてしまう。だがそれだけでは終わらず、さらにジャッカルの拳から凄まじい大爆発が巻き起こる。

 

 

「「きゃああ!」」

 

 

その爆風はティアナやウェンディだけでなく、町の一部を粉々にするほどに強力であった。

 

 

「なんて奴だ!!! 町をメチャクチャにする気か!!!?」

 

 

「ああああああ!!!!」

 

 

続けて振り下ろされるジャッカルの拳を、ナツは頭上で構えた腕で受け止める。

 

 

「人間ごときがオレ等悪魔に上等くれとんじゃねえぞコラァ!!!!」

 

 

「悪魔!? お前らみんな悪魔なのか!?」

 

 

「滅べ!!!! 人間どもォ!!!!」

 

 

「それがお前らの戦う理由か!!!?」

 

 

ジャッカルがもう片方の腕も振り下ろそうとした瞬間、ナツの放った炎の蹴りがジャッカルの顎に直撃する。

 

 

「うぐ!!」

 

 

「オレたちは違うぞ!!!! キズつけられた仲間の為に戦う!!!! 敵は人間でも悪魔でも神でも何でもいい!!!!」

 

 

「!!!」

 

 

「力を貸してくれ!!!! ラクサス!!!!」

 

 

ナツは自身の炎と共にラクサスから譲り受けた雷を己の右拳に乗せる。

 

 

そして……

 

 

 

 

 

「雷炎竜の撃鉄!!!!!」

 

 

 

 

 

炎と雷を纏った拳で放たれる強烈な一撃がジャッカルを大きく吹き飛ばし、町の壁に強く叩き付けたのであった。

 

 

「ハァ、ハァ、ハァ」

 

 

「町をメチャクチャにするのはどっちも一緒ね」

 

 

「ですね」

 

 

勝負がついたのを見計らって、ティアナとウェンディが笑みを零しながらそう言葉を口にする。

 

 

「!」

 

 

するとナツの体のジャッカルに触れた部分が輝きだし、ナツはまたもや爆発に呑まれてしまい、そのまま倒れてしまった。

 

 

「ナツ!!!」

 

 

「さすがのナツさんもこれだけ爆発を喰らったら……」

 

 

「みんな無事?」

 

 

「こっちは町の人の避難が終わったわ」

 

 

倒れたナツにティアナとウェンディが駆け寄り、町の住民たちを避難させていたハッピーとシャルルも戻って来た。

 

 

「さすがに強かったわね。ナツでも相打ちだなんて」

 

 

「いや勝った」

 

 

「……だそうです」

 

 

「倒したんだね」

 

 

「何とか情報を引き出さないと」

 

 

そしてティアナたちがそんな会話をしていると……

 

 

「クハハ」

 

 

「「「!!」」」

 

 

倒れているジャッカルが小さく笑い声を上げた。

 

 

「いやぁ……ホンマまいったわ…ここまでされたんわ初めてや。悔しいわ…スマン……キョウカ……せめてこいつ等を道連れに…堕ちるわ」

 

 

ジャッカルがそう言った瞬間……町全体を揺るがすほどの地響きが起こり、町の至る所に光り輝く柱のようなものが立ち上り始める。

 

 

「な……何よコレ……」

 

 

「まさか…」

 

 

「町全部を爆破するつもり!!?」

 

 

「やめなさい!!!!」

 

 

「もう手遅れや。爆弾はオレ自身や、死んでも止まる事はないわ」

 

 

「「「!!」」」

 

 

「クハハ!!! 地獄で会おうや!!!」

 

 

「何か手は……このままじゃ町が……!!」

 

 

最後の悪あがきでナツたちもろとも自爆でしようとするジャッカル。

 

 

絶体絶命かと思われたその時……

 

 

 

「そうはさせないぞー!!!!」

 

 

「な!!?」

 

 

 

なんとハッピーがジャッカルの体を持ち上げて、そのまま空高く飛んでいった。

 

 

「「ハッピー!!!!」」

 

 

「ちょ……」

 

 

「テメェ…!!」

 

 

「ハッピー!!! 早く逃げて!!!」

 

 

そんなハッピーの行動にジャッカルだけでなく、ナツたちも驚愕する。

 

 

「オイラたちはお前等なんかに負けないぞ!!!」

 

 

「チクショオオオオオオオオ!!!!」

 

 

そして次の瞬間……空一面を覆うほどの大爆発が巻き起こったのであった。

 

 

全員が呆然と空を見上げる中……爆煙が晴れ、そこから現れたのは………

 

 

「危なかった」

 

 

アフロのような頭になりながらも、無事なハッピーの姿だった。

 

 

そんなハッピーの姿に、ナツたちは笑いながら安堵したのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

同時刻……とある街にある少し大きい一軒家。

 

 

そこはナカジマ家……ゲンヤの自宅であり、スバルとギンガにとっては生まれ育った家であり、ナカジマ家にとってはギルド以外で家族団欒のひと時を過ごせる唯一の場所でもあった

 

 

 

 

 

だが……今のその家の中にあるのは、団欒などという穏やかなものではなかった。

 

 

 

 

 

家具は倒れ…床や壁には破壊跡や亀裂があり…家の中は凄まじく荒らされていた。

 

 

「ぐっ…ぅぅ……」

 

 

「あ…ぁ……」

 

 

「うぅ……」

 

 

それだけではなく、里帰りに来ていたスバルとノーヴェとディエチの3人……さらには蛇姫の鱗(ラミアスケイル)のギンガとチンク、そして青い天馬(ブルーペガサス)のウェンディ……ナカジマ家の6人姉妹全員がボロボロの姿で床に力なく倒れ伏していた。

 

 

そしてその中心では………

 

 

「がっ…ああ…が……」

 

 

この家を襲撃した犯人であろう1人の女性が……この家の家主であるゲンヤの首を鷲掴みにして持ち上げている光景があった。

 

 

「……………」

 

 

黒い衣服を身に纏い…長い薄紫色の髪をポニーテールのように結い…黒い装飾の篭手のようなグローブを両腕にはめた女性は、何の感情も感じられない冷たい瞳でゲンヤを見据えながら、彼を締め上げていた。

 

 

「や…めて……」

 

 

すると、床に倒れ伏しているスバルが、顔だけ上げながら小さくそう声をかける。

 

 

「やめてよ…お父さんを放して……お願い……」

 

 

女性に向かって懇願するようにそう言うスバルだが、女性は気にも留めずにゲンヤの首を絞め続ける。そしてその光景を見てスバルは……両目から大粒の涙を流しながら叫ぶように言い放った。

 

 

 

 

 

「お願いだからもう……こんな事はやめてよ────お母さん!!!!!」

 

 

 

 

 

ナカジマ家を襲撃した犯人の正体……それは10年以上も昔に死んだハズのゲンヤの妻であり、スバルとギンガにとっての実の母──クイント・ナカジマだったのであった。

 

 

 

 

 

つづく

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