LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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火竜と昴と猿と牛

 

 

 

 

 

クエストに行ったっきり帰って来ないロメオの父親、マカオを探しに行くために、ナツとハッピー、そしてスバルはマカオの仕事先のハコベ山に馬車で向かっていた。

 

 

「でね!あたし今度ミラさんの家に遊びに行く事になったの~♪」

 

 

「下着とか盗んじゃダメだよ」

 

 

「盗むかー!!」

 

 

「って言うか…なんでルーシィが居るの?」

 

 

スバルの言う通り、そのメンバーの中には何故かルーシィが加わっていた。

 

 

「何よ?何か文句あるの?」

 

 

「そりゃあもう色々と…あい」

 

 

「だってせっかくだから、何か妖精の尻尾(フェアリーテイル)の役に立つ事したいなぁ~なんて♪」

 

 

「(株を上げたいんだ!!絶対そうだ!!)」

 

 

そしてルーシィの視線は乗り物酔いしているナツの方へ向く。

 

 

「それにしてもアンタ本当に乗り物ダメなのね。何か…色々かわいそう…」

 

 

「は?」

 

 

何やら同情的なルーシィにナツは首を傾げる。すると……

 

 

ガタンッ

 

 

馬車が止まった。

 

 

「止まった!!」

 

 

それと同時に復活するナツ。そして外に出るとそこは……

 

 

「す…すんません…これ以上は馬車じゃ進めませんわ」

 

 

猛吹雪が吹きさらす雪山であった。

 

 

「何コレ!? 山の方とは言え今は夏季でしょ!!? こんな吹雪おかしいわ!! さ…寒っ!!!」

 

 

あまりの寒さにルーシィは自分の身を抱く。

 

 

「そんな薄着してっからだよ」

 

 

「そうだよ~」

 

 

「あんたらも似たようなモンじゃないっ!!!」

 

 

因みにナツは裸の上からジャケットを着ており首にはマフラーを巻いている。そしてスバルの格好は頭にはハチマキを巻き、上は黒いインナーの上に白いジャケットを着て、下は短パンを着ている。お腹と足が露出しているかなりの薄着だが、本人いわく仕事着らしい(バリアジャケットをイメージしてください)

 

 

「そんじゃオラは街に戻りますよ」

 

 

そう言い残しておじさんは馬車と共に去って行った。

 

 

「ちょっとぉ!! 帰りはどーすんのよ!! キィー!!!」

 

 

「あいつ…本当うるさいな」

 

 

「あい」

 

 

「私は賑やかで良いと思うよ♪」

 

 

去っていく馬車に向かって叫ぶルーシィを見て、三人は口々にそう言っただった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第三話

『火竜と昴と猿と牛』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後…四人はマカオを探して山を歩き始めた。

 

 

「その毛布貸して…」

 

 

「ぬお」

 

 

しばらく歩くと、ルーシィはナツが持ってきていた毛布を借りて身に纏う。そして一本の鍵を取り出す。

 

 

「ひひ…ひ…開け……ととと…時計座の扉『ホロロギウム』!!」

 

 

すると、置時計の姿をした星霊が現れる。

 

 

「おお!!」

 

「時計だぁ!!」

 

「これが星霊魔法! 初めて見た!!」

 

 

ホロロギウムを見た三人は感嘆の声を上げる。そしてその間にルーシィはホロロギウムの体内に入り込む。

 

 

「『あたしここにいる』と申しております」

 

 

「何しに来たんだよ」

 

 

「あはは……」

 

 

どうやらホロロギウムの中に居る間は彼がルーシィの言葉を代弁するようだ。

 

 

「『何しに来たといえば、マカオさんはこんな場所に何の仕事をしに来たのよ!?』と申しております」

 

 

「知らねえでついてきたのか?」

 

 

「凶悪モンスター〝バルカン〟の討伐だよ」

 

 

「!!!!」

 

 

それを聞いたルーシィは驚愕で目を見開く。

 

 

「『あたし帰りたい』と申しております」

 

 

「はいどうぞと申しております」

 

 

「気をつけてねと申しております」

 

 

「あい」

 

 

そんなルーシィを気にもかけず、三人はさっさと歩き出す。

 

 

「マカオーー!! いるかー!!!」

 

 

「いたら返事してーーー!!!」

 

 

「バルカンにやられちまったのかーー!!!」

 

 

「マカオーーー!!!」

 

 

ナツとスバルはマカオの名を呼びながら彼を探す。すると、近くの岩山の上からガサガサと物音がした。

 

 

「「!!!」」

 

 

そして何かが飛び出してきて、二人に攻撃を仕掛けてきた。

 

 

「ナツ!!」

 

 

「おう!!」

 

 

それを見た二人はバック転で攻撃を避ける。

 

 

「バルカンだーー!!!」

 

 

その攻撃を仕掛けて来たのは、マカオの仕事の討伐対象である猿のようなモンスター『バルカン』だった。それを見たナツとスバルは臨戦体勢を取るが……

 

 

「ウホ!」

 

 

「ぬお!?」

 

 

「え!?」

 

 

なんとバルカンはその二人を無視して飛び越えて行った。その先には……

 

 

「人間の女だ!」

 

 

「!?」

 

 

ルーシィが居た。

 

 

「うほほーーー!」

 

 

そしてそのままバルカンはホロロギウムごとルーシィを連れ去って行った。

 

 

「おお、しゃべれんのか」

 

 

「アレ? 私も女なんだけど……無視された?」

 

 

ナツは特に慌てた様子もなく手のひらに拳を打ち付けて気合を入れる。そしてスバルは自分も女なのにバルカンに無視されたことに軽いショックを受けていた。

 

 

「『てか助けなさいよォオオオ!!!!』と申しております」

 

 

そんなルーシィの叫びをホロロギウムが代弁しながら連れて行かれたのだった。

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その後、ルーシィはバルカンの住家である洞窟に連れて来られていた。

 

 

「なんでこんな事に……なってる訳~~~!!?」

 

 

「…と申されましても」

 

 

「ウッホウホホ! ウホホホ~」

 

 

「なんかあの猿テンション高いし!!!」

 

 

ホロロギウムの中で叫ぶルーシィの周りをバルカンが嬉しそうに踊り狂っていた。

 

 

「ここってあの猿の住家かしら? ってか、ナツとスバルはどうしちゃったのよ~」

 

 

「女♪」

 

 

「!!!」

 

 

そんなルーシィの眼前にバルカンの顔が迫っていた。そしてしばらく見合うこと数秒……

 

 

ポウン

 

 

「!!!」

 

 

何とホロロギウムが消えてしまった。

 

 

「ちょ……ちょっとぉ!! ホロロギウム!! 消えないでよ!!!」

 

 

「時間です。ごきげんよう」

 

 

「延長よ!! 延長!!! ねえっ!!!」

 

 

ルーシィは必死に叫ぶが、ホロロギウムからの返事はない。

 

 

「んふ、んふ……」

 

 

「…………!」

 

 

震えるルーシィに鼻息を荒くしたバルカンが迫る。ルーシィがもうダメだと思ったその時……

 

 

「うりゃぁぁぁぁああ!!!」

 

 

ドゴォン!!

 

 

「ウホォォォォオ!!?」

 

 

「!!?」

 

 

誰かがやって来て、バルカンを思いっきり蹴り飛ばした。そしてその人物は、ルーシィの前に着地する。

 

 

「ルーシィ、大丈夫!?」

 

 

「スバル!!」

 

 

その人物とは、右手には篭手型の武器『リボルバーナックル』両足にはローラー型の靴『マッハキャリバー』を装着したスバルであった。

 

 

「うおおおっ!! やっと追いついたーっ!!」

 

 

「ナツ!!」

 

 

少し遅れてナツもやって来た。

 

 

「オイ! サル! マカオはどこだ!?」

 

 

「ウホ?」

 

 

スバルの攻撃からいつの間にか復活したバルカンは首を傾げる。

 

 

「言葉わかるんだろ? マカオだよ! 人間の男だ!」

 

 

「男?」

 

 

「そうだよ!」

 

 

「「どこに隠した(の)!!?」」

 

 

「うわー!『隠した』って決め付けてるし!!」

 

 

それを聞いたバルカンは意地の悪そうな笑みを浮かべる。

 

 

「ウホホ」

 

 

そしてナツとスバルの二人をクイクイッと手招きする。

 

 

「おおっ! 通じた!!」

 

 

「案内してくれるんだね!!」

 

 

何の疑いもなくそれに着いて行く二人。そしてバルカンは一つの穴を指差す。

 

 

「マカオ!!」

 

 

「どこだ!!」

 

 

その中を覗き込むナツとスバル。だがその時……

 

 

ドンッ!!

 

 

「あ?」

 

 

「へ?」

 

 

なんと二人はバルカンに突き飛ばされ……

 

 

「「あぁぁぁぁぁぁあああ!!!」」

 

 

そのまま落ちていった。

 

 

「ナツー!! スバルー!!!」

 

 

それを見たルーシィは慌てて穴に駆け寄る。

 

 

「やだっ!! ちょっと…死んでないわよね!! あいつ、あー見えてすごい魔導士だもんね! 多分スバルも! きっと大丈……」

 

 

そう自分に言い聞かせるように言いながらルーシィは穴を覗き込むが、その下は断崖絶壁で下も見えないほど深く、少なくとも助かるような高さではなかった。

 

 

「男いらん、男いらん! 女~女~!! ウッホホホ~」

 

 

「女! 女!! ってこのエロザル。ってかさっき突き飛ばしたスバルも女よ!」

 

 

「あいついらん。オデ、お前好み」

 

 

「あ、そういう問題なのね……ってか、二人が無事じゃなかったらどーしてくるのよ!!!」

 

 

そう言いながら、ルーシィは金色の鍵を取り出す。

 

 

「開け…金牛宮の扉…『タウロス』!!」

 

 

「MO---!!!」

 

 

すると、ルーシィの前に斧を背負った巨体の牛が現れる。

 

 

「牛!!?」

 

 

「あたしが契約している星霊の中で一番パワーがあるタウロスが相手よ!!エロザル!!」

 

 

バルカンに向かってそう言うルーシィだが……

 

 

「ルーシィさん!! 相変わらずいい乳してますなぁ、MOーステキです!」

 

 

「そうだ…こいつもエロかった」

 

 

タウロスも根本的な所はバルカンとは変わらなかった。

 

 

「ウホッ、オデの女取るなっ!」

 

 

「オレの女?」

 

 

その言葉にタウロスが反応する。

 

 

「それはMO聞き捨てなりませんなぁ」

 

 

「そうよタウロス!! あいつをやっちゃって!!」

 

 

「オレの女ではなく、オレの乳と言ってもらいたい」

 

 

「もらいたくないわよっ!!」

 

 

タウロスの的外れな発言にツッコミを入れるルーシィ。しかし、ここで無駄に時間を費やしてナツとスバルを探しに行けなくなっても困るので、ルーシィはタウロスに指示を出す。

 

 

「MO準備OK!!」

 

 

「ウホォ!!!」

 

 

斧を構えて突進するタウロスと、それを迎え撃とうとするバルカン。二体が激突するかと思われたその時……

 

 

「よ~く~も落としてくれたなぁ…」

 

 

先ほどの穴から聞き覚えのある声が響く。

 

 

「あ~ぶ~な~かった~…」

 

 

「ナツ!!! よかった!!!」

 

 

ルーシィはナツの無事を喜ぶ。しかし……

 

 

「なんか怪物増えてるじゃねーか!!!」

 

 

「MOふっ!!」

 

 

「きゃああああっ!!!」

 

 

なんと味方であるタウロスを蹴り飛ばしてしまった。

 

 

「MO…ダメっぽいですな……」

 

 

そのままタウロスは戦闘不能になってしまった。

 

 

「弱ーー!! 人がせっかく心配してあげたっていうのに何すんのよー!!! てゆーかどうやって助かったの!?」

 

 

ルーシィの問いにナツはニッと笑いながら答える。

 

 

「ハッピーのお陰さ。ありがとな」

 

 

「どーいたしまして」

 

 

ナツの頭上には羽を生やしたハッピーが飛んでいた。

 

 

「そっか…ハッピー羽があったわねそういえば…」

 

 

「あい。能力系魔法の一つ、(エーラ)です」

 

 

「アレ? じゃあスバルは!?」

 

 

「ん? もうそろそろ来るんじゃねえの?」

 

 

ナツがそう言うと同時に、穴のほうから空色の道のようなモノが伸びてきた。

 

 

「な、何コレ!?」

 

 

突然の出来事にルーシィが戸惑っていると……

 

 

「ふぅ…危なかった~」

 

 

スバルがその道の上をローラーで滑りながら現れた。

 

 

「スバル! 無事だったのね!? と言うか、コレ何?」

 

 

ルーシィはスバルの無事を喜びながら道のようなモノについて尋ねる。

 

 

「これは私の得意魔法の一つ〝ウィングロード〟。空中に魔力で形勢された道を作るの」

 

 

「へぇ~…それはそうとナツ、アンタ乗り物ダメなのにハッピーは平気なのね」

 

 

と、ルーシィが何気なく言うと……

 

 

「何言ってんだオメェ……」

 

 

「ハッピーは乗り物じゃないよ。『仲間』でしょ?」

 

 

「「ひくわー」」

 

 

「そ、そうね。ごめんなさい」

 

 

ナツとスバルにドン引きされた。すると…

 

 

「ウホホォッ!!!」

 

 

遂に痺れを切らしたバルカンが襲ってくる。

 

 

「いいか? 妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーは全員仲間だ」

 

 

しかしナツはルーシィに説教を続けている。

 

 

「じっちゃんも、ミラも…」

 

 

「来たわよっ!!」

 

 

ルーシィはそう叫ぶが、ナツとスバルは気にも留めていない。

 

 

「うぜぇ奴だが、グレイやエルフマンも…」

 

 

「もちろん、ティアもユーノ先生も…」

 

 

「わかったわよ!!! わかったから!!! 後ろ!!」

 

 

二人のすぐ後ろには既にバルカンが迫っている。

 

 

「ハッピーもルーシィもスバルも、みんな仲間だ」

 

 

「だから…!」

 

 

そう言いながら、二人は一斉に振り返り…

 

 

「「オレ(私)はマカオを連れて帰るんだ!!!」」

 

 

ドゴォォン!!

 

 

バルカンの突進を避けながらナツは炎を纏った蹴りを顎に、スバルはリボルバーナックルを腹に叩き込んだ。

 

 

「早くマカオの居場所を言わねえと黒コゲになるぞ」

 

 

ナツの言葉を聞いたバルカンはムキーっと鼻息を荒くする。

 

 

「ウホホッ!!」

 

 

そして、洞窟の天井に生えていた氷柱を折り、二人に向かって何本も投げつける。

 

 

「火にはそんなモン効かーん!!」

 

 

「私にも効かないよっ!!」

 

 

ナツは身体中から熱を発して氷柱を溶かして防ぐ。スバルも魔力で形成したバリアを張って防ぐ。

 

 

「アレって、バリア!?」

 

 

「あい。スバルの武器…リボルバーナックルは、魔力を込めれば色んな使い方が出来るんだ。今みたいにバリアを張ったり、攻撃の威力を上げたりね」

 

 

ハッピーがスバルの武器について説明した。

 

 

「ウホ」

 

 

対するバルカンは落ちていたタウロスの斧を拾う。

 

 

「「それは痛そうだ!」」

 

 

「キェエエエエッ!!!」

 

 

二人に向かって思いっきり斧を振り回すバルカン。

 

 

「わっ!」

 

 

「っとと!」

 

 

何とかそれを避け続ける二人。だが…

 

 

つるん!

 

 

「なっ!?」

 

 

「ナツ!?」

 

 

なんとナツが床に張っていた氷で足を滑らし、倒れてしまった。

 

 

「ウホォーーーー!!!」

 

 

それを好機と見たバルカンはナツに向かって思いっきり斧を振り下ろした。しかし…

 

 

ガキィィィィィン!!!

 

 

洞窟に響いたのは、金属音だった。

 

 

「っ、スバル!!」

 

 

「くっ…うぅ……!」

 

 

ナツの目の前には、リボルバーナックルで斧を受け止めるスバルの姿があった。

 

 

「うぅ……でりゃああああああ!!!」

 

 

ガキィィィィン!!!

 

 

そして何とそのまま斧を弾き返してしまった。

 

 

「か、片手で弾き返したーー!!?」

 

 

「あい。スバルはギルド1の馬鹿力だからね」

 

 

驚愕するルーシィにハッピーが冷静に説明する。

 

 

「ナツ!」

 

 

「おう!」

 

 

スバルの言葉にナツは頷く。そしてナツは左拳に炎を纏い、スバルはリボルバーナックルに空色の魔力を集中させる。

 

 

「火竜の……!」

 

 

「リボルバー……!」

 

 

そして二人はその拳をバルカンに向かって……

 

 

 

「鉄拳!!!」

 

 

「キャノン!!!」

 

 

 

ドゴォォォォォォオン!!!!

 

 

思いっきり叩き付けた。

 

それを喰らったバルカンは吹き飛ばされ、壁に叩きつけられ、そのまま気絶してしまった。

 

 

「あーあ…この猿にマカオさんの居場所聞くんじゃなかったの?」

 

 

「あ!!そうだった!」

 

 

「すっかり忘れてた!!」

 

 

「完全に気絶しちゃってるわよ」

 

 

呆れているルーシィに言われ、二人は当初の目的を思い出す。すると…

 

 

みみみみみ…

 

 

「「!?」」

 

 

みみみみみみ……!

 

 

「な、なに!?」

 

 

「何だ何だ!!?」

 

 

突然バルカンの身体が輝き出し、それを見た二人は身構える。そして…

 

 

ボウゥン

 

 

と音を立てて、なんとバルカンは中年の男性に姿を変えた。

 

 

「あぁ!!」

 

 

「サルがマカオになったーー!!」

 

 

「え!?」

 

 

その男性こそ、ナツ達が探していたマカオであった。

 

 

「バルカンに接収(テイクオーバー)されてたんだ!!!」

 

 

接収(テイクオーバー)?」

 

 

「身体を乗っ取る魔法だよ」

 

 

「とにかく、見つかってよかったよ~」

 

 

目的の人物であるマカオを見つけたことで安堵するメンバー。だが、マカオの後ろには先ほどナツとスバルが落ちた穴があり、マカオは気絶している状態。となると必然的に……

 

 

ずるんっ

 

 

「「あーーーー!!!!」」

 

 

穴から落ちそうになるマカオを見て、ナツとスバルとハッピーは慌てて駆け出す。

 

 

がっ! がっ! がっ!

 

 

そして、ナツがマカオの足を、スバルがナツの足を、ハッピーがスバルの足を持って宙吊り状態となる。

 

 

「三人は無理だよっ! 羽も消えそう!!!」

 

 

「スバル! お前の馬鹿力で何とかなんねえか!!?」

 

 

「無理だよ! この空中じゃ力入らないし、両手がふさがってるからウィングロードも使えない!!!」

 

 

「くっそぉぉぉぉお!!」

 

 

ゆっくりと落ちていく四人。

 

 

「んっ!!!」

 

 

そんな状態の四人を助けるため、ルーシィがハッピーの尻尾を掴んだ。

 

 

「「ルーシィ!!!」」

 

 

「重い…」

 

 

だが流石に三人+ネコの体重を引き上げる力はルーシィにはない。

 

その時、彼女の後ろから手が伸びて来て、ルーシィの手をがっしりと掴んだ。

 

 

「MO大丈夫ですぞ」

 

 

「タウロス!!」

 

 

それは、ようやく目を覚ましたルーシィの星霊、タウロスだった。

 

 

「牛ーーーー!! いい奴だったのかぁーー!!」

 

 

ナツは自分が気絶させてしまったタウロスに涙を流しながら感謝した。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その後、引き上げられた面々は傷ついたマカオの治療をしていた。

 

 

「接収(テイクオーバー)される前に相当激しく戦ったみたいだね」

 

 

「酷い傷だわ」

 

 

「どうしよう……」

 

 

「マカオ! しっかりしろよ!!」

 

 

「バルカンは人間を接収(テイクオーバー)することで生きつなぐモンスターだったんだ……」

 

 

「わき腹の傷が深すぎる…持ってきた応急セットじゃどうにもならないわ」

 

 

と言うより、もう助からない……とルーシィは心の中で諦めかける。するとナツは手に火を纏い、それをマカオのわき腹の傷に押し当てた。

 

 

「ぐああああっ!!!」

 

 

「ナツ!!?」

 

 

「何してんのよっ!!?」

 

 

「今はこれしかしてやれねえ!! ガマンしろよ! マカオ!!!」

 

 

「あぐああああっ!!!!」

 

 

「ルーシィ! スバル! マカオを押さえろ!!」

 

 

ナツは火傷させて傷を塞ぎ、止血をさせようとしていた。それを察したスバルとルーシィはマカオの身体を押さえる。

 

 

「死ぬんじゃねえぞ!!! ロメオが待ってんだ!!!」

 

 

ナツのその叫びを聞いたマカオは僅かだが、意識を取り戻した。

 

 

「ハァハァ…くそ、情けねえ……19匹……は倒し…たん…だ」

 

 

「え?」

 

 

ルーシィは先ほどのバルカンが一匹だけではなかったことに驚く。

 

 

「20匹目に接収(テイクオーバー)…され……ぐはっ」

 

 

「わかったからもうしゃべらないで!! 傷口が開いちゃうよっ!!!」

 

 

スバルはマカオにそう忠告するが、マカオは構わずしゃべり続ける。

 

 

「ムカつくぜ…ちくしょお……これ…じゃ……ロメオに…会わす顔が…ね……くそっ」

 

 

「黙れっての!!! 殴るぞ!!!」

 

 

マカオは傷の痛みに耐えながら、己の不甲斐なさををずっと嘆いていた。

 

 

一方ルーシィは、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士のすごさを改めて実感したのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

夕日が沈みかけているマグノリアの街。そこではロメオが一人、マカオの帰りを待っていた。そんなロメオの脳裏には、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士をバカにする少年達の言葉が浮かんでいた。

 

『酒臭い』『腰抜け』などの言葉に反感したロメオは、マカオにすごい仕事を行って来て欲しいと頼んだのである。しかし、それが今回の結果を生んでしまったことに、ロメオは罪悪感を感じていた。

 

 

「ロメオーー!!!」

 

 

「!!」

 

 

名前を呼ばれたロメオはバッと顔を上げる。そこには、ナツに肩を借り、申し訳無さそうな表情をしているマカオの姿があった。

 

 

「父ちゃん…ゴメン…オレ……!」

 

 

ロメオは罪悪感を感じて涙を流す。

 

 

「心配かけたな。スマネェ」

 

 

そんなロメオを、マカオは力強く抱き締めた。

 

 

「いいんだ…オレは魔導士の息子だから……」

 

 

「今度クソガキ共にからまれたら言ってやれ」

 

 

マカオはロメオに笑みを見せながら……

 

 

「テメェの親父は怪物19匹倒せんのか!? ってよ」

 

 

それを聞いたロメオは涙を流しながら嬉しそうに笑った。そして帰ろうとしているナツ達に視線を向ける。

 

 

「ナツ兄ーー!! スバル姉ーー!! ハッピー!! ありがとぉーー!!」

 

 

「おー」

 

 

「うん!」

 

 

「あい」

 

 

「それと…ルーシィ姉もありがとぉっ!!!」

 

 

ロメオのお礼の言葉に、四人は笑いながら片手を振って応えたのだった。

 

 

 

 

 

つづく

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