LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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八神家

 

 

 

 

 

ファントムとの戦いから早くも一ヶ月が経ち、ギルドの再建も順調に進んでいたそんなある日。夜のマグノリアの街を一人の少女…ルーシィが歩いていた。

 

 

「ハァ~~……やっと帰ってこれた……」

 

 

「プーン」

 

 

ルーシィが疲れたように言った呟きに、隣りを歩いている仔犬座の星霊…プルーが同意するように頷く。

 

実はルーシィがマグノリアに帰ってくるのは一週間ぶりなのである。

 

と言うのも、彼女やナツ達を含めたチームはミラの紹介である仕事に行っていた。本来の依頼内容は『客足が遠のいている劇場を魔法で盛り上げて欲しい』と言うモノだったが…何の因果か、ルーシィ達が役者をやることになってしまったのだ。

 

エルザがガチガチに緊張したり、ストーリーがメチャクチャだったり、会場が崩壊したりなど色々な出来事があったが、劇自体は大ウケし、大ヒットとなった。

 

しかし、それに気を良くした座長が中々報酬を寄越さずに一週間もの間、彼女達をこき使ったのである。

 

そしてようやく座長から解放されたルーシィは一週間ぶりにマグノリアへと帰って来たのである。

 

 

「あんだけこき使っといて、報酬がたったの5万Jかぁ……」

 

 

苦労した割りに少ない報酬に、ルーシィはガックリと項垂れる。

 

 

「もういいや!! 今日はもうさっさと寝て、また明日頑張ろう!!」

 

 

「プーン!」

 

 

そう言って気合を入れなおしたルーシィはようやく着いた家に入ろうとする。すると……

 

 

「待ちな」

 

 

突然後ろから呼び止める声が聞こえた。振り返ると、そこには一人の初老の女性が立っていた。

 

 

「お…大家さん?」

 

 

そう…その女性とは、ルーシィの家の大家であった。

 

 

「残念だけど、今はその家には入れないよ」

 

 

「えぇ!!? どうしてですか!!?」

 

 

何故自分の家に入ることが出来ないのかを慌てて尋ねるルーシィ。そんなルーシィに、大家は「ふぅ…」と小さく溜め息をついて……

 

 

 

「家賃」

 

 

 

と言った。その瞬間、ルーシィは重要なことを思い出した。

 

 

「(しまったぁーー!!! ファントムとのゴタゴタのせいで今月の家賃のことスッカリ忘れてたーーっ!!!)」

 

 

家賃を支払うことを忘れていたルーシィはやってしまったと言う表情を作る。因みに現在のルーシィの所持金は5万J。

 

 

「今月の家賃7万J! きっちり払わないとこの家には入れないよっ!!」

 

 

大家にそう言われ、ルーシィは自分の家から追い出されてしまったのであった。

 

 

その後、ルーシィは街の広場のベンチに座って項垂れていた。

 

 

「どうしよう……家賃は明日の仕事で稼ぐからいいとして、今日はどこで一晩過ごそう……。誰かの家に泊めてもらおうにも、あたしティアナやエルザの家知らないし…野宿はイヤだし…あーもうどーしよー」

 

 

そう言ってルーシィが頭を抱えながら悩んでいると……

 

 

「あれ? ルーシィちゃん?」

 

 

「?」

 

 

突然名前を呼ばれ、ルーシィは声が聞こえた方に視線を向ける。

 

 

「はやてさん!!?」

 

 

そこには、大きな買い物袋を抱えたはやてが立っていた。

 

 

「はやてでええよ。どないしたん? こんな時間にこんな所で?」

 

 

「じ、実は……」

 

 

ルーシィは苦笑いをしながら自分の今の状況を説明した。

 

 

「はーそうか…大変やねぇ」

 

 

「あはは……」

 

 

事情を聞いたはやては、「んー…」っと少し悩んだ素振りを見せたあと……

 

 

「そうやルーシィちゃん!」

 

 

突然大声を出し……

 

 

 

「今日ウチに泊まらへん?」

 

 

 

と、提案したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第三十四話

『八神家』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然のはやてからの誘いにルーシィは面食らったが、今のルーシィにとってこの提案は願ってもないことなのであっさりと受け、現在ははやての家へと向かっていた。

 

 

「本当に助かったわ。ありがとうはやて!」

 

 

「プーン」

 

 

「ええよ♪困った時はお互い様やしな♪それにしてもそのプルーって子可愛いなぁ……荷物がなかったら抱き締めてるわ」

 

 

「そう言えば、やけに買い物袋が大きいけど、そんなにたくさん何を買ったの?」

 

 

ルーシィははやてにお礼を言ったあと、はやてが抱えている大きな買い物袋について尋ねる。泊めてもらうお礼としてルーシィも半分持ってあげているが、それでも結構な量だった。

 

 

「食材や」

 

 

「えぇっ!? これ全部!!? まさか一人で!!?」

 

 

ルーシィは荷物全てが食材と聞いて驚愕してそう言うが、はやては苦笑しながら否定した。

 

 

「ちゃうちゃう。私一人で食べるわけないやん。これはヴィータ達の分や」

 

 

「え? ヴィータって…はやてと同じチームの?」

 

 

「あぁ、そう言えばルーシィちゃんは知らんかったなぁ。私とヴォルケンリッターのみんなは一緒に住んでるんや♪」

 

 

「えぇっ!? そうなの!!?」

 

 

「ププ!?」

 

 

はやてが楽しげに言った言葉にルーシィだけでなくプルーも驚愕する。

 

 

「そうや♪だって私らは……本当の意味での家族やからな……」

 

 

「え?」

 

 

「あ、ほら着いたで」

 

 

はやてが顔を伏せながら呟いた言葉にルーシィが首を傾げていると、はやての家へと到着した。

 

 

「結構大きいんだね」

 

 

「プーン」

 

 

「そうか?普通やって」

 

 

はやての家はルーシィの家より一回り大きい位であった。

 

 

「ただいま~」

 

 

はやてがそう言いながらドアを開けて家の中に入ると、奥からトトトっと、足音がした。

 

 

「はやて! おかえり!!」

 

 

すると、その足音の主であるヴィータがはやてを迎える。因みに服装はいつもの真紅のゴスロリ風の服ではなく、Tシャツにスカートと言う普通の私服を着ている。

 

 

「うん、ただいまヴィータ♪」

 

 

「おう♪あれ? ルーシィじゃねーか。何でお前がいんだよ?」

 

 

はやてと一緒にルーシィまでやって来たことに首を傾げるヴィータ。

 

 

「それがなぁ、ルーシィちゃん今月の家賃払えんくて家追い出されたんやて。せやから今日はここに泊めてあげよう思うてな」

 

 

「ぷっははははは!! 家賃払えなくて追い出された!? だっせぇ!! あははははっ!!!」

 

 

「ちょっ!! そんなに笑わなくてもいいでしょーー!!」

 

 

ルーシィの事情を聞いたヴィータはお腹を抱えて爆笑し、それに対しルーシィは憤慨する。

 

 

「ヴィータ、そんなに笑ったらアカンで」

 

 

「は~い…ククク……まぁ上がれよ」

 

 

「あ、うん。お邪魔します」

 

 

そう言ってルーシィは家の中へと足を踏み入れる。そしてはやてとヴィータに案内され、リビングへとやって来た。

 

 

「みんなただいま~」

 

 

「あ、主。お帰りなさいませ。ん?」

 

 

「あら? ルーシィちゃん?」

 

 

「どうした?こんな時間に」

 

 

リビングに入ると、ヴィータと同じく私服姿のリィンフォース、シャマル、シグナムの三人が迎えてくれる。そしてルーシィを見て、首を傾げていた。

 

 

「それがよぉ、こいつ家賃払えなくて家追い出されたんだぜ!」

 

 

ヴィータがバカにしたような口調で説明すると、三人は「あぁ…」と納得したような表情をみせる。

 

 

「そうか…それは大変だな」

 

 

「気兼ねしないで、ゆっくりしていってね?」

 

 

「はい! ありがとうございます!!」

 

 

いきなりやって来た自分を素直に受け入れてくれる三人に、ルーシィは深く頭を下げた。

 

 

「ほな、さっそくご飯にしよか」

 

 

「え? はやてさんが作るんですか?」

 

 

「せや。こう見えても料理は得意やねんで?」

 

 

「はやての料理はギガウマだぞ。楽しみにしとけよ」

 

 

「へぇーそうなんだぁ!」

 

 

自分と変わらない年頃なのに料理が得意と言うはやてに素直に感心するルーシィ。

 

 

「ほんなら作ってくるからシャマル、手伝って。ルーシィちゃんはみんなと適当にくつろいどって。」

 

 

「うん、わかった!」

 

 

そう言うと、はやては食材を持ってキッチンの方へと向かい、ルーシィは言われた通りヴィータ達が座っているリビングのソファに腰掛けた。

 

すると、ルーシィは「あれ?」っと、一つの疑問を覚えた。

 

 

「ザフィーラさんは居ないんですか?」

 

 

そう。ヴォルケンリッターのメンバー最後の一人…ザフィーラの姿が見えないのだ。

 

 

「あぁ…ザフィーラならそこに……」

 

 

そう言うと、リィンフォースは何故か近くの床を指差した。

 

 

「へ?」

 

 

指先に釣られてその方角を見てみると、そこには蒼い毛並みの大きな犬が寝そべっていた。

 

 

「えっと……犬?」

 

 

ルーシィが少し驚いたようにそう呟くと、その犬はゆっくりと顔を上げて、視線をルーシィへと向けた。そして……

 

 

「……狼だ」

 

 

と言った。

 

 

「え…えぇっ!!? 喋ったぁぁあ!!?」

 

 

突然犬…いや、狼が喋ったことにルーシィは驚愕する。

 

 

「ん? ルーシィはザフィーラのあの姿を見たことはないのか?」

 

 

「ありません!! って言うか、あれがザフィーラさん!!?」

 

 

ルーシィはシグナムの問い掛けを否定すると、目の前の狼がザフィーラであることに更に驚く。

 

 

「そうか、お前は知らなかったな。ザフィーラは魔人狼(ワーウルフ)と種族でな、人と狼の姿…両方を使い分けることが出来るんだ」

 

 

「へ…へぇ~…(あの耳と尻尾って、飾りじゃなかったんだ……)」

 

 

シグナムの説明に驚きつつ、ルーシィは何とか納得する。

 

 

「仕事の時は人型…家に居る時は狼の姿で居ることが多いんだ」

 

 

「うむ…この姿の方がゆっくり出来るからな」

 

 

「それによ、この姿のザフィーラって毛並みがモフモフしててスゲー寝心地しいんだよなぁ」

 

 

「そう言えばお前はそれでうっかり寝てしまって、それが原因で風邪を引いてしまい、主はやてに怒られていたな」

 

 

「う…うるせぇよシグナム!! それを言うなよっ!!」

 

 

「しかもその後、主にザフィーラのモフモフを一ヶ月間禁止にされて、主に泣きついていたな」

 

 

「リィンフォース!!!」

 

 

シグナムとリィンフォースの二人に恥ずかしい過去を暴露され、ヴィータは顔を赤くしながら二人に怒鳴る。そしてヴィータも負けじと反撃に出る。

 

 

「リィンフォースこそ! この前はやてにおつかい頼まれた時、ピーマンと間違えてパプリカを買ってきたクセに!!」

 

 

「うっ…あ、あれはちょっと見間違えただけだ!!」

 

 

「どうやったら赤と緑を見間違えんだよ!!?」

 

 

「落ち着けお前達」

 

 

ちょっとした口論をする二人をシグナムが宥める。

 

 

「あははは……」

 

 

そんな三人のやり取りを見ていたルーシィは苦笑いを浮かべ……

 

 

「……いいなぁ」

 

 

と、三人には聞こえないほど小さな声でそう呟いた。

 

 

「………どうかしたのか?」

 

 

「え?」

 

 

すると、ザフィーラがルーシィにそう尋ねる。どうやら狼ゆえに、先ほどの呟きが聞こえていたようだ。口論をしていた他の三人の視線も自然とルーシィに集まる。

 

 

「え…えっと……ほら、あたしって母親が亡くなってから、家柄のせいで家族と…って言っても父親だけど…余り話すことがなかったの。同じ家に住んでいるはずなのにね……それで、さっきのみんなの会話を聞いてたら、本当の家族ってこんな感じなのかなぁ……って思ってさ」

 

 

「「「「……………」」」」

 

 

ルーシィの話を四人は黙って聞いていた。

 

 

「あっ、ご…ゴメンね! 急に変な話して! 忘れて忘れて!!」

 

 

それを見たルーシィは慌ててそう言うと、黙って聞いていたシグナムが口を開いた。

 

 

「いや……お前の気持ちはよく分かる。私達も、家柄のせいで色々と悩まされたからな」

 

 

「え……?」

 

 

シグナムの言ったことの意味が分からず、ルーシィは呆然とする。

 

 

「アタシ達の家はな、代々〝夜天の主〟に仕える家系なんだよ」

 

 

「夜天の…主?」

 

 

ヴィータの説明にルーシィが首を傾げていると、リィンフォースが補足するように説明する。

 

 

「〝夜天の主〟とは、私達の家系に伝わる魔導書……〝夜天の書〟に選ばれた者のことだ。その〝夜天の主〟に仕える五つの家系…それが私達だ」

 

 

そう説明するリィンフォースに続いて、ザフィーラが口を開く。

 

 

「そしてその家系に生まれた子供は、それぞれの家系に与えられた使命を受け継がなければならないのだ」

 

 

「使命?」

 

 

使命と言う言葉に疑問を覚えるルーシィ。その疑問にシグナムが答える。

 

 

「あぁ…たとえば、私の家に伝わる使命は〝剣の使命〟……その名の通り主の剣となり、常に最前線で主の道を切り開くことだ」

 

 

「アタシの家は〝鉄槌の使命〟……主の前に立ち塞がるモノを全て破壊することだ」

 

 

「我が受け継いだ使命は〝守護の使命〟……いついかなる時でも主の盾となり、いかなる危険から主をお守りする事だ」

 

 

「そして私の使命は〝管理の使命〟……主無き夜天の書を管理し、主となるべき人を探すこと。そして、主亡き後も夜天の書を再び管理し、また新たなる主を探す……それが使命だ」

 

 

シグナムの説明を皮切りにヴィータ、ザフィーラ、リィンフォースも各々の使命を説明する。それを聞いて、ルーシィは感嘆と驚愕が入り混じった声を上げる。

 

 

「す…凄い一族なんだね……」

 

 

「あぁ……だが、夜天の書に選ばれた人間が見つかるのは(まれ)で、一族の中には仕えるべき主が現れることなく人生を終えた者もいる。仮に見つかったとしても、その主次第で、その後の人生が左右されるのだ」

 

 

「中には、私達のことを奴隷…または道具のように扱うような輩もいたと聞いたことがある。ゆえに私達の家系は〝呪われた一族〟と呼ばれ、周囲の人々から迫害されていた」

 

 

「あっ……!」

 

 

シグナムとリィンフォースの説明を聞いて、ルーシィは先日…ラクサスがシグナム達のことをそう呼んでいたことを思い出した。

 

 

「正直、アタシ達はそんな家が嫌いだった。どこの誰ともわからねえ奴に仕えて、そいつ次第でアタシの人生が決まるなんて冗談じゃねえって思ってた」

 

 

ヴィータは暗く、少々怒りを滲ませながらそう言うと、すぐさま笑顔になって言葉を続けた。

 

 

「けどよ、はやてはアタシ達の事を〝奴隷〟でも〝道具〟でもなくて、〝家族〟として迎えてくれたんだ!! だからアタシ達は、はやての事が大好きだっ!!」

 

 

「あぁ…あのような人徳を持った主はそうはいない」

 

 

「そんな主だからこそ、我等は誇りを持って戦える」

 

 

「だから私たちは誓ったのだ。家柄や使命などは関係なく〝本当の家族〟として、あの方をお守りしようと……」

 

 

「……………!!」

 

 

四人の言葉を聞いて、ルーシィは彼女達とはやての間にある…何よりも強い〝絆〟を感じていた。

 

 

「ご飯出来たで~」

 

 

すると、キッチンの方からはやての、のほほんとした声が聞こえてくる。それを聞いたシグナム達はソファから立ち上がり、食事用のテーブルの方へ移動し、ザフィーラも狼から人間の姿へと戻る。ルーシィも四人に釣られるように移動する。

 

 

「お待ちどうさんや!」

 

 

そう言うと、はやてはテーブルの中央にドンッと、蓋をした大きな器を置く。

 

 

「今日はルーシィちゃんもおるから、豪勢に鍋にしてみたで!」

 

 

「ナベ?」

 

 

聞いたこともない料理の名前に、ルーシィは首を傾げる。

 

 

「せやっ! 私の故郷である東洋の国の料理でな、大勢で食べるにはもってこいの料理なんや♪」

 

 

「へぇ~!」

 

 

初めて食べる鍋にルーシィは目を輝かせる。

 

 

「……シャマル、お前は味付けに手を出していないだろうな?」

 

 

「あー!! シグナム酷いっ!!」

 

 

「大丈夫や。シャマルには野菜を切ってもらっただけやから」

 

 

「はやてちゃんまで!?」

 

 

「そっか、それなら安心だな」

 

 

「あぁ」

 

 

「うむ…」

 

 

「もーっ!! みんな怒りますよっ!!」

 

 

「??」

 

 

はやて達のそんなやり取りを、事情を知らないルーシィだけ不思議そうに見ていた。

 

 

「いや、何でもあらへんよ。さ、食べよか!」

 

 

『いただきます!!』

 

 

全員がそう合唱するのを確認して、はやては鍋の蓋を開ける。その瞬間、真っ白な湯気と共になんともいい匂いが広がる。そして鍋の中には肉や野菜などがグツグツと煮込まれていた。

 

それを見たルーシィは「わぁ…」っと、感嘆の声を漏らしながら自分の分を小皿によそい、そのまま自分の口へと運ぶ。

 

 

「おいしい!!」

 

 

「そうか?そらよかったわ~♪」

 

 

ルーシィの感想を聞いて、はやては満足そうに笑った。

 

 

そして…夕食が始まってから数十分ほど経った頃……

 

 

「あっ!! おいシグナム!! それアタシが取ろうとしてた肉だぞっ!!」

 

 

「知らんな。早い者勝ちだ」

 

 

「大丈夫よヴィータちゃん、お肉はまだたくさんあるから」

 

 

「せやけどヴィータ、お肉だけやなくて野菜も食べなアカンよ?」

 

 

「ザフィーラ、すまないがそれを取ってくれないか?」

 

 

「む……」

 

 

鍋を囲み、和気藹々とした会話をしながら食べ進めるはやて達。

 

 

「(……いつものギルドのバカ騒ぎもいいけど、こういうのも結構いいなぁ。何ていうか…暖かい感じがする……はやてが言ってた〝本当の意味での家族〟ってこう言う事だったんだ。……あたしも、家柄のことがなかったら、パパとママ……三人でこう言う風に暮らせたのかな……?)」

 

 

そんなはやて達の食事風景を見ながら、ルーシィは感傷に浸っていた。

 

 

「ねぇルーシィちゃん」

 

 

すると、そんなルーシィに突然シャマルが声をかける。

 

 

「はい? なんですか?」

 

 

「これ…食べてみない?」

 

 

そう言って、シャマルが差し出したのは小皿に乗ったなんだかよく分からない物体。

 

 

「えっと…これは?」

 

 

「頑張って作ってみたんだけど、どう?」

 

 

『っ!?!?!?』

 

 

シャマルが〝作った〟と言う言葉を発した瞬間、ルーシィとシャマル以外の全員に衝撃が走り、食べる手を止めた。

 

 

「(あ、主!! シャマルには野菜を切らせただけだと……!)」

 

 

「(そのはずやってんけど…いつの間に……!!)」

 

 

はやてとリィンフォースが小声でそんな会話をしている間に、ルーシィはシャマルの料理(?)をマジマジと見つめたあと……

 

 

「じゃあ、いただきます」

 

 

ゆっくりと、それを自分の口へと運んだ。

 

 

「ルーシィちゃん!! ちょっと待っ──」

 

 

はやての必死の制止も虚しく、ソレはルーシィの口の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

そしてルーシィの意識も同時に消えていった。

 

 

 

 

 

その後……目が覚めたルーシィの目に飛び込んできたのは、もの凄く心配している表情をしたはやて達と、自分に平謝りするシャマル。そして、窓から差し込む眩しい朝日であった。

 

何故はやて達にこんなに心配されているのか、何故シャマルは自分に謝り続けるのか、何故先ほどまで夜だったのにいつの間にか朝になっているのか……まったく記憶がないルーシィであった。

 

 

 

 

 

因みに、シャマルの料理を食べたと言う情報はナツやティアナ達にも伝わり、それを聞いたナツ達は珍しくかなり積極的にルーシィの仕事を手伝った。そのお陰で無事に家賃を確保したルーシィは、自宅へと帰ることが出来たのであった。

 

 

 

 

 

つづく

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