LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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突入

 

 

 

 

 

エルザが楽園の塔に拉致されてしまった夜から一夜明けて…明朝。

 

 

「どこだよここはよォ!!!」

 

 

「ジュビアたち、迷ってしまったんでしょうか?」

 

 

グレイたちはエルザを追って小船で海に出たのはいいが、目標を見失ってしまい、海のど真ん中を漂流していた。

 

 

「ちょっとナツ! 本当にこっちでいいの!!?」

 

 

「お…おお……おお……」

 

 

「オメーの鼻を頼りに来たんだぞ!! しっかりしやがれ!!!」

 

 

「グレイ様の期待を裏切るなんて信じられません」

 

 

「み…みんな、ナツは乗り物が苦手なんだから……」

 

 

乗り物酔いをしているナツを責め立てるグレイとジュビアを、フェイトが宥める。

 

 

「くそっ!!! オレたちがのされてる間に、エルザとハッピーが連れて行かれたなんてヨ。まったく……情けねえ話だ」

 

 

「本当ですね…エルザさんほどの魔導士がやられてしまうなんて……」

 

 

「やられてねえよ。エルザの事知りもしねえくせに……!」

 

 

そう言ってギロリとジュビアを睨みつけるグレイ。その目に睨まれたジュビアはビクッと身を震わせる。

 

 

「ご…ごめんなさい」

 

 

「グレイ!! 落ち着いて!!」

 

 

「ちっ」

 

 

ルーシィに宥められ、舌打ちをしながら床に座り込むグレイ。すると、フェイトが暗い表情で口を開く。

 

 

「エルザを攫って行った人たち、エルザの昔の仲間だって言ってた。エルザの事を何も知らないのは……私たちも一緒だよ……」

 

 

『………………』

 

 

フェイトの言葉に、全員が押し黙る。すると、ティアナが何かに気がついた。

 

 

「あ…見て!! 塔よ!!」

 

 

ティアナが指差す先には、空高くそびえる塔の影が見えていた。

 

 

「あれが……楽園の塔!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第三十七話

『突入』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楽園の塔が立つ島へと上陸したナツたち。そして塔へと続く道には、多くの見張りが配置されていた。

 

 

「見張りの数が多いな」

 

 

「うん…これじゃあ近づけない」

 

 

「気にする事ぁねえ!! 突破だ!!」

 

 

「ダメに決まってるでしょバカナツ!!」

 

 

「エルザがハッピーが捕まってる。ヘタな事したらエルザたちが危険になるのよ」

 

 

「それに、塔があるのはずっと先…ここで侵入がバレたら分が悪いよ」

 

 

近くの岩陰に隠れながらどうやって塔に侵入するか考える一同。すると、海の中からジュビアが出てくる。

 

 

「ジュビアは水中から塔の地下への抜け道を見つけました」

 

 

「マジか!! でかした!!」

 

 

「水中を10分ほど進みますが、息は平気でしょうか?」

 

 

「10分くれぇなんともねーよ」

 

 

「だな」

 

 

「が…頑張ればなんとか……」

 

 

「無理に決まってんでしょ!!!」

 

 

「フェイトさんも無理しないでください!!」

 

 

先さきと話を進めるナツとグレイにツッコミを入れるルーシィに、無理して二人の提案に乗ろうとするフェイトを止めるティアナ。見かねたジュビアは手のひらに水の球体を作り出す。

 

 

「これを被ってください。酸素を水で閉じ込めてあるので、水中でも息が出来ます」

 

 

「ほぉー…つーかお前誰だ? ティアと声が似てんな」

 

 

「今は関係ないでしょ。ほら行くわよ!」

 

 

「うおっ!?」

 

 

そう言って、ティアナはナツの首根っこを掴んで海の中に飛び込んだ。他のメンバーもそれに続くように海へと飛び込んで行った。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

「ここがあの塔の地下か?」

 

 

「うん…エルザもハッピーもこのどこかにいる」

 

 

その後、ナツたち6人は塔の地下への侵入に成功した。そして地下を見渡していると……

 

 

「何だ貴様等はーーー!!!」

 

 

地下の見張りの兵たちに見つかってしまった。

 

 

「やば!」

 

 

「見つかった!」

 

 

「こうなったらやるしかねえだろ」

 

 

それを見た一同はすぐに戦闘態勢に入る。そして最初にナツが動き出す。

 

 

「何だ貴様等はぁ…だと!!? 上等くれた相手も知らねえのかヨ!!!」

 

 

そう叫びながらナツは炎を纏った拳を兵たちが立つ橋に叩き込む。

 

 

「うわっ」

 

「ぬあ!」

 

 

その衝撃で柱がへし折れ、橋が崩れ落ちる。

 

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)だバカヤロウ!!!!」

 

 

 

ナツの叫びを皮切りに、他のメンバーも戦闘を開始する。

 

 

「開け!! 巨蟹宮の扉!! キャンサー!!!」

 

 

「久しぶりエビ!!!」

 

 

ルーシィはキャンサーを呼び出し、兵たちを倒す。

 

 

水流斬破(ウォータースライサー)!!!」

 

 

ジュビアは水の刃で兵たちを切り裂く。

 

 

「ファントム…ブレイザー!!!」

 

 

ティアナはクロスミラージュから放たれる砲撃で兵を吹き飛ばす。

 

 

「プラズマランサー……ファイア!!!」

 

 

フェイトは数十発もの雷の魔力弾を放ち、兵を狙い打つ。

 

 

「アイスメイク〝大槌兵(ハンマー)〟!!!」

 

 

グレイは氷の大槌を造り出し、兵たちを押し潰す。

 

 

圧倒的強さを持つナツたちの前に兵たちはあっけなく倒されていき、数分後には兵たちは全滅した。すると、上へと続く通路が開かれた。

 

 

「何か扉が開いたぞ!!!」

 

 

「上へ来いってか?」

 

 

「罠かもしれないわよ?」

 

 

「それでも…進まなきゃ」

 

 

そう言って、ナツたち一同は上の階へと上って行った。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方…楽園の塔の玉座の部屋では……

 

 

「ジェラール…何を考えている? 塔内に侵入者を引き入れるなど」

 

 

ジェラールの行動に意を唱える長身の女性。どうやらナツたちの方で上の階への道が開かれたのはジェラールの手によるものだったようである。

 

 

「言っただろ? これはゲームだと。奴等はステージをクリアした、それだけの事。面白くなってきやがった。ははは……」

 

 

女性の問いに楽しそうに笑いながら答えるジェラール。

 

 

「しかし儀式を早めなくては、いずれ評議院に気付かれますぞ」

 

 

「ヴィダルダス…まだそんな事を心配してるのか?」

 

 

長髪の男…ヴィダルダスの言葉にジェラールは自信満々に答えた。

 

 

「止められやしない。評議院のカスどもにはな」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その頃、上の階へとやって来たナツたち。

 

 

「四角ーーー!!! どこだーーーっ!!!!」

 

 

「ちょっと!! ここは敵の本陣なんだから、大声出さないの!!」

 

 

「もが」

 

 

大声で叫ぶナツの口を大慌てで塞ぐルーシィ。

 

 

「下であれだけハデにやったんだ。今さらこそこそしても仕方ねえだろ」

 

 

「それにこの扉、誰かがここから開けたものじゃありませんよ」

 

 

「……本当だ。かすかに魔力を感じる……魔法の力で遠隔操作されたんだ」

 

 

「つまり、私たちの侵入は完全に気付かれてるってわけね」

 

 

「だったら扉を開く意味が余計にわかんないじゃない」

 

 

「挑発してんのか」

 

 

そこまで言うと、グレイはルーシィのあることに気がついた。

 

 

「お前、何だその服?」

 

 

それは、ルーシィの服装が先ほどとは違い、豪華なドレスになっていたのだ。それを指摘されたルーシィは得意げに笑いながら答える。

 

 

「星霊界の服! 濡れたままの服を着てんのも気持ち悪いし、さっきついでにキャンサーに頼んだの。水になれるジュビアは置いといて、みんなよく濡れたままの服を着てられるわね」

 

 

「だってこうしてたらすぐ乾くもの」

 

 

「だな」

 

 

「うん」

 

 

そう言うティアナ、グレイ、フェイトの三人は、自身の服をナツの身体から発せられる炎の熱にあて、パタパタと乾かしていた。

 

 

「あら!! こんな近くに乾燥機が!!!」

 

 

予想だにしないナツの使い方に驚くルーシィ。すると……

 

 

「いたぞー!! 侵入者だー!!」

 

 

近くの扉から大群の兵たちが流れ込んでくる。

 

 

「こりねえ奴等だな」

 

 

それを見て、ナツたちは戦闘態勢にはいる。しかし……

 

 

「ぐほぉ!!」

 

 

『!!』

 

 

「がっ!!」

 

「ふぉ!!」

 

 

瞬く間に倒れていく兵たち。そして兵たちが全滅すると、そこには双剣を構えたエルザが立っていた。

 

 

「エルザ!!」

 

 

「よかった!! 無事だったんだね!!!」

 

 

「か……かっこいい」

 

 

目的の人物を見つけて喜ぶ一同。しかし対照的に、エルザは驚愕の表情を浮かべている。

 

 

「!!! お…お前たちがなぜここに……!!?」

 

 

「なぜもくそもねえんだよ!! なめられたまま引っ込んだら妖精の尻尾(フェアリーテイル)の名折れだろ!! あんの四角だけは許しておけねー!!!」

 

 

づかづかとエルザに歩み寄るナツ。すると、エルザの視線がジュビアへと向く。それを感じたジュビアはビクッと身体を震わせる。

 

 

「あの……ジュビアはその……」

 

 

「帰れ」

 

 

ジュビアが言い切る前に、エルザは冷たくそう言い放った。しかもその言葉はジュビアだけではなく、その場にいる全員に向けられた言葉だった。

 

 

「ここはお前たちの来る場所ではない」

 

 

「でも、エルザさん……」

 

 

「ハッピーまで捕まってんだ!!! このまま戻るわけにはいかねー!!!」

 

 

「ハッピーが? まさかミリアーナ…」

 

 

ティアナの言葉を遮ってナツが叫ぶと、エルザは心当たりのある人物の名前を口にする。

 

 

「そいつはどこだ!!!」

 

 

「さ……さあな」

 

 

「よし!!! わかった!!!」

 

 

「何がわかったのよ!!?」

 

 

まったく繋がっていない二人の会話に困惑するティアナ。

 

 

「ハッピーが待ってるって事だ!!!」

 

 

そう叫ぶと、ナツは一目散に駆け出す。

 

 

「今行くぞハッピー!!!」

 

 

「ちょっ…ちょっと待ちなさいバカナツ!!!」

 

 

そんなナツのあとを、ティアナは急いで追いかけて行った。

 

 

「あのバカ!! また勝手に……」

 

 

「私たちも追いかけよう!!」

 

 

そう言って二人を追いかけようとするフェイト。

 

 

「ダメだ。帰れ」

 

 

「!!!」

 

 

しかし、眼前にエルザの剣が突き出され、止められる。

 

 

「ミリアーナは無類の愛猫家だ。ハッピーに危害を加えるとは思えん。ナツとティアナとハッピーは私が責任を持って連れ帰る。お前たちはすぐにここを離れろ」

 

 

グレイたちに背を向けながらそう説得するエルザ。だが、当然グレイたちは納得しない。

 

 

「そんな事できる訳ないよ!!! エルザも一緒じゃなきゃ!!!」

 

 

「これは私の問題だ。お前たちを巻き込みたくない」

 

 

「もう十分巻き込まれてんだよ。あのナツを見ただろ」

 

 

「エルザ……この塔はなに? ジェラールって誰なの?」

 

 

ルーシィはそう問い掛けるが、エルザは背を向けたまま答えない。

 

 

「言いたくないならいいんだけどさ…あいつら、エルザの昔の仲間って言ってたよね? でも、あたしたちは今の仲間。どんな時でも、エルザの味方なんだよ」

 

 

「か……帰れ……」

 

 

ルーシィの言葉にエルザは身体を震わせながら、弱々しく帰れと言い放つ。そんなエルザを見て、今度はグレイとフェイトが口を開く。

 

 

「らしくねーなぁ、エルザさんよぉ。いつもみてーに四の五の言わずついて来いって言えばいーじゃんヨ」

 

 

「そうだよエルザ…私たちはいくらでも力を貸す。エルザの過去に何があったのかは知らない……でも私たちは、どんなエルザでも受け入れるから……絶対に」

 

 

グレイとフェイトがそう言うと、今まで背を向けていたエルザが振り返る。その目には、涙が浮かんでいた。

 

 

「うっ!」

 

 

「エル…ザ……?」

 

 

初めて見せるエルザの涙に呆然とする一同。エルザは「すまん」と言って、その涙を拭う。

 

 

「この戦い…勝とうが負けようが、私は表の世界から姿を消すことになる……」

 

 

「えっ!?」

 

 

「ど…どういうこった!!?」

 

 

表の世界から消える……それはつまり、エルザがいなくなる事を示している。それを聞いたグレイたちは驚愕する。

 

 

「これは抗う事のできない未来。だらか……だから私が存在しているうちに、全てを話しておこう」

 

 

そう言って、エルザは意味深な微笑を浮かべながら語り始める。

 

 

「この塔の名は〝楽園の塔〟。別名〝Rシステム〟。10年以上前だ。黒魔術を信仰する魔法教団が〝死者を蘇らせる魔法〟の塔を建設しようとしていた」

 

 

「死者を…蘇らせる……!!?」

 

 

その言葉にフェイトが過剰に反応していたが、エルザは気にせずに続ける。

 

 

「政府も魔法評議会も非公認の建設だった為、各地からさらってきた人々を奴隷としてこの塔の建設にあたらせた。幼かった私も、ここで働かれていた一人だったのだ」

 

 

「え…!」

 

 

「エルザが……!?」

 

 

「……………」

 

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)切っての最強の女魔導士と名高いエルザが、まさか元奴隷だとは思わなかったグレイたちは絶句する。

 

 

そしてエルザは全てを語った。

 

 

昨夜エルザを連れ去った四人組…そしてこの塔の主であるジェラールも奴隷であった事。

 

エルザを庇って懲罰房に送られたジェラールを助けるために奴隷たちを率いて反乱を起こした事。

 

 

「私たちは自由の為…ジェラールを救う為に立ち上がった。あの頃のジェラールはみんなのリーダーで、正義感が強くて…私の憧れだった」

 

 

そう語りながらも、エルザの表情はどんどん暗いものとなっていく。

 

 

「しかし……あの時を境に、ジェラールは別人のように変わってしまった。もし人を悪と呼べるなら、私はジェラールをそう呼ぶだろう」

 

 

そしてエルザは続きを語る。

 

 

反乱のさなか、魔法の力に目覚めたエルザはついにジェラールを助け出すことに成功した。しかし、助け出したジェラールは別人のように非情な性格へと変わっており、壊滅させた魔法教団に変わって〝楽園の塔〟を完成させ、伝説の黒魔導士〝ゼレフ〟を復活させると言い出したのだ。

 

当然エルザは反対したが、その反論も虚しく、エルザは外界へと放り出された。

 

もし楽園の塔の事が政府関係者知られたら、ショウたち奴隷仲間がジェラールによって殺されてしまう為、それから八年間…その事をずっと胸の奥に仕舞い込みながら過ごしてきたのだ。

 

そして現在…再びこの楽園の塔に戻って来たエルザは、ある決心をしていた。

 

 

 

 

 

「私は……ジェラールと戦うんだ……」

 

 

 

 

 

左目から大粒の涙を流しながら、エルザは静かにそう語ったのであった。

 

 

 

 

 

つづく

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