ハッピーをさらった二人…ウォーリーとミリアーナを倒したナツとティアナ。現在その二人は……
「はぁ~やっと取れた……」
ティアナはようやく取れた猫耳カチューシャを手に、小さく溜め息をついた。
「まさかこれが魔法アイテムだったなんてね。そりゃ簡単に取れないはずだわ」
そう、ティアナが着けていた猫耳カチューシャは、着けると魔法で自動的にロックされる魔法アイテムだったのである。
「ハッピー、ナツの被り物は取れて──」
「ハッピー!! もっと強く引っ張ってくれ!!!」
「もう力いっぱいやってるよ!!!」
「──ないみたいね」
未だにネコの被り物を取ろうと悪戦苦闘しているナツとハッピーを見て、呆れるティアナ。因みにその方法とは、壁に掴まったナツの被り物をハッピーが思いっきり引っ張って取るというモノである。
「ぬおおおっ!!! もげるぅぅ……」
「うぅう!!!」
本当に首がもげてしまうのではないかと思うほど伸びるナツの首。そしてついに、スポーンっと言う音と共に被り物が宙を舞った。
「とれたー!!!」
ようやく被り物が取れた事に喜ぶナツ。そしてその被り物は、くるくると宙を舞い……
「くう…」
すぽっ
「ぬ?」
起き上がろうとしていたウォーリーの顔にはまった。
「今度は四角にはまった!!」
「ぷっ…くくく…!!!」
「あのマスクの被り口はどうなってるんだろう?」
それを見たナツとティアナは笑い、ハッピーはマスク自体に疑問を持っていた。
「まだ勝負はついてェゼ、テメェら……ぐっ」
被り物を放りながら立ち上がるウォーリー。しかしナツから受けたダメージが大きく、再び膝を着いてしまう。
「もうカリも返したし、エルザもハッピーも無事ってんなら、これ以上やる意味はこっちにはねーんだけどな」
「そうそう。目的は果たしたんだし、もうここに留まる理由もないわね」
ナツとティアナがそう言い、ハッピーもうんうんと頷く。
「オレたちは楽園へ行くんだ…」
「楽園……?」
「ジェラールの言う真の自由。人々を支配できる世界へ……」
苦しげな声でそう言うウォーリー。すると……
もこもこ……もわっ
「きゃああっ!!? 何よコレ!!?」
「ナツー!! 気持ち悪い!!」
「口!? そこら中に」
突然壁や天井などに無数の口が生えてきた。そしてその生えてきた口が、ゆっくりと開かれる。
《ようこそみなさん。楽園の塔へ》
「ジェラール!?」
その声を聞いて、そう反応するウォーリー。どうやら声の主はジェラールのようだ。
そしてその口は、エルザたちの下にも出現していた。
「何だこの口は!?」
「しゃ…しゃべりましたよ!!!」
「ジェラールだ。塔全体に聞こえるように話している」
「塔全体にこの口が…」
「……あんまり想像したくない……」
そこら中に生えている口に気味悪さを感じながらも、一同はその声に耳を傾ける。
《オレはジェラール。この塔の支配者だ。互いの駒はそろった。そろそろ始めようじゃないか……楽園ゲームを》
第三十九話
『楽園ゲーム』
「ゲームだぁ?」
「ジェラール…何だこれは……」
ナツたちが戸惑っている間にも、ジェラールの説明が続く。
《ルールは簡単だ。オレはエルザを生贄とし、ゼレフ復活の儀を行いたい。すなわち楽園への扉が開けばオレの勝ち。もし、それをおまえたちが阻止できれば、そちらの勝ち。ただ…それだけでは面白くないのでな、こちらは四人の戦士を配置する。そこを突破できなければオレにはたどり着けん。つまりは4対9のバトルロワイヤル》
淡々と楽園ゲームのルールを説明していくジェラール。
《最後に一つ、特別ルールを説明しておこう。評議院が
それを聞いた全員が、驚愕に顔を染める。
「そ…そんな……何考えてんのよジェラールって奴……自分まで死ぬかもしれない中でゲームなんて……」
「命を…何だと思って……!!!」
ルーシィは震え、フェイトは怒りの表情を浮かべる。
「エーテリオンだと? 評議院が? あ…ありえん!!! だって…」
エルザが驚愕しながらそう言っていると、突然ショウがエルザをカードの中に閉じ込める。
「エルザ!!!」
「ショウ!! お前なにを!!!」
その行動に驚くグレイとシモン。
《さあ、楽しもう》
ジェラールのその言葉を最後に、壁の口が消えていった。
「姉さんには誰にも、指一本触れさせない。ジェラールはこのオレが倒す!!!」
そう言ってショウはエルザを閉じ込めたカードを持ってその場から走り去ってしまった。
「よせ!! 一人じゃ無理だ!!! くそ!!! オレはショウを追う!! お前たちはナツとティアナを探してくれ!!!」
シモンはそう言い残してショウを追いかけて行った。
「だーー!!! どいつもコイツも!!!」
「グ、グレイ!落ち着いて……」
「ジュビアはグレイ様と向こうへ。フェイトさんとルーシィさんはあっちね」
「何で勝手に決めてるのよ!!?」
残された四人はどうするかを話し合う。
「オレはやっぱりエルザが気になる。あのショウってのとでけーのを追う。ナツとティアナ探しは三人に任せるわ」
グレイの言葉にフェイトが頷いて答える。
「うん、わかった。じゃあナツを探すチームを二つに分けよう。ルーシィとジュビアは二人でナツとティアナを探して?」
「フェイトはどうするの?」
「私は一人で大丈夫だよ」
「よしっ! んじゃ行くか!!」
『うん(はい)!!』
グレイの号令で、四人はそれぞれの道を走って行った。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「何が何だかわかんねーが、ジェラールって奴を倒せばこの喧嘩は終わりか。おし!! 燃えてきたぞ!!!」
「でも、エーテリオンが落ちて来るとなると…グズグズしてられないわね」
片手のひらに拳をぶつけてやる気満々なナツと思案顔になるティアナ。
「な…何なんだよジェラール……エーテリオンってよう……そんなの喰らったら、みんな死んじまうんだゼ。オレたちは真の自由が欲しいだけなのに……」
声を震わせながらそう呟くウォーリーに、ナツとティアナが口を開く。
「バカね……自由って言うのは、人から与えられるモノじゃなくて自分で探して手に入れるモノなのよ。少なくとも、こんな塔に閉じこもってたら得られるモノも得られないわよ?」
「どんな自由が欲しいかは知らねーけど、
二人のその言葉に、呆然とするウォーリー。
「ハッピー!! ゲームには裏技ってのがあるよな?」
「あい!!」
「アンタまさか……!! ちょっと待ちなさ──」
ナツとハッピーの意図に気付いたティアナは二人を止めようとするが……
「一気に最上階まで行くぞ!!!」
「あいさー!!!」
それは間に合わず、二人は窓から最上階に向かって飛んでいってしまった。
「……あんの…バカナツがーーー!!!!」
残されたティアナも怒声を上げながら急いで部屋を出て、二人の後を追いかけて行った。
「
そして一人残されたウォーリーは二人が出て行ったあと、小さく笑みを浮かべ……
「いい…マフラー…だゼ」
謎の言葉を残して倒れたのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ったくあのバカ二人!!」
先に上へと昇って行ったナツとハッピーに憤慨しながら塔の中を走り回るティアナ。
「にしてもこの塔…結構入り組んでるわね……めんどくさいから天上を撃ち抜いて上ろうかしら?……って、ダメだ。最近思考がナツに似てきてる気がする……」
自分の思考がナツに影響されてきた事に自己嫌悪に陥るティアナ。すると……
「見つけたぞ…侵入者」
「っ!!?」
ティアナは突然背後から聞こえてきた声に振り返ると、そこには長身の女性…トーレが立っていた。
「悪いが……消えてもらうぞ?」
そう言って自身の両腕に薄紫色の魔力刃…インパルス・ブレードを纏うトーレ。
「……やってみなさいよ」
対するティアナもクロスミラージュをダガーモードにして構える。
「「……………」」
そして互いにジリジリと睨みあったあと……
「「ハァァァアアア!!!」」
ガキィィィィイン!!!
激突した。
◆◇◆◇◆◇◆◇
その頃…ジェラールの居る部屋では……
「情けねえなシモン。ゲームは始まったばかりだぞ」
フクロウを象ったチェスの駒で城壁のような駒を倒す。どうやらゲームの戦況をチェスで見立てているようである。そして、フクロウの駒をドラゴンを象った駒の前へ持ってくる。
「次は梟VS……ナツ・ドラグニル。そして……」
続けて女性を象った駒を星を象った駒の前へと移動させる。
「トーレVSティアナ・ランスターか。うーむ……ナツとティアナにはここまで来てもらいてえんだがな……少し部が悪いか…」
そう言ってジェラールは楽しそうな表情でチェス盤を眺めるのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「ハァアア!!」
「くっ……!!」
ガキィン! ガキィン! ガキィン!!
甲高い音と共に何度も激しくぶつかるお互いの魔力の刃。初めこそ拮抗していたが、次第に追い詰められるティアナ。それもそのはず…ティアナは本来、中遠距離タイプの魔導士。接近戦も多少はできるが、それでも純粋な接近戦タイプのトーレには及ばないのである。
「どうした? もう限界か?」
「うる…さいわねっ……私は元々中遠距離タイプなのよ……」
「ふん……敵を得意分野で戦わせるほど、私はバカではない」
トーレの猛攻を顔をしかめながら何とか防ぐティアナ。しかしついに限界が来たのか、ティアナに一瞬の隙が生まれる。
「もらった!!!」
当然トーレはその隙を見逃さず、ティアナの首に向かってインパルスブレードを振るい、彼女の首を撥ねた────はずだった。
「なっ!!?」
何とトーレの攻撃はティアナの身体をすり抜けたのだ。そしてトーレが驚愕していると……
ドドドン!!
「ぐあっ!!」
彼女の背中に複数の衝撃が走る。そしてすぐに振り返ると、そこにはクロスミラージュを構えたティアナの姿があった。
「
そう言って、ティアナは得意気な笑みを浮かべる。そう、ティアナはトーレの攻撃が当たる瞬間、彼女に気付かれないように幻影魔法で造った自分の分身と入れ替わり、背後に回ったのである。
「チッ……!」
トーレは憎々しげに舌打ちをすると、再びティアナに向かって切り掛かる。
「残念だけど、私もアンタと同じく敵を得意分野で戦わせるほどバカじゃないのよ」
そう言うと、トーレの攻撃がまたもティアナの身体をすり抜ける。
「また幻影か!!?」
トーレはすぐさま体勢を立て直し、キョロキョロと辺りを見回すが、ティアナの姿はない。
「くっ……どこへ消えた?」
「こっちよ」
「っ!!」
声がした方向にすぐに身体を向けるトーレだが、そこにティアナの姿はなく……
ドンッ!
「っ……チィ!!」
誰も居ないはずの正面から魔力弾が飛んでき、トーレはそれをインパルスブレードで切り裂いて防ぐ。
「どこだ…どこにいる!?」
「無駄よ……アンタの目には私の姿は映らない。今の私は風景の幻影を纏い、その姿を隠しているの。これが
「くっ……!!」
何処からともなく聞こえてくるティアナの声に顔をしかめるトーレ。しかしそれも一瞬で、すぐに冷静さを取り戻したトーレは小さく深呼吸をする。
「すぅ…ふぅ……」
そして深呼吸が終わり、インパルスブレードを構えると……
「インパルス・ウェイブ」
そのままコマのように回りだし、いくつものインパルスブレードを四方八方無差別に発射し始めた。
ズバン! バキッ! ガラガラ!!
その攻撃で周りにあった壁や柱などが音を立てて崩れていく。そしてついに……
「きゃあっ!!」
幻影で隠れていたティアナがあぶり出された。
「見つけたぞ」
回転を止め、冷たい眼差しでティアナを見据えるトーレ。
「っ……!!」
再び幻影で身を隠そうとするティアナだが……
「させん」
「きゃああ!!」
一気に距離を詰めてきたトーレに殴り飛ばされ、それを阻止される。
「ぐぅ…この……!!」
それでも負けじと立ち上がるティアナ。
「もう終わりだ。これから先、貴様は何も出来ずに終わる」
そう言ってトーレは身構えると……
「
その瞬間、トーレの両の太ももと踝の部分から魔力で生成された羽が出現する。
「なに……? スキル……?」
トーレの見たこともない魔法にティアナが首を傾げていると……
ゴオォォォ!!!
「……え?」
次の瞬間…ティアナの身体には無数の切り傷が刻まれていた。そして正面にいたはずのトーレがいつの間にか背後へと移動している。
それを見たティアナは理解した。自分は切られたのだと。
「がっ…あぁ……!!」
遅れてやって来る傷の痛みに膝をつくティアナ。しかしそれでも、闘志の宿った眼差しでトーレを睨む。
「驚いたな。まだやる気か?」
「当たり……前でしょ…私は
そう言って精一杯の虚勢を張った笑みを浮かべるティアナ。
「そうか。だが、これで終わりだ。発動…〝ライドインパルス〟」
トーレがそう言うと同時に、彼女の姿が消える。
「っ……!!!」
それを見たティアナは覚悟して目を閉じる。
その時……
ガキィィィィイン!!!
衝撃が来ない代わりに響く金属音。それを聞いたティアナは恐る恐る目を開ける。そしてそこに居たのは……
「大丈夫? ティアナ」
「フェイトさん!!」
トーレのインパルスブレードをバルディッシュで受け止めたフェイトの姿があった。
「っ!?」
それを見たトーレはすぐにフェイトと距離を取る。
「貴様…何者だ?」
「
そう名乗るとフェイトはバルディッシュを構え、トーレを睨む。
「私の仲間を…これ以上傷つけさせはしない!!」
つづく