「フェイトさん……」
トーレのインパルスブレードをバルディッシュで受け止めているフェイトを見て、そう言葉を漏らすティアナ。そんな彼女に、フェイトは優しく微笑みかける。
「大丈夫だよティアナ。こいつの相手は私がする…だからティアナはナツを探して」
「で…でも……」
「いいから……ね?」
「……はい」
真っ直ぐなフェイトの眼差しに、ティアナは戸惑いながらも頷いた。
「フェイトさん…頑張ってください!!」
そう言い残して、ティアナはその場を後にした。それを見送ったフェイトは、バルディッシュを握る手に力を込め……
「ハァァア!!!」
「っ……!!」
トーレを思いっきり押し返す。しかしトーレはすぐさま体勢を立て直し、フェイトを見据える。
「IS発動!!〝ライドインパルス〟!!」
そして再びその姿が消える。だがそれを見たフェイトは特に慌てるようすもなく……
「〝
小さくそう呟き、姿を消した。
そして次の瞬間……
ドガァァァァアアアン!!!!
フェイトとトーレ…二人の武器が轟音と共に激突した。
「あなたの戦い方は高速移動魔法を駆使した戦法……だけど、私には通用しない」
「そうか……お前も…速いのか……」
トーレはそう呟くと、続けて口を開いた。
「さすがは……プレシア嬢の娘だ」
「っ!!!」
プレシアと言う名を聞いた途端、フェイトの顔付きが険しくなり、トーレを弾き返した。
「なぜ…母さんの事を知っている!!?」
そう問い掛けながら大鎌の形状となったバルディッシュを振るうフェイト。トーレはそれをインパルスブレードで受けながら答える。
「では自己紹介をしておこう。私は闇ギルド〝
それを聞いたフェイトは目を見開き、攻撃の手を止めてトーレから距離を取る。
「アンリミデット…デザイア……やっと…やっと見つけた……!!」
そう呟きながらフェイトはバルディッシュをギュッと強く握り締める。
「答えろ!!! 母さんはどこだ!!?」
「それは答えられんな。言えば、我がギルドの所在地を教えるようなものだからな」
「なら…あなたを倒して、聞き出してみせる!!!」
そう叫びながら、フェイトは再びバルディッシュを振るったのであった。
第四十話
『一人じゃない』
ガキィン! ガキィン! ガキィン!!
金色と紫……二つの閃光がぶつかり合うと同時に激しい火花が舞い散る。フェイトとトーレの二人は高速移動をしているため、魔力の色でしか二人の姿を確認できなかった。
そしてしばらくのぶつかり合いのあと、両者は同時に足を止めた。
「ハァ…ハァ…ハァ……」
「フゥ…フゥ…フゥ……」
フェイトとトーレは互いの姿を見据えながら肩で息をする。すると、フェイトが魔法陣を展開して、いくつもの魔力弾を生成する。
「プラズマランサー!! ファイア!!!」
そして、トーレに向かって数十発もの雷の魔力弾を放った。
「ふん……」
それに対しトーレは鼻で笑いながらインパルスブレードを構え、瞬く間に全ての魔力弾を切り裂いた。それを見たフェイトは今度はトーレに左手を向ける。すると、フェイトの左手にリング型の魔法陣が出現する。
「プラズマ……スマッシャァァア!!!」
そして、トーレに向かって強力な電撃を纏った砲撃を放った。
「〝ライドインパルス〟!!!」
砲撃が当たる直前、トーレは再び高速移動を使用してそれをかわす。標的を失った砲撃は壁に衝突し、壁に風穴を開けたあと、そのまま消滅した。
「っ……」
それを確認したフェイトはすぐさま後ろに振り返り、バルディッシュを構える。
ガキィィィィイン!!!
その瞬間、フェイトの首を狙ったインパルスブレードがバルディッシュによって防がれる。
「(射撃系は防がれて、砲撃系は高速移動でよけられる……遠距離魔法は効かないか)」
トーレとつばぜり合いをしながら冷静に相手を分析するフェイト。
「だったら……!!」
そう言うとフェイトはトーレを押し返して距離を稼ぐ。そしてバルディッシュを構えなおすと……
「バルディッシュ……ザンバーフォーム」
フェイトはそう呟くと同時にバルディッシュに魔力を注ぎ込む。そして次の瞬間、バルディッシュは金色の魔力で生成された刃を持つ大剣のような形態……ザンバーフォームへと形を変えた。
「接近戦で、一気に決める!!〝
大剣となったバルディッシュを構え、再び音速の速さで移動するフェイト。
「〝ライドインパルス〟!!!」
それを見たトーレも対抗するように音速で動き始めた。そして再び両者の姿が二色の閃光となり、激しい衝突音が何度も鳴り響く。
ドォォォォォオン!!
そして一際大きい衝突音が鳴り響くと、そこにはつばぜり合いをしているフェイトとトーレの姿があった。
「どうして
トーレを押しながらそう問い掛けるフェイト。対するトーレも負けじと押し返しながら口を開く。
「……ジェラールとはただの協力関係だ。我等のギルドとの直接的な繋がりはない」
「ジェラールに協力して、この塔を完成させて、お前たちに何の得が!!?」
フェイトのそんな問い掛けを聞いた瞬間、トーレは口元に笑みを浮かべた。
「Rシステム……死者を蘇らせる魔法……これを聞いて、何か思い当たることはないか? フェイトお嬢様」
「…………?」
逆にトーレにそう問われ、眉をひそめて思案顔になるフェイト。すると、何か思い当たることがあったのか、突然大きく目を見開いた。
「まさか……貴女たちの目的は……!!!」
「我等…と言うよりは、プレシア嬢の目的だが……察しの通りだ」
そう言ってトーレは笑みを浮かべると、さらに言葉を続ける。
「このRシステムを奪い取り、プレシア嬢のもう一人の娘……アリシア・テスタロッサを蘇らせることだ」
「っ……そんな…母さんは……まだ諦めて……!!」
それを聞いたフェイトは大きく目を見開き、激しく動揺した。
「……力が緩んでいるぞ?」
「っ!? しまっ──あぐっ!!!」
その隙を突かれたフェイトはトーレに押し負け、体勢を崩したところで肩辺りを切られた。幸いギリギリで身体をそらした為、傷は深くなかったが、切られた箇所からは赤い血が滲んでいた。
「つっ……!!」
顔を歪めながら切られた箇所を押さえるフェイト。
「〝ライドインパルス〟!!!」
トーレはそれを見逃さず、さらに畳み掛けようとライドインパルスを発動する。
「くっ…ソニック──うあぁっ!!!」
フェイトも
しかもトーレの攻撃はそれだけでは終わらず、フェイトの腕・太股・頬など…一瞬で体中を傷だらけにした。
「う……うぅ……」
体中を傷だらけにされ、ついに床に膝をつくフェイト。そんなフェイトの首筋に、トーレはインパルスブレードを突きつける。
「終わりだな」
「くっ……」
突きつけられたインパルスブレードを見て、悔しそうに顔を歪めるフェイト。
「安心しろ、殺しはしない。お前の身柄はRシステムでアリシア・テスタロッサを蘇らせる生け贄として使わせてもらう」
「っ!!?」
それを聞いて、フェイトは目を見開く。
「元々そう言う計画なのだ。Rシステムが完成したあと、その生け贄としてフェイト・テスタロッサを捕らえろ……とな」
「そ…その計画は……」
「そうだ、プレシア嬢考案の計画だ」
その言葉に、フェイトの表情が歪む。
「だがお前にとってはそれで幸せなのかもしれんな……そうだろう? プレシア嬢によって作られたアリシア・テスタロッサのクローン……フェイト・テスタロッサ」
「っ……!!!」
「〝プロジェクトF〟……Rシステムと同じく、黒魔術を信仰する魔法教団によって生み出された〝人間を造る魔法〟……その魔法自体は評議院により抹消されたが、プレシア嬢は僅かな情報を頼りにプロジェクトFを再現させ、アリシア・テスタロッサを造ろうとした。しかし、出来上がったのは姿形が似ているだけの失敗作……それがお前だな」
「…………!!」
失敗作という言葉が突き刺さり、顔を歪めて悔しそうにするフェイト。
「そんなお前がRシステムによりアリシア・テスタロッサへと生まれ変われるのだ。出来損ないのお前にはありがたい話だろう?」
「そんな……こと……!!」
「ない…とでも言う気か? だがよく考えてみろ、失敗作で出来損ないのお前を誰が必要とする?」
「っ!!」
「人間は普通とは違うものを忌み嫌う……それはお前も例外ではない」
「………!!」
「先ほどのティアナと言う女も、エルザと言う女も、お前が所属するギルドの連中も、いずれお前から離れていく」
「あ…あぁぁ……!!」
「お前はずっと一人ぼっちだ」
「いやぁぁぁああああ!!!!」
トーレの言葉がまるで呪いのように耳に入っていき、それを聞いたフェイトは絶叫を上げ、ついにガクッと、力なく項垂れた。
「ふっ……プレシア嬢が言っていたとおり、脆いものだな」
それを見たトーレは微笑を浮かべながらそう呟く。
「………………」
そしてフェイトの目からはハイライトが消え、ただただ呆然としていた。するとそんな彼女の目に、腕に刻まれた
「あっ……」
それを見た瞬間、フェイトの目に光が戻る。そして、彼女の幼き日の思い出が脳裏に蘇った。
◆◇◆◇◆◇◆◇
時は8年前に遡る。
『フェイト……貴女はもう用済みよ』
プレシア・テスタロッサの〝プロジェクトF〟によって生み出されたフェイトは、10歳の頃に捨てられた。彼女の手元に唯一残ったのは
行くアテもなく、フラフラと彷徨っていたフェイトは……とある人物に拾われた。
それが、
マカロフに拾われたフェイトは、彼に案内されるがままに
『ここが魔導士ギルド…
『フェアリー……テイル…?』
『妖精には尻尾があるのかないのか……もっとも本当にいるのかどうかさえ誰にもわからない。だからこそ永遠の謎…永遠の冒険……そんな意味が込められておるのじゃ』
マカロフにそう説明されたフェイトは
『どうじゃ? 行くアテがないならギルドに入らんか? 見たところ、魔法も使えるようじゃしのう』
確かにフェイトは生まれた頃から母親に魔法を仕込まれた為、魔法を使うことが出来る。しかし……
『ダメだよ……造られた人間である私なんかが入っても、みんな気味悪がって近づいてこないよ。誘ってくれてありがとう。でも大丈夫…私は……一人で生きられるから』
そう言ってフェイトは無理矢理な笑顔を浮かべてマカロフの申し出を断ろうとする。
『バカモンが』
すると、マカロフがフェイトにぴしゃりと言う。
『人と生まれ方が違うくらいでなんじゃ。どんな生まれ方をしたにせよ、お主が持っとるソレは…まぎれもない〝命〟じゃ』
『命……』
『そうじゃ……よいかフェイト。人間は一人では生きていけん……だからこそ〝仲間〟を作るのじゃ』
『なか……ま……?』
マカロフは優しい笑顔をフェイトに向けて言葉を続けた。
『共に笑いあい…共に慰めあい…共に競い合う……時には反発し、互いを傷つけあうこともあるじゃろう。しかしそれでもお互いを支え合って生きていく……それが仲間じゃ』
『でも……こんな私じゃ……いつかみんな…私を……』
なおも不安そうな顔をするフェイト。
『だったらそんな日が来ないように、一生懸命生きればいいんじゃ』
『っ!!?』
マカロフのそんな言葉に、フェイトは目を見開いた。
『一生懸命生きようとしとる者を見捨てるモンなんぞ、少なくともウチのギルドには一人もおりゃせんわい』
マカロフはそう言ってニンっと笑うと、ギルドの門を指差す。
『さあ、入りなさい……仲間がお主を待っておるぞ』
◆◇◆◇◆◇◆◇
「そうだ……そうだよね…マスター……」
「? なんだ……?」
フェイトがポツリと呟いた言葉に、トーレが疑問を感じていると……
バチィィィイ!!!
「っ!!?」
突然フェイトの身体から電撃のような魔力が噴出し、トーレは反射的に後ろへ飛ぶ。そしてフェイトは魔力を纏いながらゆっくりと立ち上がる。
「このギルドの紋章を刻んだあの日から……私はもう……一人じゃないっ!!!」
フェイトがそう叫んだ瞬間、激しい閃光が彼女を包み込む。
「っ……!!」
あまりにも眩しい閃光に、トーレは片手で目を覆う。
そして閃光が消えると……そこには軍服調の服の上に白いコートを羽織った服装から、黒いレオタードとスパッツのような服装へと変わり、更には両手両足に小さな金色の翼を生やしたフェイトの姿があった。
「何だ……その姿は……?」
突然変わったフェイトの姿に戸惑うトーレ。そんなトーレの問いに答えず、フェイトはザンバーフォームのバルディッシュを構えると、その姿を金色の閃光へと変えて動き出した。
「っ!!〝ライドインパルス〟!!!」
フェイトが高速移動を開始したのだと確認したトーレは自分も対抗すべく、ライドインパルスを発動させた。
ガキィィィィイン!!
そして二つの閃光が交差し、フェイトとトーレはお互いに背を向けた状態で足を止めた。すると……
「ぐあっ!!」
トーレの腕に切り傷が入った。
「バ…バカな!! 奴のスピードが……上がった!!?」
信じられないと言う表情をするトーレ。そんなトーレにフェイトは顔を向けると同時に、口を開く。
「この姿はバルディッシュを介することで、私自身の形態を変化させる魔法……〝ソニックフォーム〟。衣服の装甲を極限まで薄くし、電撃魔法で身体のツボを刺激して肉体を活性化させる事で、更なる高速移動を可能とした姿……」
フェイトの説明に、トーレは驚愕する。
「肉体を活性化だと!? そんなことをすれば……!!」
「うん……私もあとでタダじゃ済まない……だから、一瞬で決めるっ!!!」
「くっ……!!」
力強くそう言ってバルディッシュを構えるフェイトに対し、顔を歪めながらインパルスブレードを構えるトーレ。そして……
「〝
「〝ライドインパルス〟!!!」
お互いの魔法を発動させ、またもや二色の閃光となって衝突した。
「(くっ……やはり向こうの方が速い……!!)」
フェイトと激突しながらそう感じたトーレ。その時……
「今だ!! ライトニングバインド!!!」
「っ、なにっ!!?」
トーレに出来た僅かな隙を見逃さず、フェイトは金色の魔法陣でトーレを拘束した。
「ユーノから教わった拘束魔法……上手くいった」
「くっ……くそっ……!!!」
バインドを何とか解こうとするトーレだが、そのバインドは頑丈で中々外れない。
「これで……終わりっ!!!」
そう言うと、フェイトはバルディッシュを高々と掲げる。その瞬間、バルディッシュの刃に強力な電撃が纏う。
「撃ち抜け!! 雷刃!!!」
そしてフェイトはバルディッシュを大きく振りかぶり……
「ジェット……!!!」
「くそっ……くそぉお!!」
未だにバインドを解こうと足掻いているトーレに向かって……
「ザンバァァァアアア!!!!」
振り下ろしたのだった。
つづく