「ぐあぁぁぁぁああああああああ!!!!」
フェイトのバルディッシュによる一撃…ジェットザンバーを喰らったトーレは大きな断末魔を上げながら倒れ、気絶した。
「ハァ…ハァ…ハァ……やった……!」
それを見たフェイトは息が絶え絶えになりながらも小さく笑みを浮かべる。それと同時に、ソニックフォームからいつもの服装へと戻る。
「早く……こいつから…母さんの居場所を……」
そう言うと、フェイトは気絶しているトーレに近づくべく、一歩を踏み出した。その瞬間……
ビキィ!!
「っ、あぁぁあ!!!」
フェイトの身体中に激痛が走り、フェイトはその場に力なく倒れた。
「くっ…後遺症が…思ったよりキツイ……!!」
そう…現在フェイトを襲う激痛の原因は先ほどのソニックフォームである。ソニックフォームは電撃魔法で肉体を無理矢理活性化させるモノなので、使用後の反動が凄まじいのである。
「でも……!! 聞かなきゃ……!!」
激痛が走る身体に鞭打ち、身体を引きずりながらトーレに手を伸ばすフェイト。
「やっと見つけた……母さんへの…手掛か……り……」
しかし、必死に伸ばした手は虚しく床へと落ち、フェイトはそのまま気を失ってしまった。
第四十一話
『聖なる光』
「あのバカナツ……どこ行ったのよ?」
フェイトと分かれたティアナは現在、ナツを探して塔の中を走り回っていた。すると……
「ティアナ!!」
「っ!!?」
突然名を呼ばれ、驚きながら声がした方へ視線を向けると、そこには気絶したナツを背負っているシモンの姿があった。
「アンタは……!! ナツを放しなさいっ!!!」
「ま、待て!! オレは敵じゃねえ!!!」
彼が味方だと知らないティアナはクロスミラージュを向け、対するシモンは慌てながら自分は味方だとティアナに告げた。
それからシモンはティアナに現在の状況を話した。
ショウがエルザをカードに閉じ込めて単体でジェラールを倒しに行ったこと。
ナツが暗殺ギルド、髑髏会の
「……なるほど。悪かったわね、疑って」
「いや、気にしてない」
シモンの事情を聞いてクロスミラージュを仕舞うティアナ。すると……
「うお!!?」
「目が覚めたか、ナツ」
シモンの背中で気を失っていたナツが目を覚ました。
「あれ? 確かオレ、変な乗り物に乗せられて……おおお…おぷぅ」
「よせ!!! 思い出して酔うんじゃねえ!!!」
「ハァ……このバカナツ……」
閑話休題
「その後、お前は梟に食われて、グレイに助けられたんだ」
「グレイに!!?」
「しかしグレイも相当のダメージを負っちまってな。あの猫に塔から連れ出してもらっている」
「だーーーっ!!! ありえねえ!!! オレが負けて、グレイが勝っただとーーー!!?」
「別に負けたわけじゃないでしょ? 話を聞く限りじゃ、アンタは食われただけなんだし」
「このネタで一ヶ月はいじられんぞ!!! あいつネチっこいからな~くそ~」
「あんたも大概ネチっこいけどね」
「こうしちゃいられねえ!!! リベンジだ!!! あの梟ともう一回戦ってくる!!! 今度は片手だな!!! それくらいのハンデがなきゃ……」
「やめなさいこのバカナツ!!!」
「そんな事してる場合じゃねーんだよ!!!」
再び梟と戦おうとするナツをティアナとシモンが引き止める。
「……つーか、アンタ誰だっけ?」
と、今さらシモンにそう尋ねるナツ。
「シモンだ。エルザの昔の仲間だよ。ぐっ…!!」
そう自己紹介すると、突然シモンは腹を抑えて膝をついた。
「アンタ…ケガを!!?」
「オ…オレの事はいい。よく聞け……ナツ、ティアナ。さっきウォーリーとミリアから〝通信〟があった。倒れているルーシィとジュビア、そして
「オレ何もしてねえ!!!」
「それからついさっきショウからまた通信が入ってな。塔を出る際に、敵と思われる女とフェイトが倒れているところを見つけたそうだ」
「っ、フェイトさんが!!?」
「あぁ、ルーシィたちと同じく塔の外へ連れ出してもらった」
「そう……」
それを聞いたティアナは安心したように息を吐いた。
「残る敵はジェラール一人。そこはエルザが向かっている。あいつは全ての決着を一人でつけようとしてるんだ。あの二人には8年にわたる因縁がある。戦わなければならない運命なのかもしれない。だが…ジェラールは強大過ぎる……頼む、エルザを助けてくれ」
ナツとティアナの二人にそう頼み込むシモン。しかし……
「無理よ」
「やなこった」
「!!?」
二人から返って来たのは、まさかの断りだった。
「貴様等……仲間を…エルザを助けないというのか…」
「助ける助けない以前の問題よ。これはエルザさん個人の事…エルザさん自身が決着をつけないと意味がないのよ」
「オレたちが口をはさむ問題じゃねえな」
そう言ってエルザを助けることを拒否する二人。しかしそれでもシモンは引き下がらない。
「エルザではジェラールに勝てない!!!」
「アイツをバカにすんなよコノヤロウ!!!」
「エルザさんは絶対に負けないわっ!!!」
「違う!!! 力や魔力の話じゃねえんだよ!!!」
そう怒鳴りながらシモンはナツの胸倉を掴む。
「エルザは…あいつは未だにジェラールを救おうとしているんだ!!! オレにはわかる!!! あいつにジェラールを憎む事などできないから!!!!」
「「…………」」
必死の表情でそう語るシモンに、ナツとティアナは言葉を失う。
「ジェラールは狡猾な男だ。エルザのそういう感情も利用してくる。状況はさらに悪い。評議院がここにエーテリオンを落とそうとしているのは知っているな。もちろん、そんなものを落とされたら塔の中の人間は全滅だ。ショウの話ではあと15分…いや…もう10分か」
「何!!?」
「そんな!!?」
「エルザは全員を逃がせと言って一人で向かった。エルザの事はよく知っているだろ? まさかとは思うが……エーテリオンを利用して、ジェラールを道連れに死ぬ気かもしれん」
シモンのその言葉に、ナツとティアナはギリッと強く歯軋りをする。
「何で…それを早く言わないのよっ!!!!」
「エルザはどこにいるんだァ!!!!!」
◆◇◆◇◆◇◆◇
一方その頃…魔法評議会本部〝
「ヤジマさん!!」
「ゲン坊」
あと数分で投下されようとしているエーテリオンを眺めていたヤジマの下にゲンヤが駆けつけた。
「お前、今日は娘たちと一緒に過ごすんじゃなかったか?」
「エーテリオンなんてとんでもねえモンが発射されるって聞いて、家でのんびりなんざしてられるかよ。つーか、マジで使うのか…エーテリオン」
「ワスは最後まで反対スたんじゃがのう。
そう言って、ヤジマは近くに居るエーテリオン投下の発案者…ジークレインを睨みつける。
そしていよいよ……その時がやって来た。
「エーテリオン射出最終フェイズ完了。
「祈りを」
「祈りを」
「祈りを」
「祈りを…」
これから失われるであろう命を弔うように黙祷する評議院たち。
「聖なる光に祈りを!!! エーテリオン解放!!!!」
ついに……聖なる裁きの光が落とされた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
時は少々遡り…楽園の塔の頂上の部屋。
そこでは、エルザがジェラールを取り押さえ、首下に刀を突きつけていた。
「くっ」
「お前の本当の目的は何だ? 本当はRシステムなど完成してはいないのだろ?」
「!!!」
「私とて8年間、何もしていなかった訳ではない。Rシステムついて調べていた。確かに構造や原理は当時の設計図通りで間違っていない。しかし、Rシステムの完成には肝心なものが足りていない」
「言ったハズだ……生け贄はお前だと…」
「それ以前の問題さ。足りてないものとは、魔力。この大掛かりな魔法を発動させるには27億イデアもの魔力が必要になる。これは大陸中の魔導士を集めてもやっと足りるかどうかと言う魔力。人間個人ではもちろん、この塔にもそれほどの魔力を蓄積できるハズなどないのだ」
「……………」
エルザの言葉に、ジェラールは何も答えず無言を貫く。
「そのうえ、お前は評議院の攻撃を知っていながら逃げようともしない。お前は何を考えているんだ?」
「……エーテリオンまで、あと3分だ…」
「ジェラール!!! お前の
「うっ…く……」
エルザに強く腕を握られ、ジェラールは顔をしかめる。
「ならま共にいくのみだ!!! 私はこの手を最後の瞬間まで放さんぞ!!!」
「あ…ああ…それも悪くない……オレの体はゼレフの亡霊にとり憑かれた。何も言う事をきかない……ゼレフの肉体を蘇らす為の人形なんだ」
「とり憑かれた?」
「オレはオレを救えなかった……仲間も誰も、オレを救える者はいなかった。楽園など…自由などどこにもなかったんだよ。全ては始まる前に終わっていたんだ」
ゴゴゴゴゴ……
すると、突然地鳴りが起こり、塔全体が揺れ始める。
「Rシステムなど完成するハズがないとわかっていた。しかし…ゼレフの亡霊はオレをやめさせなかった。もう……止まれないんだよ。オレは壊れた機関車なんだ。エルザ…お前の勝ちだ…オレを殺してくれ。その為に来たんだろ」
エルザにそう言うジェラール。しかし……
「私が手を下すまでもない…この地鳴り、すでに
そう言ってエルザはジェラールの手を放し、刀を捨てた。
「不器用な奴だな…」
「お前も、ゼレフの被害者だったのだな」
「これは自分の弱さに負けたオレの罪さ。
「自分の中の弱さや足りないものを埋めてくれるのが、仲間という存在ではないのか?」
「エルザ…」
「私もお前を救えなかった罪を償おう」
「オレは…救われたよ……」
そう言って、エルザとジェラールはお互いを抱き締めあった。
しかし、この時エルザは気付かなかった。
抱き締めているジェラールが…邪悪な笑みを浮かべていることに……
そしてついに、聖なる裁きの光…エーテリオンが塔へと落とされた。
つづく