ついに全ての元凶であるジェラールを倒したナツとティアナ。
「「…………」」
すると、二人は無言のままお互いの顔を見据え、小さく笑みを浮かべると……
パンッ
お互いを称えるように、小さなハイタッチを交わした。
「(あのジェラールを倒した……私の……8年に渡る戦いは終わったんだ)」
エルザが安堵の笑みを浮かべると、ナツとティアナの二人は気を失い、ガクッと倒れそうになる。
「ナツ!! ティアナ!!」
エルザは急いで二人に駆け寄り、倒れそうになる二人を抱き締める形で受け止める。
「お前たちはすごい奴だ。本当に」
そう言って、エルザは二人の頭を撫で、賞賛の言葉を送った。すると……
ゴゴゴゴゴ…
「!」
突然、塔全体が激しく揺れ始めた。
第四十三話
『明日へ』
パウッ! ボッ! バォォ!!
楽園の塔からはじけるように魔力が流れ始める。それを外から見ていたグレイたちは驚愕する。
「塔が…!!!」
「何アレ!!?」
「ま…まさか、エーテリオンが暴走してるのか!!?」
「暴走!!?」
「考えられないことじゃない……元々、あんなに膨大な魔力を一ヶ所に留めておくこと事態が無謀だったんだ……」
「行き場をなくした魔力の渦が、大爆発を起こす」
フェイトとジュビアがそう言うと、他の面々が慌て始める。
「ちょ……wこんな所にいたら、オレたちまで」
「中にいる姉さんたちは!!?」
「誰が助かるとか助からねえとか以前の問題だ。オレたちを含めて……」
「全滅する……」
グレイとフェイトの言葉が、虚しく響いた。
◆◇◆◇◆◇◆◇
ナツとティアナを背負って塔から脱出しようとするエルザ。そんなエルザの目に、シモンの遺体が映る。
「シモン…」
そしてそのまま、シモンの遺体は塔の瓦礫の中へと消えていった。
「………!」
エルザはそれから目を逸らし、脱出する為に二人を抱えて走り出す。しかし……
「くっ」
段々と崩れ落ちる塔に、逃げ場をなくなり始める。それだけではなく、塔全体の
「(器…
半ば諦めそうになったエルザは地面を叩き、そう叫ぶ。しかし、気絶しているナツとティアナの姿を見て、考えを改める。
「(いや…諦めるものか……今度は私がお前たちを救う番だ、ナツ…ティアナ……)」
そう決心して再び立ち上がるエルザ。
「(しかし、防ぐことも脱出も不可能……どうする……!)」
ここで、エルザは先ほどのジェラールの言葉を思い出した。
―この27億イデアの魔力を蓄積した
「(融合!!? 私とエーテリオンを融合できれば、この魔力を私が操り、暴発を止められるか!!? これにかけるしかない!!!)」
そう決めたエルザはそっと近くの魔水晶(ラクリマ)に手を添える。
「あぐっ…うぅ…」
すると、
「(よし!!!
そして段々と魔水晶(ラクリマ)の中に入っていくエルザ。すると……
「エルザ…」
「エルザさん……」
「ナツ!!? ティアナ!!?」
先ほどの小さな悲鳴で、ナツとティアナが目を覚ました。
「な…何…してんだ…」
「エルザさん…体が水晶に……」
エルザの状況を見て、絶句するナツとティアナ。
「エーテリオンを止めるには、これしかない」
「エーテリオンを止める?」
「じきにこの塔は、エーテリオンの暴走により大爆発を起こす。しかし、私がエーテリオンと融合して抑える事ができれば」
「そんな!!? そんな事したらエルザさんが!!!」
「うあっ!」
「エルザ!!!」
そんな話をしている間に、エルザの体の半分が水晶に取り込まれる。
「何も心配しなくていい。必ず止めてみせる……」
「よせーーー!!!」
「やめてください!!! エルザさん!!!」
ナツとティアナはエルザを引っ張り出そうとして彼女に駆け寄るが、先ほどの戦いの反動で体が上手く動かなかった。
「ナツ…ティアナ。私は
「エルザ」
「エルザさん」
「私が皆を救えるのなら、何も迷う事はない。この体など……くれてやる!!!」
そしてついに、エルザの体が完全に水晶の中に入った。
「エルザ!!!! 出てこい、エルザ!!!!」
「エルザさん!!! 今なら間に合います!!! だから出てきてください!!!」
「二人とも……皆の事は頼んだぞ。私はいつも、お前たちのそばにいるから」
「エルザーーーー!!!!」
「エルザさーーーん!!!!!」
ナツとティアナの叫びが響き渡ったその直後、大きな大爆発が起こった。
そして、それを外で見ていたメンバーは……
「暴発したーーーー!!!」
「きゃああああ!!!」
爆発が起きたことにより驚愕する。すると、フェイトとグレイが異変に気がついた。
「っ、待って!!! これは……!!」
「エーテリオンが空へ…空中に流れてる!!!」
そう…爆発は爆散せずに、まるで竜巻のようになり、空へと流れていった。
「消えた…」
「エーテリオンが空中に…」
「た…助かったのか…!?」
何も知らないグレイたちは、跡形もなく消滅した塔を見て、そう呟いたのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
その後…エルザは気がつくと、真っ白い空間に…真っ白なドレスを着た状態で佇んでいた。
―ここは…!!? エーテリオンの中!? いや…違う…もっとあたたかくて…!―
自分の置かれている状況に戸惑うエルザ。すると彼女は、ふと足元を見る。
―そうか―
ソレを見た瞬間…エルザは全てを悟った。
そこには……雨空の下で…エルザの葬式をしているギルドメンバーの姿があった。
―私は…死んだのか……―
エルザが自分の状況を確認すると、喪服姿で自分の墓の前に立つメンバーたちを見つめる。すると、マカロフが一歩前に出て、口を開いた。
「彼女……エルザ・スカーレットは……神に愛され、神を愛し…そして我々友人を愛しておった。その心は悠久なる空より広く、その剣は愛する者の為に気高く煌めき、妖精のごとく舞うその姿は山紫水明にも勝る美しさだった。愛は人を強くする…そしてまた人を弱くするのも愛である。ワシは……ズ…ズズ……」
―マスター…―
「彼女を本当の家族のように……ズズズ……彼女が…安らかなる事を祈る……」
マカロフは涙声でそう締めくくると、そこへオーグを筆頭にした評議院の面々がやってくる。
「魔法評議会は満場一致で、空位二席の一つを、永久的にこの者に授与する事を決定した。エルザ・スカーレットに聖十大魔道の称号を与える」
エルザの墓前でそう宣言するオーグ。すると……
「ふざけんなぁっ!!!!」
遅れてやって来たナツの怒号が響く。
「なんなんだよ、みんなしてよぉ!!!!」
―ナツ…―
「こんなもの!!!!」
「ナツ!!! やめなさい!!!」
墓前に供えられた花束を蹴飛ばすナツ。それを止める喪服姿のティアナ。
「ナツ君…やめてよ……」
「テメェ!」
ナツの行動を見て、悲しそうな表情をするなのはと憤慨するグレイ。
「エルザは死んでねえ!!!」
「やめて…やめなさいよバカナツ!!!」
「死ぬ訳ねえだろぉぉぉお!!!」
「現実を見なさい!!!」
暴走するナツを、必死に止めるティアナ。
「みんな!! ナツ君を抑えるんや!!!」
『はい!!』
はやての号令で、ヴォルケンリッターの面々がナツを抑えに掛かる。
「やめろ!! ドラグニル!!」
「ナツ!! それ以上やったら許さねえぞ!!!」
「信じたくないナツ君の気持ちもわかるわ!!!」
「だが…これが現実なのだ!!!」
「放せぇえっ!!! エルザは生きてんだぁ!!!!」
ヴォルケンリッターの面々に取り押さえられながらも、必死にエルザの死を否定するナツ。
それを見ていたエルザは…静かに涙を流す。
―私は…ナツの…みんなの未来の為に……なのに……これが、みんなの未来……残された者たちの未来……―
自分は、ギルドのみんなの為に命を投げ出した。そのはずなのに……今、彼女の目に映っているのは、思っていた未来と…まったく違う未来……
空を見上げて号泣するハッピーとスバル。
グレイの抱き締められながら、大粒の涙を流すなのは。
ユーノに胸を借りて、泣き声を上げるルーシィ。
空を仰いで涙を堪えようとするが、とめどなく涙を流すフェイト。
地面に膝をつき、両手で顔を覆って泣き叫ぶはやて。
そんなはやてに寄り添いながら、自身も静かに涙を流すリィンフォース。
そしてナツを取り押さえながらも、その頬には大粒の涙を伝わらせているシグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ。
拳を強く握り締め、俯きながら涙を流すティアナ。
エルザの死を認めず、必死に否定しながら泣いているナツ。
―頼む…もう泣かないでくれ……私はこんな未来が見たかったのではない……私はただ…みんなの笑顔の為に……やめてくれ……私は……こんなの……―
◆◇◆◇◆◇◆◇
「!!」
気がつくと、エルザの目の前には綺麗な星空が広がっていた。
「ここは……!!?」
あまりの出来事に呆然としていると、彼女の耳に、バシャバシャと水の音が聞こえた。そしてそちらに視線を向けてみると……
「エルザーーー!!! よかったぁ!! 無事だった!!!」
「どんだけ心配したと思ってんだよ!」
「でも…無事でよかったぁ……」
「姉さーーーん!!!!」
そこには、自分に駆け寄ってくる仲間たちの姿があった。
「ど…どう、なっているんだ? 生きているのか?私は…」
自分が生きていると言う状況に、信じられないといった表情をするエルザ。すると、そんな彼女の目に映ったのは……
自分を抱きかかえるナツと、そんなナツを支えるように立っているティアナの姿であった。
「ナツ…ティアナ……お前たちが私を…? でも…どうやっ……」
エルザの問い掛けに、二人は口を開かない。
「(あの魔力の渦の中から私を見つけたと……な…なんという二人だ……)」
エルザが二人の荒業に驚愕していると、二人は突然ガクンッと膝をつく。
「同じだ…」
「え?」
「オレたちだって、同じなんだ……」
ナツの言葉に首を傾げるエルザ。
「何が…
「二度とこんな事するな…グス…ズズ…」
涙を流しながら、そう訴えかけるティアナ。それに続くように、ナツも涙声でそう言う。
「ナツ…ティアナ……」
「するなっ!!!!」
ナツの必死の言葉に、エルザは「うん」と、小さく頷いた。
「ナツ…ティアナ…ありがとう」
ナツとティアナにそう言うと、エルザは両目から大粒の涙を流す。
―そうだ……仲間の為に死ぬのではない。仲間の為に生きるのだ。それが幸せな未来に繋がる事だから……―
つづく