ルーシィとロキ、そしてユーノの三人が雷神衆の一人であるビックスローを撃破し、その情報はギルドにも送られていた。
「マジか!!? あのバニーガール戦えたのかよ!!?」
ルーシィが雷神衆の一人を破った事に驚愕するガジル。
「ルーシィは強えぞ。あとユーノも強え」
「ウソだろ!? だってバニーだぞ!!!」
「……バニーは可愛い」
「いやルールー、そう言う話じゃねえから」
「さすがルーちゃん!! 私も負けてられない!!!」
そう言ってレビィはさらにやる気を出し、術式の解読を急ぐ。
「あとはここさえ解ければ…」
『バニーは強えんだよ!』
『そんな話聞いたことねえヨ!』
「術式を書き換えて…」
『お前ウサギと亀の競争の話知らねーのか?』
『ウサギ負けてんだろそれっ!!』
「だけどここが最難関……」
『最初の一回はな。この後何百回競争してもウサギの連勝だ』
『な…なるほど、教訓を活かして……』
『お前らは何の話をしてんだ!!!?』
「それだっ!!!」
「「「!!!」」」
ナツとガジルの会話を聞いてヒントを得たレビィは思わず叫ぶ。
「そうだよ!! 二つの文法を違う速度で解読していくんだ。一周して同期した文字の整数をギール文法に変換して、さらにローグ文字で言語化」
すると、何かに火が着いたようにカリカリと紙に文字を書き記していくレビィ。そして……
「解けたっ!!!」
「「おおっ」」
とうとう術式の解読に成功した。
「待ってて、術式を書き換えてくる。準備はいい? バトル・オブ・フェアリーテイル参戦だよ」
「おう!!!」
「ひと暴れしてやんよ」
ついに……二頭の竜が解き放たれる。
第五十三話
『手を伸ばせば…』
その頃…マグノリアのとある場所では……
「ヴィータ……しっかりしろ!! ヴィータ!!!」
「う…ううん……リィンフォース……ザフィーラ……?」
シグナムに破れ、気を失っていたヴィータは、誰かの呼び掛けによって目を覚ますと、そこにはリィンフォースと、キズだらけのザフィーラが立っていた。
「よかった……目が覚めたか?」
「あぁ……」
目覚めたばかりで、しばらくボーっとしていたヴィータだが、すぐさま当初の目的を思い出す。
「っ…はやては!!? はやてとシャマルはどうなった!!!?」
「落ち着け、ヴィータ」
「エバーグリーンは私が倒した。主とシャマル…他のみんなも無事だ」
興奮するヴィータをザフィーラが宥め、リィンフォースがそう告げると、ヴィータは安心したように息を吐いた。
「そうか……よかった……」
「では…一度ギルドに戻ろう」
「立てるか?」
「ったりめーだ」
ザフィーラがヴィータに手を伸ばすが、ヴィータはそれを無視してヨロヨロと立ち上がる。
「ってて……くっそぉシグナムのヤロー……思いっきりやりやがって……」
「そう言うな。シグナムも我らと同じく、主を救う為に必死だったのだ。許してやれ」
「それはわかってっけどよぉ……ってか、そのシグナムはどうしたんだ?」
「やられはしていないが、相次ぐ連戦の疲労と魔力の使いすぎで、今はギルドで療養中だ」
「そっか。リベンジはもうちょい先になりそうだな」
「……まだ戦う気か?」
「とーぜんだ!!! 今度はぜってぇシグナムに勝ってやる!!!」
「「………ハァ」」
敗れてもなお好戦的なヴィータに、リィンフォースとザフィーラは呆れたように同時にため息をついたのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
一方…ようやくギルドから出ることが出来たナツとガジルは、別々に分かれてラクサスを探していた。
「くそ!! 人が多すぎる。ラクサスの臭いが見つからねえ」
ナツは民家の屋根の上に上り、マグノリア全体を見渡しながらラクサスを探す。すると……
「ナツー!!」
「ティア!!」
ナツより先にラクサスを探して街を歩き回っていたティアナと合流した。
「よかった、出られたのね」
「あぁ、レビィのおかげでな。それよりラクサスは?」
「ダメ……全然見つからない。マグノリアは広いし…どこを探したらいいか……」
「ああーもうメンドクセェ!!! とにかくラクサスが居そうな所を片っ端から探すぞ!!!」
「それしかないわね!!!」
そう言って、ティアナと共に再びラクサス探しを開始するナツ。
そして、ガジルはと言うと……
「へ、
ガジルがそう言うと、彼の隣に紙のような人形がヒラヒラとやってくる。
〈今は仲間だと信頼を得る事が重要だ。気づかれるな、
「了解。ギヒッ」
そう言ってガジルは邪悪な笑みを浮かべたのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
同時刻……マグノリアの別の場所では、ミラジェーンとエルフマン、そしてスバルが歩いていた。
「姉ちゃん…スバル……もういいよ…一人で歩けるって…」
ミラとスバルに支えられた状態で歩くエルフマンは、二人にそう言う。
「だいじょーぶ!! 私はまだまだ元気だから!!!」
「私…何も出来ないから……せめてこれくらいは……」
三人がそんな会話をしながら歩いていると……
ゴッ! ガラガラガラ!!!
「「「!!!」」」
「あぁぁあああああ!!!!」
「カナ!!!」
「カナさん!!?」
「え?」
突然目の前にあった石橋が音を立てて崩れ落ち、そこからキズだからけのカナが悲鳴と共に落ちてきた。
「しぶとい。さすがギルドの古株と言ったところか」
「フリードさん!!!」
「くそ!!! こんな時に」
崩れた石橋の上には、フリードが立っていた。
「取り消しなさい……ジュビアを〝ファントムの女〟と言った事を取り消しなさい!!!!」
ヨロヨロと起き上がりながらそう叫ぶカナ。しかし、突然彼女の体を激痛が襲う。
「う…あぎっ……ばはっ!!!」
カナの体からバキバキという耳障りな音が響き、それに苦しんでいたカナは血反吐を吐き、白目を剥いて気絶した。
「カナ!!!」
「何が起きたんだ!!?」
「カナさん!!!」
三人の言葉にカナは答えることが出来ず、そのままゆっくりと倒れた。
「ちくしょオ!!!」
「フリードォォォオオ!!!!」
それを見たエルフマンとスバルはフリードに向かって駆け出していく。
「次の相手はお前たちか、エルフマンにスバル……と言っても、お前たちはエバに負けている。ゲームへの復帰権はない」
「うるせえ!!!」
「そんなの関係ないっ!!!」
フリードの言葉を無視して彼に向かっていくエルフマンとスバル。
「いい加減にしなさいフリード!!! 私たち仲間じゃない!!!」
「かつては。しかしその構造を入れ替えようとしてるこのゲーム内では、その概念は砕け散る。ラクサスの敵はオレの敵だ」
そう言うと、フリードはレイピアを振るい、突撃してきたエルフマンとスバルの体に黒い文字を描いた。
「これは!!?」
「文字……術式!!?」
「一度敗れた駒がゲームへ復帰する事は禁ずる。その掟を破りし者は死よりつらい拷問を受けよ。闇の
フリードが冷たい眼差しでそう言い放つと、二人の体に異変が起きる。
「ぐぅ…な…何だ…!? 体中がギシギシと……」
「うっ…あぁ……い…痛い……!!」
「その文字は現実となり、お前たちの感覚となる」
「ぐ…が…うがあぁぁあああああああ!!!!」
「あぁぁぁぁあああああ!!!!」
「エルフマン!! スバル!!!」
体中を襲う激痛に、大きな悲鳴を上げる二人。しかし、フリードはそんな二人に更なる文字を刻む。
「闇の
「ぐあがぁぁぁあああ!!!!」
「いやぁぁぁああああ!!!!」
「やめてフリード!!!二人はもう戦えないの!!!」
「闇の
「お願いフリード!!!何でもするから助けて!!!」
苦しむ二人の悲鳴を聞きながらフリードにそう懇願するミラだが、フリードは構わず続ける。
「闇の
「がふあがぁあぱぁがぁ!!!!」
「うああがぁぁあああああ!!!!」
フリードが文字を刻む度に、二人の体から先ほどのカナと同じようにゴキゴキと耳障りな音が響く。
「いやぁーーーっ!!!!」
「闇の
「やめてぇーーーーっ!!!!」
「〝死滅〟」
フリードが最後の文字を刻もうとしたその時……
ガキィィィィィイン!!!!
「っ!!!?」
突如…二人とフリードの間に一つの影が割って入り、フリードのレイピアを止めた。
「お前は……!!!」
「……これ以上は…やらせない……!!」
「………フェイトか」
フリードは割って入ってきた人物……フェイトを睨みつける。
「っ……!!」
すると、フェイトはレイピアをバルディッシュで弾き返し、激痛のあまり気を失ったエルフマンとスバルの腕を掴むと、そのままミラの元へと飛んだ。
「エルフマン!! スバル!!」
「大丈夫……気を失ってるだけ。ミラはみんなを連れて下がってて」
「……うん」
二人の安否を心配するミラを安心させるように言うと、フェイトは石橋の上で自分を見下ろすように見ているフリードに視線を移す。
「久しぶりだね……フリード」
「そうだな……フェイト……いや…こう呼んだほうがいいか?」
そう言うと、フリードは一呼吸置いて、再び口を開く。
「〝元〟雷神衆の一人……『金色の閃光』フェイト・テスタロッサ」
「……そう呼ばれるのも、久しぶりだね……」
フリードの言葉に、フェイトは軽い苦笑いを浮かべる。
「お前はオレたちを……ラクサスを裏切った……」
「裏切ったわけじゃない……私はもうラクサスにはついて行けない……そう思ったからこそ、私は雷神衆を抜けたんだ」
フリードの言葉に、フェイトはそう返す。
「フリードは今のラクサスについていけるの? 自分の目的の為に…関係のない街の人たちを巻き込むこのやり方に!!!」
「……黙れ。ラクサスの敵はオレの敵。今のお前は昔のチームメイトではなく……ラクサスの障害だ!!! 今ここで!! 排除する!!!」
「……だったら、私はあなたを止める!!!」
「やれるものなら……やってみろ!!!」
フリードはそう叫ぶと、石橋の上からフェイトに向かって飛び降り、彼女に向かってレイピアを振るう。
「くっ……!!」
ガキィィイン!!!
その攻撃をフェイトは即座にバルディッシュで防ぎ、すぐに大鎌の形状……ハーケンフォームへと変形させる。
「やぁっ!!!」
そしてすぐに切り返す。
「ふん……」
しかしフリードはそれを軽々と後ろに飛んで避ける。
「
「っ!!?」
だがそれを予知していたのか、フェイトは高速移動でフリードの後ろに回りこむ。
「ハァ!!」
「チィッ……!!!」
そしてそのままバルディッシュを振るうが、咄嗟に反応したフリードはレイピアでそれを防ぎ、フェイトから距離を取る。
「プラズマランサー!!!」
フェイトはそれを追うようにフリードに向かって雷の魔力弾を数発放つ。
「この程度で!!!」
フリードは負けじとレイピアで全ての魔力弾を切り裂く。そしてそのまま、フリードは一気にフェイトとの距離を詰め……
「闇の
先ほどのエルフマンたちと同じ文字をフェイトの体に刻む。
「くっ……あぁぁぁあああああああ!!!」
それにより、フェイトの体中に強烈な激痛が走る。
「ぐぅぅ……!!!」
ガッ!!
「!!!」
しかし、フェイトはその激痛に耐えながら、片手でフリードの胸倉を掴む。そして……
「プラズマ……スマッシャーーー!!!」
「ぐああぁぁああああ!!!」
そのままほぼゼロ距離で雷の砲撃を炸裂させた。
「くそっ……!!!」
それを喰らったフリードは後ろに吹き飛ぶが、すぐに体制を立て直す。
「バルディッシュ!! ザンバーフォーム!!!」
それを見たフェイトはすぐさまバルディッシュを大剣形態のザンバーフォームへと変形させ、フリードに向かって振るった。
「くっ…闇の
それに対しフリードは、自身の体に文字を刻んで背中に翼を出現させ、そのまま空へと舞い上がって攻撃をかわした。
「逃がさない!!
それを見たフェイトは音速で走り出し、その勢いのまま土手を駆け上がってジャンプ台代わりにし、思いっきりフリードと同じ高さまで飛び上がる。そしてそのままフリードに向かってバルディッシュを振り下ろす。
「ハァァァァアアア!!!!」
「ぐっ……!!!」
それをフリードはギリギリでレイピアで防ぐが、踏ん張りが利かない空中で耐えられるハズもなく……
「うわぁぁぁああ!!!」
そのまま地面に叩きつけられた。
「くそっ……これは禁じ手だが、仕方あるまい」
フリードは起き上がりながらそう呟くと、再び自分の体に文字を刻み始める。
「闇の
その瞬間、フリードの姿がまるで悪魔のような姿に変わる。
「オォォォオオオ!!!!」
そして悪魔の姿となったフリードは、未だ空中から落下しているフェイトへと向かい、拳を振るう。
「っ……!!!」
それを見たフェイトはバルディッシュを盾のように構えてフリードの拳を防ぐが……
「うあぁぁああああ!!!」
その勢いまで防ぎ切れず、そのまま吹き飛ばされて石橋の柱に激突する。
「ぐっ…うぅ……!!!」
それでもフェイトは瓦礫を押し退けながら立ち上がり、バルディッシュを構えて再びフリードに向かって駆け出す。
「アァァァァァアアアア!!!!!」
「オォォォォオオオオオ!!!!!」
そこからはもう、一進一退である。
相手の攻撃を防いでは反撃し、反撃されては防ぐ。
ずっと続くかと思われたこの攻防戦。だが、終わりは突然にやってきた。
「やぁぁぁああああ!!!」
フェイトが渾身の力で振るった一撃が、フリードに直撃したのだ。
「ぐはぁぁぁあああ!!!」
それを喰らったフリードは地面に転がり、同時に元の姿に戻る。
「フゥ…フゥ…フゥ……!!!」
「ハァ…ハァ…ハァ……!!!」
お互いに息を切らしながら睨み合う二人。
そして、フェイトはバルディッシュ……フリードはレイピアと……それぞれの武器を構える。
「私はあなたを……止めてみせる!!!」
「オレは負けられない……ラクサスの為に!!!」
お互いの信念を叫びながら同時に駆け出す二人。
「ジェット……!!」
「闇の
段々と縮まっていく二人の距離。
自分の持つ武器にありったけの力を込める。
そして……
「ザンバー!!!!」
「〝滅〟!!!!」
二人の技が…交差した。
「「………………」」
武器を振り切ったまま互いに背を向けて動かない二人。
「あ…あぁぁ……」
すると……フリードが突然小さく呻き……
「ぐあぁぁぁぁあああああああ!!!!」
次の瞬間…フリードの全身に激しい雷が走った。
「ぐっ…うっ……!!」
そのまま倒れたフリードは何とか動こうとするが、ダメージのせいで思ったように動かない。
「ハァ…ハァ…ハァ……!!!」
そんなフリードに、フェイトが辛そうに息を乱しながら歩み寄る。
すると……そのままフリードの体に馬乗りになって、彼の首元にバルディッシュを突きつける。
「くっ……!!」
覚悟して目を硬く閉じるフリード。
そして……
カランッ……
フェイトはバルディッシュを……手放した。
「……え?」
フェイトのその行動に、呆気に取られるフリード。すると、フェイトがゆっくりと口を開く。
「こんな戦い……虚しいね……フリード」
「勝者の驕りか…フェイト……とどめをさせ……」
フリードはそう言うが、フェイトは首を横に振ってそれを拒否する。
「私たちは仲間だよ……同じギルドの仲間……一緒に笑って、一緒に騒いで……一緒に歩いて……」
「う……うるさい!!! オレの仲間はラクサス一人だ!!!!」
「ううん……違う。あたなは昔……私に言ってくれた……覚えてる? 私が悩んでいた時に…フリードが私に言ってくれた、あの言葉……」
「!!!」
フェイトがそう言うと、二人の脳裏に数年前の記憶が蘇る。
それは、フェイトが人工生命である事に悩まされていた時のこと。
そんなフェイトに向かって、フリードが言った言葉。
『作られた命? だからどうした。お前はお前だ、フェイト。胸を張れ……お前は
「あの言葉のおかげで、私は救われたんだよ……フリード」
「……………」
「一人の人物に依存する事は決して悪じゃない。でも…フリードの周りには私たちがいる……人と人は…いつでも繋がってるんだ」
「…………っ!!!」
「ラクサスだけじゃない……あなたには…手を伸ばせば、その手を取ってくれる仲間が大勢いるんだよ……フリード」
フリードの手を握り、微笑みながらそう語るフェイト。
そしてその言葉を聞いたフリードは……静かに涙を流した。
「うぐ…うぅ……こんな事……したくなかっ…た…んだ……」
「うん……わかってる。フリードは悪ぶってるけど、本当は……誰よりも仲間の事を大切に想ってる」
泣きじゃくるフリードに、フェイトは優しくそう言い掛ける。
「そんな優しいフリードだから……私はあなたの事が……」
「え……?」
「……ううん…何でもない。来年こそは…一緒に収穫祭を楽しもうね、フリード!」
「うん…えぐ……」
フェイトの言葉に、涙声で頷くフリード。それを聞いたフェイトは満足そうに笑顔を浮かべたのであった。
【フリードVSフェイト】
【共に戦意喪失】
そして……
バトル・オブ・フェアリーテイル
残るはラクサス、ただ一人。
つづく