ナツたち4つのギルドが結束し、打倒
「ここはかつて古代人の都があった。この洞窟は村の神事の際に巫女が籠り、神託を得たという」
「「きゃっ!」」
「ぎゃわ!」
そう説明しながら拠点の洞窟へとやって来たブレインは、連れてきた3人を乱暴に壁へと投げつける。
「乱暴にするな!!! 2人は女のコなんだぞ!!! もびゅ」
ブレインに抗議するハッピーだが、顔面を鷲掴みにされて無理矢理黙らせられる。
「ハッピー!!!」
「むーむー!」
「やめてくださいっ!! ハッピーちゃんを放して!!!」
「フン」
鼻を鳴らしながらハッピーを投げ捨てるブレイン。そしてハッピーはそのまま伸びてしまう。
「ブレイン、この女どもは何なんだ?」
「ニルヴァーナに関係してんのか?」
「そんなふうには見えないゾ」
「そうか!!! 売ってお金に…」
ブレインにそう問い掛ける六魔の仲間たち。
「まずはウェンディ、こやつは天空魔法…治癒魔法の使い手だ」
「治癒魔法だと!!?」
「
「スー…スー」
「これは金の臭いがしマスネ」
「こんな小娘が……!!! まさか!!?」
それを聞いたコブラが何かに気がつく。
「その通り、奴を復活させる」
「わ…私……!!! 悪い人たちに手は貸しません!!!」
「貸すさ…必ず…うぬは必ず、奴を復活させる」
ウェンディは「うー…」とブレインを睨みながら威嚇するが、ブレインは余裕の笑みを崩さない。
「んで、そっちの小娘は何なんだよ?」
「ひぅ…!!」
コブラはハッピーを抱えながら怯えているキャロを指差しながらそう問い掛ける。
「こやつは、かのアルザス地方に住まう一族…ルシエの一族だ」
「「「!!!」」」
それを聞いてコブラだけでなく、眠っているミッドナイト以外の全員が驚愕した。
「ルシエって……あのルシエの一族か!?」
「だとしたら、とんでもない拾いものだゾ」
「もしニルヴァーナを手に入れて、こいつを力を自在に使えるようになったら……」
「我々に敵はいない!!! デスネ」
そう言うと、全員のキャロを見る目が変わる。
「そう言う事だ。だがまずは、奴の復活が先だ。レーサー、奴をココにつれてこい」
「遠いなァ、1時間はかかるぜ」
「かまわん」
「確かに…あいつがいればニルヴァーナは見つかったも同然」
「コブラ、ホットアイ、エンジェル、貴様等は引き続きニルヴァーナを探せ」
「でもあの人が復活すればそんな必要は無いと思うゾ」
「万が一という事もある。私とミッドナイトはここに残ろう」
「ミッドは動きがないみたいデスが…」
「しゃあねえ、行ってくるか」
「ねえ? 競争しない? 先にニルヴァーナを見つけた人が」
「100万J!!! のったァ!!! デスネ」
「高いゾ」
そう言いながらコブラ、エンジェル、ホットアイはニルヴァーナ捜索へと向かって行った。
「一体…どんな魔法なの…? ニルヴァーナって……」
そして残ったブレインに、ウェンディが問い掛ける。
それに対しブレインは不気味な笑みを浮かべながら、こう答えた。
「光と闇が、入れ替わる魔法だ」
第六十話
『少女と亡霊』
「みんな急いで…お願い…」
「全員樹海に突入…完了……と。ヴァイス、そっちはどうだい?」
「全方位に敵影無し……今んとこは大丈夫だ」
その頃…ワース樹海の大きな木の下には、毒で苦しむエルザとそれに寄り添うルーシィ。そして空間に表示されたモニターにキーボードを打ち込んでいるヒビキと、ライフル型の魔銃『ストームレイダー』を肩に担ぎながら周囲を警戒しているヴァイスの姿があった。
「君はいかないの?」
「エルザはおいてはいけないでしょ。それにどう考えてもあたしが一番戦力にならないし」
「そんな謙遜を…噂は聞いてるよ、3mのゴリラを倒したとか、ファントムのマスターを再起不能にしたとか、アカリファじゃ一人で千人と戦ったって」
「尾ヒレつきすぎ」
尾ヒレがつきに付いた自分の武勇伝に若干呆れながらそう言うルーシィ。
「そーゆーアンタとヴァイスさんはいかないの?」
「女性2人をおいてはいけないよ」
「意外とやさしいのね」
「それに僕の魔法はみんなにココの位置を知らせる事ができる。ウェンディとキャロとハッピーを救出しても、この場所に帰れなかったら意味ないからね」
「オレぁ今このケガだからな、頑丈なジュラの旦那と違ってあんま動き回れねぇんだよ。それに、オレの分野は
そんな会話をしながら、3人は散り散りに分かれて
◆◇◆◇◆◇◆◇
一方…こちらはナツたち4人の妖精メンバーに、エリオとシャルルを加えたチーム。
「天空の
「空気」
「うめえのか?」
「さあ」
「それ酸素と違うのか?」
「何言ってるのグレイさん、空気がおいしいって言う時あるでしょ?」
「それはその場の雰囲気で言うもんでしょーが」
そんな正直どうでもいい会話を繰り広げながら樹海の中を走り抜ける一同。
「僕とウェンディは、ナツさんに会えると思ってこの作戦に志願したんです」
「オレ?」
「はい。同じ
「エリオとウェンディのドラゴンも7年前の7月7日に?」
「はい…〝天竜グランディーネ〟と〝雷竜ボルテウス〟……それが僕とウェンディの
ナツとティアナの質問に頷きながらそう答えるエリオ。
「イグニールとガジルのドラゴンも、ウェンディとエリオも7年前……んがっ!!?」
考え事をしながら走っていたナツの顔面に、むき出しになった木の根が直撃し、倒れる。
「そうだ!!! ラクサスは!?」
「マスターが言ってたでしょ? ラクサスは
「ラクサス……さんですか?」
ティアナの口から出てきたラクサスの名をを聞いたエリオは興味があるように問い掛け、その質問にスバルが答える。
「今はもう破門されちゃったんだけど…私たちのギルドにはラクサスっていう、エリオと同じ雷の滅竜魔法を使える人がいたの」
「えぇっ!? じゃあその人もボルテウスに!!?」
「いや、うちのじーさん…マスターの話によると、ラクサスはガキの頃自分の親父に滅竜魔法が使える
「滅竜魔法が使える
グレイの説明を聞いて驚愕するエリオ。
「ラクサスはそれを差し引いても強えぞ! 今はもうギルドにはいねえけど、オレはいつか必ずあいつに勝ぁああつ!!!」
「あんたも懲りないわね……」
ナツの気合の籠った言葉に呆れたようにそう言うティアナ。
「僕と同じ魔法を使うラクサスさん……いつか会ってみたいです」
ナツたちの言葉を聞いて、ラクサスに興味を持ち、そう呟くエリオ。
すると、ティアナが思い出したようにエリオとシャルルにある質問を投げかけた。
「そう言えば、ずっと気になってたんだけど……連中はキャロの事を〝真竜の巫女〟って呼んでたけど、それって何なの?」
「話の流れからすると……もしかしてキャロも
「なにっ!!? そうなのか!!?」
3人の問い掛けに、エリオは首を横に振りながら答える。
「いいえ、キャロは
「でも……竜に関係があるといえば、あるのよね」
「どういう事だ?」
シャルルの意味深な言葉にさらに問い掛けるグレイ。
「そうね……アンタたち、アルザス地方のルシエの一族は聞いた事ある?」
「?」
「アルザス地方?」
「名前は聞いた事あるが、確かそこは海のずっと向こうにある地方じゃねーか」
シャルルの問いにナツとスバルは首を傾げ、グレイは僅かに知っている事を答える。
「ルシエ一族……噂程度だけど、確か竜と共に生きる少数民族だって聞いた事あるわ。それがどうかしたの?」
ティアナの質問に、シャルルは一呼吸置いてから答える。
「キャロのフルネームは『キャロ・ル・ルシエ』……あのコはそのルシエ一族の一人で〝竜の召喚魔法〟を使えるの」
「「「!!?」」」
それを聞いたエリオ以外の全員が驚愕の表情を露にし、特にナツがその話に食いついた。
「竜を召喚だと!!? もしかしてその魔法でイグニールも!!!?」
「あ、いえ…キャロが召喚できるのは、竜は竜でも〝
「ワイバーン?」
「簡単に言えば、ドラゴンの亜種ね。ドラゴンとは似て非なるモンスターで、ギルドでもたまに討伐依頼が舞い込んでくるわ」
エリオの言葉にナツは首を傾げ、代わりにティアナがそう答える。
「そうよ、そしてキャロはその
「キャロは、その真竜に選ばれたルシエの巫女のようなものなんです」
「なるほど……それで〝真竜の巫女〟か」
「へぇ~…よくわかんないけどスゴイね!!!」
エリオとシャルルの説明を聞いて、ようやく合点が行ったという表情をするグレイと、感心の声を上げるスバル。
「けど……同時に残酷でもあるわ」
「え?」
シャルルの呟きに、スバルは首を傾げる。
「真竜に選ばれたキャロは竜の召喚魔導士として、とても類稀な素質を持っているわ」
「だけどキャロは……それ故にルシエの一族を追放されたんです」
「「「!!?」」」
追放と言う言葉を聞いて、全員が目を見開く。
「まだ幼いキャロには、その真竜の力を完全にコントロールはできないの」
「そこでルシエの長老は……彼女のその力がいつか暴走するのではないかと危惧して、キャロを一族から追い出したんです」
「それが7年前……あの子がまだ5歳の頃の話よ」
「なんだよそれ……!!!」
「そんな小さな子供を追い出すなんて……!!!」
「気に入らねえな」
「確かに腹立つ話ね。自分たちが神と崇めた竜が選んだ女の子を、一族から追い出すなんて……実質その神を捨ててるようなものよ」
その話を聞いていた妖精メンバーは怒りの表情を浮かべる。
「だけど……これで点と点が繋がったな。奴等が探してるニルヴァーナは、相当ヤベェ魔法と聞く」
「そこにキャロの持つ真竜の力も使えるようになれば……敵はないって事ね」
「そんな事はさせない!!!」
「ああっ!!! キャロもハッピーもウェンディも……みんなオレたちが助け出すぞぉ!!!」
そう言って3人救出の決意を新たにする妖精メンバーたち。
すると……
「な……何コレ!!?」
「「「!」」」
先頭を走っていたシャルルが何かに驚きながら立ち止まり、ナツたちも足を止めてシャルルの視線の先を追う。
その先には……
「木が…」
「黒い…」
「き…気持ち悪ィ」
焼け焦げた訳でもなく…ただただ〝黒〟という色一色に染まった木が、眼前に広がっていた。
「ニルヴァーナの影響だって言ってたよな、ザトー兄さん」
「ぎゃほー。あまりにすさまじい魔法なもんで、大地が死んでいくってなァ、ガトー兄さん」
「誰だ!!?」
そこへ突然聞こえてきた聞きなれない声……全員がそちらの方へと視線を向けると、そこにいたのは……
「ニルヴァーナの影響だって」
「さっき言ったぜガトー兄さん」
「そうかいザトー兄さん」
巨漢の猿顔の男と、アフロヘアーのこれまた猿顔の男を筆頭にした、軽く50人越える数の男達であった。
「ちょ…ちょっとぉ」
「囲まれてる!!?」
いつの間にか、ナツたちはその男達に囲まれていた。
「うほぉ!!! サルだ!!! サルが二匹いんぞオイ!!!」
「スゴイ……この樹海ってこんなに大きなサルが二匹もいるんだ!!!」
「んなワケないでしょバカ二人。こいつら猿顔だけど人間よ」
ナツとスバルの的外れな発言に呆れながらツッコミを入れるティアナ。
「
「ぎゃほおっ!!! 遊ぼうぜぇ」
「傘下……!? もしかして、この樹海に
「敵は……6人だけじゃなかったっていうの……!? やられた……」
予想外の事態に慌てるエリオとシャルル。しかし……
「ラッキー!!」
「よかった、手間がはぶけるわね」
「あぁ、こいつァ丁度いい」
「ウホホッ、丁度いいウホー」
「えっ!!? み、みなさん!!?」
「何言ってんのアンタたち!!!」
これだけの人数に囲まれたにも関わらず、焦るどころか逆にやる気を出している妖精メンバーの4人。
「拠点とやらの場所をはかせてやる」
「敵はギルド1つ分……けどま、この面子なら問題ないでしょ?」
「うん! ラクショー♪」
「今行くぞハッピー!! ウェンディ!! キャロ!!」
「なめやがってクソガキが…」
「
「死んだぞテメーら」
そう言って睨み合う
「スゴイ……これだけの人数相手に、一歩も引かないなんて……」
「何なのよ
◆◇◆◇◆◇◆◇
一方その頃…
「重てぇ…これじゃスピードが出ねえぜ」
「主より速い男など存在せぬわ」
ブレインの遣いに行っていたレーサーが、1つの鎖で巻かれた巨大な棺桶を担いで帰ってきていた。
「「ひっ」」
「棺桶!!?」
その棺桶を見て、怯えるウェンディとキャロ、そして驚愕するハッピー。
「ウェンディ、お前にはこの男を治してもらう」
「わ…私……そんなの絶対やりません!!!」
「ウェンディちゃんの魔法は……悪い人たちの為のものじゃありません!!!」
「そーだそーだ!」
「いや、お前は治す。治さねばならんのだ」
そう言いながら鎖を解き、棺桶をゆっくりと開くブレイン。
そしてその中には……鎖で拘束され、意識を失った1人の青年が入っていた。
「「!!!」」
そしてその青年の姿を見て、驚愕するウェンディとキャロ。
「この男の名はジェラール、かつて評議院に潜入していた。つまりニルヴァーナの場所を知る者」
そう……その青年は、かつてナツたちと楽園の塔で激しい戦いを繰り広げ、のちの塔の崩壊と共に姿を消したナツやエルザの因縁の相手…ジェラール・フェルナンデスであった。
「ジェラールって…え? え!?」
「ジェラール…」
「ジェラール…さん」
「知り合いなの!?」
ウェンディとキャロがジェラールの知り合いだと言う事に、驚愕するハッピー。
「エーテルナノを大量に浴びてこのような姿になってしまったのだ。元に戻せるのはうぬだけだ。うぬら2人の恩人……なのだろう?」
◆◇◆◇◆◇◆◇
場所は戻り…ナツたちの方は……
「うおおおおっ!!!! らあっ!!!!」
「ぐわっ!」
「がっ!」
「ぎえー!」
ナツが炎を纏った拳を地面に叩き付けると、その爆風で周囲にいた男たちを吹き飛ばす。
「おおおおおおらぁ!!!」
「ぐあっ!」
「ぎゃっ!」
「うがっ!」
そしてグレイも、一人の男の顔を鷲掴みにして凍りつけ、そのまま男を思いっきり投げ飛ばしてその先にいた男たちを吹き飛ばす。
「うおぉぉりゃぁぁああ!!!!」
「がはっ!」
「うげぇっ!」
「ぐばっ!」
スバルはリボルバーナックルを装着した拳と持ち前のバカ力で、男の腹部を殴り飛ばし、そのまま玉突事故のように後ろにいた男達も吹き飛ばした。
「おのれぇ……魔導散弾銃でもくらいやがれ!!!!」
すると、ナツの背後にいた一人の男がナツの背中に向かって散弾銃を発射するが……
「……へっ」
その弾丸がナツに届く前に、彼の炎によって消滅した。
「はっはーっ!!!」
「オラァ!!!」
「でりゃぁあ!!!!」
それからもナツたちは止まらず、次々と
「ス…スゴイ……これが
そんなナツたちの戦いを愕然と眺めているエリオ。
「死ねぇええ!!!」
「っ!!? しまっ──」
すると、そんなエリオに向かって一人の男が魔法剣を振り下ろす。
ストラーダも構えず、完全に油断し切っていたエリオは敵の不意打ちに成す術なく、ただ呆然とするだけだったが……
ドガァァアン!!!
「ぶはっ!!?」
「!!?」
突然男の真横から飛んできた魔法弾が直撃して為、エリオは事なきを得た。
そしてエリオは魔法弾が飛んできた方向に視線を向けると、そこにはクロスミラージュの銃口を向けたティアナが立っていた。
「エリオ!! アンタも戦えるんでしょ!!! ボサっとしてないで手伝いなさい!!!!」
「えっ!? あっ、は…はいっ!!!」
ティアナにそう叱咤され、エリオは慌ててストラーダを構えて戦闘に参加した。
「なかなかやるようだぜ、ガトー兄さん」
「いっちょやるか、ザトー兄さん」
◆◇◆◇◆◇◆◇
そして場所は再び、六魔の拠点の洞窟。
「ジェラールって、あのジェラール?」
「ハッピーちゃん、知ってるの?」
「知ってるも何も、こいつはエルザを殺そうとしたし、評議院を使ってエーテリオンを落としたんだ!」
「そうみたいだね……」
「生きてたのかコイツ~」
ハッピーは憎々しげに目の前のジェラールを睨みつける。
「この男は亡霊に取りつかれた亡霊……哀れな理想論者。しかし……うぬらにとっては恩人だ」
「ダメだよ!!! 絶対こんな奴復活させちゃダメだ!!!」
「…………」
「ウェンディ!!!」
ハッピーはウェンディを説得しようとするが、彼女は何も言わずにただ俯くだけであった。
「早くこの男を復活させぬか」
すると、ブレインは一本のナイフを取り出して、ジェラールの腕に突き立てた。
「あっ………!!!!」
「やめてぇーーーーっ!!!!」
それを見たキャロは目を見開き、ウェンディは悲鳴に似た大声を張り上げた。
「あう!」
「きゃっ!」
しかしすぐに、ブレインの杖によって殴り飛ばされる。
「治せ。うぬなら簡単だろう」
「ジェラールは悪い奴なんだよ!!! ニルヴァーナだって奪われちゃうよ!!」
ブレインは命令するようにそう言い放ち、ハッピーはやめるように説得する。
「それでも……私たちはジェラールさんに…助けられたんです……」
「私もキャロちゃんも……エリオ君だって……大好きだった…」
大粒の涙を流しながらそう言うウェンディとキャロに、ハッピーは何も言えなくなった。
「なんか…悪い事したのは噂で聞いたけど、私たちは信じない」
「何言ってんだ、現にオイラたちは…」
「きっと誰かに操られていたんです!!! 私たちの知ってるジェラールが、あんな事をするハズがないんです!!!!」
「お願いです!! 少し考える時間をください!!!」
「ウェンディ!!!」
ウェンディの頼みに対し、ブレインは少々考える素振りを見せ……
「よかろう。5分だ」
彼女に5分だけの猶予を与えた。
「(ナツ~…まずいよ……早く来てよ~…)」
◆◇◆◇◆◇◆◇
場所は三度…ナツたちの方へ移る。
「だはーーっ」
「ぶはーーっ」
「ふへ~~っ」
「ふう……」
「ハア…ハァ…」
少々ボロボロになり、苦しそうに息切れを起こすナツたちの目の前には、ガトーとザトーを含めた
「何だよコイツら、ザコじゃなかったのかよ」
「意外とやるじゃねーか…」
「そうね……あの二人はたぶん、この中でもかなりの実力者だったのね」
「っていうか…数が多すぎるよ~」
「当たり前じゃない!!! 相手はギルド一つよ!!! 何考えてんのよアンタたち!!!」
そんなナツたちに、物陰に隠れていたシャルルがどう怒鳴る。
「(僕はほとんど何もできなかった……やっぱりスゴイ…
先ほどの戦いでエリオが倒した敵の数は10人にも満たない。つまりそれ以外の50人近くはナツたちで倒してしまったのである。
その事を目の当たりにしたエリオは、改めて
「オイ!!! ぎゃほザル!!! オメェらのアジトはどこだ!!?」
「ウェンディとキャロとハッピーはどこにいるの!!?」
「言うかバーカ、ぎゃほほっ」
ゴンッ!!! ガンッ!!!
「オイ!!! でかザル!!!」
「早くいえー!!!」
「本当、めちゃくちゃねアンタたち」
「あのバカたちと一緒にされるのは心外だわ」
「えっと…あはは……」
容赦の無いナツとスバルを見て、シャルルはそう呟き、それに対してティアナが反論し、エリオは苦笑いを浮かべるだけであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
その後…アジトの場所を聞き出す事に成功したナツたちは、アジトがあると言われる西の廃村へとやって来た。
「ここか!!? ハッピー!!! ウェンディー!!!」
「キャロー!!! いたら返事してーー!!!」
「ちょっと!! 敵がいるかもしれないのよ!!」
崖の上から大声を出すナツとスバルをシャルルがそう叱咤する。
ゴォォオオオオ!!!
「!!!」
すると…何やら空気を切り裂くような音が聞こえてきたその時……
「ぐはぁ!」
「ぐあぁ!」
「きゃあっ!」
「うわぁあ!」
ブレインからの命令を受けたレーサーが、超スピードで全員を殴り倒した。
「またアイツだ!!」
「ここは任せろ!! お前らは早く下に行け!!!」
「おし!!!」
「行かせるかよ」
そう言って木の上からまたもや持ち前のスピードで邪魔しようとするレーサーだが……
つるんっ
「おっ!? ぎゃっ!」
いつの間にかグレイによって凍らされた木で足を滑らせ、そのまま木の上から落ちてしまった。
「今だ!! シャルル羽を……ってあれ!!?」
そう言ってエリオはシャルルへと視線を移すが、シャルルは先ほどの攻撃により目を回して気絶していた。
「しゃーねえ、これで行ってこい!」
そう言って崖の下まで氷の道を造るグレイ。
「ティアとエリオも行って!! 私はグレイさんと足止めするから!! ウィングロード!!!」
ティアナとエリオにそう言うと、スバルも得意魔法であるウィングロードを崖の下まで展開させる。
「行くぞっ!!!」
「え? なに!?」
シャルルを抱えて氷の道に飛び乗るナツと、同時に目を覚ますシャルル。
「とぉおおーーーーう!!!!」
「きゃああぁぁぁぁぁ!!!」
そしてそのまま、ナツはシャルルの悲鳴と共に、氷の道を滑って崖の下へと降りていった。
「エリオ!! 私たちも行くわよ!!」
「はい!!!」
それに続くように、ティアナとエリオもウィングロードを伝って、崖の下へと駆け下りていった。
「テメェ…このオレの走りを止めたな」
「滑ってコケただけだろーが」
「ここは絶対に通さない!!!」
その場には、レーサーと睨み合うグレイとスバルが残されたのであった。
そして…崖の下に下りていったナツたちは……
「うぷ…」
「酔ったの!?」
氷の道から降りると同時に気持ち悪そうな顔をするナツにツッコミをいれるシャルル。
「バカやってないで、さっさと3人を探すわよ!!」
「お…おう!!!」
ティアナに叱咤され、改めて3人の探索を始める。
「ウェンディ!!!」
「キャロー!!!」
「ハッピー!!!」
大声を出して3人の名前を呼ぶナツとエリオとシャルル。すると……
『ナァーーーツーー…』
「ハッピー!!!」
「あの洞窟の中からだわ!! 行くわよ!!!」
近くの洞窟の中から聞こえてきたハッピーの声に、4人は急いで洞窟の中へと入っていった。
「な…何だ…コレ……」
「何が…どうなってるの……」
「ま…まさか……!!」
「そんな……!!」
洞窟の中へと突入した4人は、自分の目を疑った。
「ナツ~~」
「うう……ごめんなさい……ごめんなさい…私……」
「ウェンディちゃん……」
彼らの目に飛び込んできたのは、地面に倒れ伏して涙を浮かべているハッピー。不適な笑みを浮かべるブレイン。謝罪の言葉を口にしながら泣きじゃくるウェンディと、そんな彼女を優しく抱き締めているキャロ。
そして……ウェンディの魔法によって復活したジェラールの姿があった。
「ジェラール……」
「どうして…アンタが……」
「そんな……ジェラールさん……」
ジェラールと面識のあるナツとティアナとエリオは驚愕して、目を見開く。
「ごめん…なさ……うえっ…うえっ……この人は私たちの…恩人…な…の」
「ウェンディ!! あんた、治癒の魔法使ったの!!? 何やってんのよ!!! その力を無闇使ったら……」
「待ってシャルルちゃん!! ウェンディちゃんを責めないで!!!」
泣いているウェンディにそう叫ぶシャルルを、キャロが止める。すると、ウェンディが力尽きたようにその場に倒れこむ。
「ウェンディ!!!」
そんな彼女を、エリオが急いで抱きとめる。
「な…なんでお前がこんな所に…」
以前の楽園の塔で、ジェラールがエルザにしようとした事や…シモンを殺した事を覚えていたナツは、怒りの表情で彼を睨み……
「ジェラァァァァァアアル!!!!」
「ま…待ちなさいナツ!!! 今は!!!」
ティアナの静止も虚しく、ナツは炎の拳を構えてジェラールに殴りかかる。
しかし…ジェラールはそんなナツを一瞥すると……
ゴッ!!!
「うああああっ!!!」
「なっ!? きゃああああ!!!」
「ナツ!!! ティアナ!!!」
強大な魔力を放ち…ナツだけでなく、その後ろにいたティアナもろとも吹き飛ばした。
「相変わらずすさまじい魔力だな、ジェラール」
それを見たブレインはジェラールに感心の声をかけるが……
「! なにっ!!? ぐぉああああっ!!!」
なんと…そんなブレインの足元をジェラールは魔法で大穴を空け、彼をその中へと落としてしまった。
「ジェラールさん……!!!」
そんなジェラールにエリオは恐る恐る声を掛けるが、ジェラールは何も言葉を発することなく、ただエリオを一瞥するだけで……そのまま洞窟の外へと歩いていってしまった。
「ジェラール!!!」
「うっ…痛たっ…」
彼がその場からいなくなったと同時に、瓦礫の中からナツが出てくる。
「どこだ!!!」
「いないって事は、もう行ったんでしょ」
そう言って、ナツに遅れてティアナも瓦礫から出てくる。
「あんにゃろォーーーーっ!!!!」
「今はもう放っときなさい」
「放っとける訳ねえだろ!!! オレはアイツを……!!!」
「いい加減にしなさいこのバカ!!!!」
今もなおジェラールに拘るナツに対し、ティアナのすさまじい怒声が洞窟に響き渡る。
「確かにアイツがやったことは私も許せない!!! だけど今はそれどころじゃないでしょ!!! 私たちの目的はエルザさんを助ける事でしょうが!!!!」
ティアナの叱咤の言葉にナツは何も言い返す事が出来なかった。
「わかってんよ!!! あいつ…」
「まったく……でもどうしようかしら? ハッピーとシャルルがそれぞれ運べるのは1人だけ……3人がココに残される事になるけど……」
「あ…あの!! 私に任せてください!!!」
すると、キャロが声を張り上げてティアナにそう言った。そしてキャロは洞窟の出口の前に立ち、ゆっくりと目を閉じると……
「蒼穹を奔る白き閃光…我が翼となり…天を駆けよ」
詠唱と共に目の前に輝く魔法陣を展開するキャロ。
「来よ!! 我が竜…フリードリヒ!!!」
そして魔法陣がより一層輝き始める。そして……
「グオオオオオォォォォォォォ!!!!」
光が止むと……そこには1体の白い竜が咆哮を上げていた。
「で…デケェェエ!!?」
「こ…これが……竜の召喚魔法!!?」
「はいっ! そしてこの子が私の竜……
目の前の白い竜…フリードを見て驚愕するナツとティアナ。
「フリードって……」
この時ハッピーが、同じギルドに所属するフリードの事を思い浮かべたのは余談である。
「3人くらいまでなら乗れます!!」
「じゃあ、私とエリオが竜に乗るから、ハッピーとシャルルはナツとウェンディを」
「あいさー!!!」
「言われなくてもそうするわよ!!」
「んじゃあ行くぞ!! エルザの所へ!!!」
ナツがそう言うと、ハッピーとシャルルに抱えられたナツとウェンディ…そしてフリードの背中に乗ったキャロとティアナとエリオは、空を飛んで急いでエルザのもとへと向かった。
そして……洞窟の中にはブレインだけが残される。
「計算外だ…いや…拘束具を外した私のミスか……しかし…以前の奴は私にここまでの敵対心は持っていなかったハズ…眠っている状態で、ニルヴァーナの話を聞いていたとでも言うのか?」
そこまで言うと、ブレインはある事に思い至った。
「ジェラールめ!!! まさかニルヴァーナを独占する気か!!!! させぬ!!!! あれは我々のもの!!!! 誰にも渡すものか!!!!」
怒りの表情を浮かべてそう叫ぶブレイン。
「コブラ!!! 聞こえるかっ!!!! ジェラールが逃げた!!!! 奴を追え!!!! 奴の行く先に…ニルヴァーナがある!!!!」
◆◇◆◇◆◇◆◇
「OK、聴こえたよ。ついでにジェラールの足音もな」
ブレインの叫びは、耳が異常にいいコブラの耳にしっかりと聞こえ、彼はジェラールの追跡を開始したのであった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
一方…レーサーと戦う為に残ったグレイとスバルは……
「くっ!」
「うあっ!」
レーサーの攻撃により、木に強く叩き付けられる。
「ちっ、なんて速さだ…野郎…」
「私のマッハキャリバーでも追いつけない……すごいスピード……」
そう言って木の上に立つレーサーを睨みつけるグレイとスバル。
「オレのコードネームは〝レーサー〟誰よりも速く、何よりも速く、ただ走る」
身に着けているグローブをグッと入れなおしてそう言うレーサー。
「ん?」
すると、レーサーは上空を見上げて何かに気がつく。
「グレイさん! あれって……」
「!!」
それに釣られるようにグレイとスバルを空を見上げる。
その視線の先には、ナツとウェンディを抱えたハッピーとシャルル…そしてフリードに乗ったキャロとティアナとエリオの姿があった。
「助け出したか!!!」
「バカな!!! 中にはブレインがいたハズだろ!? どうやって!!?」
「ってか、何だあのデケー竜は!!?」
「もしかして、例のキャロの竜の召喚魔法!!?」
「くそっ!! 行かせるか!!!」
すると、レーサーは高速で木を駆け上がっていく。
「ナツ!!! よけろぉ!!!」
「!?」
バキィ!!
「きゃ!」
「うお!」
「わっ!」
グレイの忠告も虚しく、4人はレーサーにより、地面に叩き落されてしまった。
「がっ!」
そして地面に叩き落されたナツは、頭から地面に墜落しそうになっているウェンディを見つけ……
「おっとォー!!!!」
慌てて駆け寄り、彼女をキャッチする。
「ハッピー!!! シャルル!!!」
ナツは二人の名を叫ぶが、ハッピーとシャルルは先ほどの攻撃で目を回して伸びていた。
「くっそーーーっ!!!!」
仕方なくナツは、3人を抱えて走り出す。
「ナツーー!!! そのまま走って、少し離れた所で合流するわよ!!!」
「おうっ!!!」
上空からのティアナの声に返事を返しながら走り続けるナツ。
「行かさねえって言ってんだろ!!!!」
「アイスメイク〝
「ぐほっ!」
そんなナツに追撃しようとするレーサーだが、グレイが作り出した巨大な氷の城壁に行く手を阻まれた。
「グレイ、スバル」
「行ってナツ、こいつは私とグレイさんで何とかする」
「けど…グレイ、お前今ので魔力を使いすぎただろ!!」
「いいから行きやがれ」
なおも立ち止まるナツに、そう言い放つグレイ。
「ここは死んでも通さねェ!!!!」
「早く行って!!! エルザさんの所に!!!!」
グレイとスバルのその言葉を聞いたナツは、二人に背を向けて走り出した。
「うおおお~~~っ!!! 必ずエルザを助けるからな!!!!」
「当たり前だ」
「任せたよ、ナツ」
走り去っていくナツに、二人はそう言って笑みを浮かべた。
「貴様……二度もこのオレの走りを止めたな」
「何度でも止めてやんよ。氷は命の〝時〟だって止められる」
「そしてお前は、私たちには永久に追いつけない」
「妖精の尻尾でも眺めてな」
◆◇◆◇◆◇◆◇
一方その頃……ウェンディの魔法により復活したジェラール。
彼は偶然近くを通りかかった闇ギルドの男から服を奪い取って身に纏い、樹海の中を歩いていた。
そして不意に立ち止まると、己の手をジッと見つめて……
「エルザ…」
と…呟いたのであった。
つづく
本編に記載したエリオを育てたドラゴン……雷竜の名前は完全にオリジナルです。
もし原作に本当の名前が出てきたら、変更しますでご了承ください。