LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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今回はほとんど原作のまんまです。ちょこちょこリリカルキャラを絡ませていますが、本当に少しです。


星霊合戦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第六十三話

『星霊合戦』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

六魔将軍(オラシオンセイス)の目的である、光と闇を入れ替える魔法……ニルヴァーナの封印が解かれ、樹海に黒い光の柱が立ち上る。

 

そしてその光の場所に…因縁の相手であるジェラールがいると推測したナツとティアナは、黒い光に向かって樹海を走っていた。

 

 

「ジェラール!!! 首洗って待ってやがれーーーーっ!!!!」

 

 

そう叫びながら樹海を突っ走るナツ。すると、その後ろを走っていたティアナが何かに気がついた。

 

 

「! ナツ!! 止まって!!!」

 

 

「あ!?」

 

 

ティアナにそう言われ、キキィっと急ブレーキをかけるようにその場に立ち止まるナツ。

 

 

「どうしたんだよ?」

 

 

「ほらあれ! あの川に浮かんでるのって……」

 

 

そう言ってティアナが指差した先には少し大きめの川があり、そこには見覚えのある人物が浮かんでいた。

 

 

「グレイ!!?」

 

 

そう…川に力なく浮かんでいたのは、レーサーと戦う為にスバルと一緒に残ったハズのグレイであった。

 

 

「お前何やってんだよこんな所で!! あの速ェのどうなったんだァ?」

 

 

「それにスバルの姿が見えませんけど……グレイさん?」

 

 

「お…おい」

 

 

2人の問い掛けにまったく答えず、ただ浮かんでいるグレイ。

 

 

「チッ、ったくよォ!!! こっちは急いでんだっつーの!!」

 

 

「それでも放っておくわけにはいかないでしょ」

 

 

舌打ちしながらグレイを引き上げるナツにそう言いながら、ティアナもグレイを引き上げるのを手伝う。

 

 

「起きろ!! バカ」

 

 

そう言ってグレイを起こそうとするナツ。すると、グレイはゆっくりと目を覚ました。

 

 

口元に邪悪な笑みを浮かべながら……

 

 

「グレイ…さん?」

 

 

そんなグレイに違和感を抱くティアナ。

 

すると、グレイは片手に持っていたロープを引っ張り、近くの木の幹に結んでいたのを解く。

 

その瞬間……3人の足元からイカダが浮かび上がってきた。

 

 

「イカダの上!!? お……乗り…も……おぷ」

 

 

自分が立っている場所がイカダの上だと認識したナツは、いつもの乗り物酔いで苦しげな表情を浮かべる。

 

 

「かかったなナツ。確かお前の弱点は乗り物だ」

 

 

「グレイさん!!! これはどういう事ですか!!?」

 

 

仲間であるハズのナツを罠に嵌めるグレイに、ティアナがそう怒鳴りかかるが……

 

 

 

ドスッ!!

 

 

 

「がっ…あ……!!!」

 

 

そんなティアナの腹部に……グレイの拳が深々と減り込んだ。

 

 

「悪いなティアナ。お前の弱点らしい弱点は見つからなかったから、ちょいと手荒な方法を取らせてもらったぜ」

 

 

「グ…レイ……さ…」

 

 

そのまま意識を手放し、イカダの上に倒れるティアナ。

 

 

「ティア……グレイ…お…おま…うぐ…」

 

 

「2人揃って死ね」

 

 

そう言うと、グレイは氷の槍を造りだし、2人に向かって振りかぶる。

 

 

その瞬間、2人とグレイの間に一本の矢が突き刺さり、グレイは攻撃を止め、そちらへと視線を向けた。

 

 

「何してんのよグレイ!!!」

 

 

「であるからして、もしもし」

 

 

そこにはサジタリウスを召喚したルーシィを筆頭にした、ナツとティアナを追いかけてきたメンバーが立っていた。

 

 

「ルー……シィ…」

 

 

「邪魔すんなよルーシィ」

 

 

「グレイさん……もしかしてニルヴァーナの影響で〝闇〟に……?」

 

 

冷たくそう言い放つグレイの姿を見て、エリオはグレイが闇に落ちたのではないかと推測する。

 

 

「なが…流れる……揺れる…揺れてる……」

 

 

「止まってるからしっかりしなさい!!!!」

 

 

幸いイカダは川に落ちている大きな木片に引っ掛かって流れは止まっているが、それでもナツは苦しそうである。

 

 

「ナツ!!!ティアナ!!! 今助けるよ!!!」

 

 

「フン」

 

 

「ポゲー!!!」

 

 

2人を助けようと飛び出したハッピーだが、グレイに氷付けにされて地面に落ちる。

 

 

「オスネコ!!」

 

 

「ハッピーちゃん!!」

 

 

「ハッピーに何すんのよ!!!」

 

 

「・ハッピーは空を飛ぶ。

 ・運べるのは一人

 ・戦闘力はなし

情報収集完了」

 

 

仲間であるハッピーを攻撃したグレイに抗議するルーシィだが、グレイはワケのわからない言葉を口にするだけであった。

 

 

「何言ってんのよグレイ…しっかりして……」

 

 

「これが闇に落ちた者…」

 

 

「やっぱ、闇に落ちるとロクな事にならねえんだな」

 

 

そんなグレイを見て口々にそう言うルーシィ、ヒビキ、ヴァイス。

 

 

「グレイから見たルーシィ

・ギルドの新人

・見た目によらず純情

・星霊魔導士

 

ほう……星霊ね…面白い!!!」

 

 

「!」

 

 

「ルーシィさん!!!」

 

 

「危ない!!!」

 

 

そう言うと、グレイはルーシィに向かって攻撃を放ち、それを見たエリオとキャロの声が響き渡る。

 

 

「ショット!!!」

 

 

ズガァァアン!!!

 

 

しかし……その攻撃はルーシィに届く前に、ヴァイスのストームレイダーによる射撃魔法が攻撃を撃ち落した。

 

 

「違ェなぁ。お前グレイじゃねーだろ?」

 

 

「ヴァイスの言う通り、君はグレイ君じゃない。何者だ?」

 

 

「え? グレイじゃない!?」

 

 

「ニセモノ…って事ですか!?」

 

 

ヴァイスとヒビキの言葉に驚愕するルーシィとエリオ。

 

 

「グレイから見たヒビキ。

青い天馬(ブルーペガサス)

・男前

・詳しく知らない。

 

グレイから見たヴァイス。

青い天馬(ブルーペガサス)

・自分と声が似ている気がする

・凄腕魔導士らしいが詳しく知らない

 

チ……どちらも情報不足か」

 

 

舌打ち混じりにそう言うグレイを見て、ルーシィは確信する。

 

 

「(そっか…〝闇〟に落ちるのは、確か善と悪の感情の狭間にいる人。グレイがそんな感情に揺れ動くハズがない)

 

あんた、誰?」

 

 

ルーシィがそう問い掛けると、目の前のグレイはもこもこと姿を変え……ルーシィへと変身した。

 

 

「グレイさんが…ルーシィさんに!!?」

 

 

「あ! あたし!!」

 

 

「君…頭悪いだろ? そんな状況でルーシィさんに変身しても騙されるハズがない」

 

 

「そうかしら? あんたみたいな男は女に弱いでしょ?」

 

 

そう言うと、ルーシィ(偽)はゆっくりと上半身の服をたくし上げ……

 

 

「うふ♪」

 

 

ポロンっと……胸を露出させた。

 

 

「もしもしもしもしもし!」

 

 

「「……………!」」

 

 

「うわわわわわ……!!!」

 

 

「きゃああああああ!」

 

 

「エリオ君は見ちゃダメーー!!!」

 

 

当然その姿に釘付けになる男共と、間接的に自分の胸をさらけ出されて悲鳴を上げるルーシィ、そしてエリオの目を必死で塞ぐキャロであった。

 

 

「ゆ……揺れてる……」

 

 

「「確かに……」」

 

 

「うまい事言うなー!」

 

 

ナツの呟きを違う意味に捉えているヒビキとヴァイスを殴るルーシィ。

 

 

「星霊情報収集完了。へえ……すごい」

 

 

「!!」

 

 

服を戻しながら感心の声を漏らすルーシィ(偽)。

 

 

「サジタリウス、お願いね」

 

 

そしてルーシィ(偽)がそう言うと……

 

 

ドッ! ドッ!

 

 

「がはっ!」

 

 

「ぐあっ!」

 

 

「え?」

 

 

何と……突然サジタリウスはヒビキとヴァイスの背中に、矢を射って突き刺したのだ。

 

 

「な…何よこの馬…!! 裏切……」

 

 

「ち…違いますからして…それがしは……」

 

 

矢を射った張本人であるサジタリウスですら、自身の行動に戸惑いの表情を浮かべている為、彼の真意でない事がわかる。

 

 

「ヒビキ!!! ヴァイスさん!!!」

 

 

「くっ」

 

 

「あーくそっ……何か今日はニセモンに刺されてばっかだなぁオレ……」

 

 

ガクリと膝を折るヒビキとヴァイスに駆け寄るルーシィ。

 

 

「(まさか…あたしの星霊を操って……)」

 

 

そう感づいたルーシィは、体中に冷汗を浮かべる。

 

 

「シャルル!! ウェンディをつれて逃げて!! こいつヤバイ!!!」

 

 

「言われなくてもそうするわよ!!」

 

 

そう言ってウェンディを抱えて空へと飛んで逃げるシャルル。

 

 

「おいチビ共…お前らも行け……そのチビ竜の力を使えば空くらい飛べんだろ?」

 

 

「で…でも……!!」

 

 

「みなさんを置いていくワケには……!!!」

 

 

ヴァイスの言葉に反論しようとするエリオとキャロだが……

 

 

「いいから行けっつってんだよ!!! 今お前ら以外に、ウェンディとシャルルを守れる奴がいんのか!!?」

 

 

「「!!」」

 

 

ヴァイスの大声にエリオとキャロはビクッと体を震わせる。

 

そして2人は考えるように目を伏せたあと、やがて決心したような顔つきになる。

 

 

「行こう……キャロ」

 

 

「うん。フリード!!」

 

 

「キュクゥゥ────グオォォォオオオ!!!!」

 

 

すると、フリードは咆哮を上げながら、小さな体から巨大な体へと変化していった。

 

 

そしてエリオとキャロはフリードの背中に乗り込むと、シャルルを追って空へと飛んで行った。

 

 

「サジタリウス、強制閉門!!!」

 

 

「申し訳ないですからして、もしもし……」

 

 

それを確認したルーシィは、まずは操られてしまう恐れがあるサジタリウスを星霊界へと返還した。

 

しかし…それに対しルーシィ(偽)は一本の鍵を構え……

 

 

「開け、人馬宮の扉…サジタリウス!!!」

 

 

「お呼びでありますか、もしもし。え……あれ?」

 

 

「えーーーっ!!?」

 

 

先ほど返還したハズのサジタリウスを召喚した。

 

 

「あの飛んでるネコ、殺して!!」

 

 

「いや…しかし、それがしは…」

 

 

ルーシィ(偽)の命令に戸惑うサジタリウス。

 

 

「強制閉門!!!」

 

 

「無理よ、あたしが呼んだ星霊だもん」

 

 

「そんな~」

 

 

サジタリウスを帰す事が出来ない事を知り、悔しそうな表情を浮かべるルーシィ。

 

 

「早くあのネコ撃ちなさいよ!!!」

 

 

「うぐぐ……」

 

 

ルーシィ(偽)の命令に尚も戸惑うサジタリウス。すると……

 

 

「もういいゾ。ニルヴァーナが見つかったって事は、あのガキの役目も終わってるって事だゾ。ルシエのガキも、後でゆっくり捕まえるから別にいいゾ」

 

 

樹海の木々の奥から、そんな声が聞こえてきた。

 

 

「そっかー」

 

 

「うおっ」

 

 

「「ピーリッ!! ピーリッ!!」」

 

 

その声に反応して、ルーシィ(偽)は2体の人形のような姿へと変わり、サジタリウスは強制的に星霊界へと帰っていった。

 

 

「は~いルーシィちゃん。エンジェルちゃん参上だゾ」

 

 

六魔将軍(オラシオンセイス)!!!?」

 

 

「くそっ……やっぱコイツか……!!」

 

 

先ほどの声の主…エンジェルの姿を見たルーシィは驚愕し、彼女にまたしてもしてやられたヴァイスは顔をしかめる。

 

 

「このコたちはその人間の容姿・能力・思考、全てコピーできる双子のジェミーとミニー」

 

 

「ピーリッピーリッ」

 

 

「ジェミーとミニー?」

 

 

「双子宮の星霊ジェミニ。私も星霊魔導士だゾ」

 

 

エンジェルが自分と同じ星霊魔導士だと聞いて、驚愕するルーシィ。

 

 

「(あたしたちが決して〝闇〟に落ちないように、六魔将軍(オラシオンセイス)に善の心が宿る事もない!! そんな甘えた考えじゃやられる!!)」

 

 

そんな事を考えながら、ルーシィは冷静に状況を確認する。

 

 

「(ヒビキとヴァイスさんも…ナツとティアナも戦えない。あたしがなんとかしなきゃ!! ギルドが危ないんだ!!!)」

 

 

内心でそう決意し、覚悟を決めた表情をするルーシィ。

 

 

「(幸い、ここは川……水がある!!! ついてるわ)」

 

 

「私…君の持ってる鍵が欲しいの、ルーシィちゃん」

 

 

エンジェルの言葉を意にも介さず、ルーシィは鍵を構える。

 

 

「開け!!! 宝瓶の扉…」

 

 

「ジェミニ閉門」

 

 

「アクエリアス!!!!」

 

 

鍵を川の水に突き刺して、アクエリアスを召喚するルーシィ。対してエンジェルは、ジェミニを引っ込める。

 

 

「やっちゃって!!! あたしも一緒で構わないからっ!!!」

 

 

「最初からそのつもりだよ!!!」

 

 

「最初からって……」

 

 

アクエリアスの物騒な発言に、少なからず引いたルーシィ。

 

 

「全員まとめて吹っ飛びなァ!!!!」

 

 

恐ろしい形相で瓶を振るい、水で全てを吹き飛ばそうとするアクエリアス。しかし、エンジェルは特に慌てたようすもなく、一本の金色の鍵を構える。

 

 

「開け、天蠍宮の扉」

 

 

「黄道十二門!!?」

 

 

「え?」

 

 

「スコーピオン!!!!」

 

 

ルーシィとアクエリアスが驚愕している間に、星霊界の扉が開かれ……

 

 

「ウィーアー!!! イェイ!!!」

 

 

そこからサソリの尻尾を模したような銃を持った男性の星霊…スコーピオンが現れた。

 

 

「スコーピォぉぉん♪」

 

 

「はいいっ!!?」

 

 

すると、そんなスコーピオンを見た途端、先ほどの恐ろしい形相が一変し、ネコ撫で声になるアクエリアス。

 

 

「ウィーアー、元気かい? アクエリアス」

 

 

「私……さみしかったわ。ぐすぐす」

 

 

「…………!!!」

 

 

今までに見た事のないアクエリアスの姿に、言葉を失い絶句するルーシィ。

 

 

「ま…まさか……」

 

 

「私の彼氏♪」

 

 

「ウィーアー、初めましてアクエリアスのオーナー」

 

 

「キターーーー!!!!」

 

 

以前から話題に上がっていたアクエリアスの彼氏を見て、思わずルーシィはそう叫んでしまう。

 

 

「スコーピオンの前で余計な事言ってみろテメェ…お? 水死体にしてやるからな…」

 

 

「はい」

 

 

恐ろしい形相でそう脅迫され、頷くルーシィ。どうやらアクエリアスはスコーピオンの前だと猫を被っているようだ。

 

 

「ねぇん♪お食事に行かない?」

 

 

「オーロラの見えるレストランがあるんだ。ウィーアー、そう言うわけで帰ってもいいかい? エンジェル」

 

 

「どうぞ」

 

 

「ちょ……ちょっと!!! アクエリアス!! 待って!!! いやーーー!!!!」

 

 

ルーシィの静止の言葉も虚しく、アクエリアスはスコーピオンと共に星霊界へと帰ってしまった。

 

 

「星霊同士の相関図も知らない小娘は、私には勝てないゾ」

 

 

「きゃっ!」

 

 

エンジェルの平手打ちを喰らい、川の中へと倒れるルーシィ。

 

 

「(どうしよう…最強の星霊が封じられた…いや……もう一人いるじゃない!!! 最強の星霊)」

 

 

そう思い立ったルーシィはすぐさま立ち上がり、次なる鍵を構える。

 

 

「開け!!! 獅子宮の扉!!! ロキ!!!!」

 

 

「王子様参上!!!」

 

 

現れたのは…ルーシィの星霊であり、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士でもある星霊……獅子宮のレオこと、ロキであった。

 

 

「レ…レオ……」

 

 

「あいつ……ルーシィと契約してたのか……」

 

 

ヒビキとヴァイスはロキと面識があるのか、彼の姿を見て少々驚愕していた。

 

 

「お願い!! あいつを倒さないとギルドが……!!」

 

 

「お安い御用さ」

 

 

「クス、言わなかったかしら? 大切なのは相関図」

 

 

「「!!」」

 

 

そう言ってエンジェルは更にもう一本の金色の鍵を構える。

 

 

 

「開け、白羊宮の扉。アリエス!!!!」

 

 

 

そして現れたのは…羊の角を生やし、モコモコとした服を着た少女の星霊……アリエスであった。。

 

 

かつては青い天馬(ブルーペガサス)の星霊魔導士…カレン・リリカと契約していた星霊の1体で、彼女から手酷い扱いを受けていた星霊。ロキが星霊界を追放される切っ掛けとなった者と言っても過言ではない星霊であった。

 

 

「ごめんなさい、レオ」

 

 

「アリエス…」

 

 

「カレンの星霊……」

 

 

「こりゃあ…また随分と懐かしい奴が出てきたな……」

 

 

「そ……そんな…これじゃロキまで戦えないじゃない」

 

 

ロキにとって戦い辛い相手であろうアリエスの登場に、ルーシィは声を震わせる。

 

 

「何でアンタがカレンの星霊を!?」

 

 

「私が殺したんだもの。これはその時の戦利品だゾ」

 

 

「あう」

 

 

まるで物を扱うかのようにポンポンとアリエスの頭を叩くエンジェルを見て、ロキは険しい表情を浮かべる。

 

しかし……険しい表情をしているのはヒビキも一緒であった。

 

 

「(カレンを殺した……? この女が……僕の…恋人を……殺した? 星霊魔導士が…カレンの命を……)」

 

 

体を震わせ、虚ろな目でそう考えるヒビキ。

 

 

「おいヒビキ!!! てめぇバカな事考えてんじゃねえだろうなっ!!!?」

 

 

「!!!」

 

 

すると、ヴァイスの一喝により虚ろだったヒビキの目に光が宿る。

 

 

「アイツが憎いのはオレも同じだ!!! けど星霊魔導士自体を憎むのはお門違いだっ!!! そんなんじゃ、ニルヴァーナに心を持ってかれちまうぞっ!!!!」

 

 

「(そうだ……こんな事を考えていたらニルヴァーナに心を奪われてしまう。くそっ……ダメ…だ…考えちゃ……)」

 

 

ヴァイスの言葉によりギリギリのところで踏み止まったヒビキだが、それでも彼の心は完全には晴れなかった。

 

一方ルーシィは、ロキとアリエスの予想外の再会に、複雑そうな表情を見せる。

 

 

「せっかく会えたのにこんなのって……閉じ…」

 

 

ロキを戻そうとするルーシィだが、その行動はロキ自身に止められた。

 

 

「見くびらないでくれ、ルーシィ。たとえかつての友だとしても……所有者(オーナー)が違えば敵同士、主の為に戦うのが星霊」

 

 

「たとえ恩のある相手だとしても、主の為なら敵を討つ」

 

 

「それが僕たちの……」

 

 

「私たちの……」

 

 

 

「「誇りだ(なの)!!!!」」

 

 

 

そう言うと、ロキは両手に獅子の光…アリエスはモコモコとした羊毛を纏い、戦いを始めた。

 

 

「あっれ~? やるんだぁ? ま…これはこれで面白いからよしとするゾ」

 

 

「(違う……こんなの、間違ってる……)」

 

 

そんなロキとアリエスの戦いを、エンジェルは面白そうに眺め、対照的にルーシィは辛そうな表情を浮かべている。

 

 

「う~ん…さすがに戦闘用星霊のレオじゃ部が悪いか…よーし」

 

 

エンジェルはそう言うと、今度は銀色の鍵を取り出す。

 

 

「開け、彫刻具座の扉、カエルム」

 

 

エンジェルが新たに呼び出したのは、機械のような容姿をした星霊であった。

 

 

そしてそのカエルムから発射されたレーザーは……なん味方のアリエスもろとも、ロキを貫いた。

 

 

「がっ!」

 

 

「いぎっ!」

 

 

「あははっ!! うまくいったゾー♪」

 

 

「(味方の星霊ごと…)」

 

 

エンジェルの非道な行いに、呆然とするルーシィ。

 

 

「アリエス…」

 

 

「レオ…」

 

 

「すまないルーシィ」

 

 

「(いい所有者(オーナー)に会えたんだね。よかった……)」

 

 

「ぐっ!」

 

 

「ああっ!」

 

 

そして大きなダメージを負ったロキとアリエスは星霊界へと戻っていった。

 

 

「見たかしら? これが二体同時開門。んー♪強力なレオはこれでしばらく使えないゾ」

 

 

「信じらんない……」

 

 

「なにが~? どうせ星霊なんて死なないんだし、いーじゃない」

 

 

「でも痛みはあるんだ…感情だってあるんだ。あんた、それでも星霊魔導士なのっ!!!?」

 

 

ルーシィは涙を浮かべながらそう叫ぶと、新たに鍵を取り出す。

 

 

「開け、金牛宮の扉!!! タウロス!!!!」

 

 

「MOーーー!!!」

 

 

召喚されたタウロスは巨大な斧を構えて、エンジェルへと突進していく。

 

 

「ジェミニ」

 

 

それに対しエンジェルは、再びジェミニ召喚し、またもやルーシィに変身させる。

 

 

「ウフ♪」

 

 

「MOホ~!!!!」

 

 

そしてルーシィ(ジェミニ)の色仕掛けに興奮したタウロスは、剣に変形したカエルムを持ったルーシィ(ジェミニ)によって斬り裂かれ、消えていった。

 

 

「タウロス!!!! え? あれ?」

 

 

すると、突然ルーシィがガクンッと崩れて膝をつく。

 

 

「たいして魔力もないくせに、そんなに星霊バンバン使うからだゾ」

 

 

「そんな…あぐっ!」

 

 

魔力切れによりまとも動く事すら困難となったルーシィに、ルーシィ(ジェミニ)の容赦ない蹴りが襲う。

 

 

「自分に殺されるってのもマヌケな話だゾ。あははははっ!」

 

 

何度も何度も蹴られるルーシィを見て、大笑いするエンジェル。

 

 

「ヒデェ…これじゃなぶり殺しだ……助けねえと…ぐあっ!!!」

 

 

そんなルーシィを助けようとして体を動かすヴァイスだが、腹部と背中のダメージのせいで思ったように動くことができなかった。

 

 

「あはははっ! いい気味ー!!!」

 

 

「いいきみ…」

 

 

大笑いするエンジェルに同意するように、口元に邪悪な笑みを浮かべるヒビキ。

 

 

「がはっ、ゲホッゲホッ」

 

 

しかし、ルーシィは咳き込みながらも起き上がり、エンジェルを睨みつける。

 

 

「な~に? その目、ムカツクゾ」

 

 

「アリエスを解放して」

 

 

「は?」

 

 

「あのコ……前の所有者(オーナー)にいじめられてて……」

 

 

ザシュッ!!

 

 

「きゃああああああっ!!!!!」

 

 

アリエスを解放するように頼み込むルーシィの腕を、ルーシィ(ジェミニ)はカエルムで容赦なく斬り付ける。

 

 

「人にものを頼む時は何て言うのかな?」

 

 

「お…お願い…します…レオ(ロキ)と一緒にいさせてあげたいの…それができるのは、あたしたち星霊魔導士だけなんだ……」

 

 

涙を流しながら必死でそう懇願するルーシィ。

 

 

「ただで?」

 

 

「何でもあげる…鍵以外なら、あたしの何でもあげる!!!」

 

 

「じゃあ命ね」

 

 

だが……ルーシィの必死の頼みを、エンジェルはそう切り捨てた。

 

 

「ジェミニ、やりなさい!」

 

 

エンジェルの命令に従い、ゆっくりとカエルムを振り上げるルーシィ(ジェミニ)。

 

しかしルーシィ……ジェミニはぷるぷると体を震わせて、その動きを止めた。

 

 

「ジェミニ!?」

 

 

「きれいな声が……頭の中に響くんだ」

 

 

そう言うジェミニの脳裏には……自身が変身しているルーシィ本人の記憶が浮かび上がっていた。

 

 

 

『ママ……あたし、星霊大好き』

 

『星霊は盾じゃないの!!!』

 

『目の前で消えていく仲間を放っておける訳ないでしょ!』

 

 

そしてその記憶は全て……ルーシィがどれほど星霊の事を想っているかを物語っていた。

 

 

 

「できないよ……ルーシィは心から愛してるんだ……星霊(ぼくたち)を」

 

 

 

ルーシィの優しい心に触れて、ジェミニは涙を流しながらそう言い放った。そしてそれを聞いたエンジェルは表情が驚愕へと変わる。

 

 

「ジェミニ…」

 

 

「消えろォ!!! この役立たずがっ!!!!」

 

 

そんなジェミニに激昂したエンジェルは、強制閉門でジェミニを消した。

 

 

すると……突然ヒビキがゆっくりと立ち上がり、ルーシィのもとへと歩み寄っていく。

 

 

そして彼女の背後に立つと、何とヒビキはルーシィの首を締めるかのように手を置いた。

 

 

「え?」

 

 

「お…おいヒビキ……!!」

 

 

「まさか…!! 闇に落ちたのかこの男!!! あは…あははは!!!」

 

 

そんなヒビキを見て、動揺するルーシィとヴァイス…そしてまたもや大笑いを上げるエンジェル。

 

 

「ヒビ…キ…」

 

 

「じっとして」

 

 

しかし、ヒビキの両手はルーシィの首から離れ、そのまま両手をゆっくりと彼女の頭に置く。

 

 

「〝古文書(アーカイブ)〟が君に、一度だけ超魔法の知識を与える」

 

 

そう言うと、ヒビキは古文書(アーカイブ)の力を使って、ルーシィの頭に魔法の知識を流し込む。

 

 

「うぁっ!」

 

 

「おおっ!!」

 

 

「な…」

 

 

そんなヒビキの行動にルーシィは戸惑い、ヴァイスは小さく歓喜の声を上げ、エンジェルは驚愕する。

 

 

「こ…これ…なに……!? 頭の中に知らない図形が……」

 

 

次々と流れ込んでくる魔法の知識に戸惑うルーシィ。

 

 

「ったく…ヒヤヒヤさせんじゃねえよヒビキ」

 

 

「すまない…だけど危なかった…もう少しで僕は闇に落ちる所だった。だけど彼女と星霊との絆が、僕を光で包んだ……」

 

 

「人間と星霊の友情……それがお前を闇から引き戻したって訳かい」

 

 

「あぁ……彼女なら、この魔法が……」

 

 

ヴァイスとそのような会話をしながらも、ヒビキはルーシィの頭に知識を流し続ける。

 

 

「おのれェ~っ!!! カエルム!!! やるよォーー!!!!」

 

 

それを見たエンジェルは、カエルムを構えてルーシィへと駆け出す。

 

 

「頼んだ…ルーシィ……」

 

 

そして知識を流し終えたヒビキは、力尽きたようにその場に倒れる。

 

 

「天を測り、天を開き、あまねく全ての星々。その輝きをもって我に姿を示せ……テトラビブロスよ…我は星々の支配者…アスペクトは完全なり。荒ぶる門を開放せよ」

 

 

ルーシィがぶつぶつと呪文のようなものを唱え始めると、同時にエンジェルの周囲にいくつも小さな光の球体が出現する。

 

 

「全天88星」

 

 

「な…何よこれぇ! ちょっ…」

 

 

周囲に次々と出現する星のような球体に動揺するエンジェル。

 

 

「光る」

 

 

そして次の瞬間……

 

 

 

 

 

「ウラノ・メトリア!!!!!」

 

 

 

 

 

「きゃあああああああ!!!!」

 

 

まるで星空のような輝きがエンジェルを包み込み、一瞬で彼女をボロボロにして吹き飛ばした。

 

 

「!?」

 

 

そして光が消えると、ルーシィはハッと正気に戻る。

 

 

ザパーン!

 

 

「きゃふん」

 

 

「ひっ!」

 

 

ルーシィはボロボロになって川に落ちてきたエンジェルにビクッと体を震わせる。

 

 

「……!? あれ? あたし…何が起こったの?」

 

 

キョトンとした表情で辺りを見回すルーシィ。どうやら先ほどまでの事をまったく覚えていないようだ。

 

 

「ヒビキ!! ハッピー!! ヴァイスさん!!」

 

 

「おーう、オレは起きてるぞー」

 

 

木に身を預けて、キズを抑えながら座り込んでいるヴァイスは手をヒラヒラと振りながらそう答える。

 

しかし、気を失っているヒビキと氷付けになっているハッピーからの返事は当然なかった。

 

 

「ルーシィ、ヒビキと青ネコはオレが見とくから、お前さんはあっちを助けてやれ」

 

 

そう言ってヴァイスが指差す先には、イカダの上で未だに乗り物酔いで苦しんでいるナツと気絶しているティアナの姿があった。

 

 

「そうだ!! ナツ!!! ティアナ!!!」

 

 

「おおお…」

 

 

ルーシィが慌ててイカダの上の二人に駆け寄ろうとすると……

 

 

ザバァ!

 

 

「!」

 

 

何と、ボロボロの姿にも関わらず、カエルムを構えたエンジェルが起き上がってきた。

 

 

「負け…な…い…ゾ……六魔将軍(オラシオンセイス)…は…負け…ない……」

 

 

「(なに…コレ…全然力が入らない…てか……なんでコイツ、こんなにボロボロなの!?)」

 

 

ウラノ・メトリアの影響で完全に魔力を使い果たしたルーシィは、その場から動く事が出来なかった。

 

 

「一人一殺…朽ち果てろォ!!!!」

 

 

カエルムを砲台へと変形させて、ルーシィに向かって砲撃を放つエンジェル。

 

すると……

 

 

 

「ショット!!!!」

 

 

 

ズガァァアン!!!!

 

 

ヴァイスのストームレイダーから発射され射撃魔法が、砲撃の軌道を変えたため、ルーシィに当たる事はなかった。

 

 

「は…外した……」

 

 

「ヴァイスさん!!!」

 

 

「さっきからいいトコなしだからな。こんぐらいはさせてくれや」

 

 

そう言いながらストームレイダーを肩に担いで笑みを浮かべるヴァイス。しかし……

 

 

ゴガッ!

 

 

「あ…」

 

 

ヴァイスが軌道を変えた砲撃は、何とナツとティアナが乗ったイカダの進行を止めていた木片を粉々に砕いてしまった。そうなると当然……

 

 

「おお、おおおお」

 

 

「ナツ!!!」

 

 

イカダはゆっくりと動き出し、そのまま川の流れに流されていく。

 

 

「(私の祈り……天使のように……空に消えたい……)

 

 

って水の中かい!!」

 

 

先ほどの攻撃で力尽きたエンジェルは、そのまま空ではなく、川の水の中へと消えていった。

 

 

「ナツーー!!!! ティアナーー!!!!」

 

 

「う…うご…うご……」

 

 

「しっかりしなさい!!! ティアナを掴んで、手を伸ばして!!! ナツ!!!!」

 

 

「おおおお……」

 

 

そう言ってルーシィはナツに向かって手を伸ばすが、ナツは情けない声を上げるだけであった。

 

 

「もォっ!」

 

 

そしてようやくナツとティアナの手を掴んだルーシィ。

 

 

しかしその瞬間、イカダがガクンッと揺れる。

 

 

「きゃっ」

 

 

「うぷ」

 

 

その拍子に、ルーシィまでもがイカダに乗り上げてしまう。そして更に、流れるイカダのスピードが増した。

 

 

「何よォ~急流~!!!?」

 

 

「おわぶぁぁあああ!」

 

 

どうやら川の急流に入ってしまったようで、流れるイカダのスピードがどんどん増していく。

 

 

そしてそのイカダの行き着く先は……大きな滝であった。

 

 

「ちょっとォ!!! ウソでしょオ!!?」

 

 

目の前が滝だという事に驚愕するルーシィ。

 

しかし…自分の腕の中には乗り物酔いで苦しむナツと、気を失っているティアナがいる。そう自覚したルーシィは覚悟を決めて、2人を守るようにギュッと抱き締める。

 

そしてついに……

 

 

 

「ああああああああああ!!!!」

 

 

 

3人は滝の上から墜落し、滝壺へと消えていったのであった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その頃……封印が解かれたニルヴァーナへと向かっていたブレインは、顔に走った痛みに表情を歪める。

 

 

「バ…バカな……エンジェルまでが……」

 

 

ブレインがそう言うと同時に、彼の顔に刻まれた模様がまた一つ消えていく。

 

 

「うぬらの死、無駄にはせんぞ」

 

 

そう呟くと、ブレインは再びニルヴァーナの黒い光へと向かって歩き出す。

 

 

 

 

 

「光崩しは直に始まるのだ!!!!!」

 

 

 

 

 

つづく

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