第六十八話
『ゼロ』
エルザが最後の
ゴキィン!
「んがっ!!?」
「な!!」
「ナツ!!?」
バコォ!
「ぐはっ!」
「グレイさん!!」
ドカッ! バキッ!
「きゃあ!!」
「うわぁ!!」
なんと……ブレインの杖であり、七人目の
「ティアナ!! スバル!!」
殴り飛ばされたティアナとスバルの名を叫ぶルーシィ。すると……
「ほう」
「きゃああああああっ!!!!」
いつの間にかルーシィの後ろに回りこんだクロドアが、彼女のスカートをピロンと捲り、下着を覗き込んでいた。
「ヘンターイ!!!」
「ハハハッ! 小娘の下着など見ても萎えるわ」
「ひどっ!」
クロドアを殴ろうと拳を振るうルーシィだが、呆気なく回避され、逆に頭突きを喰らわせられる。
「こいつ…」
「棒切れのくせに」
「意外と強い…」
「七人目の
「やらしい奴……」
「大丈夫? ルーシィ」
そう言ってクロドアを睨みつける妖精メンバーたち。すると……
「む」
「!」
突然何かに気づいたかのように顔を歪めるクロドア。
「六魔が…全滅!!?」
叫びながら信じられないと言いたげな表情をするクロドア。
「いかん!!! いかんぞ!!!! あの方が…来る!!!!!」
「あ?」
「あの方?」
尋常ではない怯え方をするクロドアの言う「あの方」と言う言葉に、グレイとスバルは首を傾げる。
「あわわわ…」
「何だっていうんだよ…」
「ブレインにはもう一つの人格がある」
グレイの問い掛けに答えるように、震える言葉で話し始めるクロドア。
「知識を好み〝
「ゼロ!?」
「あまりに凶悪で強大な魔力の為、ブレイン自身がその存在を六つの鍵で封じた」
「もしかしてそれが…
「ブレインの顔の模様は、そのゼロって奴を封印する鍵だったのね!!」
「生体リンク魔法により、六つの〝魔〟が崩れる時……〝
そう言葉を終えると同時に、ぞわっと何かを感じ取ったクロドアは、部屋に大きく開いた穴を凝視する。
するとそこには……一つの人影が見えていた。
「お…おかえりなさい!!!! マスターゼロ!!!!」
「マスター!?」
そう言って人影に向かって地面に頭を付けるクロドアを見て、ナツたちも穴の方に視線を向ける。
そこには……顔と服装こそはブレインの物だが、肌の色が白くなり、声も荒々しいモノとなり、まるで別人のような男が歩み寄ってきていた。
「ずいぶん面白ェ事になってるな、クロドア。あのミッドナイトまでやられたのか?」
「はっ!!!! も…申し訳ありません!!!!」
「それにしても、久しいなァこの感じ。この肉体…この声…この魔力…全てが懐かしい」
そう言うと、男は着ていたブレインの服を脱ぎ捨てる。
「後はオレがやる。下がってろクロドア」
「ははーっ」
そして男は体中に魔力を纏い、換装の要領で新たな服を身に纏うと、目の前のナツたちを睨みつける。
「小僧ども、ずいぶんとうちのギルドを食い散らかしてくれたなァ。マスターとして、オレがケジメを取らしてもらうぜ」
その男こそ…ブレインの裏の人格であり
「こいつが、ゼロ!!?」
「
「燃えてきただろ? ナツ」
「こんな気持ち悪ィ魔力初めてだ……」
「えぇ、ファントムの時のジョゼ……楽園の塔でのジェラール以上に、不気味な魔力を感じるわ……」
ゼロと真正面から向き合う……ただそれだけでナツたち妖精メンバーは、ゼロから漂う気味悪い魔力で、体を震わせていた。
「そうだな……まずは
ゼロが目を付けたのは、なんと目の前のナツたちではなく、気を失い倒れているジュラであった。
「動けねえ相手に攻撃すんのかよテメェは!!!!」
「動けるかどうかはたいした問題じゃない。形あるものを壊すのが面白ェんだろうが!!!!」
そう言って、ゼロはグレイに向かって怨霊のような不気味な魔力を放つ。
「
すぐさま氷の盾を展開し、それを防ごうとするグレイだが……
バキバキバキバキ…
氷の盾は数秒も持たずに、段々と亀裂が入っていった。
「オレの
そして盾を完全に破壊され、ゼロの魔力によって吹き飛ばされるグレイ。
「!!」
すると、拳に炎を纏ったナツがゼロの懐に入り込み、拳を叩き込もうとする。
しかし、ゼロは素早く体を捻ってそれを回避し、裏拳をナツの顔面に叩き込んだ。
「ぐああぁぁぁあ!!!」
グレイに続いてナツまでもが吹き飛ばされ、壁に叩きつけられる。
「このっ!!」
「てぇぇい!!!」
続いて、ダガーモードとなったクロスミラージュを構えたティアナと、リボルバーナックルを装着したスバルが、挟み込むようにゼロに襲い掛かる。
「フン」
ガッ!
「「!?」」
しかしゼロは、そんな二人の頭を両手で掴むと……
ゴッッ!!!
「がっ!!!」
「ぎっ!!!」
掴んだ2人の頭をそのまま容赦なくぶつけ合わせる。
「オラァ!!!」
「あぁぁああああ!!!」
「うあぁぁぁああ!!!」
そしてそのまま投げ捨てるように、ティアナとスバルを壁に叩きつける。
「そんな…」
次々とやられていく仲間を見て、ガクガクと体を震わせるルーシィとハッピー。
「(体が動かない……怖い……)」
恐怖により動けなくなったルーシィに対し、ゼロはすっと手を翳し……
「きゃあああああ!!!」
「わぁああああ!!!」
地面から怨霊のような魔力を出現させ、ルーシィとハッピーを吹き飛ばす。
瞬く間にナツたち
「さ…さすがマスターゼロ!!! お見事!!!! この厄介なガキどもをこうもあっさり」
そんなゼロに対してクロドアは賞賛の言葉を口にするが……
「まだ死んでねえな」
「へ?」
ゼロのそんな言葉を聞いて、呆気に取られる。
「まだ死んでねえよなァガキどもォォ!!!! だって形があるじゃねえか!!!!」
そう言って倒れているナツたちに更なる追撃を行なうゼロ。
「ガハハハハハハッ!!」
「ひいいいっ!!! マスターゼロ!! それ以上は……」
ドッ!! ドゴッ!! バキッ!! ドガッ!! ぐしゃっ!!!
それからその部屋には……ゼロの不気味な笑い声とクロドアの恐怖の悲鳴……そして、何かが壊れるような耳障りな音だけが響いていった。
その後……ナツたちへの暴行を終えたゼロは、クロドアと共に王の間へとやって来ていた。
「マスターゼロ、
「ふぅん」
ゼロはニルヴァーナの行く先に見える、
「ニルヴァーナを封印した一族のギルドです。あそこさえ潰せば、再び封印されるのを防げますぞ」
「くだらねえな」
「え?」
ゼロが呟いた言葉に首を傾げるクロドア。
「くだらねえんだよ!!!!」
「がっ!」
次の瞬間、ゼロの手によって杖の棒の部分が握りつぶされるクロドア。
「な…なにを…マスターゼロ!!! おぐはっ!」
そして今度は顔の部分を踏み潰され、クロドアは完全に沈黙した。
「オレはただ破壊してえんだよ!!!! 何もかも全てなァァーー!!!!」
狂気を孕んだ表情で、そう叫ぶゼロ。
「これが最初の一撃!!!! 理由など無い!!!! そこに形があるから無くすまで!!!! ニルヴァーナ発射だァァ!!!!」
ゼロがそう宣言すると同時に、ニルヴァーナから巨大な砲台が出現し、標的を
◆◇◆◇◆◇◆◇
一方その頃……
「ジェラール!!」
「「ジェラールさん!!」」
「エルザも一緒よ」
「ウェンディ、エリオ、キャロ。無事だったか、よかった」
ジェラールを探していたウェンディたち化猫メンバー4人が、エルザとジェラールの2人と合流する。
「君たちは…!?」
「!?(やっぱり私の事…)」
「「…………」」
ジェラールに覚えてもらっていないということに、少なからずショックを受けるウェンディ、エリオ、キャロの3人。
「ジェラールは記憶が混乱している…私の事も、君たちの事も覚えていないらしい」
「え?」
「記憶が…!?」
「記憶喪失……そうか、だから僕たちの事も……」
エルザの話を聞いて、何故ジェラールが自分たちの事を覚えていないか理解する3人。
「もしかしてアンタ、ニルヴァーナの止め方まで忘れてんじゃないでしょうね!!!」
「もはや自律崩壊魔法陣も効かない。これ以上打つ手がないんだ。すまない」
「そんな…」
「それじゃあ…私たちのギルドは……!!」
「もうすぐそこまで来ているのに……!!」
ジェラールの言葉を聞いて、絶望の表情を浮かべる化猫メンバーの4人。すると……
ゴゴゴゴゴゴ…
「何だ?」
突然地響きが鳴り始め、その音がする方へと視線を向けると、そこで今にもニルヴァーナを発射しようとしている砲台が目に映った。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「マスタ~」
「ひえ~」
「ここまでだ……」
「ううう…」
ローバウルに寄り添うように身を寄せ合う
「何をうろたえる。これがワシ等の運命、なぶら重き罪の制裁」
◆◇◆◇◆◇◆◇
「善意よ、滅びるがいいーーーー!!!!」
◆◇◆◇◆◇◆◇
「まさか、ニルヴァーナを撃つのか!!?」
「「やめてぇーーー!!!!」」
「みんなーーーーー!!!!」
ウェンディ…エリオ…キャロ……3人の絶叫にも似た悲痛の叫びが響き渡る。
そして無情にも……砲台から巨大な光線……ニルヴァーナが発射されてしまった。
しかし……
「何!?」
「外れた!!?」
発射されたニルヴァーナは猫型テントの耳の部分を掠めただけで、本体……つまりギルド自体には当たることなく空へと流れていった。
その原因は……ニルヴァーナ本体の足に、上空から降ってきた攻撃が直撃し、それによってニルヴァーナ本体が大きく仰け反り、砲台が上に逸れてしまったからである。
「「きゃっ!」」
「うわっ!」
「くっ!」
「何が…」
地面が傾いたことにより、エルザたちは体制を崩すが何とか持ちこたえる。
「あれは…」
そしてエルザが空へと視線を向け、そこに映ったのは……
「魔導爆撃艇、
なんと……六魔たちの襲撃により大破したハズのクリスティーナが飛んでいたのだった。
〈聞こえるかい!? 誰か…無事なら返事をしてくれ!!!!〉
すると、エルザたちの頭の中に念話が聞こえてくる。
「ヒビキか?」
「ヒビキさん!!」
「聞こえてます、ヒビキさん!」
「わぁ!」
〈エルザさん? ウェンディちゃん、キャロちゃん、エリオ君も無事なんだね〉
エルザたちの声を聞いて、安堵するヒビキ。
〈私も一応無事だぞ〉
〈先輩!! よかった!!〉
どうやらいつの間にか、一夜もニルヴァーナ本体に乗り込んでいたようである。
「どうなっている? クリスティーナは確か撃墜されて」
〈壊れた翼をリオン君の魔法で補い…ギンガさんのウィングロードで船全体を支えながら…シェリーさんの人形撃とレンの
「あんたたち…」
〈クリスティーナの本来持ってる魔導弾と融合させたんだよ…〉
〈かなり気合入れて撃つ込んでやったんだが……残念ながら足の一本すら壊せねえや……〉
〈それに……今ので…もう…魔力が…〉
〈おいイヴ!!!〉
ここでイヴからの念話が途切れる。どうやら彼は魔力の消費で気絶してしまったようだ。
「ありがとう、みんな…」
「そんなになってまで……僕たちのギルドを守ってくれて…」
「本当に…ありがとうございます……」
そんなボロボロの状態にも関わらず、自分たちのギルドの危機を救ってくれた事に、ウェンディたち3人は感謝の言葉を述べる。
〈聞いての通り、僕たちはすでに魔力の限界だ。もう船からの攻撃はできない〉
ヒビキがそう言うと同時に、クリスティーナがガクンッと高度を落とし始める。
「クリスティーナが!!! 落ちるわ!!!」
〈僕たちのことはいい!!! 最後にこれだけ聞いてくれ!!! 時間がかかったけど、ようやく〝
ヒビキのその報せに、全員が目を見開く。
「本当か!!?」
〈ニルヴァーナの足のようなものが8本あるだろう? その足…実は大地から魔力を吸収しているパイプのようになっているんだ。その魔力供給を制御する
「八つの
〈僕がタイミングを計ってあげたいけど、もう……念話がもちそうにない。くう!!〉
「ヒビキさん!!」
「ヒビキ!!!」
クリスティーナが地面に叩きつけられたことによって、ヒビキの悲鳴がエルザたちの頭に響く。
〈君たちの頭に、タイミングをアップロードした。君たちならきっとできる!! 信じてるよ〉
すると、その場にいる全員の頭に、ヒビキからの情報がアップロードされる。
「20分!?」
〈次のニルヴァーナが装填完了する時間だよ〉
つまり……20分後にニルヴァーナが発射される直前に八つの
〈無駄な事を〉
すると、ヒビキのものとは違う別の声が…念話を通して頭に響く。
「!!!」
〈誰だ!!?〉
「この声…」
「あのブレインって奴の声だっ!!!」
「僕の念話を〝ジャック〟したのか!!?」
〈オレはゼロ。
その声の主は正体は……ゼロであった。
〈
〈まずは褒めてやろう。まさかブレインと同じ〝
この口ぶりから察するに、どうやらブレインは〝
〈聞くがいい!! 光の魔導士たちよ!!! オレはこれより、全てのものを破壊する!!!! 手始めに仲間を5人破壊した。
〈ナツ君たちが…!?〉
〈おいおい…マジかよ……!?〉
「…………」
「そんなのウソよ!!!」
「そうだっ!!! あのナツさんたちがお前なんかに……!!!」
ゼロの話を聞いてヒビキとヴァイスは驚愕し、エルザは黙り込み、ウェンディとエリオは否定の言葉を口にする。だが、ゼロは構わず話を続ける。
〈テメェらは
そう言い残すと同時に、ゼロからの念話が途切れる。
〈ゼロとの念話が切れた…〉
「(ゼロに当たる確立は1/6。しかもエルザ以外では勝負にならんと見た方がいいか)」
頭の中でそう分析するジェラール。すると、突然シャルルが叫ぶように言葉を発した。
「待って!!! 8人も……いない…!?
「わ…私……破壊の魔法は使えません……ごめんなさい…」
「私も…唯一召喚できるフリードが、毒でしばらく召喚できないから……すみません…」
そう…攻撃魔法を持たないウェンディとキャロ、そしてシャルルを抜くと、
「こっちは3人だ、誰か他に動けるものはいないのか!!?」
念話を通してそう語りかけるエルザ。
〈私がいるではないか〉
〈一夜さん!!!〉
〈これで4人!!!〉
〈あと半分!!!〉
一夜を含めて動けるものは4人となった。
〈まずい……もう…僕の魔力が……念話が…切れ……〉
「あと4人だ!!! 誰か返事をしろーーー!!?」
エルザはそう叫ぶが、念話から帰ってくる返事は……なかった。
すると……
〈グレイ……立ち上がれ……お前は誇り高きウルの弟子だ。こんな奴等に負けるんじゃない〉
リオンが念話を通してグレイに語りかける。いや……リオンだけではない。
〈スバル……私はあなたがこの程度で倒れるような子じゃないのは知ってるわ。だって…あなたはどんなに勝負に負けても…どんなに打ちのめされても…諦めずに何度だって立ち上がれる強さを持っている……私の自慢の妹なんだから〉
〈私……ルーシィなんて大嫌い……ちょっと可愛いからって調子に乗っちゃってさ、バカでドジで弱っちいくせに……いつも…いつも一生懸命になっちゃってさ……死んだら嫌いになれませんわ、後味悪いから返事しなさいよ〉
ギンガはスバルに……シェリーはルーシィに向けてそれぞれ念話を通して語りかける。
「ナツさん……」
「ティアナさん……」
「オスネコ……」
「ナツ…ティアナ……」
上からエリオ、ウェンディ、シャルル、エルザがナツとティアナとハッピーに呼びかける。
〈ナツ君…ティアナちゃん…僕たちの…声が……〉
そしてヒビキがそう語りかけたその時……
「「聞こえてる!!!!!」」
みんなの呼び掛けに応え……ナツとティアナからの返事が……返ってきたのであった。
ニルヴァーナ発射まで……あと20分
つづく