LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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激闘!鉄の森

 

 

 

 

ララバイが〝集団呪殺魔法〟だとわかったエルザは街中でメンバーを乗せた魔導四輪を全力で走らせていた。

 

 

「エルザ! とばしすぎだぞ!」

 

 

「そうだよ! SEプラグが膨張してるじゃない!!」

 

 

魔導四輪は運転手の魔力を使って走っている。スピードを出せば出すほど消費する魔力が大きくなるので、今のエルザにはかなりの負担が掛かっている。しかしエルザは気にせず魔導四輪を走らせた。

 

 

「構わん。いよいよとなれば、棒切れでも戦うさ。それにお前たちがいるしな」

 

 

「「……………」」

 

 

そう言うエルザにグレイとなのはは何も言えなくなった。

 

 

一方、車内に居るメンバーは……

 

 

「何かルーシィに言うことあった気がする。忘れたけど」

 

 

「何?」

 

 

「だから忘れたんだって」

 

 

「気になるじゃない、思い出しなさいよ」

 

 

「ナツ、しっかりしなさい!」

 

 

「キモチ…悪……」

 

 

ハッピーとルーシィがそんな会話をしている隣では、乗り物酔いしているナツとそれを介抱するティアナの姿があった。

 

 

「ナツ!! 落ちるわよ!!」

 

 

「うおお……落としてくれ……」

 

 

「バカなこと言ってないでちゃんと座ってなさい!!」

 

 

「うーん、何だろ? ルーシィ、変。魚、おいしー。ルーシィ、変」

 

 

「変って!」

 

 

窓から飛び降りようとするナツをルーシィとティアナが止めている側で、ハッピーが何とか思い出そうとしていた。すると……

 

 

「あ!!」

 

 

「何だ、あれは……」

 

 

全員の視線の先には、なにやら煙が立ち上っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第八話

『激闘!鉄の森(アイゼンヴァルト)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、一同は煙が上がっている場所であるオシバナ駅に到着した。

 

 

『みなさん!! お下がりください。ここは危険です。ただいま列車の脱線事故により、駅へは入れません!!』

 

 

駅員が拡声器を持って野次馬に向かってそう説明していた。

 

 

「脱線?」

 

 

「いや、テロらしいよ」

 

 

一部の人にはバレていたが……

 

 

「行くぞ!」

 

 

「でも封鎖って」

 

 

「いちいち聞いてられっかよ」

 

 

「それどころじゃないしね」

 

 

「うぷ」

 

 

「ナツ! 人酔いしてんじゃないの!!!」

 

 

一同は人ごみを掻き分けて進んでいく。

 

 

「駅内の様子は?」

 

 

エルザが駅員一人を捕まえて現状を聞く。

 

 

「な…なんだね君!!!」

 

 

ゴッ!!

 

 

「うほっ!」

 

 

すると、エルザは駅員を頭突きで気絶させた。

 

 

「駅内の様子は?」

 

 

「は?」

 

 

ゴッ!!!

 

 

別の駅員も気絶させる。

 

 

「即答できる人しかいらないってことなのね」

 

 

「だんだんわかってきたろ?」

 

 

「あの人もあの人でメチャクチャなのよ……」

 

 

「あはは……」

 

 

その様子を他のメンバーは引き気味で眺めていた。

 

 

「それより、ナツ! そろそろ起きなさいよっ!!」

 

 

ティアナは自分の背中に覆い被さっているナツに向かってそう言うが……

 

 

「………………」

 

 

先ほどの乗り物のダメージが大きいのか、ナツは無反応である。

 

 

「……しょうがないわね」

 

 

そう言って、ティアナはナツを背負い、他のメンバーと共に駅の中へ突入した。

 

 

その後、突入したエルザ達の目に映ったのは、テロリスト鎮圧のために乗り込んだ軍隊が全滅している光景だった。

 

 

「ひいいっ!!」

 

 

「全滅!!!」

 

 

「相手は一つのギルドすなわち全員魔道士。軍の小隊では話にならんか……」

 

 

「急ごう! ホームは向こうだよ!!」

 

 

なのはが先導し、一同はホームへとたどり着いた。そこに居たのは……

 

 

「やはり来たな、妖精の尻尾(フェアリーテイル)

 

 

大勢の魔道士と大鎌を持った男、エリゴールだった。

 

 

「待ってたぜぇ」

 

 

「貴様がエリゴールだな」

 

 

「あれ…あの鎧の姉ちゃん…」

 

 

「なるほど…計画バレたのオマエのせいじゃん」

 

 

「貴様らの目的はなんだ?」

 

 

「場合によっては、それなりの対応をするよ」

 

 

エルザとなのはが殺気を滲ませながらそう言うが、エリゴールは動じない。

 

 

「まだわかんねぇのか? 駅には何がある?」

 

 

そう言って、エリゴールは風の魔法で宙に浮かぶ。

 

 

「ぶー」

 

 

すると、コツンっと駅の放送機を叩く。それが指し示す答えは一つ。

 

 

呪歌(ララバイ)を放送するつもりか!!?」

 

 

「ええ!?」

 

 

「嘘!?」

 

 

「何だと!?」

 

 

「何て酷いことを……!?」

 

 

「ふはははははっ!!!」

 

 

驚愕するエルザ達を見て、エリゴールは楽しそうに笑う。

 

 

「この駅の周辺には何百、何千もの野次馬どもが集まってる。いや…音量を上げれば町中に響くかな、死のメロディが」

 

 

「大量無差別殺人だと!?」

 

 

「これは粛清なのだ。権利を奪われた者の存在を知らずに権利を掲げ生活を保全している愚か者どもへのな。この不公平な世界を知らずに生きるのは罪だ。よって、死神が罰を与えに来た。死という名の罰をな!」

 

 

「そんなことをしても権利は戻ってこないわよっ!! それに元々、アンタたちの自業自得じゃない!!!」

 

 

エリゴールに向かって怒鳴るティアナ。しかしエリゴールはやはり動じない。

 

 

「ここまで来たらほしいのは権利じゃない、権力だ。権力があればすべての過去を流し、未来を支配することだってできる」

 

 

「あんた、バッカじゃないの!」

 

 

今度はルーシィは怒鳴るが、やはり通じない。

 

 

「残念だな、妖精(ハエ)ども。闇の時代を見る事なく死んじまうとは!!!」

 

 

「!!?」

 

 

カゲヤマと呼ばれた男がティアナに向かって影を伸ばす。それを見たティアナが迎え撃とうとしたその時……

 

 

「やっぱりオマエかぁ!!!」

 

 

乗り物酔いで気絶していたナツが影を防ぐ。

 

 

「……もう、やっと復活?」

 

 

「手間ぁかけたなティア。今度は地上戦だな!」

 

 

睨み合う妖精の尻尾(フェアリーテイル)鉄の森(アイゼンヴァルト)。その中で唯一、エリゴールだけが、不気味な笑みを浮かべていた。

 

 

「あとは任せたぞ。オレは笛を吹きに行く。身のほど知らずの妖精(ハエ)どもに…鉄の森(アイゼンヴァルト)の…闇の力を思い知らせてやれぃ」

 

 

そう言うと、エリゴールは窓を突き破って何処かへと行ってしまった。

 

 

「逃げるのか! エリゴール!!」

 

 

「くそっ! 向こうのブロックか!?」

 

 

声を上げるが、それが届くことはなかった。

 

 

「ナツ、グレイ! 二人で奴を追うんだ!」

 

 

「「む」」

 

 

エルザは二人にエリゴールを追うように言うと、二人はその言葉にぴたっと止まった。

 

 

「おまえたち二人の力を合わせればエリゴールにだって負けるはずがない」

 

 

「「むむ…」」

 

 

ナツとグレイは互いの顔を見合う。

 

 

「ティアナも着いていってあげて。あの二人じゃちょっと不安だから」

 

 

「わかりました!」

 

 

「ここは私となのはとルーシィでなんとかする」

 

 

「なんとか…って、あの数を女子三人で?」

 

 

「エリゴールは呪歌(ララバイ)をこの駅で使うつもりだ。それだけはなんとしても阻止しなければならない」

 

 

エルザはそう説明するが、当の二人は既に睨み合っていた。

 

 

「聞いているのかっ!!?」

 

 

「「も…もちろん!!」」

 

 

が、エルザの一喝ですぐに肩を組んでみせる。

 

 

「行け!!」

 

 

「はい!」

 

 

「「あいさー」」

 

 

そう言って、ナツとグレイ、そしてティアナはエリゴールを追っていった。その三人を、鉄の森(アイゼンヴァルト)の魔導士、レイユールとカゲヤマが追った。

 

 

「こいつ等を片づけたら私達もすぐに追うぞ」

 

 

「「うん」」

 

 

エルザの言葉に頷き、三人は戦闘体制を取る。

 

 

「女三人で何ができるやら…それにしても三人ともいい女だなぁ」

 

 

「殺すにはおしいぜ」

 

 

「とっつかまえ売っちまおう」

 

 

「待て待て、妖精の脱衣ショー見てからだ」

 

 

鉄の森(アイゼンヴァルト)の面々は下心丸出しの目で三人を見る。

 

 

「下劣な」

 

 

「気持ち悪いね」

 

 

そう言うと、エルザとなのはは手を翳す。

 

 

「これ以上妖精の尻尾(フェアリーテイル)を侮辱してみろ。貴様らの明日は約束できんぞ」

 

 

「少し…頭冷やそうか?」

 

 

すると、エルザの手には一本の剣、なのはの手には機械的な杖がどこからともなく現れ、それぞれの手に収まる。

 

 

「剣と杖が出てきた!! 魔法剣と魔法の杖(マジックロッド)!!!」

 

 

「珍しくもねぇ!」

 

 

「こっちにも魔法剣士と杖使いはぞろぞろいるぜぇ」

 

 

「その鎧ひんむいてやるわぁ!!!」

 

 

それを見たルーシィは驚愕するが、敵側は特に驚いた様子も無く、武器を手にして襲い掛かってくる。

 

 

だがその大群に、エルザは一人で突入し、次々と敵を斬り裂いていく。それだけではなく、武器を剣から槍、双剣、斧…と一瞬のうちに次々と変えて、敵をなぎ倒していく。

 

そしてなのはも……

 

 

「ディバインシューター……」

 

 

そう呟くと同時に、彼女の周りに数個の桜色の魔力弾が出現する。

 

 

「シュート!!」

 

 

そしてその魔力弾は相手の大群に向かって発射する。

 

 

「へっ! こんなモンなんてことねえ!!」

 

 

大群のうち一人がそう言って魔力弾を避ける。しかし……

 

 

「アクセル!!」

 

 

「なっ!? 曲がって…ぐはぁ!!」

 

 

何と、なのはの言葉と同時に魔力弾が弾道を変えて加速したのだ。そして発射した魔力弾は次々と相手に向かって被弾していく。

 

 

「こ、この女……なんて速さで〝換装〟するんだ!!?」

 

 

「こっちの女もヤベェ!〝圧縮砲撃〟を使ってくるぞ!!」

 

 

「換装? 圧縮砲撃?」

 

 

聞き慣れない単語にルーシィは首を傾げる。

 

 

「魔法剣はルーシィの星霊と似てて、別空間にストックされている武器を呼び出す原理なんだ。その武器を持ち帰ることを換装って言うんだ」

 

 

エルザの説明を終えたハッピーは、次になのはの魔法について説明する。

 

 

「圧縮砲撃って言うのはその名の通り、魔力を圧縮して放つ砲撃のことなんだ。ティアナの銃撃魔法と同じ原理だね。そしてなのはの杖…レイジングハートは砲撃魔法専用の魔法の杖(マジックロッド)で、使い方によって様々な砲撃を放つことが可能なんだ。さっきみたいに加速させたり、誘導させたりね」

 

 

「へぇ~…二人とも凄いなぁ」

 

 

その説明を聞いてそう声を漏らすルーシィ。すると、ハッピーが不敵に笑う。

 

 

「エルザとなのはのすごいトコはここからだよ」

 

 

「え?」

 

 

「エルザとなのは?」

 

 

ハッピーの意味深な言葉にルーシィは首を傾げ、敵側の太った男『カラッカ』は疑問を覚える。

 

 

「まだこんなにいるのか。面倒だ、一掃するぞ…なのは」

 

 

「了解!」

 

 

そう言うと、エルザが纏っていた鎧がはがれ始める。そしてなのははレイジングハートを構える。

 

 

「魔法剣士は通常〝武器〟を換装しながら戦う。だけどエルザは自分の能力を高める〝魔法の鎧〟にも換装出来るんだ。それがエルザの魔法…〝騎士(ザ・ナイト)〟」

 

 

ハッピーが説明している間に、エルザは羽のついた天使のようなに鎧…『天輪の鎧』を身に纏っていた。

 

 

「行くよ…レイジングハート」

 

 

なのはがそう呟くと同時に、レイジングハートの先端に桜色の魔力が集中する。

 

 

「そしてなのはの魔法…〝圧縮砲撃魔法〟は術者が込める魔力によってその威力も変わっていく。小細工はせずに〝砲撃を撃つこと〟だけに集中したなのはの砲撃魔法の威力は………圧倒的だよ」

 

 

ハッピーの説明を終えると同時に、エルザとなのはが動き出す。

 

 

 

循環の剣(サークル・ソード)!!!」

 

 

「ディバイン…バスター!!!」

 

 

 

『ぐあぁぁぁぁぁぁああああ!!!!』

 

 

エルザが放った無数の剣が大群を切り裂き、なのはの強力な砲撃が敵を吹き飛ばしたことにより、鉄の森(アイゼンヴァルト)のメンバーのほとんどが倒されていった。

 

 

「こんのヤロォ!!! オレ様が相手じゃあ!!!!」

 

 

そう言って、残った魔導士『ビアード』が片手に魔法を纏って突っ込んでいく。

 

 

「ま…間違いねえっ!!コイツらぁ妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強の女候補の二人……妖精女王(ティターニア)のエルザと…エース・オブ・エースのなのはだっ!!!」

 

 

カラッカが驚愕している間に、ビアードは二人によって倒されてしまった。

 

 

「ビアードが一撃かよっ!! ウソだろ!!?」

 

 

「すごぉぉーーい!!!」

 

 

それを見たカラッカは驚愕し、ルーシィは歓声の声を上げる。

 

 

「ひーー!」

 

 

すると、カラッカはその場から逃げ出して行った。それを見たエルザはルーシィに指示をだす。

 

 

「エリゴールのところに向かうかもしれん。ルーシィ追うんだ!」

 

 

「えーっ!? あたしがっ!?」

 

 

「頼む!」

 

 

「はいいっ!」

 

 

抗議しようとしたルーシィだが、エルザにひと睨みで引き受け、カラッカを追って行った。それを見送ったエルザは通常の鎧に戻る。

 

 

「ふぅ……」

 

 

「お疲れ様。やっぱり魔導四輪を飛ばしたのが堪えてるね」

 

 

「あぁ……あとは他のみんなに任せよう。私たちは住民の避難を」

 

 

「うん!」

 

 

そう言うと、二人は早速行動に移ったのだった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その頃、エリゴールを追っているナツ、グレイ、ティアナの三人はエリゴールを探して通路を走っていた。

 

 

「二人で力を合わせればだぁ?冗談じゃねえ」

 

 

「火と水じゃ力は一つになんねーしな。無理」

 

 

「「エリゴールなんかオレ一人で十分だっての!!!」」

 

 

「あーもー!! 喧嘩してる場合じゃないでしょ!!?」

 

 

口喧嘩をしている二人の間にティアナが入って止めようとする。すると、通路が二手に分かれているのが見えた。

 

 

「どっちだ?」

 

 

「二手に分かれりゃいいだろーが。オレは一人でいい。ティアナはナツと行け」

 

 

「わかったわ」

 

 

そう言うと、三人は分かれ道の前で止まる。

 

 

「いいかナツ、ティアナ。相手は危ねえ魔法をぶっ放そうとしてるバカヤロウだ。見つけたら叩き潰せ」

 

 

「それだけじゃねえだろ? 妖精の尻尾(フェアリーテイル)に喧嘩売ってきた大バカヤロウだ。黒コゲにしてやるよ」

 

 

そう言うと、ナツとグレイはニッと笑い合う。

 

 

「アンタたち、本当は仲いいでしょ?」

 

 

「!!! ふん!!」

 

 

ティアナに言われて気がついた二人はすぐに顔を背けた。

 

 

「……死ぬんじゃねーぞ」

 

 

グレイはボソッと呟く。

 

 

「ん?」

 

 

「なんでもねえよ!! さっさと行きやがれっ!!!」

 

 

そう言ってグレイは走って行き、それを見たナツとティアナも別の道を走って行った。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その頃、駅の前はたくさんの野次馬が集まっていた。すると、そこにエルザとなのはが姿を現す。

 

 

「き、君!! さっき強引に中に入った人だね!! 中のようすをどうなんだね!?」

 

 

駅員の質問を無視して、エルザが拡声器を奪い取り、野次馬に向かって言った。

 

 

「命が惜しい者は今すぐこの場から離れよ! 駅は邪悪なる魔導士どもに占拠されている! そしてその魔導士はここにいる人間すべてを殺すだけの魔法を放とうとしている! できるだけ遠くへ避難するんだ!」

 

 

その言葉に駅周辺にいる野次馬たちの声は一斉に静まり返った。だがその恐怖から逃げ出そうと、すぐさま慌てて駆け出していった。

 

 

「き…君! なぜそんなパニックになるようなことを!」

 

 

「人が大勢死ぬよりはマシだろう」

 

 

「それに、今言ったことは嘘じゃありません。貴方達も早く避難してください!」

 

 

なのはの言葉を聞いて、駅員たちも慌てて逃げていく。

 

 

「これでひとまず安心だね……」

 

 

「ああ、そうだな」

 

 

エルザがふっと笑みを零して振り返ると、とんでもない光景が映った。

 

 

「こ…これは!?」

 

 

「なに…これ?」

 

 

「駅が風に包まれている!!!!」

 

 

振り返れば、駅は風に包まれていた。その勢いはとても強く、まるで駅が台風の中に閉じ込められているようだった。

 

 

「ん?なぜ妖精(ハエ)が外に二匹…そうか、野次馬どもを逃がしたのはテメェらか、女王様とエース様よォ」

 

 

「「エリゴール!!!」」

 

 

声を掛けられ、振り返るとそこにはエリゴールが飛んでいた。

 

 

「貴様がこれを!?」

 

 

「てめえとは一度戦ってみたかったんだがな…。残念だ、今は相手をしてる暇がねぇ」

 

 

そう言うとエリゴールはエルザとなのは向かって手をかざし、風で吹き飛ばした。

 

 

「くっ!」

 

 

「きゃっ!」

 

 

二人はそのまま駅が纏う風の中に入れられてしまった。

 

 

「ちぃ、エリゴール!」

 

 

「! 待ってエルザさん!」

 

 

怒りを露にしたエルザは、なのはの静止を無視してそこから出ようと風に向かって駆けた。だか、エルザは見事なまでに弾き返された。

 

 

「あぐっ…!」

 

 

「エルザさん、大丈夫!?」

 

 

風に切り刻まれたエルザの手からは血が出ていた。

 

 

「やめておけ、この魔風壁は外からの一方通行だ。中から出ようとすれば風が体を切り刻む」

 

 

「これはいったい何の真似!?」

 

 

「鳥籠ならむハエ籠ってところか…にしてはちとデケェがな。ははっ」

 

 

なのはの問い掛けにバカにしたような笑い声で答えるエリゴールに、二人は悔しそうに拳を強く握る。

 

 

「てめえらのせいでだいぶ時間を無駄にしちまった。俺はこれで失礼させてもらうよ」

 

 

「どこへ行くつもり!?」

 

 

なのはは声を張り上げるも、返事は返ってこなかった。

 

 

「一体…どうなっているんだ…この駅が標的じゃないというのか!?」

 

 

「エリゴールの目的って……一体……?」

 

 

エリゴールの行動に疑問を持つ二人。するとなのはは、先ほど倒した敵の一人、ビアードに歩み寄る。

 

 

「教えて。エリゴールの……貴方達の目的はなに?」

 

 

「へ…へへ……誰が言うかよ……」

 

 

「……そう」

 

 

「うっ……」

 

 

すると、なのははビアードの眼前にレイジングハートを突きつける。この行動がさす意味はただ一つ…『答えないと撃つ』そう言う事だろう。それを察したビアードは観念したようにしゃべりだす。

 

 

「お、オレ達の目的は……呪歌(ララバイ)の放送なんかじゃ…ねえんだよ……本当の目的は…クローバーの町……」

 

 

「「!!?」」

 

 

それを聞いた二人は目を見開いた。

 

 

「クローバーの町……バカな…あの町は……!!」

 

 

「ギルドマスターたちが定例会をしている町!!! 本当の目的は、ギルドマスターの呪殺なの!!?」

 

 

鉄の森(アイゼンヴァルト)の本当の目的を知った二人は驚愕した。

 

 

「へ、へへへ……もう手遅れだ……エリゴールさんが呪歌(ララバイ)でギルドマスターどもを殺せば……!!」

 

 

ドンッ!!

 

 

ビアードはその先の言葉を発することが出来なかった。何故なら、無表情だが、確かな怒りを滲ませたなのはがビアードの顔の横スレスレに魔力弾を撃ち込んだからだ。

 

 

「まだ間に合う。早くあの風の解除の仕方を教えて。でないと…次は本気で撃つよ?」

 

 

なのはの無機質な声にビアードは顔を真っ青にして震え上がる。

 

 

「し、知らねぇんだよ……無理だって…魔風壁の解除なんて…オレたちができるわけねぇだろ……」

 

 

だがビアードから出てきた答えは知らないと言う言葉だった。すると……

 

 

「エルザ!! なのは!!」

 

 

「グレイか!?」

 

 

「無事だったんだね!」

 

 

どうやら既に戦いを終えたのであろう、傷だらけのグレイが二階から現れた。

 

 

「ナツとティアナは一緒じゃないのか?」

 

 

「はぐれた。つーかそれどころじゃねぇ! 鉄の森(アイゼンヴァルト)の本当の標的はこの先の町だ! じーさんどもの定例会の会場、奴はそこで呪歌(ララバイ)を使う気なんだ!!!」

 

 

「だいたいの話は彼から聞いた」

 

 

「けど、今駅には魔風壁が…」

 

 

「ああ! さっき見てきた!! 無理矢理出ようとすればミンチになるぜありゃ!」

 

 

二階から飛び降りて着地をしながらそう言うグレイ。

 

 

「こうしている間にもエリゴールはマスターたちのところへ近付いているというのに…」

 

 

「こいつらは魔風壁の消し方知らねぇのかよ!」

 

 

「ダメ…本当に知らないみたい」

 

 

どうにかして脱出する方法を考える三人。すると、エルザが思い出したようにハッとする。

 

 

「そういえば鉄の森(アイゼンヴァルト)の中にカゲと呼ばれてた奴がいたはずだ!! 奴は確かたった一人で呪歌(ララバイ)の封印を解除した!」

 

 

解除魔導士(ディスペラー)か!!?」

 

 

「それなら魔風壁も!!!」

 

 

「探すぞ!!! カゲを捕らえるんだ!!!」

 

 

脱出の糸口が見えてきた三人は急いでカゲヤマを探し始めた。

 

 

その後ろでビアードが邪悪な笑みを浮かべているのにも気付かずに……

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

一方その頃、ナツとティアナは……

 

 

「エリゴォォォォル!!!」

 

 

炎を纏った蹴りで壁をブチ破って突入するナツ。

 

 

「どこに隠れてんだぁぁあっ!!! コラァァアーーー!!!」

 

 

そう叫びながらエリゴールを探すナツ。そしてその部屋に居ないことを確認すると……

 

 

「次ぃっ!!」

 

 

その隣の部屋の壁も破壊した。すぐそこに扉があるのにも関わらず。

 

 

「やめなさいバカナツ!!!」

 

 

「うがっ」

 

 

そんなナツをティアナは拳骨で止める。

 

 

「アンタは扉ってものを知らないの!!? 何でイチイチ壁を壊すの!?」

 

 

「だってこうした方が早ぇだろ?」

 

 

「魔力の無駄遣いよっ!!!」

 

 

あっけらかんと答えるナツに怒鳴るティアナ。

 

 

「まったく……こんなことしたらまたマスターに……っ!!?」

 

 

そこまで言いかけたティアナは、そこで言葉を止めた。何故なら、彼女の視界に天井からナツを狙っているカゲヤマの姿が映ったのだ。それを見たティアナは……

 

 

「危ないナツ!!」

 

 

「うおっ!?」

 

 

すぐにナツを横に突き飛ばした。そうなると必然的に……

 

 

ドゴッ!

 

 

「きゃあっ!!!」

 

 

「ティア!?」

 

 

ナツの代わりにティアナが攻撃を受けることになり、カゲヤマの蹴りを喰らったティアナは近くの壁に叩きつけられた。

 

 

「あらら…女の方をやっちまった」

 

 

そこへ、天井から姿を現したカゲが地面に着地する。

 

 

「またお前かーー!!」

 

 

「君の魔法は大体わかった。体に炎を付加することで破壊力を上げる。珍しい魔法だね」

 

 

「本当はテメェなんざに用はねえが、よくもティアをやりやがったなぁぁあ!!!」

 

 

そう言ってナツは炎を纏ってカゲヤマと戦おうとする。

 

 

 

「待ちなさいナツ!!!」

 

 

 

「「!!?」」

 

 

すると、突然声が響き、ナツだけではなくカゲヤマも動きを止める。見るとそこには多少傷を負っているが、しっかりと立ち上がっているティアナの姿があった。

 

 

「見てなかったの? そいつの攻撃を喰らったのは私よ。つまり私が売られた喧嘩……横取りすんじゃないわよ」

 

 

クロスミラージュを構えながらそう言うティアナ。そんな姿を見たナツは溜め息混じりに言う。

 

 

「わーったよ。さっさとカタぁつけろよ?」

 

 

「言われなくても」

 

 

そう言ってナツとティアナは笑い合う。そしてナツは床に座り込み、戦いを観戦することにした。

 

 

「生意気な小娘だ!! 僕に勝てると思っているのか!!?」

 

 

そう言うと、カゲヤマは地面に映る影に手を置く。すると、その影はまるで蛇のような姿に形を変えた。

 

 

八つ影(オロチシャドウ)を喰らって死ねぇ!!!」

 

 

迫り来る8体の蛇の影。

 

 

「………………」

 

 

それに対しティアナは、特にどうすることもなく……

 

 

ドゴォォォォオン!!

 

 

ただ黙ってその攻撃を喰らったのだった。

 

 

「はははっ!! 粋がってたわりには大したことない小娘だぜ!! はははっ!!!」

 

 

それを見たカゲヤマは高笑いを上げる。だが…

 

 

 

「それはアンタのことね」

 

 

 

「っ!?」

 

 

後ろから聞こえてきた声に、その顔はすぐに驚愕に変わった。振り向くと、そこにはいつの間にかティアナが立っていた。

 

 

「ば、バカな!!? テメェは今確かに……!!」

 

 

「残念だったわね」

 

 

「なっ!?」

 

 

するとカゲヤマは驚いた。何故ならティアナの隣りに二人目のティアナが存在していたのだから……

 

 

「こ、小娘が二人だと!?」

 

 

幻影魔法(ミラージュマジック)……〝フェイク・シルエット〟。あんたがさっき嬉しそうに攻撃してたのは、幻影で作りだした私の分身よ」

 

 

「!……チィ!!」

 

 

それを聞いたカゲヤマは再び影を使って攻撃しようとするが……

 

 

「させないわっ!!」

 

 

「っ!?」

 

 

すぐにティアナがカゲヤマとの距離を詰める。

 

 

「ふっ!」

 

 

「ごふっ!」

 

 

そしてティアナはカゲヤマの腹部に膝蹴りを叩き込む。そして前のめりに倒れようとしているカゲヤマの腹部にクロスミラージュを二丁突きつけると……

 

 

「はぁぁっ!!」

 

 

「がぁぁあっ!!!」

 

 

そのまま魔力弾を放ち、カゲヤマを打ち上げて天井に叩き付ける。しかし、ティアナの攻撃はまだ終わらない。

 

 

「クロスファイヤー……」

 

 

なのはと同じように、自分の周りに数個のオレンジ色の魔力弾を生成する。そして……

 

 

 

「シューーーート!!!!」

 

 

 

それを空中に居るカゲヤマに一斉に放った。当然、空中に居るカゲヤマが避けれるわけがなく……

 

 

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁああああっ!!!!」

 

 

 

全弾命中し、カゲヤマは大きな轟音と共に壁に叩きつけられ、そのまま重力にしたがって地面に落ちた。

 

 

「え、えげつねーな……」

 

 

その戦いを見ていたナツは若干引いていた。すると…

 

 

「ティアナー!! それ以上はいい!! 彼が必要なんだ!!!」

 

 

慌てた様子でエルザ達が合流した。

 

 

「でかした!! ティアナ!!」

 

 

「お手柄だよ!!」

 

 

「え?」

 

 

なぜ褒められているのか分からず、ティアナは首を傾げる。

 

 

「説明してるヒマはねえが、そいつを探してたんだ」

 

 

「私に任せろ」

 

 

そう言うと、エルザは倒れているカゲヤマの胸倉を掴んで無理矢理立たせ、顔に剣を突きつける。

 

 

「四の五の言わず魔風壁を解いてもらおう。一回NOと言うたびに切創がひとつ増えるぞ」

 

 

「う…」

 

 

ティアナにやられた後のカゲヤマに抵抗する力は残されていなかった。

 

 

「え?え?どうしたんですか!?」

 

 

「いくら何でもそりゃヒデェぞ……やっぱりエルザは危ねぇ!!!」

 

 

「黙ってろ!!」

 

 

「あとで説明するから!!」

 

 

事情を知らないナツとティアナは問い掛けるが、グレイとなのはに一蹴された。

 

 

「いいな?」

 

 

「わ…わか……ばっ!!」

 

 

「わかった」と言いかけたその口から出てきたのは、大量の血。そしてゆっくりと倒れるカゲヤマの背中には、短剣が突き刺さっていた。

 

そしてその後ろには壁から体を出したカラッカが居た。どうやら魔風壁解除を阻止するため、カゲヤマを殺害しようとしたらしい。

 

 

「カゲ!!!」

 

 

「そんな……こんなことって!!」

 

 

「何がどうなってるのよ!!?」

 

 

「くそっ!! 唯一の突破口が……ちくしょぉおお!!!!」

 

 

慌ててグレイとなのは、そしてティアナもカゲヤマに駆け寄る。そしてその様子を、ナツは呆然と見ていた。

 

 

 

 

唯一の突破口であるカゲヤマを失ったメンバーは果たしてどうなるのか……

 

 

 

 

つづく

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