LYRICAL TAIL   作:ZEROⅡ

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ゼレフの悪魔

 

 

 

 

 

エリゴールが作った魔風壁を突破する唯一の希望、カゲヤマが刺されたことで一同に動揺が走る。

 

 

「カゲ!! しっかりしろ!!!」

 

 

「お願い!! 貴方の力が必要なの!!」

 

 

エルザとなのはが必死に呼び掛けるが、カゲヤマからの反応はない。

 

 

「マジかよ!! くそっ!!!」

 

 

「私と戦ったあとに死ぬんじゃないわよ!!」

 

 

「あ…うあ…あぁ……」

 

 

グレイは毒づき、ティアナも必死に呼びかける。そしてカゲヤマを刺した張本人であるカラッカは、声を震わせていた。そんな中、ナツはただ一人呆然としている。

 

 

「仲間じゃ……ねえのかよ……」

 

 

「ひっ!! ひいいっ!!!」

 

 

カラッカは悲鳴を上げながら再び壁の中に潜る。

 

 

「同じギルドの仲間じゃねえのかよ!!!!」

 

 

ナツは怒りの形相で怒鳴ると、拳に炎を纏う。

 

 

「このヤロォオッ!!!」

 

 

「あぎゃあ!!!」

 

 

そしてそのまま壁を破壊し、中に居たカラッカを床に叩き付けた。

 

 

「カゲ!! しっかりしないか!!!」

 

 

「エルザ…ダメだ……意識がねえ」

 

 

「死なすわけにはいかん!! やってもらう!!」

 

 

「やってもらうって、こんな状態じゃ魔法は使えないよっ!!!」

 

 

「やってもらわねばならないんだ!!!」

 

 

「それがお前たちのギルドなのかっ!!!」

 

 

「仲間に手をかけるなんて…こいつらはどこまで腐ってんのよっ!!!」

 

 

一同が動揺する中、カラッカを追っていたはずのルーシィとハッピーが合流するが……

 

 

「お…お邪魔だったらしら……?」

 

 

「あい」

 

 

あまりにも殺伐とした雰囲気に、そう声を漏らしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第九話

『ゼレフの悪魔』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エリゴールの狙いは……定例会なの!!?」

 

 

事情を知らないルーシィ達にエリゴールの目的を告げながら、一同は再び魔風壁の前へと戻って来た。

 

 

「あぁ……だけどこの魔風壁をどうにかしねえと駅の外には出られねえ」

 

 

バチィッ!!

 

 

「ぎゃああああ!」

 

 

「な?」

 

 

「あわわ……」

 

 

グレイの説明を聞いてもなお、魔風壁から出ようとしたナツだが、簡単に弾かれる。

 

 

「カゲ…頼む、力を貸してくれ……」

 

 

カゲヤマは応急処置で一命を取り留めたが、まだ意識が戻らない。

 

 

「くそぉおおっ!!! こんなモン突き破ってやるぁっ!!!」

 

 

そう言って、再び魔風壁に突っ込むナツだが、やはり跳ね返される。

 

 

「バカヤロウ……力じゃどうにもなんねえんだよ」

 

 

「急がなきゃマズイよっ!!! アンタの魔法で凍らせたりできないの!?」

 

 

「出来たらとっくにやってるよ」

 

 

「じゃあ! なのはさんの砲撃で突き破ったりとかは……」

 

 

「難しいね……魔風壁のような強力な魔法が相手だと、生半可な砲撃じゃ突き破れないし……それに私の砲撃魔法は元々屋外向きの魔法だから、さっきみたいに手加減して使わないと建物が崩壊して生き埋めになっちゃう」

 

 

どうやら魔風壁にはグレイとなのはの魔法も通じないようだ。

 

 

「ぬぁあああっ!!!」

 

 

すると、ナツが再び魔風壁に突っ込む。

 

 

「ナツ!! やめなさい!! バラバラになるわよっ!!」

 

 

「かっ…!!」

 

 

ティアナが静止の言葉を掛けるが、ナツは構わず魔風壁を突き破ろうとする。だが、突き破れるわけもなく、ナツの体だけが傷ついていく。

 

 

「やめなさいって言ってるでしょバカナツ!!!」

 

 

見かねたティアナはナツを羽交い絞めにして止める。

 

 

「くそっ!!どうすればいいんだ!!!」

 

 

万策尽きたかと思われたその時、ナツが突然声を張り上げ、ルーシィの肩を掴んだ。

 

 

「そうだっ!! 星霊!!!」

 

 

「え?」

 

 

「エバルーの屋敷で星霊界を通って場所移動できただろ!!?」

 

 

「いや…普通は人間が入ると死んじゃうんだけどね…息が出来なくて。それに(ゲート)は星霊魔導士がいる場所でしか開けないのよ。つまり星霊界を通ってここを出たいとした、最低でも駅の外に星霊魔導士が一人いなきゃ不可能なのよ」

 

 

「ややこしいな!! いいから早くやれよ!!!」

 

 

「出来ないって言ってるでしょ!!!」

 

 

あまりに横暴なナツの言葉にルーシィが怒鳴る。

 

 

「もう一つ言えば、人間が星霊界に入ること自体が重大な契約違反!!! あの時はエバルーの鍵だからよかったけどね」

 

 

「エバルーの……鍵……あーーーーっ!!!」

 

 

その話を聞いていたハッピーが突然大声を上げた。

 

 

「ルーシィ!! 思い出したよっ!!!」

 

 

「な…何が?」

 

 

「来る時言ってたことだよぉ!!」

 

 

そう言うと、ハッピーは背負っていたバッグの中からゴソゴソと何かを取り出した。

 

 

「これ」

 

 

「それは…バルゴの鍵!!?」

 

 

ハッピーが見せたのは、エバルーが使用していた黄道十二門の鍵だった。

 

 

「ダメじゃないっ!! 勝手に持ってきちゃーー!!!」

 

 

「違うよ。バルゴ本人がルーシィへって」

 

 

「ええ!!?」

 

 

まさか自分の意志で来たとは思わず、ルーシィは驚愕の声を上げる。それを聞いていたナツ以外の他のメンバーは話の内容がよくわからず、首を傾げている。

 

 

「何の話だ?」

 

 

「こんな時にくだんねえ話してんじゃねえよ!!」

 

 

「その鍵がどうしたの?」

 

 

「バルゴ……ああっ!! メイドゴリラか!!」

 

 

「め、メイドゴリラ!!?」

 

 

メイドゴリラと言う言葉を聞いたティアナは顔を青くする。

 

 

「エバルーが逮捕されたから契約が解除になったんだって。それで今度はルーシィと契約したいってオイラん家訪ねてきたんだ」

 

 

「あれが…来たのね……」

 

 

バルゴの姿を思い出してルーシィは体を震わせる。

 

 

「ありがたい申し出だけど、今はそれどころじゃないでしょ!? 脱出方法を考えないと!!」

 

 

「でも…」

 

 

「うるさいっ!! ネコは黙ってにゃーにゃー言ってなさい!!」

 

 

「矛盾してるわよルーシィ」

 

 

ハッピーの言葉も聞かずにつねるルーシィにティアナが冷静にツッコム。

 

 

「バルゴは地面に潜れるし…魔風壁の下を通って出られるかなって思ったんだ」

 

 

「あ…そっか! 地面の下なら風は無いから出られるかも!!」

 

 

「何!?」

 

 

「本当か!!?」

 

 

ハッピーの言葉に一同は驚愕する。

 

 

「そっかぁ!! やるじゃないハッピー!! もう、何でそれを早く言わないのよぉ!!」

 

 

「ルーシィがつねったから」

 

 

先ほどとは打って変わって浮かれるルーシィにハッピーは皮肉を言うが、通じなかった。

 

 

「貸して!! 我…星霊界との道を繋ぐ者。汝……その呼びかけに応え(ゲート)をくぐれ」

 

 

ハッピーから鍵をを受け取ったルーシィはそれを構えながら詠唱を始める。

 

 

「開け! 処女宮の扉!!『バルゴ』!!!」

 

 

すると、現れたのは……

 

 

「お呼びでしょうか? 御主人様」

 

 

可愛らしいメイド姿の少女だった。

 

 

「え!?」

 

 

以前とは違う姿のバルゴに目を見開くルーシィ。

 

 

「やせたな」

 

 

「あの時はご迷惑をおかけしました」

 

 

「やせたって言うか別人!! あ、あんたその格好……」

 

 

「私は御主人様の忠実なる星霊。御主人様の望む姿にて、仕事をさせていただきます」

 

 

「前の方が迫力があって強そうだったぞ」

 

 

「では…」

 

 

「余計なこと言わないの!!」

 

 

姿を変えようとするバルゴを必死で止めるルーシィ。

 

 

「時間がないのっ!! 契約は後回しでいい!?」

 

 

「かしこまりました、御主人様」

 

 

「てか、御主人様はやめてよ」

 

 

そう言われたバルゴの目に、ルーシィの武器である鞭が映る。

 

 

「では『女王様』と」

 

 

「却下!!」

 

 

「では『姫』と」

 

 

「そんなトコかしらね」

 

 

「そんなトコなの!?」

 

 

「てゆーか急ぎなさいよっ!!!」

 

 

的外れな会話をする二人に、なのはのツッコミとティアナの催促が入る。

 

 

「では!! 行きます!!!」

 

 

そう言うと、バルゴは潜るようにして穴を掘って行く。

 

 

「おし! あの穴を通っていくぞ!!」

 

 

「うん!!」

 

 

「よっと」

 

 

すると、グレイの視界にカゲヤマを背負っているナツとそれを手伝っているティアナの姿が映った。

 

 

「何してんだお前ら!!」

 

 

「「ティア(私)と戦ったあとに死なれちゃ後味が悪いんだよ(のよ)」」

 

 

二人は声を揃えてそう言いながら、バルゴが掘った穴から脱出したのだった。

 

 

「出れたぞーーー!!!」

 

 

「急げ!!」

 

 

「早くクローバーに向かわないと!!」

 

 

「うわっ! すごい風!!」

 

 

駅からの脱出に成功した一同。すると、先ほどまで気を失っていたカゲヤマが口を開いた。

 

 

「無理だ……い…今からじゃ追いつけるはずがねぇ…お…オレたちの勝ちだ…な」

 

 

途切れ途切れの言葉でそう言うカゲヤマ。すると……

 

 

 

「それはどうかしら?」

 

 

 

そんな自信に満ち溢れたティアナの言葉が聞こえた。

 

 

「なん…だと……?」

 

 

「気付かない?もう約二名ほど…先走ってエリゴールを追って行ったわ」

 

 

「あっ、そう言えば…ナツ君がいない!」

 

 

「あれ? ハッピーもいねえぞ」

 

 

ティアナの言葉に、なのはとグレイは二人が居ないことに気がつく。

 

 

「ハッピーのMAXスピードの速さはギルドの中でもトップクラスよ。もう今頃エリゴールに追いついてるんじゃないかしら?」

 

 

「ぐっ……」

 

 

それを聞いたカゲヤマは悔しそうに歯を食い縛る。

 

 

「では私たちもナツを追うぞ!!」

 

 

『おう(うん)!』

 

 

エルザの言葉に、全員が頷き、ナツを追って行った。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

あの後、エルザ達一同は魔導四輪でナツ達の後を追っていた。

 

 

「これ…あたしたちがレンタルした魔道四輪車じゃないじゃん!」

 

 

鉄の森(アイゼンヴァルト)の周到さには頭が下がる。ご丁寧に破壊されてやがった」

 

 

「弁償は確実だね~」

 

 

なのはの弁償と言う言葉を聞いて、ルーシィは落ち込む。

 

 

「ケッ…それで他の車盗んでちゃせわないよね」

 

 

「うるっさいわね!! 借りただけよ!! エルザさんいわく……」

 

 

毒づくカゲヤマに怒鳴るティアナ。

 

 

「な…なぜ僕を連れて行く?」

 

 

カゲヤマの問い掛けになのはが答える。

 

 

「しょうがないよ。町に誰も居なかったから…クローバーの病院につくまで我慢してね?」

 

 

「違う!! 何で助ける!!? 敵だぞ!!!」

 

 

理解できない行動に、カゲヤマは怒鳴る。

 

 

「そうか…わかったぞ……僕を人質にエリゴールさんと交渉しようと…無駄だよ…あの人は冷血そのものさ。僕なんかの……」

 

 

「うわー暗ーい」

 

 

ブツブツと呟くカゲヤマにルーシィがそう言う。

 

 

「そんなに死にてえなら殺してやろうか?」

 

 

「ちょっとグレイ!!」

 

 

ルーシィが静止の言葉をかけるが、グレイは構わず続ける。

 

 

「生き死にだけが決着の全てじゃねえだろ? もう少し前を向いて生きろよ、お前ら全員さ…」

 

 

「……………」

 

 

グレイの言葉に、カゲヤマは押し黙る。するとその時、魔導四輪がガタンッと大きく揺れた。

 

 

「きゃあっ!!」

 

 

「……!!」

 

 

その際に、ルーシィのお尻がカゲヤマの顔に押し付けられる。

 

 

「エルザ!!」

 

 

「大丈夫!? 運転代わろうか?」

 

 

「すまない。大丈夫だ」

 

 

既に大量の魔力を消費している彼女は傍目から見ても辛そうだったが、グレイとなのはは何も言わなかった。

 

 

「でけぇケツしてんじゃねえよ……」

 

 

「ひーっ!! セクハラよ!! グレイ、こいつ殺して!!!」

 

 

「オイ…オレの名言チャラにするんじゃねえ」

 

 

「ハァ……騒がしいわね」

 

 

「にゃはは……」

 

 

そんな若干和んだ空気のまま、魔導四輪はナツを追って走り続けた。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

その後、しばらく走って渓谷に差し掛かった辺りで、線路上に居るナツの姿を確認した。

 

 

「ナツーーー!!」

 

 

「お! 遅かったじゃねぇか。もう終わったぞ」

 

 

「あい」

 

 

そう言うナツとハッピーの足元には、気絶したエリゴールが倒れていた。

 

 

「さっすがナツ君!」

 

 

「ケッ」

 

 

「そ…そんな! エリゴールさんが負けたのか!!?」

 

 

賞賛するなのはと面白くなさそうに声を出すグレイ。そしてエリゴールの敗北に目を見開くカゲヤマ。反応は様々であった。

 

 

「エルザ、大丈夫?」

 

 

「あ…あぁ。気にするな」

 

 

「もう、フラフラじゃない。魔力を使いすぎ」

 

 

「すまない……」

 

 

そう言って肩を貸してくれるなのはに礼を言うエルザ。

 

 

「こんな相手に苦戦しやがって。妖精の尻尾(フェアリーテイル)の格が下がるぜ」

 

 

「苦戦? どこが!? 圧勝だよ! な? ハッピー」

 

 

「そう言う割には傷だらけだけど?」

 

 

「うっ……」

 

 

ティアナの言葉に言葉を詰まらせるナツ。

 

 

「お前…裸にマフラーって変態みてーだぞ」

 

 

「お前に言われたらおしまいだ」

 

 

そう言って睨み合うナツとグレイ。

 

 

「何はともあれ見事だ、ナツ。これでマスターたちは守られた」

 

 

エルザのその言葉に、全員が笑みをこぼす。

 

 

「ついでだ……定例会場に行き、事件の報告と笛の処分についてマスターに指示を仰ごう」

 

 

「クローバーはすぐそこだもんね」

 

 

「じゃあ次は私が運転するよ」

 

 

「しかし……」

 

 

「エルザさんは魔力を使いすぎ。少しは休んでて欲しいの」

 

 

「……わかった。そうさせてもらおう」

 

 

なのはの提案にエルザが頷いたその時…突如、魔導四輪が動き出した。

 

 

「カゲ!」

 

 

「危ねーなぁ! 動かすならそう言えよ!」

 

 

「油断したな妖精(ハエ)ども!」

 

 

そう言ってカゲヤマは影を伸ばし、地面に落ちていた笛をしっかりと掴む。

 

 

「笛は…呪歌(ララバイ)はここだーー!!ざまあみろーー!」

 

 

カゲヤマは呪歌(ララバイ)を手に、この場を去って行った。

 

 

「あんのヤロォォォ!」

 

 

「なんなのよ!助けてあげたのにー!」

 

 

「恩知らずーー!!」

 

 

「追うぞ!」

 

 

「ふえぇ!? 走るの苦手なのにー!!」

 

 

それを見た一同は慌ててカゲヤマの後を追ったのだった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

ようやくクローバーの町にたどり着いた一行は、定例会場に向かい、カゲヤマを探した。

 

 

「いた!!!」

 

 

「じっちゃん!!!」

 

 

「「「マスター!!」」」

 

 

見ると、カゲヤマの目にはマカロフが立っており、今にも笛を吹こうとしていた。それを見た一同は飛び出そうとするが……

 

 

「しっ。今イイトコなんだから見てなさい」

 

 

一人の女性(?)に止められる。

 

 

「てかあんたたち可愛いわね。ウフ♪」

 

 

ナツとグレイは熱烈な視線を向けられ、背中に寒気を感じた。

 

 

青い天馬(ブルーペガサス)のマスター!!」

 

 

「ボブさん!!」

 

 

「あらエルザちゃんになのはちゃん。大きくなったわね」

 

 

エルザとなのはは突然現れたボブに驚く。

 

 

「どうした? 早くせんか」

 

 

そしてマカロフの方を見ると、カゲヤマは今にも笛を吹こうとしていた。

 

 

「いけない!!」

 

 

「黙ってなって。面白ぇトコなんだからよ」

 

 

「! ゴールドマインさん!!」

 

 

そう言って飛び出そうとするエルザを止めた初老の男性は、魔導士ギルド…四つ首の猟犬(クアトロケルベロス)のマスターであるゴールドマインだった。

 

 

「さあ」

 

 

「……!」

 

 

射抜くようなマカロフの視線に、カゲヤマは怖気づく。

 

 

「(吹けば…吹けばいいだけだ…それで全てが変わる!!!)」

 

 

「何も変わらんよ」

 

 

「!!!」

 

 

心の中を見透かされたような言葉に、カゲヤマは目を見開く。

 

 

「弱い人間はいつまでたっても弱いまま。しかし弱さのすべてが悪ではない。もともと人間なんて弱い生き物じゃ。一人じゃ不安だからギルドがある、仲間がいる。強く生きるために寄り添いあって歩いていく。不器用な者は人より多くの壁にぶつかるし、遠回りをするかもしれん。しかし明日を信じて踏み出せば、おのずと力は沸いてくる。強く生きようと笑っていける」

 

 

そこでマカロフは一呼吸置いて……

 

 

「そんあ笛に頼らなくても……な」

 

 

と言った。

 

 

「……!!!」

 

 

その言葉を聞いたカゲヤマは呪歌(ララバイ)を手放し……

 

 

「参りました」

 

 

そう言って、膝をついたのだった。

 

 

「「「マスター!」」」

 

 

「じっちゃん!」

 

 

「じーさん!」

 

 

それを見た一同は一斉にマスターに向かって飛び出した。それを見たマカロフは驚愕する。

 

 

「ぬぉおぉっ!!? なぜこやつらがここに!!?」

 

 

「さすがです!! 今の言葉、目頭が熱くなりました!」

 

 

「痛っ!」

 

 

エルザはマカロフは抱き寄せるが、鎧を着ているので硬い感触しか伝わらない。

 

 

「じっちゃんスゲェなぁ!」

 

 

「そう思うならペシペシせんでくれい」

 

 

「そうよ! マスターに失礼でしょバカナツ!!」

 

 

「一件落着だな」

 

 

「だね♪」

 

 

「ホラ…アンタ医者に行くわよ」

 

 

「よくわからないけど、アンタも可愛いわ~」

 

 

和気藹々とするメンバー達。すると……

 

 

 

『カカカ…どいつもこいつも根性のねェ魔導士どもだ』

 

 

 

なんと、突然笛が黒い煙を出しながらしゃべり始めた。

 

 

『もう我慢できん。ワシが自ら喰ってやろう』

 

 

そして段々と煙が形を成していき……

 

 

『貴様らの魂をな…』

 

 

まるで巨大な大木のような怪物に姿を変えたのだった。

 

 

「な!!!」

 

 

「何コレ!!?」

 

 

「怪物ーー!!」

 

 

「な…何だ!? こんなのは知らないぞ!!」

 

 

「あらら…大変」

 

 

「こいつぁゼレフ書の悪魔だ!!」

 

 

突然現れた怪物にナツ達はもちろん、ギルドマスター達も驚きを隠せなかった。

 

 

『腹が減ってたまらん。貴様らの魂を喰わせてもらうぞ』

 

 

「何ーー!? 魂って食えるのかーー!?うめぇのか!?」

 

 

「知るか!」

 

 

「てか今はそれどころじゃないでしょバカナツ!!!」

 

 

ナツの疑問にグレイとティアナがツッコム。

 

 

「一体…どうなってるの?なんで笛から怪物が……」

 

 

震えるルーシィは目の前のバケモノを見上げる。

 

 

「あの怪物が呪歌(ララバイ)そのものなのさ。つまり生きた魔法。それがゼレフの魔法だ」

 

 

「生きた魔法…」

 

 

「ゼレフ!? ゼレフってあの大昔の!?」

 

 

「黒魔導士ゼレフ。魔法界の歴史上、最も凶悪だった魔導士……何百年も前の負の遺産がこんな時代に姿を現すなんてね……」

 

 

ボブは実際に目の前にいる怪物を見てそう言う。

 

 

『さあて…どいつの魂から頂こうかな』

 

 

そう言うと、怪物…ララバイは不気味な笑みを浮かべる。

 

 

『決めたぞ。全員まとめてだ』

 

 

「いかん!! 呪歌(ララバイ)じゃ!!!」

 

 

「ひーーーっ!!!」

 

 

ララバイが口を開いたその時…ナツ、グレイ、エルザ、なのは、ティアナが動き出す。

 

そしてまずはエルザが天輪の鎧に換装する。

 

 

「鎧の換装!?」

 

 

ゴールドマインが驚いている間に、エルザはララバイの足を斬り、呪歌(ララバイ)を阻止する。

 

 

「ぬ!?」

 

 

「おりゃぁぁあああっ!!!」

 

 

そしてその間にナツがララバイの体をよじ登り、炎を纏った強力な蹴りを喰らわせる。それを喰らったララバイは体勢を崩す。

 

 

「おおっ!!」

 

 

「何と!! 蹴りであの巨体を!!!」

 

 

「てか本当に魔導士かアイツ!!?」

 

 

その光景に他のギルドマスターも驚愕する。

 

 

「小癪な!!」

 

 

そう言ってララバイはナツに向かって、口から弾丸のようなものを発射する。

 

 

「おっと」

 

 

ナツはそれを難なく避けるが、その流れ弾がギルドマスターたちへと向かう。

 

 

「アイスメイク…〝(シールド)〟」

 

 

「氷の造形魔導士か!?」

 

 

「しかし間に合わん!!くらうぞっ!!」

 

 

だが、その予想に反して、グレイは一瞬で巨大な氷の盾を造り、全員を守った。

 

 

「造形魔法?」

 

 

「魔力に〝形〟を与える魔法だよ。そして形を奪う魔法でもある」

 

 

ハッピーの説明にルーシィはゾッと背筋を凍らせた。

 

 

「こっちよデカブツ!!」

 

 

『ぬ?』

 

 

ララバイが声の響いた方を見てみるとそこには……

 

 

幻影魔法(ミラージュマジック)……〝フェイク・シルエット〟!!!」

 

 

何十人ものティアナがララバイを囲んでいる光景があった。

 

 

「さぁ、どれが本物か……わかるかしら?」

 

 

そう言ってティアナは挑発的な笑みを見せる。

 

 

「なんと!!」

 

 

「あれほどの幻影を一瞬で!!」

 

 

それを見たギルドマスターも驚く。

 

 

『ぬ…ぬぅ!!』

 

 

「今です! なのはさん!!」

 

 

戸惑っているララバイを見て、次に動き出したのは…レイジングハートを構えたなのはであった。

 

 

「うん!! 行くよっ!! ディバイィィィン……バスターーーー!!!!」

 

 

『ゴォア!!!』

 

 

駅で放った時とは桁違いの威力で放たれた桜色の砲撃がララバイに直撃し、ララバイの腹に大きな風穴を開けた。

 

 

「〝圧縮砲撃魔法〟じゃと!!?」

 

 

「あの若さで何という威力じゃ!!」

 

 

ギルドマスターたちはもはや呆然と言った感じでナツ達を見ている。

 

 

「今だ!!」

 

 

グレイの号令と共に、エルザは黒い羽の生えた鎧『黒羽(くれは)の鎧』に換装してララバイに斬りかかる。

 

 

「アイスメイク〝槍騎兵(ランス)〟!!」

 

 

グレイは氷で造ったいくつもの槍を発射する。

 

 

「右手の炎と左手の炎を…合わせて……火竜の煌炎(こうえん)!!!」

 

 

ナツは両手に強大な炎を纏って、ララバイに振り下ろす。

 

 

「全力全開!! エクセリオン…バスターーー!!!」

 

 

なのはは先ほどよりも強力な桜色の砲撃を放つ。

 

 

「クロスファイヤー……シューーート!!!」

 

 

ティアナは分身を消し、数十個もの魔力弾を生成し、一気にララバイに向かって放った。

 

 

 

ドゴォォォォォォオン!!!

 

 

 

『バ…バカな……』

 

 

そして全員の攻撃が一斉に命中し、激しい轟音と共にララバイは倒れたのであった。

 

 

「ゼレフの悪魔がこうもあっさり……」

 

 

「こりゃたまげたわい」

 

 

「かーっかっかっかっかっ!!!」

 

 

「す…すごい……」

 

 

それを見たギルドマスター達は愕然とし、マカロフは高笑い、カゲヤマは感激したように言葉を漏らした。

 

 

「いやぁ、いきさつはよくわからんが、妖精の尻尾(フェアリーテイル)には借りが出来ちまったぁ」

 

 

「なんのなんのー!!ふひゃひゃひゃひゃ!!!ひゃ…ゃ……は……!!!」

 

 

すると、高笑いをしていたマカロフが何かを見た途端、突然笑いを止め、目を見開いた。

 

 

「ん?……!!!」

 

 

その視線の先を追って、見てみると、そこには……

 

 

「ぬあああっ!!! 定例会の会場が…粉々じゃ!!!」

 

 

ララバイが倒れた衝撃で、無残に崩壊して見る影も無い定例会場があった。

 

 

「ははっ!!! 見事にぶっこわれちまったぁ!!」

 

 

「笑い事じゃないでしょバカナツ!!!」

 

 

まるで他人事のように言うナツに怒鳴るティアナ。

 

 

「捕まえろーーーっ!!!」

 

 

「おし、任せとけ!!」

 

 

「お前は捕まる側だーー!!」

 

 

「あーもう! 結局いつも通りじゃないのぉ!!」

 

 

「にゃはは……やり過ぎちゃったね」

 

 

「マスター…申し訳ありません…顔を潰してしまって……」

 

 

「いーのいーの。どうせもう呼ばれないでしょ?」

 

 

口々にそう言いながら、妖精の尻尾(フェアリーテイル)はその場から逃げて行ったのであった。

 

 

 

 

 

つづく

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