│つ 本編
│ミ
第34話
実に長い間時間が経ったと思う。
具体的には半年。
いくら忙しいとはいえ怠惰ですねぇ……
何がとは言いませんが。
それは置いといて。
あの後、状態に気が付いた小猫ちゃんに平謝りされながら解放された私は、首元をさすりながら状況を把握する。
大量の剣が地面より湧き出し、その場に残っていたのは先程偉そうにしていた金髪ロールのみ。
その彼女も完全には避けきれなかったのか、身体のあちらこちらに裂傷を…………負っていたのがたった今、修復されていった。
つまりは、彼女も不死鳥。
だが、突然の事に驚いたのかはどうか知らないが、彼女は今目を回して気絶していた。
「よし、ここはこの娘を人質にとり無条件降伏を呼びかけると言うのは」
「……いえ、ここは見せしめとしてとりあえず腹パンを」
「そうですわね……雷でも落とせばダメージには」
「…うちの女性陣は何故ここまでバイオレンスなのか。
言っときますけどその方向性は無しで」
その後、とりあえず縛って放置(発案朱乃さん。)した。
今は何よりもリアス先輩が心配だ。
……実はこっそり起動したレーダーにより、ライザーらしき人物が先輩の所に向かって行くのを検知したのだ。
恐らく配下が皆やられて、焦ったのであろう。
わざわざ、上向きに設置したクレイモア群の中を突っ切って行っているみたいだ。
その証拠に先程からバスンバスンと爆発音が響いている。
その音に気付き、今全員で向かって行く所だ。
「…なあ、こんだけの爆発の中をアイツは本当に進んでるのか?」
「一応クレイモアの設定を熱探知にしてあるので(グリゴリ特別仕様)そうだとは思うけど」
「つまりアイツは生半可な攻撃じゃやられないのか…………なぁ…ドライグ…」
部室に着いた私たちを迎えたのは多少汚れたリアス先輩とアーシア、そして……
「あばばばばばばばばばばばばば!!??」「…………」
何故か痺れまくっているライザーだった。
「えぇーと、リアス先輩?
これはどういう状態です?」
「ライザーがここに突撃してきた時にね、アーシアがビックリしてシールドで思いっきり殴ったの。
その時に例のアレが動いたみたいで…」
「あぁ……なるほど」
「く、くそ!
なんなんだ一体!?
俺様の下僕達は全滅するし、飛んでいるとしたから大量の鉄球は飛んでくるし!
終いにはそこの無力そうな僧侶に感電させられるし!
リアス、君の所の下僕はどうなってるんだ!」
「概ねこの娘の影響とだけ言っておくわ」
「?なんで私を見るんですか?」
満身創痍のライザーだったが、すぐに回復し余裕そうにこちらを見下す。
……私にだけは、化け物でも見るような目を向けるが。
「なるほど、貴様か…!」
「やーい、焼き鳥」
「貴様だけは殺す!!」
「あれ、マジ切れ?
ちょっとやばかったり?」
「芽衣!!」
私の挑発にキレたライザーは周りを爆炎で燃やしながら突撃してくる。
皆が私を庇おうとする中、敢えて一歩踏み出し前へと出る。
ダァンダァンダァンダァン!
「ぐっ!?」
長物は概ね弾切れだった為に、致し方なく適当なハンドガンを乱射する。
最初こと面食らっていたライザーだが、
その弾の威力が弱い事を感じ取ると、炎の壁を作り出し、銃弾を溶かしていく。
「ははははは!!
どうした小娘!その豆鉄砲で俺を殺せると思ったか!」
「いいえ、ですがその慢心が貴方の膝をつかせることになりますよ?」
「…ほざけ!お前に何が出来る!
俺はライザー・フェニックス!
いずれ、頂点に立つ男だ!」
「なら、その鼻っ面を叩き折るのは
叫ぶと同時にある物を呼び出す。
消防車に積まれるような放水用のホース。
それを周りに向け一気に放水する。
それは燃え盛る部屋を瞬時に消火すると同時に、大量の水蒸気を生み出し視界を覆う。
「何!?」
「魔剣創造!!」
「…いけ!」
それと同時に木場君と小猫ちゃんがそれぞれ魔剣と瓦礫を投げつけ、両膝を潰す。
「くっ!?
調子に…」
「それはこちらのセリフですわ」
「喰らいなさい!」
それと同時に朱乃さんとリアス先輩がそれぞれ雷と滅びの力をぶつけ両手を消し飛ばす。
「ぐおぉぉぉ!?
貴様らァァ!!」
ライザーはすかさず身体を再生させようとしますが、そうはさせません!
唯一腰のホルスターに下げていた一丁の銃を引き抜きざまに発射。
その弾丸はライザーの胸の中心に着弾、すると同時に炸裂し、
「ぐふっ!?
………ぐ、ぐぁぁァァァァァァァァァァ!??
な、何をした!小娘ぇぇぇ!!」
その身を灼き焦がしていく。
「どうですか?
わざわざこの一発のために大口径の弾を発射できるように改造したコンテンダーを用意。
アーシア経由で教わった聖水の作り方を参考に、グリゴリの技術で高濃度圧縮。
それを弾丸内に封じ、着弾と同時に炸裂するようにしたのだ。
どんな悪魔であろうとも、これを喰らえば必ず痛みに悶え、
ここにいる最も重要な人物から。
「やっちゃってください、イッセー」
「…あぁ、行くぜ。
これが俺の……!」
『Welsh Dragon Balance Breaker !!』
「俺の覚悟と力だァァァァァァァ!!」
……え?禁手!?
えー、あー。
すいません、取り乱しました。
あのあと起こったことについて話しましょー。
てっきり、赤龍帝の篭手でぶん殴るものだと思っていた所にまさかの禁手化。
後から聞いた話なのですが、イッセーは左腕を犠牲にしその場で禁手、『
しかも正規の禁手化では無いために、制限時間約10秒。
そのままライザーに肉薄し、ボッコボコ。
戦意喪失したライザーはその場で降参。
イッセーも禁手を解除。
気を失い、その場に倒れる………前にリアス先輩が抱きとめていました。
それにしてもあれが赤龍帝の篭手の禁手…
またアザゼルさんに報告する事が増えましたねぇ、全く。
んでもって、ゲーム終了とほぼ同時にリアス先輩のお兄さん、現魔王のサーゼクス・ルシファーとその女王、グレイフィア・ルキフグスの来襲…じゃなかった、労いの言葉を掛けに来た。
極度のシスコンの上、えらくフレンドリーな人で、面食らいましたが。
イッセーが左腕が禁手の代償により龍化しているのを見て、解決策を探してくれるそうで。
…ただ、去り際に私に近づき
「
と、言ってくるあたり油断ならない人物だと改めましたが。
……てか、アザゼルさんバレてるじゃないですか私の事!?
それは、時間がたち六月に入る前の事。
突然グリゴリに呼び出された私達に告げられたたった一言。
それが全てを変える起点となったのでした。
「コカビエルが聖剣エクスカリバーを奪取し、戦争を起こそうとしている」
と。