悪魔の占い師(更新凍結)   作:ベリアル

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神器舞踏

「エクスカリバーの破壊を?そんなことして大丈夫なんですか?」

 

コカビエルとの戦闘から数日後、夜中の公園に呼び出された八幡はちょうど寝ようと思っていたところで呼び出され、憂鬱気味だ。噴水の前で涙を流しながら尻を抑えている匙と一誠を見て何事かと思ったが、2名の頭目と要件を聞かされて納得がいった。

 

「大丈夫じゃないに決まってるでしょ。最悪戦争よ戦争、あなた分かってるの?」

 

「俺に言わないでくださいよ……」

 

ソーナの指先が八幡の鼻をつつく。怒っていますと八幡に詰め寄る。たじたじの八幡。

 

「大体ね、同じ部の人間に誘われないで生徒会が誘われるってどういう状況なの?どれだけ交友関係狭いの。どうせ、オカルト研究部でも自分からしゃっべたりしないんでしょ。どれだけ悲しい運命を背負ってるの」

 

「な、なんで知ってんですか……?覗いてんですか、支取先輩……」

 

「あなたの習性くらい把握してるわ」

 

「俺は動物かなにかなんですかね」

 

「とにもかくにもあなたも同罪よ。お尻出しなさい、1000回よ。あと八幡の敬語が慣れないの、追加500」

 

「いやいやおかしいでしょ。色々と」

 

2人のやり取りをみて、クスクスと笑うソーナの女王。反対に嫉妬の念を送る兵士。匙は厳しいソーナを幾度となく見てきた。説教もされてきた。ただ、理不尽かつ毒を吐いてる姿は初めての光景であった。同時に楽しそうなソーナを見ることも匙の中では過去に例がない。ソーナ自身笑うことが少ない。笑みを見せても社交的なものだろう。

 

なんともいえぬ距離感が2人の間にあった。八幡も心なしか態度が砕けていた。

 

「まあまあソーナ様。彼がハブられるのは今に始まったことではないでしょう」

 

「フォローになってません。言っておきますが俺は率先して一人でいるんです。」

 

間に入る朱乃。ソーナの怒りを静めると同時に八幡にダメージを与え、胸を張って言い返す。八幡にとっても戦力的な意味でもソーナと朱乃はある部分においては特別な存在だ。

 

「で、俺を呼んだからには用があるんですよね」

 

「ええ、はぐれエクソシストのフリードは覚えてるわよね?その男がエクスカリバーの一本を持ってたの。イッセーと小猫とアーシアと裕斗。ソーナの兵士。教会の聖剣使い2人がフリードと聖剣計画の首謀者に出会ったのだけれど、裕斗と教会の2人は逃げた2人を追って連絡がつかないの。あなたの神器で探索に向いたカードないかしら?」

 

「……生憎ですけど、”天命の札”にはありませんよ。逆の効果を持ったカードならありますけどね」

 

八幡はコカビエルのことをリアスとソーナ、各No.2にしか話していなかった。自分の発言一つで戦争になりかねない出来事を簡単に口にすることは彼女等には重圧過ぎる。実際、オカルト研究部にこそいるが、どこの派閥にもいない八幡一人の発言では上の悪魔は簡単には動かないだろう。寧ろ、こういった状況こそ彼女等の真価が問われる。リアスとソーナが駒王学園にいるのは、スクールライフを満喫することではないのだから。ただし、フリードを追った3人を含め一誠達はこの事実を知らない。最も木場については連絡が取れないである。

 

「隠者(ハーミット)ですわね」

 

朱乃といえど八幡の所持するカードを全て把握しているわけではない。知っていても、組んでいた当時は未熟だったため今の戦闘技術を高めたカードは不明な部分が多い。中でも”天命の札”の中でも特殊な能力を宿した”月(ムーン)””審判(ジャッジメント)””節制(テンパランス)””死神(デス)””世界(ワールド)”などは一切不明。八幡自身隠していた理由もある。

 

反対にソーナはほとんどの”天命の札”の情報を持っている。無論、彼が追跡に適したカードを所持していないのも承知していた。それでも、わざわざ呼び出したのは一切を自分の口から”天命の札”の情報を話す気はないからだ。その点は八幡は認識していれば、感謝もしている。

 

リアスも大まかに”天命の札”を文献で調べている。どれもが曖昧なものばかりであてにはならない。”天命の札”は所持者によって技も戦法も変わってくるからだ。

 

例えば”太陽(サン)”。炎という点は変わりない。ただコカビエルと戦ったような恐竜を参考にした戦いは八幡のオリジナル。代々”天命の札”の所持者はそのようにオリジナルの戦闘スタイルを編み出してきた。

 

真羅椿姫は”天命の札”は種類や名称が曖昧。なので神器に合わせて所有者が戦うことから”神器舞踏”と勝手に呼んでいる。その呼び名を気に入ったソーナもそう呼んでいる。聞いた八幡は嫌そうだった。うっかりセンスないですねと言いかけたが、言葉を呑み込む。それも虚しく顔に出ていたのか椿姫の拳が飛んできたのはまた別の話だ。

 

「……動けるようにはしときますよ」

 

コカビエルを認識しての言葉。リアスにそれだけ言い残して帰路を辿ろうと背中を見せると声がかかる。

 

「そういえば伝言があるわ」

 

誰からだと、問いかけようとした直前に先に内容を喋るソーナ。腕を組み、表情は困っていますと書いてある。彼女に伝言1つでこんな顔をさせられるのは一人しかいない。聞かせられる八幡も背筋が凍る思いだ。

 

「『はーちゃーん!お義姉ちゃん最近会ってないから寂しいなぁ。ソーたんも冷たいし、今度の夏休み一緒に菓子折り持って来ちゃいなよ。多分、両親揃ってるから。あ、もしかして2人でどっか旅行行っちゃう?急接近しちゃう?私叔母さんになっちゃう?もー、ソーたんに先を越されちゃうのは悔しいけどはーちゃんならいっか。今度、そっ……』このまま中身のない会話が延々と続くけど聞く?」

 

「……いやいいです聞きたくないです知りたくないです」

 

淡々と棒読みで聞いてきた内容を話すが、伝言を寄越した本人がどんな顔で話していたか思い浮かぶ。下らない内容を聞かされたソーナに同情をする他ない。しかし、その苦労を肩代わりしたいかと言われればそうではないし、八幡より付き合いの長い側近だっているのだ。愚痴もそっちに吐き出すだろう。

 

そこでようやく帰ろうとしたところで、リアスの姿がないことに気付いた。

 

「あれ、部長は?」

 

一誠に続いて他の面々は公園の敷地を見渡す。

 

「部長でしたら一足先に帰るそうですわ。なんでもやりたいことがあるんだとか」

 

「そう。念のため、八幡を送って帰るわ」

 

「……うす」

 

「ちょっと待ってください!そいつはオカルト研究部の人間なんでしょ!?だったら兵藤に遅らせりゃいいじゃないですか!というか送る意味あるんですか!?そいつ強いんでしょ!?」

 

「支取先輩からのご指名だとぉ!羨ましいぞ比企谷!」

 

生徒会長と副会長が八幡を家まで送るのに匙は抗議を申し立てる。コカビエルのことを知らない彼にとって八幡とソーナを自分がいないところで一緒にさせたくない。

 

「匙、あなたは椿姫と一緒に帰りなさい。彼はオカルト研究部にいるとはいえ人間」

 

「だったら俺がやります!」

 

「ソーナ様、ここは同じオカルト研究部として私がお送りしますわ」

 

「ごめんなさいね、個人的な会話も兼ねてるの。だから2人で話したいの。状況が状況だから出来るだけ一緒に帰って頂戴。もし、もし私が襲われるようなことになってもナイト様がいるから大丈夫」

 

 

 

 

 

オカルト研究部と生徒会は解散する。数人は渋々といった様子で2人を見えなくなるまで目視していた。特に匙は憎々しげに八幡を睨んでいた。それまでお互い同じ歩幅で歩み、言葉を交わすことはなかった。そこにカップル特有の甘い空気も険悪な空気もなければ、お互い無関心で気まずいわけでもない。

 

街灯が照らす道を無言の代わりに足音が静寂をかすかに打ち消す。

 

「……話ってなんですか?」

 

意外にも八幡から口火を切った。

 

「構えなくてもいいわよ。大した要件じゃないから。あと敬語やめてもらえないかしら。学校にいるときはそれでいいけど、今はため口にして。前は使ってなかったじゃない」

 

「あんときは年齢知りませんでしたから。で、要件ってなんですか?」

 

「頑固ね……。まぁいいわ、あなたリアスと同棲してるんですってね」

 

終始真顔だった八幡が苦笑を貼り付け、ソーナが屈託のない笑顔。口角は上がっている。目じりも下がっている。普段の彼女からかけ離れた状態。美少女にこんな笑顔を向けられて、なにも思わない男はそういないだろう。そんな幸せにいる本人は冷や汗を掻いていた。瞼の奥の深淵の闇を想わせる瞳に捉えられた八幡は一瞬だけ息を詰まらせる。

 

「え、ええ。まぁ占い師関連で。護衛ですね監視ですね」

 

「そう。まさか裸体の美女に抱き付かれてなんて公私混同してないでしょうね?」

 

「ひひやあ、ここここ心辺りにゃいでしゅねぇはい」

 

「本当かしら?長鼻の狙撃手並に嘘吐くから。それを確認するために行くんだけど。生徒会長だから」

 

「今からですか!職権乱用でしょそれ!」

 

「当然。じゃなきゃ意味ないでしょ。証拠隠蔽されても困るし」

 

「家散らかってるんで」

 

「掃除くらい手伝うわよ」

 

「今日両親いないんで間違い起きちゃいますよ」

 

「そんな度胸があるならどうして友達できないのかしらね?不思議だわ」

 

「女子を自宅に入れたら死んじゃう病なんです」

 

「8000人の部下を引き連れなさい………。ほら、着いたわよ」

 

「………」

 

八幡は彼女の性格を十二分理解しているつもりだ。これ以上の抵抗は無駄だと思い、全てを白状する勢いで玄関を開けた。正直にいえばソーナも酷く怒ったりはしないだろう。

 

「おかえりなさい。ごはんにする?お風呂にする?それともわ・た・し?」

 

(そう思っていた時期が俺にもありました)

 

玄関には白いエプロンを着用したリアス。ここまではいい。問題は服を着ていない点だ。こんなもの八幡が見れば声も出せないほどの慌てっぷりを晒す。そう、普段であればの話だ。確かにこの光景には頭が真っ白になるほど顔を真っ赤にする反面、右隣にいる先輩に怯え切った自分がいるのも確かだ。

 

不幸中の幸い、両親がいないというのは事実。

 

色欲と恐怖。この二つが混沌と化し、リアスはようやくソーナがいると知った。

 

「ソーナ?なんでいるの?」

 

こともなげに疑問を口にする。

 

「………八幡」

 

「は、はい!」

 

人差し指と中指を立てた。

 

「お説教とお姉さまと二人っきりコース選ばせてあげる」

 

「いやいやいやいやちょっと待ってください違うんです無実です」

 

その日、不純異性交遊防止のために一人の少年を半殺した生徒会長は、ことの張本人を家から引き払わせた。男なら誰もが羨む短い同棲であった。半分は私情から来るものだ。

 

彼女にとって八幡に護衛が付くのは困るのだ。ソーナには夢があり、八幡が必要だ。その為には生徒会側になんとしても引き入れたい。”呪いの占い師”としても比企谷八幡としてもだ。

 

後(のち)に激闘を繰り広げるリアス・グレモリーVSソーナ・シトリーの戦局を握るのは”呪いの占い師”比企谷八幡であることはまだ誰も知らない。

 

数時間後、誰もが予測しかねる第三者の介入により聖剣を巡る戦いの幕が下りる。

 

かつての戦争を終結するきっかけを生んだ赤と白が相見える。

 

 




投稿遅くなってすいません!本当は先月に投稿する予定でしたが、色々あってできませんでした。

さて、今回唐突に”神器舞踏”という原作にもないモノを出してしまいました。これは作者自身八幡の技の豊富さに困ったからです。そこで”神器舞踏”を登場させてもらいました。こうすれば神器の戦闘スタイルを簡単に呼べるからです。ごめんなさい。

リアス比企谷家早々に退場。安心してください、ちゃんと意味はあります。大分後になりますが。


次回はあの方大活躍! 更に”神器舞踏”によりあの人を匂わせる!


次回の投稿も遅くなりそうなので次回出すカードのネタバレ下の方に出しときます。見たくない方は見なくても問題ありません。

やっと投稿出来た!











”力(ストレングス)”
”恋人(ラヴァーズ)”
”世界(ワールド)”

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