悪魔の占い師(更新凍結)   作:ベリアル

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分岐点

 

「薄暗。電気つけません?」

 

真夜中の駒王学園の一室で3人の男女が椅子に座り、画面に映る悪魔達の様子を見守る。

 

「リアスの眷属になるものだと思っていたわ」

 

ソーナが笑いながら八幡を見やる。

 

「笑えない冗談ですね、会長」

 

レーティングゲームは既に始まっている。しかし、両チームとの接触は見られず、リアスのチームの数人は森に罠を仕掛けている。

 

「レーティングゲームってやっぱり時間かかるんですね」

 

「そうね。罠を張ったりで序盤は大忙しでしょう。あなた達はどちらが勝つと?」

 

八幡の疑問に答えると、副会長の真羅椿姫と八幡にそれぞれの予想を問う。

 

 

「私はリアス様かと。ライザー様は油断しているようですし、リアス様の陣営には手練れに赤龍帝を扱う兵藤一誠がいますので。というよりは、気持ち的に勝ってほしいですね」

 

「私と大体同じね。八幡は?」

 

「フェニックスのライザーでしょ。経験はある、フェニックスの涙っつうアイテム、不死身が2人、数も上。絶望的じゃないですか」

 

「数はどうにかなるとしても。フェニックスの涙とフェニックス家の再生は鬼門よね」

 

リアスの勢力には現在フェニックス家の再生能力に対抗する手立てはなく、ごり押ししか術はない。

 

「なんにせよ、新人転生悪魔がどれだけ動けるかがキーですね。兵藤とアルジェントの使い方次第で戦局は大きく変わるでしょ」

 

八幡が言っている傍でライザー陣営の3人が罠が仕掛けられた森へと足を踏み入れる。体育館には一誠と小猫が4人の敵と相対していた。

 

「下っ端だけで攻めさせる。明らかに余裕ですね」

 

「思ったより強いんですね。フェニックスのルーク」

 

各々の感想を述べる椿姫と八幡。一方で一誠も1対3で攻撃を凌いでいた。ジェイソンの子孫かなと幼い双子を見て、どうでもいいことに閃く八幡。反撃を始めた誠は少女たちに攻撃とも呼べない彼女たちに触れるだけ。が、妙なポージングを始めたと思った次の瞬間、彼女達の服が破けさる。

 

「っでぇ!」

 

肌色が視界に入った刹那に彼の両目に水飛沫が飛ぶ。室内で飲み物もない。水道管トラブルでもなければありえない。椅子から落ちた八幡は目をこすり出所に文句を言う。

 

「急になにすんですか?」

 

「あら?少しは眼の汚れが落ちると思ったけど手遅れのようだったわね。あなたのような目が腐った不審者が女の子たちが裸見られたら可愛そうだから。私なりの気遣いなの」

 

画面の一つに映っているのは、崩壊した跡形もない体育館のレプリカ。

 

「眼は腐ってるんじゃありません、納豆同様発酵させてるんです。見る人が見れば瞳の魅力に気付くんです。まったくレーティングゲームの観戦初めてなんですからね」

 

(俺がみてもばれないだろ、画面越しなんだから。)

 

椅子に座りなおす健全な男子高校生は本音の不満をぐっと堪える。2人は屁理屈に呆れていた。

 

(占拠したハズの体育館を丸々破壊したのは姫島先輩か。雷の巫女の名は伊達じゃないな)

 

「短期戦……。当たり前ね、これで相手も本気を出してくる」

 

木場は幻影の森の中で美女3人を相手にしている。少し退屈になったのか、あくびを掻くと爆発音がするモニター。そこでグレイフィアから塔城小猫のリタイアの宣言がされた。

 

フェニックスのクイーンによる不意打ち。激昂する兵藤を抑えるリアス。そこでクイーンの前に現る味方のクイーン。

 

「クイーン同士の戦いでかつての相棒です。ここの勝敗は大きく戦局を左右しますが」

 

クイーンの立場である真羅椿姫が八幡に声をかけた。

 

「姫島先輩が簡単にやられると思いませんが、ライザーのクイーンが勝ちそうですね」

 

「最初のパートナーを信用してないんですか?」

 

「信じる信じないの関係じゃないんですけど。普通に考えれば、フェニックスの涙持ってそうじゃないですか」

 

フェニックスの涙とはフェニックス家でしか作れない秘薬。使用すれば全回復する値打ちの高い代物。強力なあまりレーティングゲームでは制限がかかってある。ライザーのチームでなければ、フェニックスの涙を持っているのは王である立場。しかし、ライザーには脅威の再生能力がある故に持っている必要性は感じられない。であれば、当然他の強い者に託される。

 

「おお、3人相手に余裕で終わってるな」

 

幻影の結界に閉じ込めた3人を木場は爽やかな笑みで兵藤の前に立つ。そこに新たなライザーの駒が出てくる。その中にフェニックス家の娘がいた。木場は敵の剣士と笑みを浮かべて激闘を繰り広げている。

 

「決まったな」

 

「どこへ行くの?」

 

「帰ります。この勝負グレモリーの負けですね」

 

「……根拠は?」

 

部屋から出ていこうとする男子生徒の背中を睨みつける生徒会長。声色だけで怒っていることが把握できるが、自分の言った言葉を否定をするつもりはなかった。

 

「兵藤と木場じゃ奮闘はしてもフェニックスの娘にはどう考えても勝てんでしょ。んで、ライザーのクイーンが勝利して戦力差が開く。負け戦は決まっていたんですよ。部長じゃ三男坊には勝てんでしょうし」

 

「もし……もしも、あなたがいたら勝てるの?」

 

「たられば。そんな話しても現実はかわんない。いつだったか言ったでしょう」

 

『人生にセーブポイントはない。例えばもし、ゲームのように一つだけ前のセーブデータに戻って選択肢を選び直せたとしたら、人生は変わるだろうか。答えは否である。最初から選択肢を持たない人間にとって、その仮定はまったくの無意味である』

 

1年以上も前に言われた迷言。場所は冥界であったが、当時の2人はそんな言葉を聞いて呆れはてた。しかし、八幡に限ったらそんな無意味な問答であるとよくわかっていた。

 

「選択肢がある奴は強い奴だけです」

 

一時期、冥界に名を馳せた少年は弱々しく、教訓の糧となった思い出したくない過去を呼び起こした。

 

『なんで、なんで、なんでこんなカードなんだよ……!こいよ、頼むから……!』

 

『泣かないでよ、お兄ちゃん。ポイント低いぞ』

 

『待て!待てよ!小町には手を出すな!』

 

『じゃあね、かっこいいお兄ちゃん。今の小町的にポイントたかーい!』

 

今より幼い彼の手には”女教皇(ハイプリエンス)”。それは戦闘には向かないカード。当時、銃もなく神器を手にしたばかりの彼は必死で神器に呼び掛けていた。それでも、奇跡は起こらず、ただ目の前の惨劇を見ることしか出来なかった。次のカードを引いた頃には何もかも手遅れだった。最期の最期まで笑顔で、ポイントにうるさい妹は消え去る。

 

以来、冥界で生活をして、姫島朱乃としばらく行動を共にした後、”新英雄派”という小規模の組織の加入した。その後は裏切り、シトリー家で厄介になっていた。

 

舌を打って電気のついてない部屋で仰向けになる。制服のままで忌々しい記憶に気持ちが沈む。

 

「体調が優れないのかい?」

 

整頓された彼の部屋に一人の青年が立っていた。八幡はその人物を招き入れた覚えはない。真っ赤な髪を背中まで垂らし、気品を感じさせる彼はリアス・グレモリーに似た雰囲気を持っていた。それも当然で彼女の兄、サーゼクス・ルシファーであるからだ。

 

「初めまして、占い師くん」

 

「初めまして、魔王様」

 

本人も魔王が目の前にいることに驚いてないことに不思議がっている。

 

「不法侵入って熟語しらないんですか?」

 

「警戒しないでほしいな。君にお願いがあって足を運んだんだ」

 

警戒云々ではなく倫理などの問題であろうが八幡は右手にタロットカードを持ち、いかなる時でも対応できるようにしていた。

 

「要件をいってくださいよ。見知った間柄でもないんですから」

 

「そのつもりさ」

 

互いに初対面。無駄話はする気はないようで話を進めていく。

 

「妹のリアスの結婚式をぶち壊してほしいんだ。わかるかい?」

 

口ぶりからして、八幡の予想通り敗北を決したのだろう。

 

「全く理解できませんね。部長と三男坊、結婚させようとしてたんじゃないですか?」

 

「立場的には賛成だよ。純血を受け継がせるのは立場ある者の役目だ。フェニックス家とグレモリー家の間に強固なパイプが出来るんだ、やらない手はない」

 

「けど、シスコンとしてはナルシストの三男坊ごときには愛しい妹は渡したくはない」

 

「理解が早くて助かるよ」

 

シスコン同士思うところがあるのだろう、八幡は彼の心中が手に取るようにわかる。葛藤と煮えたぎる怒り。立場上手を出せない。助けたくても助けられない。見えない壁に阻まれ、辿りつけないまま汚されるの眺めるだけ。許せるわけがない。

 

「見返りは用意する。拒否権はない。神器を発動させようとしたら腕を切り落とす」

 

考えさせる暇も交渉の余地も選択肢もない、強制だ。有無を言わせない威圧感。つま先から後頭部までのしかかる重圧は恐怖を植え付けるには十分。一方、八幡も百戦錬磨で焦りはするもの、雰囲気に呑まれはしない。が、断れば恐らく死ぬ。

 

「……やり方は自由でいいですか?」

 

「ああ。任せよう。式は3日後」

 

それだけ言うと、消え去る魔王。契約を違えれば地獄の果てまで追ってくるだろう。

 

選択権はない。

 

魔王がいなくなって数分。頭も体を冷え、納戸からボロ布のローブを引っ張り出す。しまう前には洗濯してあるからか、見た目よりは清潔。袖を通しても大きめにオーダーメイドしておいたことが功を成したのだろう、いい具合のサイズだ。フードの部分で顔も隠せる。複数のマガジンに弾丸を詰め込む。

 

『乗り気しねえな』

 

変成器越しの発言は部屋の一室に響く。

 

死にたくないから動いているのか、魔王の気持ちを汲み取ってか、リアスのためなのか、理由は定かではない。

 

確かなのは、占い師が花嫁を攫うことだけだ。

 

 

 





遅くなりました。レポートやら課題に追われてやっている暇がなく、投稿出来ませんでした。

ひと段落して文字数少なく投稿しました。しかも戦闘なし!罵ってください!

こんな作品でも楽しみにしてくださる読者様、すいません!

でも安心してください!次回作は文字数多いです(多分)!しかもまだ見せていない八幡の神器を次々に出していきます!

次回の更新は早めになるよう努力します!

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