探索、探索、また探索。行けども行けども炎の海とそこに住む骸骨たちの群れ。
「なあ、ドントラル?」
『なんだ』
「ビュートで全て壊したいんだけど…」
『阿呆か貴様は…』
地味な仕事であるとは理解していたが、やはり幾度かの戦闘によって骸骨の動きを大体把握した遊斗。マシュたちの協力により破竹の勢いで進軍しているのは良いものの、飽きが来た。
と言うか、黒ジャンヌが強すぎた。
遊斗とマシュが協力して骸骨を倒している間に、黒ジャンヌは物凄い勢いでその倍の骸骨を焼き払っていた。曰く「Arts重視だからNPの上昇率が高いの」NPってなんだよとか色々と聞きたいことがあったが、まあ何にせよ黒ジャンヌが物凄い強いお陰で多少余裕があるのは事実だ。
これが別のサーヴァントを召喚してしまった場合を考えると怖くてたまらない。流石は歴史の授業で習った聖女ジャンヌと言うだけある。
だが、遊斗にはひとつ、たった一つだけ気になることがあった。
「望さん」
「どうしたの、ナッシュくん」
前方で真・冬木無双している黒ジャンヌを指差して彼は問いかけた。
「ジャンヌって、クラスランサーだろ」
「へ?」
ランサー? さっきルーラーだって説明したよね? 首をかしげる望。困った様子のマスターを見て、隣で控えていたマシュが彼に言う。
「ジャンヌさんはルーラーですよ。先程も説明しましたが」
「ルーラーって名前は正直気に食わない――じゃなくて。いや、だってランサーって槍の扱いが凄い上手い人がなれるんですよね?」
「え? まあ極端に言えばそうですけど…」
あれ、どう考えても槍ぶん回してるし…。彼が指差す先では、囲まれた黒ジャンヌが旗を地面に叩きつけて跳躍して骸骨の攻撃を避け、そのまま回転して鋭い穂先で骸骨の首を纏めて撥ね飛ばす姿が見えた。
見事な槍裁きである。漆黒の旗を豪快かつ繊細に振るうその姿は、言われてみれば槍の英雄たるランサーの姿に見えなくもない。
「い、いや、あ、あれは旗ですし」
「異議あり! あの旗布のところが畳まれていて現在とても取り回しがよくなるようになっていますよね、それに穂先がどう見ても突き、切るためのものですよね? ならば、あれは戦うための武器であり、そうなればあれは旗の形をした槍。もしくは旗に偽造された槍ということになりませんか?」
「え、ええっと。でも、あれは旗であって――」
「槍は実戦で時に担架の柱として、また、軍旗や優勝旗でその旗竿として使用されることもあったと言います。つまり、旗とは即ち槍ということです」
彼の怒濤の口撃に混乱して目をぐるぐると回すマシュ。しばらく口のなかで、槍が旗で旗が槍で槍が槍で旗が――などと呟いていたが、急に目を見開くと望の肩をがっちりと掴んで。
「先輩! ジャンヌさんはランサーだったんですよ!!」
「えぇ!? さっきルーラーって」
「あれです! 私と同じ偽装登録してたり、複数クラス持ってるサーヴァントだったりするんですよ!」
「え? でも――」
「よく考えてみてください。彼女はEXクラス、つまり既存のクラスとは一線違えた番外のサーヴァントです。ならば、私たちの知らないサーヴァントのクラス特性をもって現界してもおかしくない、そう思いませんか?」
「な、なるほど…確かにそう言われればそうかも…」
『遊斗よ』
「どうしたドントラル」
『だからドントラルはやめろと――そうではない。あの二人混乱しているではないか』
「遊馬たちと同じでからかうと愉しいなぁ」
『やれやれ、我が半身なだけあって趣味が悪い』
なまじサーヴァントに対する知識があるせいで混乱し、新たな仮説をたててさらに混乱する主従を見てクツクツと笑っていると、後頭部に軽い衝撃。
何事かと振り向けば、ため息を吐くオルガマリーの姿。
「まったく、戦闘中に気の抜けるようなことしないでちょうだい――と、いうかそこの二人!」
『――は、はい!?』
「なんで魔術師ですらない一般人に惑わされてるのよ!! 彼女はルーラー、しっかり確認したでしょう!!」
『――ハッ!?』
「まあまあオルガさん。彼女たちは魔術師となって日が浅いんですから、そう怒らないでやってくださいよ。最初の頃は誰でもミスをするものですよ?」
『君のせいだからね!?』
「…確かにそうね。二人とも今回は不問にしておいてあげるからしっかり勉強し直しておきなさい!」
『なんか納得された!?』
なにこの理不尽、納得いかない! うがーっと吠える望と、それを押さえるマシュ。
それを見て少しほっとする。
人間誰しも見知らぬ環境で慣れないことをすればそれだけ消耗してしまう。特に命のやり取りなんてやった日にはどれだけ精神が磨り減るのか。
だが、幸いなことに今の彼女たちは笑顔でいられるだけの余裕がある。オルガマリーも最初に比べれば大分表情が柔らかくなっているし。
やはり、笑顔が一番だな。真剣なはりつめた表情と言うのは見た目こそいいが、息は詰まるし楽しくない。弟がそうなっていた時期があるからこそ尚更そう思う。
「人を出汁に随分と楽しそうですね」
「ん、お疲れ様です」
旗をしまい帰ってきたジャンヌ。彼は彼女に懐から取り出した白い玉を投げ渡す。
危なげなくそれを受けとるジャンヌ。仄かに温かいそれは――おむすびだ。掌よりも大きな白米のおむすび。ラップに包まれているそれを見、次にそれを渡してきた少年を見る。
「…これは?」
「毒とか入ってないから安心しろ。…その、ジャンヌさんにばかり戦わせてるからお礼というかなんというか」
次も頑張ってもらわないといけないし。そう言って頭を掻く彼。
ラップを剥ぐと途端に涌き出る湯気と白米の芳醇な香り。これは中々いいものだ。思わず口元を弛めつつ、どのタイミングかは知らないがこれを作ったであろう少年の方をみる。
「なるほど、これからも自分達の盾になってもらうためのご機嫌とりですか」
「ご機嫌とりって、あのですね…」
「敬語、気持ち悪いんで止めてもらえると助かります。…まあ、折角貰ったものを粗末にするのもよくありませんしありがたく頂くことにしましょう」
ありがとうございます。少し微笑んで礼を言えば、お、おう、と少し頬を赤くして目を逸らす遊斗。
その年相応の反応に思わず笑みを深めてしまう。
ジャンヌはこの身体が美人であることを理解している。無論、正常であり本来の姿であるジャンヌ・ダルクと比べれば少し変わってくるが、あれはジャンルが違うから完全な比較対象にはなり得ない。
目の前の訳のわからない少年。警戒するに越したことは無いが、何となく敵ではないと思えた。短時間、下手をすればほんの数時間程度の付き合いでしかないが、そう思えるだけの不思議な雰囲気が彼にはあった。
まあ、裏切れば焼き払ってしまえば良い話。そんな機会が来るまでは精々楽しんでやろう。――あ、梅だ。
肉の身ではないが、やはり戦闘は下級のものが相手であっても疲労感というものを少しは感じてしまう。そんな少し疲れた身体にこのおむすびの塩加減、そして梅の身体に染みる酸っぱさは有り難かった。
「ナッシュ、これは後何個ありますか?」
「デュエル飯? …あー、作ればまだまだ一杯作れますよ」
「あ、敬語は止めてください腹立ちますから。なるほど…。気に入りました。次は具を塩気の強い――そうですね、鮭にしていただけませんか?」
「腹立つってあんた…。いやまあいいけど――というか近くありません?」
「ん? そうですか?」
「近い近い! 顔と言わず身体と言わず近い!? 少し離れろ!」
「そうですか? …これくらい普通だと思いますよ?」
耳元で囁けば、ヒィッ!? と悲鳴を上げて前方へ跳躍し、そのまま前転、立ち上がりの隙を無くすため跳躍しての空中捻りその後連続側転からの空中三回転捻りで着地という無駄なアクションを行い黒ジャンヌから距離をとる遊斗。
やはり、中々からかいがいのあるやつだ。ふふふと笑みを浮かべる黒ジャンヌ。
そんな風に時おりじゃれあいながら五人は調査を続けるべく燃える街を進むのであった。
※※※※※※※※
「で、俺らどこに向かってるんですか?」
「…貴方ね、聞いてなかったの? 現在の私たちの状況と、カルデアを巡る状況」
「…勉強苦手なんです」
目を逸らしながらつぶやく遊斗の姿を見て、はぁ、とこれ見よがしにため息を吐いたオルガマリー。
だが現在の状況を整理する意味も兼ねてか、仕方ないわねと腰に手を当てて懇切丁寧に説明を始めてくれる。
現在彼らの居る場所、日本国某県冬木市。
日本の地方都市ながら美しい形で環境と都市の融合を果たし、それなりの規模と知名度を誇っていたという場所。だが、そんな美しい都市には裏の姿があった。
聖杯戦争。願望器、願いを叶えるとされる魔術の産物である聖杯と呼ばれる代物を求め、七つの位を持つサーヴァントと呼ばれる過去の英雄や伝説上の存在を召喚し戦わせる、魔術師たちの戦争。
聖杯戦争自体は世界各地で行われており、その内容は多岐にわたる。しかし、サーヴァントと呼ばれるシステムを用いて聖杯を奪い合うという構図はこの冬木独自のものである。
現在自分たちがレイシフト――遊斗には全く分からないが、霊子というものを用いる何やら凄い技術による転移技術とか何とからしい――によって現在いるのが、その聖杯戦争の行われていた冬木市だ。
だが、本来カルデアで観測、または資料で確認された限り、街が炎の海に飲み込まれ、人っ子一人いない状態であったなどという歴史は一つも存在しないことが分かっている。つまり、この時代の冬木市で何か、後々の歴史、後々の世界に影響を与える致命的なズレが発生したのだ。
後々の世界に重大な影響を与える歴史的な分岐点、特異点。
人理継続保障機関、カルデアは事象記録電脳魔・ラプラス、地球環境モデル・カルデアス、近未来観測レンズ「シバ」という三つの魔術と科学の融合した技術の産物を用いて人類の未来を予測、観測を行うことで未来の羽意を保証し続けていた。
だが、この観測される理――人類をより発展、繁栄させるための理である人理であるが、これが近未来観測レンズ「シバ」によって人類は2016年で滅び行く事が証明されてしまった。
人理の消失。突然の事態に困惑する研究者たちにより調査が行われ、2004年の冬木市に観測できない領域が存在することを確認。研究者たちはこれが人理消失の原因だと仮定し、未だ研究段階であった過去への渡航技術を利用することでその特異点事象に介入。その調査と解決を目指していた。
それが、この冬木に来る前に彼が見た光景。馬鹿に高い山の上に存在し、無駄に長いエレベーターで降りた場所にあるカルデア。そしてそこに集まる年齢層のバラバラな男女たち。
守護英霊召喚システム・フェイト。2004年に開発された、冬木の聖杯戦争のサーヴァントの召喚システムを参考に開発された技術であり、これに適性があり尚且つレイシフトの適性を持つ魔術師が遊斗の見た彼ら、彼女らだったのだ。
そして、本来ならばこの場には彼ら、彼女らがサーヴァントのマスターとして降り立ち調査を行って居るはずだったのだが、謎の爆破事故これが原因で現在マスター候補者だった魔術師たちが全員重体。また、爆発のダメージで施設機能が一部機能しておらずそのせいで治療も連絡もままならない状態。
そのため、戦闘訓練なども受けたことがない一般からスカウトされた望がマスターとなり、人と英霊の融合体であるデミ・サーヴァントのマシュと共にこの冬木を調査することとなったのだ。
そして現在の彼らは、異変調査の為に冬木の霊脈を巡っているのだ。
「なるほど。つまり霊脈を辿れば原因に近づくことができると」
「ええ。でもこれは同時に――」
突然響く焦った声。通信越しにロマニが叫ぶ。その焦り方は尋常ではない。
同時に感じる強力な力。今までの骸骨とは比べ物にならないほどの威圧感と存在感。突然現れた黒い影。
黒い靄のようなモノを全身に纏い、尋常ではない殺気を放つ存在。
サーヴァントだ。マシュのような、人間との融合体であるデミ・サーヴァントではない。純粋な、伝説上の存在。
相対しているだけでわかる。アレは危険だ。
「あ……う、あ」
「くっ、先輩ッ」
望は完全に呑み込まれている。無理もない。一般人と比べて、確かに彼女は度胸があるし行動力もある。だが、それはあくまでも一般人と比べての話だ。魔術師としてもマスターとしても未熟であり、戦闘経験がない彼女にとって突如現れたこの強敵がどれ程恐ろしいか。
それは、デミ・サーヴァントであるマシュも同じだった。多少なり戦う力を持っているとはいえ、彼女の戦闘経験はあくまでも骸骨との戦闘のみ。サーヴァントの本命、証である宝具を使用することができず、デミ・サーヴァントとしても経験不足である彼女もまた、気丈に盾を構えているだけでそれ以上動くことができないでいた。
そんな二人を見逃す敵サーヴァントではない。
鋭い跳躍。人間離れしたバネと身体能力により宙を舞い、重力を重ねた一撃がマシュに向かって放たれる。
その手にあるのは釘というには余りにもゴツく分厚い杭のようなもの。サーヴァントが狙うのはマシュ。恐らく盾を先に潰した方が良いと言う判断か。
それに対してマシュは反応することができない。否、融合したサーヴァントの経験によって敵サーヴァントの攻撃は見えている。だが、それに彼女の身体がついていけていないのだ。
軽装とはいえ鎧を身に纏っているマシュ。だが、あんな勢いで杭を打ち込まれてしまえば、いかな鎧とて穿たれてしまうだろう。
背後の望が幻視したのは、胸に杭が突き刺さり血を拭きだしながら倒れるマシュの姿。
マシュもまた、己の胸が穿たれる姿を脳裏に思い描いてしまった。
圧倒的な死のイメージに二人の身体が完全に動かなくなってしまう。
オルガマリーは戦うことができない。彼女は魔術師としての才能はあるが、マスターとしての才能は欠片も存在しないし魔術を使用することも難しい。仮に使用できたとしても、マシュを助けることは不可能だろう。
だが、恐怖する三人とは違いあくまでも通常運転の二人が居た。
「バリアンッビィィイイイムゥッ!!」
雄叫びと共に閃光が宙を貫き、敵サーヴァントを貫く。
空中に身を投げ出した状態で命中した破壊力に、体勢を崩して弾き飛ばされる。空中をピンボールめいて飛ばされた敵サーヴァントの行く先には――
「角度よし…飛んでいきなさい。一番星ィ!!」
腰を捻り、左足を上げる。その姿は伝説の野球選手の如し。旗をバットのように構えた黒ジャンヌが、気合いと共に敵サーヴァントに振り抜いた。
サーヴァントとしての全機能をフル活用した一本足打法は、見事に旗の真芯でサーヴァントを捉えた。
カキーンッという旗では決して鳴らない気持ちいい金属音と共に敵サーヴァントが飛んでいく。
「…ちっ、バックスクリーン一直線にはなりませんか」
「弾丸ライナーで十分だろ」
「駄目です」
「駄目か?」
「駄目です。あの状態ならホームランにしてあげるのがせめてもの情け」
「そうなのか」
ゴシャッというあまり聞きたくない落下音と燃え盛る街をバックに談笑を始める黒ジャンヌと遊斗。
そんな二人をマシュと望がありえないと目をむくが、これも仕方のないことだ。
黒ジャンヌはオルタ化しているものの、その本質はジャンヌ・ダルクそのもの。救国の英雄にしてその最後は魔女として滅ぼされるという悲劇の英雄。
そんな彼女にとって敵サーヴァント、ライダーはますたーにの仇為す敵でこそあるが、彼女の驚異となるほどの敵ではない。弱体化しているとはいえ技術的に言えば圧倒的に黒ジャンヌが上なのだ。故に恐れる必要は微塵もない。
ならば遊斗はどうか。
彼は決して英雄ではない。むしろ世界を滅ぼす一端となったことを考えれば、どちらかと言えば英雄に対する化け物と言ったところだ。
バリアン。非業の死を遂げた者が溢れるその場所で彼は生まれた。未練ばかりを残して死んだ人と、愛する者を全て失った者。二つの魂を同化させたそれは、神によって新たな苗床として生を受けた。
ドン・サウザンド。あらゆる事象を書き換える能力を持つバリアン世界の神。
彼の策略により、世界を救う、家族を護るために戦っていた彼は神に飲み込まれ、あわや己の家族を殺すところであった。
歴戦の決闘者たちとの戦いにおいて感じた覚悟、気迫はあんな生温いものではなかった。故に彼もまた敵サーヴァントの雰囲気に呑み込まれることはない。
「あら、起き上がりましたか」
苦しそうにしながら立ち上がるライダー。それを見て恋する乙女のように微笑む黒ジャンヌ。
その表情を見て遊斗は思わず身を引いた。
あの表情は駄目だ。あの表情はどこぞの極東のデュエルチャンピオンやベクター某と同じ、苦しむ相手を見るのが、醜く足掻く姿が楽しいと感じるタイプの表情だ。
「良く立ち上がりました。貴女のようなサーヴァントを良いサーヴァントと言うのでしょう」
「そうだね、ジャンヌにとって都合とか調子が良いよね」
「そんな貴女には私から渾身のサーヴァントサービスをする必要があるようです」
「サーヴァントサービス(物理)ですね分かります」
「フンッ!」
「グホァ!?」
「一々茶化さないでくれる? 殴るわよ」
「あ、あの、既に殴ってるんですがそれは…」
「口答えするつもりですか? …炙りますよ」
「ジャンヌ万歳! 聖女様万歳!」
「ふふ、良い言葉です」
愉悦、と言わんばかりに笑う黒ジャンヌと彼女を必死に讃える遊斗。
戦場であまりにも浮いているやり取りを繰り返す二人を見て、油断していると踏んだのだろう。ライダーが静かにそのしなやかな脚を地面に食い込ませ――駆け出した。
地面を這う蛇めいた静かさで獲物を狙うその姿は宛らアサシンといった身のこなし。一気に距離を詰めたライダーが突き出すように杭を放とうとして、目が合った。
灰に近い金色の瞳が三日月のように笑う。
衝撃。再度ライダーの身体が宙を舞う。一体何が起こったというのだ!? 確かに自分はあの女に気付かれず接近できた筈なのに。
天地が分からなくなりながらも何とか捉えたジャンヌの姿。刃を下に、旗の石突きを上へ向けて上下逆さまにして、宙を舞うライダーを見て満面の笑みを浮かべている。
はめられた。そう思ったときにはもう遅い。
「最近スポーツに凝ってるんですけど。今は特に槍投げが熱いんですよねー」
「お、おう」
「さーて…」
――その心臓、貰っても良いわよねぇ?
宙を舞うライダーを見て、愉快そうに笑ったジャンヌがその手に持った旗を無造作に投げた。
無造作と言っても彼女は歴史に名を残す英雄であり、エクストラクラスのサーヴァントたるルーラー。どれだけ適当だとしてもその攻撃は必殺にして必中。
ライダーの身体を旗が貫き、その身体は無惨にも霧散するのであった。
「…肺に刺さったのね。最後の最後で私に気持ち良くサービスさせないなんて、とんだサーヴァントだわ」
「いや、誰もそんなサービス受けたくねえよ」
「へぇ? 遊斗には特別なサービスをしてあげようと思ったのに」
「やめろ!? そのネットリした口調やめろ!? 本当に怖いから!?」
自分達が恐れる存在を、まるでコンビニに行ってくるというような気軽さで消滅させた上にまるで先程までの戦いなんて無かったかのように笑いあう二人の姿を見て、望たちは思わず身体を震わせるのであった。
おかしい。シャドウサーヴァント騎に頑張ってもらうはずだったのに、どうしてこうなった!?