Fate/YugiOrder   作:特撮仮面

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彼と橋とキャスターの兄貴

「で、あのどうしようもない奴等は一体なんなんですか?」

『恐らくアレはこの土地で起きた聖杯戦争で使役されたサーヴァント…』

「なるほど、つまり敵ってわけか…」

 

 ライダーのサーヴァント――サーヴァントの影のような見た目から、シャドウサーヴァントと名付けられた――を処理し終えた一行は急いでその場を離れることとした。

 

 聖杯戦争で使役されたサーヴァント。ならばその数は最低でも七騎。先のライダーは消滅したので実質六騎。

 

 只でさえこちらには戦力が少ないのだ。下手にその場に止まってしまえば、他シャドウサーヴァントに襲われかねない。無論移動すれば出会わないというわけではないが、その場に止まって戦闘音を聞き付けた複数のシャドウサーヴァントに囲まれることを思えば、まだ遭遇戦の方が幾らかマシだ。

 

「ナッシュさん」

「どうしました、マシュさん」

 

 ドクターとの通信を終えて動き出した一同。

 

 そんな中マシュが遊斗に声をかける。

 

「さっきのシャドウサーヴァント。何故あそこまで動けたんですか?」

「え? …あれくらい動けません? というか今回俺ビーム撃っただけですし」

「いえ、あそこで攻撃できるだけ凄いです。私なんてあの速さに翻弄されるだけで…」

 

 これが黒ジャンヌだけだったら、まだ格の違いという理由で自分を納得させただろうが、よりによってパッと見一般人とそう代わりのない少年がサーヴァントである黒ジャンヌと同じくらいに戦い、勝利したのだ。

 

 デミ・サーヴァントとしての力こそ得たものの、未だにサーヴァントの証明たる宝具すらも使用できない自分。

 それが情けなくて仕方がない。そんな様子のマシュを見て、彼は何となく彼女の心境を悟った。

 

「……あー、その、あまり焦んなくて良いんじゃないか? 俺だって動けたのは偶然だし、ビーム撃てる以外一般人とそう変わりないし。傷つけばぶっ倒れるし死ぬし」

「ですが…」

「正直、さっきのはマシュを狙ってたから当てれただけで、自分だけだったら多分死んでる。…てかまずサーヴァントってそんな簡単に強くなったりするものなのか?」

「いえ、サーヴァント自体は召喚された時点である程度完成しています。それと、カルデアのシステムフェイトによって召喚された英霊はある程度の強化は可能ですが、今の状況では強化は難しいです」

 

 普通の英霊ならば召喚された時点で、その英霊の元となる神話や英雄噺などの伝説に沿って殆ど完成した状態で召喚される。

 黒ジャンヌも、出地こそ特殊であるがこの例に漏れない。

 

 だがしかし、マシュは違う。

 

 マシュはデミ・サーヴァントだ。しかも不確定要素だらけの状態でならざるを得なかった。

 確かに多少の戦闘訓練はつんでいるのだろうが、高々その程度で、万の兵士を倒し、国を滅ぼす伝説上の生き物たちと渡り合うような猛者、正に英雄と肩を並べられるはずもない。何故なら、戦闘能力もそうだが、何よりも踏んできた場数が違うからだ。

 

 これは、遊斗にも言えることだ。

 

 彼はバリアンとして、決闘者として多くの戦いを経験してきた。その中には決闘だけでは解決しなかったことも沢山あった。バリアンとして転生する前、様々な戦いを経験した。

 

 そうした経験値があるからこそ、己の武器であるビームを使いこなし、皆の助けになるために動けているのだ。

 これがなんの経験もない素人だったらそうもいかないだろう。その点、マシュも遊斗も運が良いのだ。少なくとも戦闘経験の下地はあるのだから。

 

「こんなもんじゃないか? マシュってデミグラス・サーヴァントなんだろ?」

「デミ・サーヴァントです。なんですかその美味しそうな名前は」

「気にすんな。まあ兎に角、そのデミ・サーヴァントとやらは普通のサーヴァントじゃないし、マシュ自身経験が少ない。なら動けなくて当然、当たり前」

「ですがッ!」

「だから、今から強くなっていけば良いだろ? 幸いなことに的は一杯あるし」

 

 そういって彼が指差すのは骸骨の群れ。

 

 シャドウサーヴァントから逃れたとしても、冬木の街を徘徊するこの化け物たちとは何処かで必ず戦わなければならない。

 

 急激なレベルアップは見込めないものの、来るべきシャドウサーヴァント戦に備えるためには実戦経験をつむことが一番いい。

 決闘だって、場数を践むことで魔法・罠の使用タイミングを知り、相手の場、どんなモンスターを出してくるか、場にある魔法・罠は何かを予測、対策をとることが出来るようになるのだ。

 遊斗は考える。つまるところ、今の自分とマシュに必要なことは――

 

「これから黒ジャンヌ縛りで戦うぞ」

「ええ!? 私たち二人でですか!?」

「死ぬ気でやりゃレベルは上がる。ほら、命懸けの土壇場なら摩訶不思議パワーでオーバーレイできるし」

「オーバーレイってなんですか!? それに私はシールダーだから護る――」

「馬鹿野郎! そんなの、守備表示で殴れッ!! それと少し気になることがあるから実験台になってほしいし。ほら、行くぞォ!!」

「え、ちょっ!? 助けてせんぱ――」

 

 遊斗はマシュの腕を掴むと、鎧と大盾の重さなど知らんと言わんばかりの力で彼女を引っ張っていくのであった。

 

 向かう先は、大きな穴の空いた橋の袂。そこで彼らは新たな出会いを果たす。

 

 

 

※※※※※※※※※

 

 

 

 

「あの二人、何をするつもり?」

「さ、さぁ…」

 

 不機嫌そうに眉を寄せる黒ジャンヌに対し、曖昧な笑みを浮かべることしかできない望。

 

 唐突に黒ジャンヌの元へと現れた遊斗とマシュは、黒ジャンヌに後方に下がって望、オルガマリーの護衛にまわってほしいと一方的に言いつけるとそのまま骸骨たちの元へと駆け出していった。ただ一つだけ言えることがあるとすれば、それは彼、遊斗がやることは絶対普通ではないということ。

 

 そして、オルガマリーたちの予測は――当たった。

 

「――罠カード、D2シールド発動! 守備力を倍にする!!」

「デェェイ!!」

 

 一瞬マシュの盾が輝いたかと思えば、彼女のタックルで骸骨が数体まとめて弾け飛ぶ。

 

「次はこいつだ!! マシュに対し、装備魔法、最強の盾を発動! マシュの守備力を攻撃力に加える!!」

「ぃよいしょお!!」

 

 今度はマシュの盾の形状に変化が現れる。十字架の意匠が鋭くなり、攻撃的なデザインに変化した盾をマシュが振るうとまたもや骸骨が数体弾け飛ぶ。

 

「やっぱそうか…マシュを対象に、装備魔法デーモンの斧発動!」

 

 またもやマシュの盾が光る。が、今度は彼女の手に新たに斧が装備される。

 

「って、どこから出ましたこの斧!?」

「とりあえず斧使え、マシュ!!」

「っはい!」

 

 斧なんて使ったことも無いだろうに、それでも確実に骸骨を処理できるのはマシュの中の英雄の記憶がそうさせているのか。悪魔のような顔のついた斧を振るい確実に骸骨たちを対峙していくマシュ。だが、それを見ていたオルガマリーは気づいた。

 

 マシュの骸骨を破壊する速度があまりにも遅すぎる。

 

「…マシュが武器の使用に慣れてないから?」

「いいえ。恐らく、アレはステータス変動系の武器か何か。マシュに合ったモノを使用しないと寧ろ足を引っ張る、と言ったところかしら」

 

 オルガマリーの呟きを補足する。

 黒ジャンヌの言葉は正解だ。

 遊斗が行いたかった実験とは、モンスターの使役が出来ない状況に陥った場合、手札がどれだけ周囲に影響を与えるのか、もしくはカードの効果によって味方にどういう変化が起こるを確認するという意図があった。

 

 今回、マシュを対象として行った実験は、単純に守備力を強化するもの、守備力を攻撃力に追加するもの、攻撃力のみを強化するもの。

 

『遊斗よ。結果はどうだ?』

「助かったぜドン千。これなら使える」

 

 ドン・サウザンドの言葉に、今回の実験で分かった事を考える。

 

 手元の書き換え程度なら消耗は少なくて済む。それに、やはり、魔法・罠カードの使用は他のカードの使用に比べて格段に消耗が少ない。

 

 そして、マシュに関して分かったこともある。

 

 まず一つに、マシュは守備力を攻撃力に変換して戦うこともできる効果モンスターであるということ。ダメージ計算時に守備力を参照することが出来る、と言えば分かりやすいか。これにより、守備力を変動させる効果を使用した場合のマシュの攻撃力は破格な物となった。

 だが、逆にデーモンの斧などの純粋な攻撃力をアップさせる効果とマシュは相性が悪いということが分かった。元々戦闘が苦手ということもあるのだろうが、それにしても素の攻撃力が低い。

 デュエルモンスターズ風に言うのならば、典型的な壁モンスター。もしくは絶対防御将軍のような守備表示で攻撃を行うモンスターがマシュというデミ・サーヴァントということになる。これならば、マシュに対しては攻撃力変動系の魔法、罠ではなく、守備力を増強する『D2シールド』や、守備力を攻撃力に加える『最強の盾』または戦闘を行う際に相手の攻撃力か守備力の一番高い数値+100ポイントの攻撃力を得る『月鏡の盾』が相性がいいだろう。

 自分が闘う以外に、こうして彼女たちをサポートすると言う形で戦闘が行えるという新たな発見は、彼にとってこれからの戦闘での立ち回りに選択肢が増えるということであり、選択肢が増えるということはつまりこれからの戦いがより充実した物になるということでもある。

 

 そして何より、この現実の戦闘に反映された決闘には、メインフェイズやバトルフェイズなどの大まかな区切りが存在していない。バトルフェイズ、つまり戦闘中に手札から魔法を発動することが出来るし、もちろんメインフェイズ中に戦闘もできる。

 だが、それらが曖昧であるが故に、エンドフェイズやドロータイミングが重要となってくる。

 エンドフェイズから相手ターン終了までのタイミングは詳しく検証できていないが、エンドフェイズから自分のドローフェイズまでの間は体感で五秒ほど。手札の数が選択肢に直結するデュエルモンスターズを使用する以上は手札の管理は絶対だ。

 

「ありがとな、マシュ。色々分かった」

「いえ。助けになったのなら幸いです」

 

 周囲の骸骨を処理し、こんな得体のしれない実験に付き合ってくれて本当にありがとうと彼が頭を下げると、マシュは頬を染め、はにかみながら言った。

 彼女にとってこうして頼られると言うのは初めての経験であり、お礼を言われると言うのはそれだけで舞い上がってしまいそうになるほど嬉しいのだ。

 そんな彼女を見て、遊斗はフルフル震え出した――かと思うと彼女の首に腕を回すと体重をかけて頭を無理矢理下げさせ、その頭をガシガシと撫で始めた。

 

「可愛いなええこの野郎本当に可愛いな!」

「わわ!? ちょっ、ナッシュさん!?」

「ごめん、この娘家にくんない? 姉と弟は居んだけど、実は妹も欲しくてさ!」

「だ、駄目ですよ!? マシュは私のです!」

「先輩、そういう問題じゃないと思うんです!」

 

 ヒールなんて履きやがって撫でにくいんだよ。恥ずかしいから離してください! ああ分かった――なんていうと思ったか!! きゃっ!? ちょっ、私だって撫でたことないのに!! ふははは!!

 

 わーわー、ぎゃーぎゃーと騒ぐ三人にため息を吐くと、オルガマリーは彼らに近づこうとしたのだが、その前に黒ジャンヌが立ちふさがる。

 

「なに?」

「…隠れてても無駄よ? というか、隠れるの止めなさい。どうしようもないくらい腐った臭いがさっきから漂ってきていて不快なのだけど?」

 

 彼女の声に物陰から二人の影が現れる。シャドウサーヴァント。一人は長刀のような武器を持ち、もう一方は襤褸布に身体を覆った者。クラスはランサーとアサシン。そのどちらもが先程のライダーのサーヴァントと同じかそれ以上の気を放っていた。

 

 特にアサシンはソレが顕著だ。アサシンでありながら、気配遮断などの暗殺者としての技能ではなく、相手を恐怖させ、威圧することに意味を見出している。

 本来ならばやってはいけないほどの致命的なミスだが、今の状況に置いてそれは限りなく正解だ。

 未熟なマスターである望、戦闘能力を持たないオルガマリーにはその効果は顕著に表れる。そして、デミ・サーヴァントであるマシュもまた、戦闘経験が少ないが故にアサシンの気配に飲まれてしまう。

 

 幸いなことは、精神的、そして戦闘能力的にも劣っているはずの彼女たちには、黒ジャンヌという特別なサーヴァントと、九十九遊斗――ナッシュと言うイレギュラーが存在しているということ。

 

「流石だと言いたいところとだが――」

 

 アサシンが動く。誰も気づけぬほど自然に放たれた投げナイフは寸分の狂いもなく望の胸元に迫る――

 

「アンサズ!!」

「くず鉄のかかし!」

 

 しかし、ナイフは突如として出現した屑鉄で出来た案山子によってその全てが弾かれ、アサシンとランサーは上空より降り注ぐ炎の雨によって一団から引き離される。

 体勢を立て直す時間は稼げた。マシュが盾を手に前に出る。

 

「…へえ、奇妙な物を使うじゃねえか」

「ファイアボールか…あんた、魔法使いみたいで格好いいな!」

 

 橋の上から降りてきたフード姿の男性。

 新手!? 皆が警戒を強める中、遊斗は冷静に手札を確認して魔法・罠ゾーンにカードを挿入する。

 

「俺は手札から装備魔法、ワンショット・ワンドを装備する!」

「おお? …へぇ、こりゃ良い」

 

 魔法使い――キャスターのクラスと思われる青いフードの男の持っていた大きな木製の杖が光を放ち、三日月の意匠が追加される。

 ワンダーワンド。魔法使い族モンスターに装備でき、装備モンスターの攻撃力を800上げることの出来るカードだ。

 

「良いのかい? こんなことしてよ」

「当然!」

 

 フードの男に遊斗は迷いなく答える。

 確かに相手の正体すら知らない間に攻撃力補助など愚の骨頂。もし他のシャドウサーヴァントと同じようにこちらを襲って来れば瞬く間に制圧されてしまうだろう。だが、彼からは全くそのような意図を感じないし、何よりシャドウサーヴァントのような嫌な感じが全く感じられない。

 

「そうかい――そらっ!!」

 

 ワンショット・ワンドを付与したフードの男が戦闘音を聞いて近づいてきた骸骨相手に先程のような火の玉を放つ。

 骸骨は爆発炎上。魔術というものはそこまで小回りが利くものではないだろうに、それを使って尚弱点を的確に撃ち抜く眼と敵の動きに反応して的確に相手を撃てる位置を保ち続ける足回り。生前は高名な英雄だったのだろう。

 フードの男の介入によって、ランサー&アサシンVSマシュ、黒ジャンヌ、遊斗、フードの男という図式が出来上がった。

 数では遊斗たちが上。どこからともなく湧いてくる骸骨も、余裕のあるフードがしっかりと処理してくれているので上手く立ち回ればこの戦闘も早期決着が狙えるはずだ。

 

「ワンショット・ワンドの効果発動! カードドロー!!」

 

 ワンショット・ワンドが墓地へ送られ、彼はカードを一枚引く。そのカードを手札にまとめて内容を確認。現状はモンスターよりも罠が多い。

 思考は一瞬。彼は三枚のカードを決闘盤に叩き付けた。

 

 空間に二枚のカードが溶け込んでいき、一枚が強烈な風となってアサシンと戦闘中のマシュに纏わりつく。

 

「俺は手札から破天荒な風を発動!」

 

 荒ぶる風を纏ってアサシンに突貫していく姿は正しく破天荒そのもの。そんなマシュを見て黒ジャンヌが叫ぶ。

 

「私には何か無いわけ!!」

「ジャンヌ必要ないじゃん!!」

 

 ランサーのシャドウサーヴァントの突きを弾き、黒ジャンヌが躍る様に回転して旗を突きだす。

 辛くも穂先を滑らせて捌くが、黒ジャンヌは焦ることなくそのまま踏み込んで腰に下げた黒い長剣を振るう。

 いくらサーヴァントと言っても、あくまでもサーヴァントから生み出された存在でしかないシャドウ・サーヴァント。マスターが存在せず、宝具を発動することすら出来ない彼らでは、エクストラクラスであり、更にジャンヌ・ダルクという世界レベルの英雄を相手にするには力不足である。

 只でさえ安定した戦いを行えている黒ジャンヌに対してサポートをする必要性は感じられない。

 

「鬱陶しい!!」

「トラップオープン、砂塵のバリア―ダスト・フォース―!!」

 

 行動を宣言していれば、彼がマシュの戦闘を補助していることは敵にバレるのは必然である。

 対サーヴァント戦の経験者であるシャドウ・サーヴァント、特に直接戦闘能力が他のクラスに劣るアサシンのサーヴァントにとって、敵サーヴァントをサポートする魔術師は最優先の攻撃目標となる。

 図らずとも本来のマスターである望に代わって標的となった遊斗であったが、これは彼からすれば願ったりかなったりである。

 

 アサシンの腕が鞭のようにしなり、手から無数のナイフが投擲される。

 暗殺者の名に違わぬ疾風のごとき早業。素人ならば即刻喉笛を掻き切られているだろうが、アサシンが相手にしているのは決闘者。VRデュエルの発展によって物理的衝撃が発生し、軽く十メートル以上吹き飛ぶことすらよくある世界からやって来た根っからの決闘者。

 時に命懸けの戦いの中では、コンマ数秒でセットされる相手の伏せカードすら読み取る能力が必要となる。敵の仕草に気を配り、確実に動きを制するのは決闘者の基本だ。

 

 彼の宣言と共に突如として砂嵐が彼の前に展開され、竜巻如く荒れ狂う砂の渦に小刀が呑み込まれる。

 

「ナニッ!?」

「ッ!?」

 

 バリアの名の通り、主だけを守ると思われていた砂の渦。だがそれは突然回転の向きを変えてランサーとアサシンに襲い掛かった。

 追撃を行おうとしていたアサシンと、反撃を試みていたランサーは瞬く間に大量の砂によって四肢を拘束され、強制的にその場に張り付けにされてしまう。

 

 その隙を逃す黒ジャンヌたちではない。

 

 旗の穂先が身動きのとれぬランサーの頭部を貫き、望の瞬間強化の魔術支援を受けたマシュの疾風怒涛の盾がアサシンの身体を破砕した。

 

 

 

※※※※※

 

 

 

 シャドウサーヴァントの襲撃を退けたマシュ達一行は、周辺の索敵を終了して川沿いのベンチに腰掛けた。

 

 つかの間の休息である。そして、そこで一行はシャドウサーヴァントとの戦闘に介入した青いフードの男からこの時代の話を聞くのであった。

 

 青いのフード男――クラスキャスターのサーヴァント。

 彼はどうやら特にランサーとしての適性が高いらしく、本来ならば槍の使い手として召喚されるはずだったらしいのだが、何やらこの時代ではルーン魔術を起点とした魔術に長けたドルイド、クラスキャスターとして召喚されたらしい。

 

 彼の目的は、この街で行われている聖杯戦争に勝利すること。そして、その聖杯戦争の中心となっている物が、この街に存在する大聖杯と呼ばれる巨大な願望器。

 一行はキャスターの話からこの大聖杯が特異点の原因であると推測。双方の利益になるとのことで、キャスターと、一行の中で唯一のマスターである望が仮契約を結び、大聖杯へ向けて出発するのであった。

 

「へぇ…とりあえず凄いんですね」

「小学生並の感想ね!? …貴方、もっと何か無いわけ?」

「いや、そう言われましても…」

 

 話の詳細を聞いてそんな感想を漏らす遊斗であったが、オルガマリーに言われて話を思い返してみる。

 

 だが、いくら考えたところでああ、なんか凄いことになっているんだな、ということしか分からない。どうせその大聖杯とやらがある場所に居座るセイバーをボコボコにしてしまえばいいのだろう。ならばやりようはいくらでもある。

 ある意味生死や世界の危機と言う物に慣れてしまっているからこそできる思考なのだが、彼はそのことに気づかずに首を傾げて唸るばかりだ。

 

「はっはっは!! なんだ、随分気持ちの良い奴じゃねえか!!」

「…とりあえずキャスニキって呼んでもいいですか?」

「おう、構わねえぞ!」

「ナッシュさん!?」

 

 ちょっと馴れ馴れしすぎやしません!? というか話変わりすぎ!! 望がそういうと、それに同調するようにマシュも言った。

 

「そうです! 兄貴ってしっかり言わないと!」

「そこ!?」

「…だって、兄貴っぽいキャスターだし」

「…なるほど! では仕方ないですね!」

「仕方ないよね!!」

 

 マシュ、ツッコむところ違うよ!? 叫ぶ望に対し、あはは、と笑い合う二人。そして騒ぐ三人を見て頭が痛いと言わんばかりに額を抑えるオルガマリー。

 

 そんな四人に対し、少し離れた位置から呆れた視線を向ける黒ジャンヌ。

 

「よ、ご同輩。ランサーの奴にしつこくケツを狙われてたけど――」

「次やったらブチ殺すわよ」

「おお、くわばらくわばら」

 

 腰に下げた長剣に手を伸ばしながら人を殺せそうな視線を向けてくる黒ジャンヌに両手を挙げてササッと身を引くキャスター。

 だがすぐに表情を変えると、彼は何やら派手な言い争いに発展している四人を見て言った。

 

「良い兵たちだ。盾のお嬢ちゃんもそのマスターも、皆悪くない」

「ええ、そうね…でも――」

 

 二人が見据えるのは、一人の少年。

 

 ナッシュ、そう呼ばれる少年は、魔術回路を全く持たない何の変哲もない一般人だ。

 だが彼は、デュエルモンスターズと呼ばれるカードゲームのカードを実体化、その効果を使用することで並のサーヴァント以上の戦闘をこなして見せていた。

 これはハッキリ言って以上である。そしてもう一つ、二人が気にする要因が彼にはあった。

 

「あの気配、分かるか?」

「ええ。霞程度だけど見えているわ」

 

 彼の背後に存在する謎の影。

 魔術を究めし者であり、歴戦の戦士であるキャスターと、エクストラクラスという特例をもってしても把握しきれない存在。だが、その存在は限りなく混沌に近く限りなく悪に近い。

 

 ナッシュという少年の様子から、その存在とは確実にコミュニケーションが取れるということは分かる。そして同時に、戦闘時に彼に流れる謎の力はどうやらその謎の存在から送られているようであった。

 これらの情報から分かることは、ナッシュと言う存在は恐らくとてつもない秘密を秘めているということ。

 その秘密は、下手をすればこちらを破滅へと陥れかねないほどのものとみて間違いは無い筈だ。それほどまでその謎の存在は不気味で恐ろしい。

 

「とはいえ、お嬢ちゃん達のあの様子じゃあ、な」

「そうね…それに――」

 

 戦闘の素人であるマスターに魔術師、そしてデミ・サーヴァント。緊張で適切に動くことができないだろうそんな彼女たちがああして自然体で居られるのは、彼の持つ不思議な雰囲気があるからだ。

 今のこのパーティーにおいて、ナッシュという少年が担っている役割は大きい。

 マスターを裏切るなら容赦はしないが、それまでは見極めるための猶予を与えよう。

 

「なるほどねぇ…」

「なによ」

「いや、なんでも?」

 

 そいじゃ、俺はあっちの坊主と話してくらぁとキャスターは面白そうに笑いながら四人のもとに歩いていくのであった。

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