遅れまして投稿です。
変なところがあれば指摘お願い致します。
「やっぱり、外の世界に出たい」
「ビィ?」
冒険。
それは小さい頃からの夢だった。
木の実を食べて、ビィと一緒に遊んで、森の仲間たちと一緒に森を冒険して。
青々とした雲一つない空が赤く染まり、赤が黒に染まって夜の帳が下りる。
森で一番大きな木の枝の上に座り、星空を眺める僕の膝の上にちょこんと座るビィを見て、僕は口に出していた。
それを聞いたビィは顔を上げてこちらを見てくる。
ビィは少し悩むような顔をするとこくん、と頷いた。
「ビィ?」
言葉がわかるの?と続きそうになる口を閉じる。
お互いに言葉はわからなくても、通じなくても、心でわかっているとばかりにビィは笑うとスルリと膝の上から飛んだ。
ビィは近くの木の枝から大きな葉っぱを一つ取ると、こちらへ持ってくる。
そして、その葉っぱで今日取ってきた木の実を包むとそれをこちらに渡してきた。
「ありがとう、ビィ」
そう言って受取るとビィはもう一度葉っぱを取ってくると自分が好きな木の実を葉っぱに包み始める。
「ビィも一緒に来てくれるの?」
その様子を見て、嬉しさからつい出てしまったその言葉を聞いたビィは嬉しそうに頷く。
自分の好きな木の実を葉っぱに包むと、それを持ってまた膝の上に座った。
「明日、みんなにお別れをして、それから一緒に行こうね」
「ビィイ!」
ビィと僕はお互いに頷くと木の洞の中に入る。
そして、葉っぱの布団に包まれながら一緒に眠った。
「皆、またね!」
「ビィィィイイイイ!!」
森を出るのを知った森の仲間たちがたくさん集まって手を振ってくれる。
肩に乗ったビィと一緒に手を振り返す。
朝早く起きた僕たちは、森の皆に旅に出ることを伝えると、森の皆は木の実を持ってきてくれた。
たくさん集まった仲間は悲しそうに、けれど嬉しそうに手を振ってくれた。
それに目頭が熱くなるのを堪えながら、精一杯の笑顔で手を振りながら僕たちは歩く。
目が赤いのはビィも同じで、目に大粒の涙を浮かべながら笑顔で手を振っていた。
「また、ここに来ようねビィ」
「ビィィィイイ!」
また、ビィとこの森に帰ってくる。
そう約束して僕たちは森を出た。
太陽が空の真上に来た頃、森をようやく出た僕たちは川にぶつかっていた。
目の前の川は深く、歩いては渡れそうにない。
時々跳ねる赤いコイのような生き物を見ながらビィと顔を見合わせる。
「川を渡るか、それとも川を下るか、どうしよう?」
「ビィ?」
ビィと一緒に悩んでいると川の上流から小さな赤いボールが流れてきた。
「なんだろう、赤と白の……ボール?」
辛うじて手が届く場所に流れてきたそれを川から拾うと、ビィと一緒に眺める。
「なんだろうね、これ。ビィはわかる?」
「ビィィィ?」
それを聞いたビィもわからない、とばかりに大きな頭を横に振った。
「おぉぉぉーい!」
2人で悩んでいるとボールの流れてきた上流の方から男性の声が聞こえる。
ビィと一緒に声のした方を振り向くと白衣を着た若い男性がこちらに手を振りながら走ってくる。
「はあっはあっ、君っ!この川を先程ボールが流れて行かなかったかね!?」
その男性は息を切らせながらも急いでるのか聞いてくる。
それにびっくりしたビィは僕の後ろに急いで隠れると顔を覗かせて男性をじっと見ていた。
男性の勢いに押されて後ろに身体を引いてしまう。
しかし男性の言うボールかもしれないとボールを持った手を男性の前に差し出した。
「……ボール?えーと、これのことですか?」
「おおっ!それだよっ!それ!ありがとう!」
先程拾ったボールを男性に見せると、それを凄い勢いで掴むと確認し始める。
「ふぅぅぅ……見つかって良かった。ありがとう」
暫くボールを見ていた男性はほっと一息つくと笑顔でそういってきた。
「いえ、見つかって良かったです」
「本当にありがとう。これを無くしたとオーキド君に知られたらなんと言われるか……」
男性は疲れたような顔をしながらボールをカバンにしまう。
「改めてお礼を言わせて欲しい。本当にありがとう」
「いえいえ、お礼を言われる程じゃないですが……どういたしまして」
するとビィに気が付いたのかこちらをじっと見てくる。
「少年よ、そのポケモンは君のポケモンかな?」
「ポ…ケ……モン?ビィのことですか?」
「ビィと言うのかね?ああ、君のビィ君のことだが、もしや君は……ポケモンを知らないのかね?」
「はい。……ポケモンってなんなんです?」
目の前の男性の発した、ポケモンと言う言葉に僕は首を傾げていた。
それはビィのことなのだろうか。
ふとビィを見つけると、こちらの視線に気が付いたのかビィも不思議そうにこちらを見つめてくる。
そんな疑問から口に出していた言葉を聞いた男性は、一瞬目を丸くしたかと思うと、顎に手を添えて考え始める。
その時間も短く、男性は考えがまとまったのか頷き、川の上流を指差す。
そしてその口から、僕にとって嬉しい言葉が発せられた。
「ふむ。……なら、付いてきなさい。あちらに私が休んでいたキャンプがある。そこで、君にポケモンのことを教えてあげよう」
ビィがポケモンという生き物なら、僕は知りたい。
そうすれば、もっと仲良くなれるはずだから。
「ありがとうございます!」
僕はその言葉に飛びつくように大きな声で男性にお礼を言っていた。
ビィも男性に慣れたのか僕の肩に乗る。
男性は僕を見て、嬉しそうに頷くと川の上流に向かって歩き出した。
僕は急いでその男性の後を付いて行くのであった。
男性の後を付いて暫く歩くと、テントやテーブルのある開けた場所に着いた。
「ここが私がキャンプをしている場所だ。ゆっくり休んでくれたまえ」
「ありがとうございます」
男性に差し出されたイスに座りながら、初めて見たテントやテーブルを珍しそうにビィと一緒に視線を動かし続ける。
そのどれもが、興味を引くには十分すぎるものだった。
何故なら、そのどれもが写真やテレビという枠に切り取られた画面の向こうでしか見る事のできなかったものであったのだから。
男性はテントの中に肩にかけていたカバンを置くと代わりにノートを手に取り、こちらに見せてくる。
「このノートを見せながら、君にポケモンのことを教えよう。」
「わぁ……」
そのノートにはたくさんの生き物のスケッチが書かれていて、ビィと一緒に食い入るように見つめていた。
ノートのページを捲るとそこにはまた別の生き物が木の実を食べている所が書かれている。
ビィもページを捲ってみたいのか肩から膝の上にちょこんと座ると、ページを捲る。
「あぁ、そういえばまだ自己紹介をしていなかったね。私の名前はナナカマド、ポケモンの研究をしている者だ」
男性はイスを持ってきて、目の前に座ると思い出したように自己紹介をする。
ノートから顔を上げて男性、ナナカマドさんの顔を見る。
そして、ここに来て久しく口にしていなかった自分の名前を口にした。
「僕の名前は、マシロ。トキワ、マシロ」
常磐 真白。
それが僕の名前。
いつの頃から、周りの誰にも呼ばれなくなった、僕の名前。
「マシロ君か、良い名前だね。トキワ……確か、オーキド君の出身地のマサラタウンの隣にトキワと言う町があったな。……君はカントー地方のトキワ出身かね?」
「トキワ……?僕は東京の双葉町の生まれです」
「トーキョー地方のフタバと言うところかね?ふむ、私がまだ知らないところから来たと言うのか……ふーむ」
知らない地方の名前や町の名前がどんどん出てくることに驚いて僕は固まる。
そんな僕を他所に、ナナカマドさんは考え始めるのであった。
「ふーむ、まぁ追々わかってくるだろう。ではポケモンのことを教えようか。ノートの最初のページを開いてくれ」
「……はっ!?わかりました、よろしくお願いします!ナナカマド博士っ!」
固まっていた状態からナナカマド博士の言葉で解凍した僕は教えてくれる博士に精一杯のお礼をした。
ポケモンという生き物のことを知ることを出来れば、もっと友達と、ビィと仲良くできるはずだから。
「博士っ!?私はまだ博士と呼ばれるほどの者では……」
「研究してる人のことを博士と呼ぶんじゃないんですか?」
「だから研究しているとはいえ、私はまだ博士と呼ばれるほどにはないのだよ」
「でも、僕にとっては博士です!ナナカマド博士!」
「だから博士はそう簡単に名乗れるものでは、……いや、いいだろう」
首を傾げる僕を前に博士は何かを決心したように頷く。
博士は力強く、そして、自分に宣言するかのように言葉を発した。
「少年、いやマシロ君。私は博士だ。将来、ポケモン研究の歴史に名を残す博士になる男だとも!」
「では改めてよろしくお願いします!博士っ!」
「ああ!」
「ビィィ♪」
ビィが僕と博士の周りを嬉しそうに舞う。
それが僕とナナカマド博士との出会いだった。
「今まで、ありがとうございました!博士!」
「マシロ君。こちらこそありがとう」
あれからポケモンのことを教えて貰いながら、博士の研究の旅に付いていき、各地を巡る旅が始まった。
初めての冒険。
病院から出られなかった僕が、窓の外の世界に思いを馳せた冒険の旅。
願って止まなかったそれは、やっぱりとても楽しいものだった。
博士とビィと一緒の旅はとても楽しく時間が過ぎるのはあっと言う間だった。
各地のポケモンを見つけながら、ポケモンのことを知り、また別のポケモンを見つけるその繰り返し。
それがとても楽しかった。
過ごした一日一日が、昨日のことのように思い出せるほどに。
旅の中で、友達も増えた。
ダンバルと言うポケモンで、まだわかっていなことが多く、進化するすらわからないんだそう。
博士と一緒に登った山の中で出会えたこのポケモンは、ビィと仲良くなってそのままついて来てしまった。
嬉しくてダンバルとビィと一緒に、夜空を流れる流れ星を見ながら寝たあの日の夜は忘れられない。
そして、一番大きな喜びは。
「(……これで博士ともお別れだね)」
肩に乗っているビィが寂しそうに呟く。
そう、ビィと話せるようになったことである。
ビィ曰く、テレパシーと言うもので、声に出さなくても考えるだけでお互いに話せるのだとか。
旅の中で、僕たちと話しているうちに言葉を覚えて話せるようになったみたい。
ナナカマド博士はこのことを知っていて、ビィと話せるようになったことを喜んでくれた。
けれど、他の人にはビィと話せることを言ってはならない、と念を押されてしまった。
悪い人に狙われないようにするためには必要、と言われたからには気をつけないと。
そして、悲しいことは、もう博士と別れないといけないこと。
博士は研究をする為にこちらへ来ていて、そろそろ研究の報告の為にカントー地方のタマムシ大学に帰らないといけないらしい。
「(……マシロ)」
ずっと続くことはないと思っていたけれど。
どこかで終わりが来ちゃうとわかっていたけれど。
その時が来るとどうしても悲しくなってしまう。
目頭が熱くなり、目に映る博士がぼやけて見える。
「ははは、また会えるさ。せっかくの再開を誓うこの場で君に泣いて欲しくないな」
「……ううぅ。だって、まだ……博士と……」
「ふむ。そんな君に笑って貰えるようにこの言葉を送ろう。私の生まれた地方の言葉だがね」
「……言葉?」
博士は笑いながら僕の手を握る。
大きくて、温かくて、何度も僕を助けてくれたその手を見る。
「ベストウイッシュ!良い旅を!私の出身の地方の言葉で、旅立つ人の幸運を願うと言う意味の言葉だ」
「……ベスト、ウイッシュ?」
「ああ、旅の始まりがあれば必ず終わりもある。終わりがあれば必ず始まりもね。」
「始まりと、終わり……」
「今回の旅はここで終わりだろう。けれど、旅が終わったという事は君の旅はまたここから始まるのだ。今から新しい旅が始まる君に、私は君の旅の幸運を願ってこの言葉を送ろう」
「ベストウイッシュ……うん!」
目に映る博士は未だにぼやけたままだけれど。
それでも、笑えたと思う。
終わるのは悲しい。
とても悲しいけれど、始まりが来ないのはもっと嫌だから。
「ようやく笑ってくれたか。やはり君は笑顔でないとな」
「あははっ!」
「(やっぱりマシロは笑顔じゃないと!)」
ビィが指先で僕の涙を拭いてくれた。
博士と繋ぐ手に力を込める。
博士も力強く、握り返してきた。
「(私もっ!)」
ビィも肩からふわっと浮くと、僕たちの繋ぐ手の上に小さな手をちょこんと乗せた。
「ではまた、会おう!マシロ君!ベストウイッシュ!良い旅を!」
「また、会いたいから!博士!ベストウイッシュ!良い旅を!」
「(ベストウイッシュ!)」
互いに笑顔で、また会う日を、一緒に旅をする日を願って。
どちらからともなく手を放すと。
互いに背を向けあって歩き出した。
ビィが肩に乗る。
互いに振り返る事は無い。
振り返る必要はない、そう思っているから。
この方は若い頃の設定が無いので想像で書きました。
不自然なところがあれば教えて頂きたいです。
読んでくださってありがとうございます。