前の投稿から2か月も空いてました。
書き方など変わっている箇所もあるかと思いますが第4話見ていかれてくださいませ。
森の中に存在する開けた広場。
その中央に舞い上がったピンク色のポケモンは気持ち良いのか嬉しそうに太陽を浴びている。
一言でそのポケモンを言うなれば――
「妖精……」
無意識に呟いたその言葉は、目の前にいるポケモンを表すに相応しいものだった。
反射的に今まで腰掛けていた倒れた老木から立ち上がるとそのポケモンへ一歩近づいてしまう。
――パキッ
「あっ……」
足元から音がした。
下に視線を落とすと草履で踏んでしまったのだろう折れた木枝があった。
「ビィ?」
しまった。そう思うも既に遅かった。こちらに気付いたそのポケモンはこちらを見たと思うと目を大きく見開く。そして、その小さな羽を羽ばたかせたかと思うとあっという間に木々の先へ消えてしまった。
「ああぁ……」
我ながら情けない声が出てしまった。あのポケモンが消えた先から目が離せなかった。あのポケモンをもし、捕まえることができたなら。あのポケモンともし、一緒にあの日を迎えられるのなら。あのポケモンともし、この先も一緒にいられるなら。
もし、が頭から離れなかった。
もしを連想するよりも私にはやらなければならないことがあるのに……。
「やらなければいけないことが……ありますのに……」
私はこの町を守らなければならない。
跡を継いでくれと私をジムリーダーに推薦してくれたお母様のためにも。
「ビィ、こっちであってる?」
「ビィ!」
「……え?」
森の奥から男の子の声が聞こえた。それと、先ほど森の中へ消えてしまったポケモンの鳴き声も。
「なら速くいかないとね。……聞けないと大変だからね」
「ビィィィ!」
聞こえる距離にいないはずの男の子とあのポケモンの声を意地悪な風が私の耳に運んだのだろう。
また、あのポケモンと会えて嬉しいと思う気持ちと、既に自分以外の誰かと一緒に歩むことを決めていたという現実を知ってしまった悲しいという気持ちが混ざりあうことを感じ、自分が嫌になった。
そう考えてしまうほどに余裕のない自分を教えられるようで、顔が俯いてしまう。
そのせいからか、全く気付いていなかった。
着物の袖の中に入れているボールが揺れていることに。
私に危機が迫っていることをポケモンたちが教えてくれていることに。
「ガアアアアァァァァ!!!!」
「え?」
背後から突如響いたポケモンの怒りの混じる鳴き声に反射的に振り替えると視界一杯に広がるは緑。
細い四肢と背中の薄い羽。そして、私目がけて振るわれている両腕のカマ。
このポケモンの名は、ストライク。
「なっ!?」
咄嗟に横に転ぶことで避けることに成功する。
代わりにその切れ味鋭いカマで切られたのだろう着物の袖は空を舞うとストライクの足元に落ちた。
「……なんてこと」
不意打ちとはいえ背後をこうも簡単にとられてしまったこと。
本来であればあってはならないことではあるがまだなんとかなる、そう言えた。
私の手持ちのポケモンであれば目の前のストライクなら容易く倒せるだろう。
しかし……。
「ボールが……ストライクの足元にあるなんて……」
そう、ボールを入れていた肝心の袖はストライクの足元にあるのだ。
ストライクは素早くて目で捉えることができないほどの速さでその両腕のカマを振るい獲物を狩るという。
足元にあるボールを取るなんてことは無理だろう。
取る前にそのカマで私の命は摘み取られてしまう。
ポケモンがいなければトレーナーもただの人なのだ。
「かと言って……逃げるのも無理ですわね」
ストライクより速く走るなんて無理だし、まず私が速く走れない。
なにより目の前の怒っているストライクから目を離せば命はないだろう。
自分の命が今まさに消えようとしているのに、私は自分でも驚くくらい冷静だった。
周りの皆が自分に寄せる期待が怖くて、嫌で、辛くて。
いつか期待は私の背負う重しとなっていた。
そうして逃げてきたこの場所でまさかこのようなことになるとは。
「逃げた罰が……当たったんでしょうか?」
命が危ないのに、ついそんな言葉が口を突いて出ていた。
ストライクがじりじりと距離を詰める。
「私のポケモンたち……ごめんなさい……」
大好きなポケモンたちを袖の中にボールに入れたまま残していくのは悲しかった。
せめて野生に帰してあげるか、お母様のところへ送り届けたかった。
「ガアアアアァァァァ!!」
ストライクが吠える。
「お母様、町の皆様申し訳ありません」
冷静な自分がぽつぽつと言葉を紡ぐ。
もう助からないと諦めた自分が、誰に届くともわからない謝罪の言葉を発していた。
と、同時に。
まだ生きたい。
そう思う自分がいることもわかる。
まだ、こんなところで人生を終えるわけにはいかない。
あの日、私を助けてくれたクサイハナと約束したのだから。
いつかあなたとこの町のみんなを守るジムリーダーになると。
母の跡を継いでこの町を笑顔が絶えることのない町にするのだと。
だから。
「……まだ生きたい」
「ガァァァァアアアアァァァァ!!!!」
目の前のストライクが飛び上がり、カマを振りかぶった。
カマにエネルギーが集まり、カマが白いエネルギーに包まれ一回り大きくなる。
きりさく。
それはストライクの代名詞ともいえる技だ。
人どころか大木すら簡単に切断してしまえるその技を受けて生きれる保証はない。
振り下ろされるカマがゆっくりと見える。
これが私に残された最後の時間なのだろうか。
この時間が費えるとき、私はこの世にいないのだろうか。
それでも……生きることができるのなら、生きたい。
「……誰か……誰か……」
口が勝手に動いていた。
「……誰か……誰か私を――」
希望を求める言葉を――確かに、紡いだ。
「……誰かっ!助けてぇぇぇぇ!」
ストライクが、カマを振り下ろすその瞬間。
「あ、まだいてくれて良かった……って、危ない!ラティオス、お願い!」
そんな言葉が、聞こえた。
意識が雲の上を浮いているようにふわふわとしている。
私は寝ているのだろう。
微睡の中にいる感じがした。
身体はごつごつとした木の上に寝ているのだと思う。お母様の目を盗んで森へ遊びに行っていた私がいつも寝ていた木がこんな感触だった。ポケモンたちと仲良く遊びながら、一緒にお昼寝して。そんな毎日がとても楽しかったのを覚えている。
でも、そんな私もあの時。
あのストライクによって……。
悲しくなるけれど、もう終わってしまったことだと思うと不思議と涙は出てこなかった。
(それにしても……気持ちのいい枕ですわ)
頭の後ろに感じる柔らかな感触。木の上で寝るときは木が堅いせいもあって起きた時に頭が痛いことがよくある。でも、この枕は優しく頭を包み込むように柔らかい。
それでいて少し甘いこの匂いも自然と落ち着くくらい良かった。
いつまでも嗅いでいたい、安心する匂い。
もっとこの気持ち良さに浸っていたいと寝返りをうち、身体を右に向けると匂いが強くなった気がした。
安心するその匂いを肺一杯に嗅ごうと柔らかいものに鼻をぎゅっと押し付けた。同時に頬に感じる温かさや柔らかな感触。深呼吸をすると匂いが肺一杯に広がりとても気持ち良かった。つい、口元が緩み自分が笑顔であるとわかる。
「……ぁ……ぁ?……」
なにかが耳に響く。
けれど、もう少しだけ。
もう少しだけ、この感覚に浸っていたかった。
(せめて、もう少しだけ)
ふと、頭を撫でられた。
いつの日かお父様に良い子だと頭を撫でてもらった時、喜んだのを覚えている。
もうお父様はこの世にいないけれど、気持ちよさと安心感はそのときと同じだった。
撫でてもらいながら、手を伸ばして柔らかいそれを抱きしめる。
そして、深呼吸をするとそれもう、幸せと言えるものだった。
今だけは、今だけは私が背負うものから解放されて、ただ1人の少女としてこの幸せを感じていたかった。
「大丈夫……?……ですか?」
「……え?」
耳元から声がする。
そして、同時に髪が風に流れる感触も。
微睡の中から引き揚げられた私は意識がしっかりと、確かに覚醒していくのを感じた。
生い茂る木々の隙間を抜け、木々の隙間から光が差し込む道を歩く。
「あと……もうちょっと……」
ビィがこの先で見つけた広場にいた僕と同じ年くらいの女の子。
その子に僕たちが今いる場所と今の時間を教えてもらうためにも急いでいた。
何も知らないで町に入るよりは少しは知っていた方が安心できるし、可能であれば案内してもらえれば色々と助かるからだ。
女の子がいなくならない内に、速く。
ペースをあげて歩いているとビィが何かを感じたのか腕を引っ張った。
「ビィ?」
「(嫌な感じがする……急いで!)」
「わかった!」
ビィの予感は当たる。
それはもう当たる。
その上で嫌な予感がするということは余程のことなんだろう。だから走った。速足程度だと間に合わないかもしれないと思ったから。光が大きく差し込んでいるところへ向かって走った。
「(マシロっ、あそこ!)」
そして、森の中で開けたところへ出た時、ビィが指を指す。
指の先、森が開けた場所の中心に着物を着た女の子を見つけた。
「あ、まだいてくれて良かった……って――」
その言葉は最後まで言うことができなかった。
同時に見つけてしまったのだ、今まさに女の子を襲わんとしているストライクの姿も。
ストライクの両腕のカマにエネルギーが集まり光る。
きりさく。
ツメやカマを使って文字通り相手を切り裂く技でポケモンによっては大木を簡単に切ることができるくらいの威力を持つ技だ。もちろん人に使う技ではなく、人に使ってはいけない。けれど、野生のポケモンであれば、あの怒っているストライクのきりさくは今少女へ向かって使われていた。
「……誰かっ!助けてぇぇぇぇ!」
少女が叫ぶ。
「(マシロっ!)」
ラティオスが叫ぶのと同時に僕も叫んでいた。
「危ない!ラティオス、お願い!」
その言葉と同時に腕を折りたたんだラティオスが駆けた。
ストライクのきりさくが女の子に振り下ろされるよりも早く、音速を超えたラティオスがストライクを体当たりを持って弾き飛ばした。同時にラティアスに女の子の周りにリフレクターを使ってもらうのも忘れない。助けようと思って更に酷いことになったら大変だからね。
「(危ないっ)」
ラティアスが崩れ落ちる女の子を抱き留める。
「間に合ってよかったぁ。……ラティアス、その子は大丈夫?」
「(ええ、気を失っただけみたい。兄さんのおかげで無事よ)」
「ラティオス、ありがとう。あれ?ビィ?」
ほっと胸を撫で下ろし、ビィを探す。
「(マシロ。この子、怪我してる……)」
弾き飛ばされたストライクは木に叩きつけられたせいか気絶していた。
そのストライクの背中を見ているビィが悲しそうな声で僕を呼んでいた。
そして、ビィに言われた通りストライクの背中を見るとそこには大きく傷ついた羽があった。
「(これは酷いな。痛みも相当なものだろう)」
「このままだと危ないから……捕まえておくかな」
このまま放っておいてストライクが起きた時、またストライクは怒りに我を忘れて手当たり次第に人やポケモンを襲ってしまうのだろう。カバンからきずぐすりを取り出すとストライクの羽に吹きかける。あくまで応急処置にしかならないがないよりはましだろう。きずぐすりを吹きかけたところをガーゼで覆った。
「ほいっと」
モンスターボールを投げるとストライクがボールの中に吸い込まれる。揺れるボールの中心、開閉スイッチが数回明滅するとボールはカチリと言う音と共に静かになった。捕まえたボールをポケットにしまう。
本来、瀕死や気絶しているポケモンにボールを投げることは良くないことなのだ。何故なら瀕死ないし気絶しているポケモンはボールから出るための力が特に弱い。それはポケモンの「逃げる自由」を奪っていることに他ならないため。ポケモンセンターのジョーイさんや警察であるジュンサーさんなど、一般トレーナーではないちゃんと資格を持っているトレーナーであれば非常時に捕獲することができる。
「(マシロ……大丈夫なの……?)」
「……頑張って……説明するよ……なんとか」
いつもは背負ったりラティオスにサイコキネシスで持ち上げてもらうのだが、今回は傷が大きく怒りに我を忘れてたところを攻撃してしまったのもあって、背負うのはもちろんサイコキネシスで運ぶのも危険だろう。
まぁポケモンセンターでジュンサーさんとジョーイさんに怒られることに比べればポケモンが助かった方が安心できるというのもあった。
1時間くらいずっと正座させられるけど正座には慣れてるから大丈夫。うん。
「女の子は大丈夫?」
「(うん、大丈夫。だけど、何処かに寝かせた方がいいわ)」
「なら……あそこの木の上に寝かせようか」
流石に女の子を地面に寝かせるのは悪いと思い、広場の端に倒れた老木を指差した。
ラティアスに老木まで運んでもらい、その上に寝かせる。
女の子の胸が静かに上下しているのを見て安心する。
「う、ぅん……」
女の子は堅い木に寝ているせいか頭が木の表面に擦れて痛いのだろう。
頻りに頭を動かしていた。
「痛いと寝にくいよね」
枕は大事である。
それをよく知っていた。枕が合わないと頭は痛いし、首も痛めてしまう。少しは気持ちよく寝てほしいと思い、女の子の頭を持ち上げるとそこへ座って膝の上に乗せる。
「男の膝であまり柔らかくないけれど、何もないよりは良いかな」
先ほどまでの少し苦しい顔が柔らかいものに変わっているのを見て安堵する。よくよく女の子の顔を見ると凄く整った、日本にいた頃の言葉でいうなら「大和撫子」と言えばいいのだろうか。とにかく可愛く、見ていると不思議と安心する。そんな顔であった。と同時に女の子の着物の右腕の袖が途中からばっさりと無くなっていることに気付く。
「あれ?着物の袖……なくなってる。何処だろう?」
切断面が綺麗に切られていることから切ったのは先ほどのストライクと予想。
女の子がいた場所の近くにあればいいけれど、遠ければラティオスたちに探してもらわないといけないし、最初からなかったということは考えない。
「(これのことよね?あの子のいた場所の近くにあったわ)」
そういってラティアスが差し出したのは女の子の着物と同じ柄の袖であった。
女の子を抱き留めた時にストライクがいた場所にあったようだ。
「ありがとう、ラティアス」
袖を受け取り木にかけておく。
「女の子が起きるまで休憩かな」
「(わかった)」
「(わかりました)」
「(休憩だー!)」
晴れやかな空の下、涼しい風が吹くお昼時。
女の子が起きるまでなにもやることがない以上、この気持ちのいい青空の下ポケモンたちを休憩させたかった。
「クロスは今は寝ているから起こさなくていいかな」
腰のボールホルダーにある1つのボール。
中のポケモンが確認できるように透過処理がされているボールの中で丸くなりゆらゆらとしながら眠るクロスを見た。
ラティオスとラティアスは広場の中心で日向ぼっこを、ビィは木々の中を楽しそうに泳ぎ回っていた。
「たまにはこういうのもいいなぁ、……っ!?」
その光景を見て口元が緩んでいると女の子が寝返りを打ち、お腹に顔を向ける。
そこまでは良かったのだが――。
「んん……良い匂いぃ……」
そのままお腹に顔を押し付けると深呼吸を始めたのだ。
「ま、待って……それは……くすぐったい……」
くすぐったさや匂いを嗅がれる恥ずかしさもあり女の子の頭を離そうと頭を撫でつつ少しずつ押す。
しかし。
「……もう少しだけぇ……」
それが気持ち良かったのか女の子は笑顔になると背中に腕を回し、ぎゅうっと抱きしめてくる。
そして、頬を擦りながら鼻を押し付けるとすうぅっと深呼吸をした。
「くすぐったい……っひゃぁぁ!?」
自分でも変な声が出た。
凄く恥ずかしい。
と、同時に気付く。
あれ?もしかして、そろそろ起きる?
「大丈夫?大丈夫ですかー?」
恥ずかしさからか早く女の子に起きてもらおうと身体を揺する。
「んっ、……んっうぅぅん?」
そして、目を擦りながら意識を覚醒させた女の子と目があった。
「きゃぁああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
森に悲鳴が響き渡った。
1人称は難しい(再確認)
誤字脱字等おかしなところがありましたら教えて頂ければ幸いです。
ヒロインが際限なく増えそうな気がしたのでタグを追加しました。
追加タグ「ハーレム」
追記
「ゲームで瀕死や気絶しているポケモンにボールを投げてはいけないのは何故なのか?」を考えた結果の個人解釈ですので公式設定ではないことを記させていただきます。