更新は続けていきます。
※キャラ表現の都合上「キャラ崩壊」の可能性があるのでタグを追加します。
ポッポが朝を知らせたいのか盛大に鳴いている中、マシロは目を覚ました。
マシロが身じろいだ拍子にビィもつられて目が覚める。
だが、あくまで目が覚めただけであり、ビィと一緒に布団から出てくる気配はない。
「お布団、気持ちいい……」
「(柔らかい……)」
クロスは畳が気に入ったのか微動だにせず、畳の上で半ば置物と化していた。
ラティアス、ラティオスは特別に用意してもらったもう1つの布団で仲良く寝ていたはずだった。
が、朝になってみれば
ちなみにラティオスとラティアスの重さは合わせて100kgを超える。
しかしマシロとビィも特に気にしていないあたりたくましくなったものである。
「マシロ様、ご朝食のお時間でございます」
朝の微睡の時間は、屋敷の使用人が朝食の時間を知らせに来るまで続いたのであった。
「わぁ!すごい!」
「(少しちょうだい!マシロ!少しちょうだい!)」
着替えたマシロの前に運ばれてきたのは口から涎が溢れるような朝食。
白さが輝く白ご飯に出汁の良い匂いが香るお味噌汁。
じゅわりと脂滴る魚や黄金のような卵焼きはビィの視線を釘づけにしていた。
マシロの元いた世界で和食と呼んでいたそれは、ついぞマシロが食べることのなかったものであった。
ぺしぺしとマシロを叩き続けるビィと一緒に手を合わせ、まずは食前の挨拶。
「いただきます」
「(いただきます)」
用意されたポケモンフーズは何処へやら。
小さな口をいっぱいに開けて待っているビィのために卵焼きを小さく切り分ける。
「(早く早く!)」
「あーん」
「(あーん♪)」
マシロに切り分けてもらった卵焼きを口に含んだ瞬間。
「(んーーー!おいしい!)」
ビィの顔は瞬く間に弛みきり、これ以上ないかというくらい幸せそうであった。
「(私にも、一口ちょうだい?)」
そんなビィを見て気になったのかラティアスも近くに飛んでくると小さく口を開ける。
「はい、あーん」
「(あーん)」
同じく小さく切り取った卵焼きを食べたラティアスは口を押えると至福の笑顔を浮かべていた。
「(はふっ)」
ビィとラティアスの笑顔を見つつ、マシロもご飯を食べる。
クロスはまだまだ眠いのかポケモンフーズを前にうつらうつらとし、ラティオスはポケモンフーズを黙々と食べていた。
「((もう一口!!))」
卵焼きの美味しさに魅了されたビィとラティアスがマシロの腕を引っ張るのは同時であった。
「(……ちゃんと自分のご飯も食べろよ?)」
寝ぼけているクロスをひっくり返し、口にクロスの分のポケモンフーズをぽいぽいと投げ入れながらラティアスはぼそっと呟いた。
ちゃっかりと貰った卵焼きをじっくりと味わいながら。
一方、エリカはそれほど眠れてはいなかった。
タマムシにおいて初めてただの女の子として接することができたのがマシロであった。
今までいつか母に変わりタマムシをより良くするために、と勉強を重ねる日々の中で友達と呼べる者は一人としていなかった。
いくらエリカが友達になってほしいと思っていても、相手からすればタマムシのお嬢様である。
仕方のないこととはいえ自然と相手の方が気が引けてしまい、友達になる前に目の前から去ってしまう。
友達を作り、タマムシを行き交う同世代の少年少女のように楽しく遊ぶ。
それはエリカにとって夢のような話であったのだ。
叶えたい夢であり、叶わぬことがわかっていたはずの夢。
突然、その夢を叶えたのがマシロであった。
嬉しさのあまり一日中他人の目を気にせず、タマムシのエリカではなくただの女の子として遊んだ。
それほどに友達と言う存在を望んでいたのであろう。
ただ、タマムシシティを案内する名目でマシロを連れまわしてしまったのははしたなかったと思ってはいるが。
布団の中でエリカが悶々とした気持ちでいるのは正しくマシロが原因であった。
宿がなかったとはいえ、無理矢理屋敷に泊めたのはマシロにはしたない女と思われても仕方のないことであった。
しかも誘ったのは女の方からであるからにして。
「あそこまで楽しそうに遊んでいるエリカお嬢様は初めて見ましたし? 嬉しいからと浮かれてマシロ様の手を引いてタマムシを駆け巡るエリカお嬢様の姿は想像できませんでした。最後に屋敷にまで連れてくるとは思ってもみませんでしたが」
とはムツミ談。
「ばかばかばかばかーー!私のばかー!!!いくら初めてできたお友達だからと言ってはしたない姿を見せていいわけがありません!」
故にエリカが枕に顔を押し付け、叫ぶのもまた仕方のないことであった。
エリカも年頃の女の子である。
ましてやマシロは初めてできた異性の友達である。
良い姿を見せたいし、見てもらいたい。
マシロからどう見られているかはとても気になるものであった。
エリカの手持ちのポケモンであるナゾノクサやクサイハナは布団に顔を埋めて悶える主の姿を見て不思議そうに顔を傾けていた。
「エリカお嬢様、ご朝食のお時間でございます」
「わ、わかりました」
それは朝食の時間を知らせにムツミが来るまで続いたのであった。
「朝早くからごめんなさいね」
「いえ、丁度時間は空いてましたし大丈夫です。改めて泊めてもらってありがとうございます。それに朝ご飯まで頂いちゃいましたし、とても美味しかったです!」
「ふふふ、礼儀正しいのね。エリカを助けてもらったのですからまだまだ返したりないくらいですよ」
目の前に緊張した面持ちで座っている少年を見て、エリカの母アセビは朗らかに笑っていた。
昨夜はエリカと目の前の少年マシロさんの関係が全くわからなかったために試すようなことをしてしまった。
いざ会ってみれば礼儀正しい真面目な少年といった感じでどう見ても悪い人には見えない。
エリカもエリカで少年に対し悪い感情は持っておらず、昨晩もマシロさんのことで悩んでいるようだとムツミから報告があったほどである。
年頃の少女としては反抗期と言っていい反抗期も来ている様子もなく、年齢不相応なほどに大人然としてしまっているエリカをアセビは心配していた。
浮いた話一つすら聞くことはなく、タマムシのためにと勉強するエリカにどうすれば周囲の異性が声をかけることができる機会を作れるかと悩み始めるところであった程に。
「昨日はタマムシシティを案内してもらって助かりましたし、更に一晩泊めてもらった僕としては十分すぎます」
「エリカが友人を泊めると言い出したことは珍しいのです。そんな友人を無碍に扱うなどできませんよ」
「あ、ありがとうございます……」
照れるマシロを好ましく思いながらアセビは昨日の話を切り出した。
「それでは今朝、あなたを呼んだ理由をお話しいたしましょう。昨夜私はエリカが困っていますのでエリカを助けて頂きたい、と私はあなたにお願いしました」
「はい、僕が手伝えることならですが……」
「あなたなら大丈夫です。いえ、あなたでなければいけないと言ったところでしょうか」
「どういうことです?」
マシロさんが良くわからないといった風に首を傾げる。
その膝の上に乗っているであろうポケモンも首を傾げたように見えた。
それと共に障子に影が走り、エリカの声が響いた。
「失礼します。参りました、エリカです」
「入りなさい」
いつものように礼儀正しい所作で襖を開け、部屋に入るとエリカはマシロさんの隣へ座る。
隣に座るマシロが気になるのだろう心なしかマシロさんの方へ寄って座るエリカを見て口元が緩むのを感じた。
「エリカ、今日呼んだのは他でもありません。ジムリーダー引継認定試験のことです」
「引継試験はムツミさんや他のジムトレーナーの皆様と共に日々勉強させていただき備えておりますが、なにかありましたでしょうか」
ジムリーダー引継試験。
それは通常のポケモンリーグ本部からの選定、任命によって行われるジムリーダー認定試験とは違い、現役ジムリーダーが認めた人物にジムリーダーを継いでほしいとポケモンリーグ本部へ願い出ることで行われる試験である。
通常の認定試験とは違い、後任のジムリーダーを選ぶのが現役のジムリーダーであるためにある程度の信用はあるがその分試験の内容は難しいものとなる。
前任のジムリーダーと同等の知識と経験、そしてジムを訪れるトレーナーを導けるだけの強さが引き継ぐトレーナーには必要であるからだ。
強さが全てと言うわけではなく、人間性もそれ相応に必要となってくる。
だが、人を導く上で必要となってくるのは本人の実力と言うのもまた事実。
もちろんエリカは難なく合格してくれると信じているし、油断するような子ではない。
知識も強さも、優しさも持つトレーナーとなってくれたのはとても嬉しいことである。
だが、だがどうしても足りないものがある。
それは経験。
こればかりは仕方のないこととはいえ、親としては少しでも多くの経験をジムリーダーになる前にしてほしかった。
ジムリーダーとなった後ではそうそうジムを開けることなどできず、体験する機会が減ってしまうからである。
故に、エリカがマシロさんを連れてきたことはアセビにとっては願ってもないことであった。
そのポケモンを見た時は言葉を失ってしまったほどに。
ジムリーダー引継試験試験の言葉を聞き、真剣な顔つきになっているエリカとその隣でわけがわからなさそうにしているマシロ。
アセビとしては2人が少しでも触れ合える時間を作ってあげたい。
エリカの友達として仲良く過ごせる時間を与えたい。
だが、マシロのポケモンを知ってしまった以上、それほど時間がないのもまた事実。
「エリカ。これからマシロさんとポケモンバトルをしてもらいます」
そのためには
「……え?」
「おっ――お母様!?」
マシロさんは目を丸くし、エリカは驚き身を乗り出している。
驚くのも無理ない。
突然ポケモンバトルをしろ、と言われれば誰もが驚くだろう。
それもあまりよくも知らない相手とだ。
「聞けばマシロさんは他の地方からタマムシにきたとのこと。バトルで学べることは多いでしょう。ジムリーダー引継試験の前に少しでも多くのことを体験し、己の糧としなさい」
「ですがっ!いきなりバトルなど!」
それらしいことを言うが当然のように、だがエリカにしては珍しく反発してくる。
本来であればまずは互いを知り、ポケモンを通して更に仲良くなってもらう程度の心積もりであった。
ジムリーダー引継試験が終わってから時間をかけて仲良くなってもらえればそれで十分であった。
だが――。
昨晩、私はその願いが叶わないかもしれないことを知ってしまった。
「……セレビィ?」
「ええ。あなたの膝の上に座っている可愛いそのポケモンは、ときわたりポケモン。セレビィと言うその名の通り時を渡るポケモンです」
「時を……渡る……」
マシロさんの手を抱き寄せその膝の上にちょこんと座るポケモン。
珍しく姿を現しているそのポケモンの名前を、マシロさんに伝えた。
いや、珍しいどころではなく人の生涯を幾度も繰り返しても見れるかどうか、いや知ることすらできるのかすらわからない。
そんな口頭のみで伝わる伝説のポケモン。
ときわたりポケモン セレビィ
時間を越えて彷徨う森の神様ととある村では言い伝えられているポケモン。
未来から来たとも過去から来たとも伝えられ、綺麗な森があるところのみに姿を現すとされている。
過去未来から持ってきたポケモンのタマゴを残していったり、人と共に時を越えるために神隠しの原因ともされていた。
アセビは一度、タマムシジムを先代から引き継ぐ前に草タイプのエキスパートとなるべく世界を巡っていた時があった。
よく言う修行の旅である。
数多くのポケモンを知り、数多くの草タイプに対する見識を深めたその旅の最中、草タイプの伝説のポケモンの伝承が伝わる村の存在を知ったのだ。
そのポケモンの名前がセレビィ。
セレビィを森の神様として祀る森の奥深くの村。
そこで拝見した伝承が記されている資料の姿とは色は違えど姿形はその通りである。
その存在を知った際はあくまで伝承上の存在であり、出会うことなどないだろうと思っていたが。
だが、現実に出会ってしまうと話は変わってしまう。
こうして目の前にいるだけでセレビィがどれだけ強大な力を持っているか。
そして、どれだけ不安定な力で今ここにいるのか。
それが、わかってしまう。
マシロさんから話を聞くと、やはりまだ力を完全に制御できていないこのセレビィはふとした瞬間に時を渡ってしまうことがあるそう。
どんなことがきっかけとなるかわからない。
ある日ある時に突然。
マシロさんはふっと消えてしまうかもしれないのである
下手をすれば近くにいるかもしれないエリカと共に。
それだけはなんとしてでも避けなければならないことであった。
アセビは作者オリジナルキャラです。
エリカに両親はいませんが進行上勝手に用意しました。
誤字脱字不審な箇所あれば教えて頂ければ幸いです。