模倣の決号作戦(改稿前)   作:帝都造営

28 / 62
X-128Days

核兵器を用いた攻撃(以下「核攻撃」という。)による被害は、当初は主に核爆発に伴う熱線、爆風及び初期核放射線によって、その後は放射性降下物や中性子誘導放射能による残留放射線によって生ずる。

 

核爆発によって生ずる被害は、

 

①熱線、爆風及び初期核放射線が発生し、物質の燃焼、建造物の破壊、放射能汚染の被害

②爆発時に生じた放射能をもった灰からの放射線

③初期核放射線を吸収した建築物や土壌から発する放射線

 

に区分される。

 

このうち①及び③は、爆心地周辺において被害をもたらすが、②の灰(放射性降下物)は、爆心地付近から降下し始め、逐次風下方向に拡散、降下して被害範囲を拡大させる。放射性降下物は、放射能(放射線を放出させる能力)をもった灰であり、爆発による上昇気流によって上空に吸い上げられ、拡散、降下するため、放射性降下物による被害は、一般的には熱線や爆風による被害よりも広範囲の地域に拡大することが想定される。避難に当たっては、風下を避け、手袋、帽子、雨ガッパ等によって放射性降下物による外部被ばくを抑制するほか、口及び鼻を汚染されていないタオル等で保護することや汚染された疑いのある水や食物の摂取を避けるとともに、安定ヨウ素剤の服用等により内部被ばくの低減に努める必要がある。また、汚染地域への立入制限を確実に行い、避難の誘導や医療にあたる要員の被ばく管理を適切にすることが重要である。

 

《内務省「国民の保護に関する基本指針」より。一部改変》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・衛星の情報を合わせても、既に地上部隊はほとんど撤退しているものと思われます」

 

 陸軍から出向してきた情報士官が机の上に投射された映像や写真の説明を終える。

 

「結局・・・打つ手なしか」

 

「まあ、南アフリカ軍は知っての通り二世代前の装備を使用していますから。沿岸部保持に固執せず、素早く撤退したのは良策だったと言えるでしょう。早速、今回の戦闘データを元に山岳地帯での作戦計画の見直しを行います」

 

「ん、頼むぞ」

 

「それにしても、アカでも勝てないもんなんですねぇ、労働者(にんげん)は皆平等! 彼らの理想を体現することには成功しましたが、さてはてこれからどうするのやら」

 

「・・・小河原中尉」

 

 飯田がたしなめると、心底面白くなさそうな顔で振り返る小河原中尉。彼が不機嫌なのは飯田にたしなめられたからだけではないだろう。

 

「で、世間では今回の事、『アウトブレイク』なんて呼ばれているそうだが・・・実際問題このあとどうなると予測する?」

 

 飯田の問いかけはこの場の全員に向けられたものだ。『アウトブレイク』――――疫学においては、ある限定された領域の中で感染症にかかった小集団を示す分類語である――――と世間一般で呼ばれるそれは、つい先日、6月26日に発生した敵対的危険生物による大規模侵攻を示す。(もちろん本来の意味を考えると誤用なのだが)敵対的危険生物の侵略を蔓延する感染症に例えるとは・・・国を蝕む病と考えると笑えない話だ。

 

 そんなことを考える飯田をよそに、数名が小声で話し合う。一人が漏らすように言った。そこから会話の輪は広がってゆく。

 

「しかし、次の侵攻予想はマリアナか台湾と言われていたのにな・・・まさかマダガスカルとは」

 

「これは推測に過ぎませんが、奴らの目的は大陸侵攻の足がかりではないでしょうか。沖縄諸島といいジャワ島といい、大陸侵攻の前線基地にはもってこいの場所です」

 

「そんなこと言ったらセイロン島や台湾を落とすのが順当だろう。そもそも地図で大きさを比べてみろ、ジャワはともかく、沖縄は小さすぎる」

 

 

 ――――そしてなにより、パナマ陥落はどう説明するんだ。

 

 

 彼の言うことが最もである。唐突に攻撃を受けたパナマ共和国。そもそも敵対的危険生物のことなんて遠い海の向こうの話で、興味もなかったかの国にとってしてみれば衝撃的な奇襲攻撃となったことだろう。

 ともかく、戦闘開始と同時にパナマ軍は崩壊。後から援軍に駆けつけた米軍とともに戦線の構築を試みるが、パナマ地峡の中間地点とも言えるガトゥン湖への侵入を許した時点でパナマは放棄された。アメリカ大陸への侵攻を許したのだ。

 

 

 敵対的危険生物の活動域は急速に拡大しつつある。このペースではオセアニアも近いうちに全滅してしまうだろう。もっとも九州上陸(X-Day)とどちらが早いか分からない以上、感傷に浸っている暇などないのだが。

 

 

ともかく、飯田はもう一度地図に向き直った。インド洋から太平洋にばらまかれた点がシミとなり、徐々に世界を埋め尽くそうとしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何の因果か、それは飯田たち敵対的危険生物対策室の面々が南アフリカ領マダガスカル島の戦況を整理している真っ最中に起こった。

 

 

 

 

 

 

 

―――――――

 

 

 

 何を聞きたいのかは分かってるさ。マダガスカルの時だろう?あの時ほどついてない日はなかったね、俺はアラート任務、椅子に座ってじっと待って、もしアカの爆撃機がノコノコ飛んできたらF-15に乗って冷やかしに行ってやる任務だな。一般向けならスクランブルって行ったほうが分かりやすいか。とにかくそのアラート任務が終わる寸前だったんだよ。いつも通り電話が鳴って、担当の奴が電話に出た。普段ならここでベルが鳴り、数分も経たずに俺は機上の人さ。確かにベルは鳴った。俺は戦友たちと走り出した。だがそん時は事情が違った。俺らに命じられたのはソビエトの重爆撃と戯れることじゃない。そいつらと長旅をすることだった。もっとも、F-15の航続は足りないんで空中給油なんかもしなければならなかったが。

 

《樋川康『鋼鉄の鳥達の視点』より抜粋》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 インド洋上。真夏の日差しは赤道直下である証拠。そんな海原、もはや化物たちの手に渡りつつある美しいステージの上を十数隻の船が走る。典型的な輪形陣の中央に居座るのは、多少軍艦を知っていればすぐ思いつくであろう。航空母艦『比叡』、ベーリング海海戦の武勲艦である。そこで疑問に思う者もいるだろう、日本海軍所属の艦艇は全て内地に退避しているのではないか、と。しかしこの艦は違う。なぜならば、マストにSEATO憲章がなびいているから。

 

 

 

 

「司令、入られます」

 

 その言葉に見張り員を除くその場の全員が敬礼。返礼したのは将官である。彼は慣れた様子で空いている椅子の一つに座ると、作戦盤の上に書き込まれた様々な情報にひと通り目を通した。通しつつ部下に確認する。自ら確認した情報ほど信頼に足るものはないが、一人で出来ることには限りがある。

 

「状況は?」

 

「15分前に西アジア統連合軍司令部(ニューデリー)から連絡がありました、現在カスピ海上空を飛行中。トリプルA搭載機含む三機の迎撃機が上がっています。接触まであと30分」

 

 AAA(トリプルA)、Air-to-Air Atomic missile(空対空核ミサイル)の愛称だ。米国のAIM-26Aを筆頭とした対空核兵器のことを指す。これは小型化され航空機にも搭載が可能なのが特徴で、核出力は100~300トン程。搭載された戦闘機から目標の空間を一億度に迫る熱線と爆風で焼き尽くすことができる。もともとソ連の重爆撃機編隊の迎撃手段として開発されたが、兵器の設計思想上、必ず自国もしくは友好国上空で爆発する核爆弾ということで使用に対する風当たりは強く、現在ではSEATO西アジア統連合軍と米空軍にのみ配備されている。

 

「トリプルAか、使用許可は出てるのか?」

 

 なぜトリプルA搭載機を飛ばしているのか、そんな愚問はしない。トリプルAは確かに特殊でデリケートな問題を持つ兵器であるが、もともと核武装したソ連重爆撃機を迎撃するために開発されたものだ。広範囲を一瞬で焼き尽くすトリプルAならば撃墜間際の重爆撃機に核を落とされるような真似をされずに済む。国内に核が落ちる事態を避けられるなら手段を選ぶ必要はないし、相手に核を落とされる寸前であったという状況が揃えば、自国領空内での核兵器使用も国民に説明ができるだろう。

 

 いつ街に核兵器が落とされるか分からない。それが常識的な感覚であった時代だからこそ設計され、使用される時を怯えながら待っていた兵器。それが空を飛ぶ日が来るとはどういうことを意味するのだろうか。

 

「使用許可は出ているのか?」

 

 返事のない部下へ念を押すように問えば、いえ・・・と掴めない返事が返される。つまり西アジア統連合軍司令部(ニューデリー)は最高司令部の許可を待たずにとりあえず迎撃機だけ上げておいたということか。備えは大事かもしれないが、トリプルAを空中に上げることの重大性を連中は分かっていない。将官は胃を締め付けられるような感覚に襲われた。彼は極端にメンタルの強い人間ではない。安全と考えられていたインド洋も、マダガスカルが攻撃を受けたことで安全でないことが立証されたのが昨日の今日、慌てて母港であるムンバイに帰投しようとして変針したところで今回の騒動である。ただでさえ敵対的危険生物の影に怯えねばならないというのに、唐突すぎる全面核戦争の危機。危機というのはかくも簡単に訪れるものなのか、そう嘆きたいところだが、この場にいる千数百の将兵の最高司令官は彼なわけで、胃が痛もうと腹を抑えることは許されない。

 

 航空参謀が詰め寄ってきた。空母においての航空参謀ほど重要な役職はいない。

 

「司令、万一に備え本艦も攻撃の準備をするべきではないでしょうか」

 

「どこを攻撃するんだ」

 

「アフガンでソ連軍が動いたときの備えとして、ということです」

 

 核爆弾の投下後に地上軍の侵攻。現代機甲戦のセオリーとも言える机上の空論である。一見日本語がおかしいが、そもそも核兵器を実験以外で用いた例など存在しないのだ。机上の空論以上の話をすることは出来ない。

 

「・・・地上軍侵攻の可能性は」

 

「目立った動きは報告されていません、西アジア統連合軍司令部は沿岸部にそこまで兵力を割いていないので、仮に侵攻があっても対処しきれるでしょう」

 

 可能性は低いが、備えだけはしておくべき。というのが航空参謀の意見・・・が、正直全面戦争発生の可能性より敵対的危険生物に襲われる可能性が高い現状では無駄な動きは避けておきたかった。彼は航空参謀に首を向ける。

 

「いや、戦争のリスクは低いだろう。我々はこのままムンバイへ退避する。対潜警戒を厳とせよ」

 

「了解です」

 

 SEATO即応部隊――――東南アジア条約機構(SEATO)の誇る牙の一つだ――――の役割は抑止力であり続けること。生存こそ最も重視されるべき事柄だった。

 

 

 それに、下手を打って祖国と関係ない海で無駄な犠牲を出し、比叡に再び旭日旗を掲げる日が来なくなる事態は避けねばならない。我々はSEATOに供出された戦力だが、日本国の防人なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『現時点を持って統合幕僚本部第一庁舎は閉鎖、各職員は対爆壕へ移動してください。繰り返します、現時点を持って統合幕僚本部第一庁舎は閉鎖、各職員は対爆壕へ移動してください・・・』

 

 

 あらかじめ録音されていたのだろう。雑音一つ混じらない音声がスピーカーから聞こえる。それと同時に真横からうるさい金属音。窓の向こうに鋼鉄のシャッターが降りてきたのだ。こんなシャッターでは核の直撃こそ防ぐことはできないが、この建物が崩壊しない程度の爆風になら耐えられる。一人が呟くように言った。

 

「これって・・・核攻撃時の放送じゃ・・・」

 

「核攻撃ィ?」

 

 飯田は信じられない、というよりも呆れたような声を挙げた。こんな情勢の中で核攻撃をするほど狂った侵略者などいるのだろうか。いるはずがない。

 しかし今流れた館内放送は核攻撃を想定したそれである。

 

「ともかく、規定に従って移動しましょう。おい!特Ⅱから下の分類は全部金庫に仕舞え!十分で片付けるぞ!」

 

 飯田に代わって素早く指示を出す小牧。非常時においてはマニュアル通りに動くしかないし、そうやって動くのが一番安全だ。

 

 今回ばかりは、無駄なような気もするが。

 

 

 ともかく、ここで自分が出来ることはないと判断した飯田は、素早く対爆壕へ移動する為、部屋を出た。

 

 ・・・そう言えば部屋に写真を置いてきてしまったが、いや、やめよう。公私混同は飯田の最も嫌うところだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう言えば懐かしい。敵対的危険生物が現れた直後に開かれた会議もこの対爆壕の中、正確にはもっと奥にある最下層の司令部施設で行われた。そんな事を二階分はある高い天井の広々とした空間に思い出させられる。地下核シェルターの中だというのに随分と広い空間ではないか。飯田はこの施設を時代遅れの『遺物』と考えていたが、まさか本当に役立つ日――――つまり東京に核が落ちる可能性が『ゼロではない』日のことなので、役立つ日は来ない方がいいのだが――――が来るとは。そこにはモニターやコンソールが設置され、各要員がそれに張り付いて情勢を見守っている。どこからでも見られるように設置された正面の大画面は、アラビア半島を大写しにして、その中心に一つの点。これが刻一刻と動いている。

 

「ソ連空軍Tu-95V、AN602ツァーリ・ボンバの運用のために特別な改修を受けた航空機だ。今回連中はコードネームも変えずにこれを使ってきた。正々堂々、100メガトンの核を落とすと世界に宣言したも同然だ」

 

 そう言いながら飯田の横に大迫海軍幕僚長が現れる。渡された薄っぺらい資料に目を通すと、オリジナルとの違いが分かりやすく記載されていた。今の海軍幕僚長補佐官もなかなか優秀なようだ。自分の後任の姿を思い浮かべるのもほんの一瞬、今は目の前の情勢に注目しなくてはと手元の資料に意識を集中させる。

 

「現在奴は最適速度を保ちつつのんびりと飛行中、この調子なら後45分でアラビア半島を抜ける。緩衝地帯とも言えるアラビア諸国の領空を侵犯しているのは明白なんだが・・・肝心のアラビア諸国が公式宣言として通過を「例外」として認めてしまった、外交官の仕事としては早すぎだな。追跡するSEATOの迎撃機の認めてしまったあたり、アラビア情勢複雑怪奇なり、といったところか」

 

 少し小馬鹿にした台詞ではあったが、顔と口調が引き締まっているためむしろ思い詰めた様にも見える大迫。複雑怪奇なりという言葉の元ネタも大真面目に発せられたものなのだから仕方のない所ではある。

 しかしアラビア諸国には呆れた。まさか自分たちの頭上に水爆が運び込まれるのを黙ってみ過ごそうとは、緩衝地帯には緩衝地帯としての身の振り方があるというのにも程があるだろう。それでも通過を許したあたり、『ソ連は落とさない』という確信があるのだろう。

 

「もっとも、この場でもソ連が核戦争をおっぱじめようなんて考えている人間はせいぜい0割程度でしょうけど」

 

 小河原が口を挟む、大迫はそれをそうだなと言って受け流し、話を続ける。確かに東京に核が落ちる可能性も、ソ連が戦争を仕掛けてくる可能性もゼロと言い切れる。だが戦争には相手がいる。ゼロは存在しないし、ゼロに限りなく近いという理由だけで何もしないのは正しい国家ではない。

 

「15分前から西アジア連合空軍が接触、攻撃待機のまま追跡している」

 

 15分・・・ソ連領を出る前に接触できなかったのか、今度ソ連の重爆撃機がインド方面に飛来したら対処しきれない恐れがあるぞ・・・そんな事を考えてしまうのは今までソビエトとの戦争の可能性を常に考えながら過ごしてきたせいだろうか。今となってはどうでもいいことの一つだが、それでも、敵対的危険生物との戦いが終われば・・・終わるのだろうか。

 

 いや、そんなことは考えまい。飯田は視界の中心を大迫から大型モニターに写した。この調子で時間が流れてしまえば、あの機の搭載した水素爆弾は間違いなくマダガスカルに落着する。

 

 すると、どうなるだろうか。人類初めての核兵器を用いた実戦?そんな歴史家が喜ぶだけのフレーズではない。核兵器を用いるということはすなわち――――

 

 

「核兵器を使用するほど追い詰められるとはな」

 

 大迫が横から喧騒に紛れ他の職員には聞こえぬよう小さく言った。海軍幕僚長という要職にあるからこそ意味のある言葉として響く。

 『まだ』制海権を『部分的に』失った程度、その程度でこのザマである。

 

「共産諸国も、今や海運による貿易なくしては成り立ちません。生活水準向上の代償です」

 

 聞くところによれば、敵対的危険生物による海上輸送網への攻撃が始まって以降、共産主義圏(東側)の生活水準の低下には自由経済圏(西側)と比べ物にならないほどだという。もともと共産圏の経済は必要なものを必要なだけ作る計画経済だ。しかし昨今の宥和政策で共産圏は中途半端な自由経済と『貿易』という不確定要素だらけの甘露を計画に入れてしまった。市場ではたちまち品不足が起き、宥和政策のせいで生まれてしまった富裕層が物資を独占するという事態も発生、民衆の政府含む上流階級への不満は高まる一方であるようだ。

 

「かくも現代文明はもろい。奴らに領土を侵されていないはずの彼らが上陸されると同時に核兵器を使用するのだからな」

 

「かの国は上層部が一つしかありません、民主主義国のように『誰か』のせいにすることができない。不満は大戦果のもたらす興奮を持って打ち消すほかない。ということでしょう」

 

「それで使用するのが核爆弾か、不毛の大地を作り上げてまでの勝利に意味はないだろうに」

 

 

 そこまで言ってから、大迫は人目をはばかるように小さな声で、それでもはっきりと力を込めて言った。

 

 

 

 ――――核兵器の使用は、人類の敗北を意味する。

 

 100メガトン程度の核兵器で何ができるというのだろう。焼き尽くせる範囲は広くても数十キロ程度、では全ての敵対的危険生物を殲滅するためには一体いくつの核兵器を使う必要があるのだろうか。確かに人類は地球を何度も滅ぼすだけの核兵器を所有している。しかしそれは核兵器がもたらす副次的な攻撃――――すなわち放射能汚染――――によるものであって、直接の攻撃ではないのだ。地球の表面、その七割にも相当する海を焼き尽くすことは不可能だ。先に人類が滅びる。

 

 

「プロパガンダで終わればいいのですが」

 

 飯田の感情の消えた声に、大迫は静かに応じる。

 

「なに、この次使われる時は世界人口が1になってからだろう、そう信じたい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 世界標準時で西暦2022年6月27日午前8時34分。東経49度40分、南緯15度30分にて敵対的危険生物に関する一連の戦闘行為で初めての核兵器が使用された。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定