『統合幕僚本部の発表によりますと、今回の作戦で撃退した敵対的危険生物の数は『駆逐級』が1万体を超えるとみられ、佐世保への侵攻を防いだという点でも作戦の成果は・・・』
オペレーション・ニイタカヤマノボレ――――日本国自衛空軍大将、佐伯大輔が実施した敵対的危険生物の殲滅作戦――――は彼の目論見通りに終了した。今携帯に映し出されている昼のニュースは余ほど報道すべき話題がないらしく、今日も『四国沖邀撃作戦』――――
『しかしこれで、敵対的危険生物に対する研究が進みそうですね』
『ええ、先日マレー戦線の方で生け捕りに成功したとの報道もありましたが・・・』
コメンテーター達が雑談に入ったのを確認して――――民放はこういう無駄が多いのでなるべく見たくはないのだが、そもそも国営放送はこの件についてほとんど報じていないのでどうしようもない――――飯田は携帯の画面を切り替えた。家族が写された待受に、間もなく一時を示す電子時計。
お昼休みもそろそろ終いである。さっさと定食を片付けて室へ戻ろうとした時、俄かに携帯が振動し始めた。
着信だ。
「もしもし」
立ち上がりかけていた飯田は携帯の通話ボタンを押しつつ席に座りなおす。機器が複製した相手の音声は、聞き慣れたもの。
『よう飯田。俺だ』
それは国防大学校広島――――かつての海軍兵学校――――の飯田と同期の118期生。その中でも付き合いの深い旧友からの電話であった。彼は海軍情報局に現在勤務しており、相互の情報提供はもちろん、
「おお、お前か、どうしたんだこんな日に」
『いや何、直ぐにでも連絡したかったんだが・・・四国沖の件のゴタゴタが続いていると思ったんでね、数日は控えていたんだよ』
青葉記者と繋がっている彼のことだ。まさか
「随分と皮肉なこって・・・で、実際は?」
『ようやく青葉のバカを国内に連れ帰ってきたところだ』
今回は火消しが微妙に多くて面倒だっよ、画面越しに頭を掻く旧友の姿が浮かんだ。なるほど、青葉記者を連れ帰ったということは、彼も先日まで中華人民共和国――――厳密には『中華共和国』を名乗る武装組織の支配地域――――にいたということか。
中華大陸に未だ居座る
既に死に体の
「よく無事だったな」
『まあ、な』
あからさまな歯切れの悪さ。
「・・・?」
『まあいい、何はともかく、『
「なんだって?」
思わず声色が変わってしまう。眼の前の席に座っていた女性士官がそれに怯えたような表情をするが、もちろん構っている余裕なんてない。
『ともかく来てくれ・・・なるべく人気が少なく自然な場所がいい』
この辺だと代々木かな。と電話越しの旧友は言う。
「分かった代々木公園だな、すぐに行く」
部下に外出の旨を伝えた飯田は、十分後には代々木へ向かう地下鉄へと飛び乗っていた。
人類の他の動物と違うところは、環境を改変するところにある。生き残るために自然物を使って道具を作り、身を守る家、果ては街を作り、動物としてはありえない規模の共同体を形成し、自然と――――いや共同体の外にいる全ての敵と――――戦い続けてきた。とはいえ人間、やはり自然の産物だ。身を守るために人工物で武装し、安全な街に住み、共同体を形成しようと、やはり本能的に自然を求めてしまう。
なら街に、家に、眼の前に、擬似的でもいいから自然を作ってしまえばいい。
ここはもともと陸軍の練兵場であった。60年代に開催された東京オリンピックの際に東京の軍事施設が次々とスポーツ施設や公共施設に生まれ変わった例に漏れず、ここも選手村へと変貌、オリンピック後に再整備され完成したのがこの代々木公園である。広さはなんと東京ドーム11個分(素朴な疑問だが、なぜ東京ドームで例えるのだろうか・・・)。
ともかく、代々木公園は広い。そして平日の昼食後なので周りには人影がほとんどおらず、梅雨明けを
平和な風景だ。警邏の近衛兵――――どうも浮浪者による犯罪が増えているそうで、常時開園している代々木公園はそれら犯罪の温床となりやすいという理由から重点的に警備されているそうだ――――がいなければ、の話だが。
飯田は待ち合わせ場所近くの手頃なベンチを探す。代々木公園は広く、細かい待ち合わせ場所を指定したのは向こうだ。ベンチ程度すぐ見つかると思ったのだが・・・どうにも見つからない。
仕方がないので少し歩こうか・・・と思ったその時、
「若いの、また会ったのぉ」
――――真後ろに、唐突に強い気配が現れた。
「・・・」
飯田は視線を動かさない。真後ろの気配に意識を集中するだけだ。
声音ですぐ分かる。淵曽根だ。淵曽根貴族院議員だ。間違いない。なぜここへ?
「老いると体力がなくなるが、それに反比例するように時間が有り余って仕方がない。お主も暇そうだな・・・少しばかり付き合ってはくれんか?」
脚を止めた飯田に対し、遅いとは言え歩みを続ける淵曽根・・・すぐさま飯田を追い抜かし、手招きするようにこちらを振り返る。同時に向けられる一般人のそれではない眼光。まさか断るわけにもいかないだろう。周りに視線を巡らせれば、僅かに増えたようにも見える近衛兵の数。彼の警護も混じっているのだろうか。
「・・・お供します」
旧友の顔が浮かんだ。嵌められた? 彼は自分と淵曽根が――――少なくとも飯田の認識では――――
どういうことだ、淵曽根。
それは頭の中で浮かべた疑問だ。もちろん淵曽根は答えず。代わりに別の話を始める。
「この国は法治国家・・・この国は法律で動く。そのくらいはお主も理解しているのだろう?」
飯田は答えない。それはもちろん理解している。国会というのはその国の進む道を決する機関だ。法律は憲法に反しない限り絶対のものとして扱われ、それによって多くの利益が生まれ、また少なくない不利益が生じる。
目の前の淵曽根は何を考えているのだろうか。彼は答えず、話を続ける。
「その一つの例が要塞地帯法よ・・・お主だって分かっているだろう?」
要塞地帯法・・・国防上必要と考えられる地帯を要塞地帯に指定し、立ち入り、家屋の新設、写真撮影やスケッチすらも禁じるという法律だ。有名どころでは下関要塞や舞鶴要塞、三浦半島の東京湾要塞が有名であろう。
もっとも、大戦中は内地に作られたいずれの要塞も戦果はほとんどゼロ。維持費が高いうえに周辺住民からの(要塞地帯に指定されたが故の)各種制約に対する反発も強く、結局2003年の
そんな要塞地帯法を一つの例だという淵曽根、一体なんの例なのだと言いたいところだが、飯田は理解しているようだった。
「改正要塞地帯法・・・ですか」
「その通り、8月には改正要塞地帯法が施行される・・・それがなければお主らの『計画』も進まない」
法治国家とは
ちなみに改正要塞地帯法とは、先程説明したように不便さや維持費の高さ、そして住宅開発などの経緯により解体された多くの要塞を復活させるとともに、首都東京の守備に不可欠な相模湾沿岸や九十九里浜を「半要塞地帯」とすることで大規模な軍事施設の構築を可能にする法案である。
ここで疑問に思わないで欲しいのは、南四国や南九州で進んでいるのは「形式上」地方自治体による公共工事であるということだ。加えて向こうで陣地を構築しているのは主として山岳地帯など、国や地方自治体、勢力を持つ大地主などの土地。土地買収も大した苦労はかかっていない。
それに対し、半要塞地帯に指定されるのはいずれも開発済みの海岸線、先程相模湾や九十九里を例に挙げたが、どちらも多くの人々が住まう居住地帯である。日本が戦争状態にない以上、通常のシステムによる土地の徴発はできないし、それ以前の問題として無闇な土地買収は彼らの生活の場を奪うことにつながる。県知事からの反発などもあった。ついでに地価も高い。
それら諸問題を解決し――――すなわち、移住先を用意した上で重要な沿岸の住民を最終的には強制移住させ――――敵対的危険生物の主要都市進撃を防ぐ防御施設を築く。それが改正要塞地帯法の目的だ。四国の構築作業が終わり次第、三浦半島や淡路島の再要塞化も進められることになるのだろう。
だが、なぜそんな話を今?
その答えは幸いにも、すぐに淵曽根の口を出た。
「お主が儂のことをどう思っているかは知らないが、
お主の行動に、信念があったのかを聞きたくてな・・・。淵曽根は飯田をじっと見る。
淵曽根のいう《為すべきこと》とは「
なら、飯田は即答することができた。
「暴かれない事実など存在しません、全ての敵対的危険生物に対する行動は・・・いえ、この国の人間のいつ、どこで、どんな些細な行動であれ『それは我が国がやったのだ』と胸を張って世界に叫べなければならないのです」
確かにオペレーション・ニイタカヤマノボレに関する情報封鎖は完璧だ。当面は疑問に思われることはないだろう。
しかし人の心は移ろいやすい・・・今は箝口令を固く守っていても、十年、二十年後、彼らがうっかり口を開いてしまう可能性は大いにあった。
淵曽根は口を開かなかった。まさかそこまで考えが及んでいないはずがない。あからさまな沈黙に、飯田は語気を強めた。
「それとも、議員殿は、これを正当化できると仰るとでもいうのですか?」
「できる」
夏の日差しに熱せられた風が二人の間を駆け抜けた。木々の葉から漏れた強い日差しが二人に降り注ぎ続ける。
「・・・と、言いたいところだが、お主を納得させるほどの実物が揃っていないのでな・・・それに関してはのーこめんとで突き通させてもらおう」
またしても横文字を独特のイントネーションで発音する淵曽根。実物が揃ってないなんてよく言えたものだ。一万以上の敵対的危険生物を殺すことには成功したじゃないか。
だが淵曽根は
「議員殿は、先の作戦は殲滅が目的でなかった・・・そう仰りたいのですか?」
「だから、「のーこめんと」と言っておるだろうに」
それだけ言ってまた歩き出す淵曽根。先程までの様子からでは信じられない速さで歩いてゆく。それはこれ以上の議論はせぬと突っぱねているようにも見えた。対して飯田は立ち止まったまま動かない。セリフと状況を照らし合わせれば淵曽根が逃げているように思えたが、淵曽根の後ろ姿はとてもじゃないが尻尾を巻いて逃げる者のそれではなかった。
だから飯田は声を放つ。
「お言葉ですが・・・私はこの目で空母『新高』の
述べたのは自分の見解だけだ。誰が見てもそれは明白であるし、戦果自体は大変立派なのである。後世の人間が評価する時、あれは《必要悪》であったのだと擁護してくれるかもしれない・・・人類は、それほどに追い詰められていたのだと。
しかしそれ――――つまり、後世の人間に情状酌量を求めること――――は自分たちが行ったことに真正面から向き合わない、すなわち目を背けることである。
過ちは犯さないに越したことはないが、犯してしまった以上、それの責任を取る必要がある。それが最低限の誠意というものだ。
だが、
「淵曽根議員、説明していただきたい・・・議員はいつの日か、この事実を公表されるおつもりか?」
淵曽根は振り返った。それはイヤに緩慢とした動きだった。そして彼は飯田の問には答えない。
「お主は、どうやって深海棲艦との《戦争》に勝つつもりだ?」
また、『深海棲艦』か。淵曽根はどうしたことか敵対的危険生物のことを『深海棲艦』と呼ぶ・・・巷ではそういう呼び名もあるそうだが、公式での呼称とは全く異なるその呼び名。政治家なら下手な誤解を招かないためにも公式に沿って欲しいものだが・・・。とはいえ呼び名の些細な違いを指摘している場合でもない。飯田は質問に答える。
「敵も生物である以上、必ず穴があるはずです。ひとまずは戦力の温存、生態の研究に努め具体的な対策が確立してより反攻へ移ります」
淵曽根が求めた答えは提出済みの防衛計画などではない。それら防衛計画を通じ、どのようにして最終的な勝利を掴むか、ということである。
既に鹵獲された『駆逐級』など、多くの敵対的危険生物が各研究機関に引き渡されている。
数ヶ月も待てば、今まで以上に有効な対処法が見つかるだろう。
「生物としての穴・・・研究され尽くされたはずの家庭内の害虫すら完全に駆除できない人類に、その穴をつくことが可能だというのかね?」
「害虫と違い、敵対的危険生物の脅威は国民の生活に直結します・・・必ずや、解決策は見つかるでしょう」
「全くもって甘いと言わざるを得んな」
淵曽根はそう言う。
「お主は結局場当たり的な対処しか考えていないのではないか?」
「私が命ぜられたのは敵対的危険生物の上陸を防ぐことです。その命に基づいて、作戦を立案しています」
それはどうしようもないことだ。軍人は命令で動く。飯田の意思だけで日本海軍は引きこもっている訳ではないし、飯田だけの意思でそんなことできるはずがない。
そして、それを聞いた淵曽根は一歩こちらへと踏み込んだ。
「なるほど、今の考えはあくまで『借り物』と言うことか・・・そんな借り物を儂が求めていると思っているのか? お主は自身がてーぷれこーだーだとでも言うのかね?」
「・・・」
「お主自身の考えを聞きたいのだよ、儂は」
もう一度、念を押すように淵曽根は言う。自分自身の考えね・・・ようやくだが、飯田にも淵曽根がこんなところにやって来た理由の片鱗が見え始めていた。淵曽根にとって、自身の計画を邪魔しようとした――――失敗したとは言え――――飯田は一種の脅威である。脅威とは排除すべきもの・・・しかし今回は事情が違う。淵曽根自身も
なんせ・・・目指す道は同じである
だからこそ、淵曽根は飯田に問うのだろう。
――――飯田孝介が、何を目指しているか。
「私は防人に過ぎません。命令されたことを理解し、実行する。私に求められるのはそれだけです」
目指すものなどない。命ぜられたことの意味を理解し、それを実行する・・・我ながら矛盾した話だ・・・オペレーション・ニイタカヤマノボレを止めようとしたのは、自らの意思ではなかったのか? そしてそれは淵曽根にも見抜かれたことだろう、彼は笑う。
「無能を装うのは止め給え、飯田孝介・・・お主それでも、流れに逆らった人間か?」
「流れは議員が作られるものなのですか?」
飯田は初めて淵曽根の視線を正面から受け止めた。それに気付いた淵曽根の表情が僅かに深みを増す。
「ほぉ・・・流石は飯田の息子」
それから彼は肩を揺らす。一瞬咳き込むような声を聞いたと思ったが、それは淵曽根の笑い声であった。
老人の笑い声、擬似的な自然に囲まれた代々木公園の中では自動車のエンジン音もほとんど聞こえず。飯田の耳に届くのは老人と蝉の鳴き声だけである。
そして淵曽根は笑うのを止め、再びその視線を飯田に刺した。
「以前儂は言ったな・・・お主が守るべきは国家、そして民族・・・国民ではない、と」
「・・・」
飯田は答えなかった。淵曽根は以前も今回のように飯田の眼の前に唐突に現れ、そして消えていった。その時は『新高』に関わるなという忠告であったが、その時に使われた言葉が今の台詞であった。
国民ではないというが・・・日本は歴とした民族国家であり、国民を守ることが即ち国家、そして日本民族を守護することであるはずだ。
飯田は黙って次の言葉を待った。
「今回の件。儂の考えの片鱗を知るには、十分すぎたと考えておる」
「・・・今後、
「早とちりが過ぎるな・・・飯田孝介」
これだから若い者は・・・と言わんばかりの淵曽根。飯田が無反応なのを確認するように間を取り、それから付け足す。
「・・・今回の事態は、お主のいう『計画』や
淵曽根は僅かに空を見る。空というよりか、公園の木々より垣間見える
それからもう一言。
――――既に『戦争』は始まっているのだよ。
「・・・私に何をしろと?」
自分は所詮若造だ。政界や軍産複合体はおろか、自身が属する飯田財閥の実情も知らない。
ならば、若人らしく答えを求めるだけのこと。それしか能がないのだから、やれることはやるべきだ。
淵曽根は背を向けた。拒絶ではない・・・しかし、会話を打ち切るような背の向け方だった。
「まずは現実を受け入れろ・・・そして、答を探すことだ・・・
淵曽根は歩き出す。現役軍人である飯田よりもずっと弱々しい後ろ姿に、変わらず力が漲っていた。
その背が、これで話が終わりだと言っていることは目に見えている。だがもう一つだけ言わせてもらおう。
「例え――――あなたと対立しても?」
淵曽根は止まらない。
「・・・笑わせるな、お主とは、端より対立してなどおらんよ」
――――だが、答えだけは返ってきた。
「・・・いやぁ、すまんすまん、ちょっとばかし電車が遅れてね」
淵曽根が去ってから、数分の間も空けずに現れる旧友。隠す気がないのは、信頼の証拠か・・・もしくは、下に見られているか。
「なんのつもりだ?」
その飯田の一言で、謝罪の表情を一応浮かべていた旧友の顔は通常運転のそれに戻った。
「互いに国を想うもの同士、誤解は解消させとこうと思ってね」
「・・・」
飯田はため息とも取れるように深く息を吐いた。それに合わせて揺れる彼の肩。旧友はイタズラがバレた子供のように笑った。
「嘘だよ、淵曽根議員の方からこちらに接触があった。
「だが彼は、結局要点を話さず去った」
「・・・まあ、接触を取ってきただけでも向こうの誠意と思うべきじゃないか?」
誠意。それは違うのだろう。どうしてだか、それは確信できた。あれは誠意とかそう言う人同士の付き合いに使われるものではない。
淵曽根は自分に何かを伝え、そして何かを為させようとしている。それを探すのが若人の義務であり、責任だと言わんばかりに。
しかし、
「そういうもんかねぇ・・・ところで、お前は俺を釣るために『雷』の話を持ち出したが・・・」
「なんだい、流石に覚えてるのか」
呆れたような表情を浮かべる旧友。なぜその反応になる。
「馬鹿にしてるのか?」
「はは、悪かったよ・・・『雷』の件で話があったのは本当だ。大島のこと、もちろん覚えているな?」
忘れるはずがない。大島一等海上保安正・・・海上保安庁最大の巡視船であるしきしま型の三番艦『おおやしま』の副長にて、敵対的危険生物関連の事件で最も被害の大きかった船団の犠牲者として数えられていたはずの一人。
彼は唐突に現れ、そして敵対的危険生物の本土上陸を予見した。ただ予想しただけなら何の気に留めることもないのだが、それが飯田に回ってきている敵対的危険生物本土上陸の情報――――それは、飯田の上司である大迫海軍幕僚長から回ってきた――――よりも詳しいものであったのだ。
全くもっておかしな話だ。ちなみに、現在彼は海軍情報局の手により隔離されているはずであるが・・・。
「それで問題が起きた・・・どうにも、大島は『
「知った? 隔離されている奴がどうやって?」
隔離されていれば当然ニュースなども届かない。見張りが暇つぶし代わりに軍事作戦の話を――――仮に一般公開されている情報であっても――――口に出すとは思えないし、どういうことなのだろうか。
「一応部内に情報を漏らした奴がいないか探させてはいるが・・・大島本人が面倒な証言をしていてな」
「?」
旧友の表情がより一層曇る。彼は少し間を置いてから次の言葉を発した。
「・・・また、『雷』が教えてくれたそうだ」
「いつから軍艦は陸に上がるようになったんだ?」
村雨型七番艦『雷』。日本の軍艦としては四代目となる艦名。1999年進水、2001年就役。2022年3月1日の琉球諸島事変の際に沈没。既に除籍済み。
大島が『助けてもらった』うえに彼に『情報を提供した』のは
「そんなこと知るか・・・で、飯田はどう考える」
「・・・」
まずは現実を受け入れろ・・・ね、飯田は信じがたい情報を持ち込んできた旧友より目を逸らし、言われたばかりの言葉を反芻する。それは飲み込むにはあまりに重く、嫌な感触がする言葉であった。
しかし