模倣の決号作戦(改稿前)   作:帝都造営

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勝利への旅路③

 ――――西暦2022年7月。マダガスカル島沖、一九海里地点――――

 

 

 

「発射!」

 

 カコン、何かが動く音と僅かな水の音、魚雷発射管のそれではないし、もちろん船体上部VLSでもない。

 

「ソナーブイ、発射しました」

 

 聴音士がそれを報告、割合明るい原子力潜水艦『瑞鶴』の司令塔内。艦長を務める大熊が聴音士のもとに寄る。

 

「カウントしてくれ」

 

「水面まで・・・10、9、8・・・」

 

 

 カウントダウンがなされ、司令塔内の誰もがそちらに注目する。英国印度領セイロン島を発って以来、陽を浴びず潜行を続ける『瑞鶴』。彼女から放たれた観測機器が今、水面へと向けて浮上しているのだ。

 

 

「・・・1、0! 海面です」

 

「計測結果を解析」

 

「了解、入力」

 

 大熊の指示はさらに下へと伝えられ、計測結果の解析が始まる。

 

「・・・」

 

 ただ沈黙である。騒ぐのは潜水艦乗りに合わない。

 

「・・・2ラドで安定しています!!」

 

 2ラド・・・マウス一匹を殺すのに必要な単位当たり放射線吸収量が1ラドと定義されている――――実際に1ラドだけで死に至るケースはないらしいが――――ことを考えると、安心とは言えないまでもかなり低い数値である。

 

 しかし今から向かう島に核兵器が投下されたという事実は変わらない。『瑞鶴』はそのまま沈黙を保ち、ゆっくりと浮上していった。

 

 領海に進入する際、潜水艦は浮上航行しなければならないからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【模倣の決号作戦番外編】

 

――――勝利への旅路――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 原子力潜水艦『瑞鶴』。原子力が付くとは言え潜水艦は潜水艦だ。立てる音は少ないほうがいいし、それは食事の音や足音にも当てはまる。

 それゆえに、小河原もなるべく足音が立たないように艦内を歩いていた。

 

「・・・で、結局外の放射線レベルはそんなに低かったのか?」

 

 計測値が壊れたのでは・・・と言いたげな様子の小河原。彼の意見も最もで、今彼らが居るのは衝撃波が世界何周旅行をしてしまうほどの規模の核爆弾が破裂した場所から百キロも離れていない場所だ。

 普通そんな早く放射能は流れてゆくものなのだろうか。

 

「専門ではありませんので憶測にはなりますが、既に汚染物質は海流に流されたのかもしれないと、気象担当の者が言っておりました・・・」

 

 案内役の下士官が一応の説明を付けるが、小河原はまだ疑った様子で首を傾げる。

 

「流される、ねぇ・・・」

 

「いや中尉、それは大いに有り得ることだ」

 

 小河原たちの話をどこから聞いていたのやら、大熊が口を挟んできた。半袖のシャツ姿は、今日も変わらない。

 

「大熊艦長」

 

「核兵器は大量の放射性物質を飛散こそさせるが、放射性物質自体はいつまでもその場に滞留するわけじゃない・・・空気中なら貿易風に流されている可能性も十分にある」

 

「なるほど、不勉強でした」

 

「いやなに・・・俺だってとりあえず勉強した程度の知識だ。実際海中の放射性物質含量なんてどう測るかも知らないしな・・・空中から落下した放射性物質が海に紛れている可能性もある」

 

 小河原だって原発事故(フクシマ)の頃は学徒の身だ。放射能関連の知識は付け焼刃程度に勉強していたつもりだったが、よく知らないことのほうが多い・・・不勉強を認める彼に、笑いながら同じく付け焼刃の知識を披露する大熊、確かに海中に放射性物質が紛れている可能性は高い。そうすると『瑞鶴』乗員は常に被爆することになってしまうが・・・。

 

「そのための『瑞鶴』ですよ、本艦は放射能汚染下でも活動できるよう設計されていますからね」

 

 まさか役に立つ日が来るとは思いませんでしたが。そう笑いながら付け足したのは『瑞鶴』の副長だ。翔鶴型原子力潜水艦には放射能汚染下での行動を想定した防護措置が取られている――――まあ、通常の装甲でも十分に放射線自体は防げるのだが――――艦外から放射線を浴びる心配はないし、乗員が船外活動をする際も、防護服や除染室など被爆を防ぐための対策はバッチリだ・・・核兵器を扱う艦艇としては当然のことなのかもしれないが。

 

「さて中尉・・・ここへ呼んだのは他でもない、現在本艦は南アフリカ共和国マダガスカル島、東海岸の都市トアマシナの沖合にいる。領海に進入した関係で今は浮上航行中だ・・・久々の陸は楽しみかな?」

 

 含み笑いを浮かべる大熊。それに小河原もニヤリと笑う。

 

「勿論です、共産圏でなければ――――ですがね」

 

「全くもって同意見だ・・・さっ、上陸の準備をしてくれたまえ」

 

「了解しました」

 

 空中に汚染された物質が飛翔していなくとも、もはやマダガスカル島は死の島に違いない。小河原は数日前に艦内で習ったばかりの防護服の着方を思い出しつつ、それら防護装備が収められている除染室へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・ホントに重装備となると酸素ボンベ付きのタイプを使うらしい。

 

 しかしそんな重たいものを持ち運ぶ気にはなれないし、酸素ボンベということは使用時間があるということだ。調査で上陸するのに長く滞在できないようでは話にならない。

 

「まあ、ボンベだと会話もし辛いですし、空気中に放射性物質が飛散していない以上大丈夫だとは思いますよ」

 

 そういうのは今回通訳を務めてくれる下士官。放射性物質を吸い込まないためのフィルター付きマスクを被っているせいでその声はややくぐもって聞こえるが、この程度なら問題はない。

 

「ガイガーカウンター持ったか?」

 

 確認をとるのは大熊、彼も防護服を着込み、別の乗組員が小さな機械を持ち上げながら返事をする。

 

「持ちました」

 

「では行こうか・・・副長、しばし『瑞鶴』を任せるぞ」

 

 大熊は外部監視用のカメラに向かって挨拶するように手を上げる。防護服を着ているせいで実際よりもずっとのっそりして見えるその動き、監視カメラが返答するかのように僅かに作動音を立てた。それから小型モーターの稼動音が響き、五名の防護服を乗せたゴムボートは『瑞鶴』を離れてゆく。こうすれば軍事機密の塊である『瑞鶴』を共産圏の人間になるべく晒さずに済むというわけだ。

 

 今回上陸するのは調査団(・)に任命されている小河原、彼に付けられた通訳、そして『瑞鶴』を代表して大熊艦長、彼の護衛役が二名。護衛役だけは小銃一丁ずつ持っているが、他は丸腰だ。

 共産圏に乗り込むにしては、まあ心もとない装備と言えるだろう。別に戦闘があるわけではないのだが、心配なものは心配なのだ。

 

 小河原は遠ざかってゆく『瑞鶴』を見た。ここから先は文字通りの未知の領域である。自由主義連合が共産主義の侵略を押し止められずマダガスカルを放棄し、共産主義政権が支配権を握って既に七十年以上。衛星写真などのデータはあるが、実際にどういう人間が、どのように住んでいるかはほとんど分かっていない・・・南アフリカという国家が閉鎖的性格――――閉鎖的性格は共産国家全てに言えるのだが、この国は顕著なのである――――を持つことに加え、旧植民地における資源地帯のお約束で政情は不安定。ソビエト連合軍人でない人間がフラフラ歩いていけるような場所ではない。

 だから南アフリカの実態を知る者はほとんど西側にいないし、そして知ろうとするものも少ない。

 

 

 そして岸壁が近づいてくる。モーターボートはその五月蝿い駆動音を止めるが、慣性の法則に従ってボートは進み続ける。貨物船の横付けを想定しているのか港湾施設はきちんとコンクリートで固められており、クレーンも一基であるが備えられている。マダガスカルは大陸にほど近い西側を中心に発展していると聞いていたので、旧式と思しきクレーン一基であっても、小河原たちを驚かすのには十分だった。

 

 岸壁には数名の南アフリカ軍人――――もちろん、彼らも防護服を着ている――――が待機していた。出迎えというには物々しいが・・・まあ、あれが出迎えなのだろう。

 

 コンクリートの岸壁では喫水が0に等しいゴムボートを接岸することは叶わないので、漁船などが繋留されて「いた」のであろう筏(フロート)を繋げた浮揚桟橋へ。そちらの方へも既に迎えが来ており、上陸自体はスムーズに行われた。

 

「俺が先に行こう」

 

 大熊がそれだけ言いながらボートより降りる。相手側の兵士が話しかけてきた。それは一応英語ではあったが、お互いに防護服越しということでとても聞きとりづらく、加えて発音も下手――――無論、小河原たち(日本人)だって英語の発音は褒められたものではないが――――なのだ・・・それでも辛うじて聞き取った英語を訳すと、どうやら施設まで来いと言っているらしい。

 

「施設ということは、放射能を防げる類の施設があるのでしょうか」

 

「まあ、そういうことだろうな」

 

 そう大熊と意見を交わし、日本の軍人たちは異郷の地へと足を踏み入れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 TVの特集か何かで見たことがあるのなら想像は容易いだろうが、放射線に晒されない安全な施設に必要なものとは、放射線を通過させないコンクリートや鉛板、そして放射線を放射する放射性物質の侵入を防ぐ気密性だ。

 

 港湾部からマイクロバスに乗せられた小河原たちは、ある施設の前で降ろされた。

 そこには小河原も見たことがあるどこぞの免震重要棟に程遠いとは言え、ここトアマシナの南アフリカ軍基地にも似たような施設――――といっても、航空機用の地下掩体壕の入口部分に簡易除染施設を設置しただけの簡易な作りだが――――が造られていた。これがここに置かれている対策本部ということか。

 

 ビニールの部屋の中で除染作業。放射性物質が入り込むことを防ぐためにビニールでパックされている鞄もまとめて洗う。それから鞄の中身を見せるよう要求され、カメラやボイスレコーダーなど電子記録媒体を持っていないかを確認される。それ一連の作業を終え、ようやく掩体壕の中へ。

 どうやらここは爆撃機用の壕だったようで中は相当広く、屋根も高い。内部は照明器具に明るく照らされ、その明かりの中で大勢の要員が持ち込んだ机に資料を並べていた。放射性物質の拡散具合をモニタリングした映像などを映す液晶テレビなどが持ち込まれているあたり、宗主国(ソビエト・ロシア)から持ち込んだ機材、人員がほとんどなのだろう。

 

「お久しぶりです。オガワラ中尉」

 

 そして小河原は、そこで聞き覚えのある声を聞く。大熊たちもそちらの声のする方を向いた・・・当然だ、先程までは現地語や下手な英語しか受信していなかった彼らの鼓膜に、唐突に母国語が飛び込んできたのだから。

 

 

「・・・あんたは」

 

「欧州社会主義共和国連邦軍(СЕСР)、アーベル・シュナイダー少佐であります」

 

 いやに丁寧な調子で、赤軍軍服を着込んだ彼――――『琉球諸島事変』直後に日本を訪れたソビエト・ヨーロッパからの使者――――は挨拶をした。組織名の発音までわざわざロシアのそれに合わせているあたりは、宗主国(ソビエト・ロシア)を馬鹿にしてるんだが、それとも慕っているんだか。

 

「貴官がここまで出張ってくるとは、ソビエトは抱える戦線が一つだけで気楽なものだ」

 

 小河原は迷うことなく日本語でシュナイダーへと声をかける。もちろんシュナイダーは小河原の発言を全て聞き取った。そして一言。

 

 

「いえいえ、私の祖国は貴国(にほん)と違い、まだ放射能に犯されておりませんからね・・・汚染地域(ここ)へ来ることを決断するだけでも断腸の思いでありましたよ」

 

 異国の地に来れば、聞きなれた日本語は心の拠り所である・・・しかし今回は話が違う。シュナイダーの口から明確に放たれた悪意は、日本語という聞きなれたツールを使って小河原たちの耳に届いた。シュナイダーの発言は間接的であったが、日本語であれば容易に理解できてしまう。小河原が視線を後ろへやると・・・案の定、護衛役の片方が小銃を強く握りしめていた。

 

 

 現代人にとっての核とは原子力発電所――――と、それに付随する致命的な事故――――のことを指す。自分(ウクライナ)のことを棚に上げて文句を言われるのも気分が悪いが、『想定外』という点ではアレ(ウクライナ)以上なのである。認めたくはないが、石棺にすらせず今なお汚染水を生み出し続けているという意味では、そうなのである。

 

 

 軍人が口に出すには不適当。国辱も甚だしいが、言われてしまえば事実で反論することしかできない。無視をするという選択肢もあった――――というか、無視するのが適当であったのだろうが――――のであろうが、既に小河原の言葉は舌を通り抜けていた。

 

「シュナイダー少佐殿は勉強不足のようですね・・・モニタリングにより我が国は放射能の拡散状況を把握しています。その上で安全だと判断している」

 

 シュナイダーのせせら笑うような息遣いがマスク越しに聞こえた。

 

「・・・まあいいでしょう。そんなことより、本題に入りますよオガワラさん」

 

 

 こちらへどうぞ、と背を向け歩き出すシュナイダー。小河原たちはそれに続く・・・ふと、大熊が小河原に小声で話しかけてきた。

 

「随分間合いを詰めた会話だったが・・・あの士官とは知り合いなのか」

 

「遺憾ながら。彼は敵対的危険生物に関する統合幕僚部(統幕)向けの窓口的存在です」

 

「・・・そういうことか」

 

 納得したのかは分からないが、大熊がそれ以上言葉を発することはなかった。

 

 

 

 

 通されたのはシュナイダー少佐に割り当てられていると思しきデスク――――だだっ広い掩体壕は持ち込まれたパーテーションにより区画分けされ、対応に当たる要員たちに担当ごとの職場を与えていた――――に通される。そこには簡易な机と椅子が数個、デスクトップ・コンピューターからは数本のコードが何処かへ伸びており、一通りの机仕事ができそうだった。

 既にこの場では一名の赤軍尉官がコンピューターに向かって何やら作業をしていたが、シュナイダーはドイツ語と思われる言語で何やら指示、尉官を退出させる。

 

「長旅で疲れたでしょう、まずはお座りください」

 

 シュナイダーは柔らかい日本語でそう言うが・・・ただでさえ先程の発言のせいで印象が悪くなっているのだ。達者なのはいいことだが、外国人の気持ち悪いほど達者な日本語はかえって不信感を煽る。小河原は思わず顔をしかめた。

 

 それに構わずシュナイダーは置かれていた鍵付き棚を開錠。そこから書類を取り出し、大熊に手渡した。

 

 

「南アフリカ軍のマダガスカル島での詳細戦闘報告書になります。無論、持ち出し禁止ですが・・・」

 

 持ち出し禁止? どういう意味だ。

 

 小河原は一瞬戸惑った。マダガスカルでの戦闘経過に関する報告は既にワルシャワ条約機構(WTO)より正式ルートでもたらされており、それには対策室の人間として目は通してある。

 しかし大熊は戸惑う様子もなく護衛役の一人に目配せ、護衛役がポケットより一冊の手帳を取り出し、ペンを握った。

 

「もちろん、理解しておりますとも」

 

 大熊はそう応じつつ報告書を机に置いた。それとほぼ同時に走り始める護衛役のペン。

 

「・・・?」

 

 小河原が混乱するのも当然である。護衛役のペンの走り方を見るに、あれは日本語ではない・・・素早く内容を写し取るために開発された速記法――――電子記録の技術が発達するまでは報道や議会の議事録などを作成する際に活躍していたアレだ――――、どう考えても普通の軍人が習得している技能ではない。

 

 ・・・そして、報告書を写している――――加えてシュナイダー少佐は、これを「持ち出し禁止」だと言った――――ということは、この報告書はいわゆる『内部向け資料』ということなのだろう。

 確かに公式ルートの報告書は大まかな地上部隊の配置状況と撤退戦の経緯――――残念ながら、これらの情報は衛星を用いれば把握できる――――しか記載されておらず、資料としては役に立たないものであった。

 

 実際の軍団同士の通信記録や詳細な防御陣地の構築状況など、衛星では覗きようがない情報が記されている資料を日本が欲しているのは間違いない・・・戦闘資料だけならSEATOも持っている、しかし要塞化された地域での戦闘経験はまだない。今後敵対的危険生物を防ぐ上で構築される要塞の為にも、半要塞化されていたマダガスカルでの戦闘の詳細は是非とも知っておきたいところだった。

 

 だが、どうしてそれを今ここで写し取るのだ。ここは言うまでもなく共産主義国家でありソビエト連合にも所属する南アフリカ軍の基地。そのド真ん中。内部向けの資料を盗み出す場所にもってこいなのはそうだろうが、なぜシュナイダー少佐がその手引きをするというのだろうか。

 

 

 小河原はダメ元で大熊の方を見た。大熊は小河原の視線に気づくと、笑いながら小河原の肩を叩いた。

 

「・・・ま、潜水艦乗りはマルチロールなのさ、気にすんな」

 

 そういうことではないだろう。大熊の説明は説明になっていないが、「これ以上の説明は出来ない」ということの説明にも思えた。

 

 シュナイダーは大熊と必要な会話を交わしてゆく。外交特権を持ち合わせない我々に基地への記録媒体持ち込み制限がかかることは容易に予想できたが、まさかその場で手帳に写そうとはよく考えたものだ。

 小河原はそれとなく周りを見回した。パーテーションがあるために周りから視線は感じられず、異国語のざわめきだけが広い天井に反響している。

 

 

 

「・・・では『瑞鶴』艦長としては以上です、それと少佐、これを」

 

 話が――――カモフラージュとはいえ調査団(小河原)滞在中の食料など、真面目な話であった――――一段落着いたのか、大熊は一枚の封筒を取り出した。

 それをシュナイダーへと渡す。

 

「確かに受け取りました」

 

 シュナイダーは封を開くことすらせずそれを仕舞ってしまう。

 

「私の任務はこれで完了です」

 

 大熊は形式的にそれだけ言うと椅子に座り直した。どういったやり取りとりなのかは知らないが、自分の関わるべきでない領域で話が進んでいるのだけは違いない。

 

 

 と、先程までこちらのことなど見向きもしなかったシュナイダーがこちらを向いた。

 

「さて・・・小河原中尉、私には本国より貴官を案内するよう命じられているのですが・・・」

 

 

 で、結局この曲者が案内役というわけか。情報を流してくるあたり、ただの仮想敵(共産主義者)ではなさそうだ。

 

 形式だけの調査団。艦長曰く「マルチロールな」乗組員。核兵器が破裂した島に共産主義者・・・。そして唐突な情報提供。

 

「もちろん行きますとも、その為に来たのですから」

 

 

 小河原はそう言って立ち上がった。

 

 

 小河原は自身でも理由は分からないが、徐々に自分が興奮してくるのを感じていた・・・面白くなってきた、というやつだ。

 

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