――――西暦2022年7月。シンガポール島沖――――
空、大空。シンガポール島周辺の雲量は4。航空攻撃をするならもう少し欲しいところだが、まあ贅沢も言ってられない。
シンガポール島に出現した陸棲型敵対的危険生物を叩くべく編成された攻撃隊。その各機のコックピットに伝統的な符牒が短距離通信で入る。
――――
現代の通信機は発達しているので音声会話も可能だが、身体にGがかかっている時など声を出せない状況は多い。故に操縦桿にはモールスを打つ専用のスイッチが取り付けられており、これで意思疎通を図るのである。
ちなみにこの状況では音声で指示を出してもいいのだろうが・・・変わることはない伝統というやつだろうか。
それを合図に共に飛行していた日本自衛海軍機とインドネシア空軍機はバラバラになってゆく。日本機は誘導弾、インドネシア機は無誘導爆弾を装備しているのである。当然適切な突入コースや高度は異なる。
「さて、と・・・」
航空母艦『伊勢』から飛び立ったこの航空隊の指揮を執る隊長は、時刻を確認してから自身のモニターをレーダーのそれに切り替えた。既にマーキングされた目標と、それに向かってゆく自身の飛行隊。そして別方向からも飛行隊。友軍である英国印度空軍とタイ王国空軍が突入しつつあるのだ。
予定通り、一斉攻撃が出来そうだ。
「よーし、一番槍はもらったぞ。川島、ト連送だ、外すなよぉ?」
「発射ポイントまで連れてってくれれば、外れる道理がないですよ」
自信有り気な相棒の声と共に、ト連送――――突撃せよ――――が送られる。
それと同時に、エンジンを吹かす、加速度がぐいっとかかり、キャノピー越しの雲がやや速く動き出す。
今回の相手はミサイルじゃない。敵対的危険生物にミサイルの類は確認されておらず、砲熕兵器で武装しているものと考えられる。
いくら足が速くなっても、砲弾を避けるのは至難の技である。撃たれたことを悟ってからでは遅く、撃たれる前の回避が求められるからだ。
ならば、素早く爆撃し、素早く撤退する。それだk――――
水平線の先から、『何か』が迫ってきた。
隊長は瞬時に、もはや本能的にといっていい反応速度で操縦桿を倒す、それと同時に水平線が光を放ち、真横を光がすり抜けた。
「
その言葉を聞けばパイロットは即座に反応できる。そこそこ密集していた隊形を一斉に解いてゆく伊勢航空隊。しかし次の瞬間には、僚機が爆ぜる。
『十四番撃墜!』
とても避けられるような攻撃じゃない。攻撃間隔も短いし、弾速も相当だ。隊長は、先程飛んできた『何か』が攻撃ではなく殺意だったことに今更気づく、殺意を向けられたからこそ避けられた。殺意でなく攻撃だったら、避ける間もなく燃え落ちていたことだろう。
『一斉攻撃中止、適宜攻撃、狙いをつけさせるな!』
そう叫んだのを最後に、歯を食い縛る、相手に狙いを付けられれば終わりだ、しかし敵の攻撃は直線。回避は不可能に近くても、狙いさえつけさせなければ・・・チャンスはある。
同盟国軍に伝える余裕はないが、攻撃ポイントの遥か手前で堕ちた友軍機がいるのだ。流石に気づくことだろう。
見事なまでの一定間隔を守りながら光る水平線、その一発には英軍の偵察機を一瞬で消し飛ばす力が秘められている。掠っただけで消し飛ぶかも知れない。
――――で? それがどうしたというのだ。
百発百中といえど、照準さえ合わなければ当たるはずがない。何百の機銃弾とミサイルが飛び交う航空戦を思えば、あんな馬鹿正直に一定間隔で撃ってくる敵さんの弾、どうってことはない。
何度も死線を潜らなければ出てこない、いや、潜ったからこそ『必要だと知った』余裕であった。
「ポイント到達! ヨーソロー」
相棒の調子の良い声が聞こえる。
「ヨーソロー」
そう応え、先程までのランダムな運動を止める。射撃手である相棒がミサイルを発射するまでの数瞬。十二分なほど距離は詰めた。目標は動かない。外れる道理がない。
「てー!」
その言葉と同時に、キャノピー脇を通り過ぎてゆく火線。それを確認するまでもなく、ラダーを蹴る。機体へと横Gが一斉にかかり、跳ね飛ばされるように宙を駆ける自衛海軍の海軍機。
命中したかどうかは気にするようなことじゃない。素早く戦闘空域を離脱。戦果確認を行っている艦載警戒機に通信を繋ぐ。
「損耗状況は?」
『現在38機が被撃墜、うち我が航空隊から8機です』
・・・思ったよりもやられたな。
ある意味では当然である。敵の射程は予想より広かった。偵察機がシンガポール島のほぼ直上で撃墜されたのは、射程を隠すため・・・いや、単純に姿を隠すためか。
隊長は攻撃を終え、集結しつつある自分の隊、そしてその奥の水平線下から上がる煙を見た。友軍たちの航空機も攻撃を終え、安全域で隊列を組んでゆく。
なるほど、こりゃ立派な戦争だ。
【模倣の決号作戦番外編】
――――勝利への旅路――――
煙、銃声、ときおり爆発の炎をを上げるマダガスカルの港町、トゥリアラ。どうにか抜け出した小河原中尉を迎えに来たのは、見覚えのある佐官服であった。
「大熊艦長!」
「久しぶりだな、小河原中尉」
およそ一週間ぶりの原子力潜水艦『瑞鶴』艦長、大熊である。その名前を表現したかのようなガタイの良さは健在だ・・・いや、一週間で体格が変わるわけないか。
「オオクマ艦長、どうも」
ソビエト・ヨーロッパの軍人、シュナイダー少佐も大熊に挨拶をする。そこまでは普通の流れなのだが・・・どうしてだろう、先程とは違う空気の流れが出来ていた。
「シュナイダー少佐、『本国』より言伝を預かっています」
そう言いながら懐より封筒を取り出す大熊艦長。
本国? つまりソビエト・ヨーロッパということだろうか。
・・・しかし、思えば変である。
『瑞鶴』艦長を務める大熊艦長の階級は海軍大佐。それも新任の大佐ではない。親潮型、蒼龍型で艦長職を務め上げた熟練の潜水艦艦長だ。
なぜそんな彼が、たかが海軍少佐であるシュナイダーへ敬語を使うのだろうか。大熊と数日食事をともにすれば分かるが、彼は最低限の敬意しか払わない人間だ。たしか・・・誠意と敬意を使い分けるとかなんとか言っていたっけ。正直意味はよく分からなかったが。
ともかくそんな彼、思えばトアマシナでシュナイダーとコンタクトをとった時も敬語を使っていたっけか。
そう、コンタクト。シュナイダーは大熊へと東側の機密文書を漏らした。彼がただの共産軍人でないことは明白である。
では何者だ?
小河原がそんな事を考える間にもシュナイダーは渡された封筒の封を切り、中に隠された書類を見始めた。
書類が封筒より取り出され、
「!!」
小河原は天地がひっくり返るような感覚に襲われる。封筒から取り出された書類。もちろん位置的な問題で何が書いてあるのかは分からないのだが、問題はその文字が書かれている紙である。『瑞鶴』艦内のコピー機を利用した関係で薄っぺらいそれに、はっきりと――――
――――
思わず口を開いたままにしてしまう小河原。シュナイダー少佐はそれに気づく素振りもみせずに書類の文字へと視線を落としている。
しかし、近代史においての
ナチスドイツ――――欧州を席巻し、そして共産主義に破れた――――の党シンボルである。
1943年。ソビエト・ロシア――――いや、当時はまだ全世界革命でなく一国共産主義だったためにソビエト社会主義共和国連邦と名乗っていたが――――にベルリンを占領されたドイツ政府は、臨時首都をパリに移しつつも徹底抗戦を続けていた。
この時期には英国政府もアメリカ合衆国へとフランスへの上陸作戦の時期が来た。と再三の上陸作戦決行を要求しており、ソ連のこれ以上の拡張を抑えたい合衆国は、太平洋戦線での反撃ペースを緩めてでも素早い欧州上陸を行う腹積もりであった。前提となる北アフリカからの独軍駆逐も終わっていた。
ホームでの焦土戦術により辛うじて赤軍を食い止める独軍。もしフランスに上陸でもされた日には、もはやこの国に生き残る手段はない。
とはいえ・・・これまでの経緯――――民族浄化などなど――――を見る限り、ドイツ政府単独での連合国との講和は不可能。むろん指導者も降伏のつもりはなく。
1943年の暮れ。遂に旧フランスへとソ連軍が雪崩込んだ。
何故ここまで独軍が赤軍に押し込まれたか。諸説あるが、その後大してブランクを開けずに「世界革命戦争宣言」がなされたあたり。やはりソビエトの力量を各国が見誤っていた側面があったと言わざるを得ないだろう。ドイツの指導者は「土台の腐った納屋」などと称したソビエト。実際には革命的な納屋であったということだ。だからすぐ反撃を受けた。
理由はともかく、ドイツは負けたのだ。残念ながら英米への降伏――――つまり、ドイツの軟着陸――――は叶わず、欧州のほとんどはソビエト連邦の占領地となった。
そして、その数ヵ月後には世界革命戦争宣言がなされ、新国家ソビエト・ヨーロッパが発足。長い共産主義との戦いが始まるわけである。
さて、随分長い説明となってしまったが・・・実はドイツ政府は存続している。
実はいくつかの理由により、2022年現在でもナチスドイツと連合国の講和はなっていないのだ。それはドイツ陥落時でのソ連邦は連合国陣営にあり、この時点での講和はソビエトの欧州利権を形式的にも認めることになってしまうからだったが、今ではドイツ政府と外交アクションを起こすこと自体が日米英関係に多大な亀裂を生むからだ。
知っての通り、日米英関係は反共だけで繋がっていられる国家である。SEATOという枠組みが存在していながら、アメリカがNAFTAを組み、日本が大東亜経済会議を組み、英国の植民地諸国がそれぞれ連携しているのがその分かりやすい証拠だ。
故に、日本政府が匿うドイツ亡命政府、これと外交アクションを取ることは、第二次世界大戦での日VS英米の構図を再び蘇らせかねないものなのである。棚の上に上げられてしまった満州国問題など今更誰も覚えていない。それと同じ事情だ。
その為に、ドイツ亡命政府を認めるのは日本と満州国のみ。
そんなドイツ亡命政府の
「・・・」
「驚いたでしょうね?」
ようやく小河原の視線に気づき、顔色一つ変えず言うシュナイダー。勝ち誇った風もない平然とした態度に、どう答えたものか言葉に詰まる。それが十二分な回答だった。
「では・・・改めて自己紹介しておきましょう、亡命
唐突すぎる話である。いや、確かに彼が異常な赤軍軍人だったのは明白であったが。
理解が追いつかない中、助けを求めるように小河原は大熊艦長へと視線をずらす、しかし大熊艦長も、小河原の理解に苦しむ事を言うばかりであった。
「日本政府はドイツ亡命政府の要請を受け入れ、私はこの『瑞鶴』にて彼を護送するよう仰せつかっている、というわけだ」
既に乾いた笑いを放つ余裕もなく、小河原は口元を歪める。
「・・・自分には状況が今ひとつ飲み込めないのですが」
それを聞いた大熊は、満足気な笑みを浮かべた。
「飲み込めなくて当然。それが日本の原潜ってやつさ」
・・・まったく、冗談にもならない。
「知っての通り、各国の亡命政府を支えるのはこの2020年代になっても西側へ流入し続ける亡命欧州人たちだ」
日本国の誇る唯一の原子力潜水艦である翔鶴型、その二番艦『瑞鶴』。その艦長室に招かれた小河原は、この艦を預かる佐官より差し出された珈琲を受け取った。いくらスペースに余裕があるといわれる原潜といえど、水上艦に比べれば艦長室はとても狭い。
亡命政府。かつて世界の中心であった欧州には当然多くの歴史ある国家が存在していたわけだが、世界革命戦争を経て塗り替えられた欧州の色はほとんど赤。赤。赤。ソビエト・ヨーロッパやソビエト・バルカンの例を引き合いに出すまでもなくこれまでの民族、歴史経緯を大いに無視した国境線が引かれた。
当然ながらそれを各国が容認するはずもなく、亡命政府は自らの主権を叫びながら逃げ続けた。多くの政府はアメリカへ、植民地を保持できた国家はその植民地へと。
しかし、亡命政府の維持には多くの支援が必要だ。
植民地を持つ――――英国印度、自由フランス等の――――国家にとって政府の維持は容易だ。政府に加わる資格を持つ人間は国内にごまんといる訳だから、当然である。
しかし領土を持たない亡命政府は資金から人員まで、それら全てを揃えなければならない。もちろんそれは通常の政府でも同じなのだが、地盤を持たない亡命政府には難しい注文だ。
そういう点ではドイツ亡命政府など、よく日本はこれまで支援し続けてきたものだ。
「・・・では、彼はその亡命政府の人員だったと」
大熊が言ったとおり、亡命政府に所属するのは彼らの祖国より逃げ延びてきた政治家や活動家だ。シュナイダーは当然ヨーロッパの生まれな訳で。
しかし大熊は首を振ることもなく否定する。
「いや、厳密には現地レジスタンスの
ちなみに、
「レジスタンスの・・・」
また出てきた新しい単語を小河原が飲み込もうとする中、大熊は自分の珈琲を一気にあおる。そして一息ついてからまた口を開いた。
「締めつけが厳しい東でどうやってレジスタンスと連絡をとったのかは知らないがな・・・案外
ともかく、だ。そこで大熊はひと呼吸おいた。
「こちらの事情に巻き込んでしまってすまないな、小河原中尉」
日本政府と統合幕僚部。『瑞鶴』は二つの組織から課せられた二つの任務を同時に遂行していたわけだ。日本政府が上位にあることを考えれば謝罪の必要もないだろうが・・・まあ彼なりのやり方なのだろう。
「あ・・・いえ、自分の任務は滞りなく進みましたので」
むしろ日本語に堪能な彼がいてくれたおかげで助かった側面もあるというもの。
「そうか。あぁ当然ながら、このことは口にしないように」
わざわざ口に出すのだから、これは命令である。
「了解」
小河原も珈琲を飲み干し、空のカップをどこにやるかと目を走らせる。大熊がこっちでやると言ってカップを回収、それをひとまず机に置き、それから戸棚に手をかける。
「東にいちゃあ碌な情報も聞いてないだろう?」
彼が取り出したのは封筒。その膨らみから、なかなかの量の紙媒体が入っていることが予想できる。
「碌な情報どころか、今日までマダガスカルの暴動のことも知りませんでしたよ」
「ははっ、だろうな」
お前の親切な上司から送られてきた資料だ。次の寄港地までに目を通しておくようにだとよ。そう言いながら渡された資料。上司ということは飯田室長か。もちろん『瑞鶴』が郵便を受け取ることなんて出来るはずがないので、送られてきた資料をプリントアウトしたのだろうが・・・一体全体どんな資料が入っているのやら。
「なるほど・・・思ったより動いてないわけね」
小河原は自身に割り当てられている部屋へ戻り、封筒を開ける。それから漏れた第一声がこれなのだから、自分で評価するのもなんだが・・・自分がどれだけSEATO軍を信用していないかがよく分かるというもの。
飯田室長が送ってくれた資料は、まあはっきり言ってしまえば役立ちそうなものをそのまま送ったような感じで、添付されているいくつかの記事も重複箇所が多い。ファイリングするときは成るべくかさ張らないように記事を厳選しなくてはならないのだが・・・まあ送ってくれただけでも有難いというもの。ここ二週間ほどの出来事を見てゆく。
マレー半島の膠着状態は未だ続いているようだが、これはある意味当然。マレー半島は熱帯気候に属し、ジャングルと呼ばれる東南アジア特有のバイオームが広がる地域だ。守りやすい山地や河川も多い。
そう考えると、よくもまあ大東亜戦争で日本は「開戦100日以内にシンガポールを落とす」なんて無茶な計画を立て、実行したものだが・・・いや、今回の相手である敵対的危険生物はヒトのそれを遥かに超える生物。人同士の戦争と同じ尺で測ってはならないか。
それにしても、政治の動きは相変わらずである。満州が日本に東南アジアへの出兵を唆し、インドネシアやオーストラリアは四半世紀前に独立した東ティモールを狙っての駆け引きがようやく終わったところ。アメリカ合衆国が各国へより強い連携を呼びかけるのに応ずるようにソビエト連合の緊急声明が出されるなど、各国「戦後」への利権獲得に余念がないのが僅かな資料からでも伺える。
行方不明者は少なく見積もって一億近く、難民の数など把握できないほど多いわけだが、既に各国首脳はこの『対処行動』が終わる日が来ると予見しているようだった。
「難民支援も国際貢献の一つ・・・というわけね」
そう言いながら小河原は難民支援へ更なる資金支援を決定した旨を伝える日本政府の発表が書かれた紙を置く。次の紙へと手を伸ばすと、それは先程までの添付資料とは違う、飯田室長のメッセージであった。添付資料の意味やら近況、特に政府がマレー戦線への介入を求める国民ために遠征軍の編成を命じた関係で仕事がややこしくなったことなどが書かれている。
しまった、こちらから先に読んだほうが良かったか。そんなことを呑気に思いつつ文字に目を通す小河原、しかし次の一文に釘付けとなる。
――――そういえば最近、中国の新高山に行ったのだが、頂上からの景色はなかなか語るに苦労する光景だった。君にも見せたいものだ。
この文章は、明らかな、というか露骨すぎるメッセージだ。そもそも中国という言い方は不明瞭。もちろん「新高山」は台湾に存在するためここの中国とは中華民国の事を指すとこれを見たほかの人は推測するのだろうが、飯田少佐は人民共和国と民国をきちんと言い分けている。ぼかすという事はこれは人民共和国の方だろう。
そして何よりも、敵対的危険生物対策室長という重役についている飯田少佐が遊びに行くはずがない。
要するに、そういうことだ。思ったとおり次のページには「四国沖要撃作戦」と銘打って行われた空爆作戦の戦果に関する記述がなされており、その作戦が成功裏に終わっていることが示されていた。
結局、オペレーション・ニイタカヤマノボレは実行されたわけか。
なんというべきか、気分が落ちる。小河原が危惧していた大怪我はなかったようだが、彼の一文を読んだ後では、この戦果にも何か裏があるような気がしてならなかった。
・・・やめよう。いくら何でも根拠のない考えにとり憑かれるのはよくない。時計を見れば既に相当な時間。今日はあまりに多くのことがありすぎた。オペレーション・ニイタカヤマノボレに関しては、内地に戻ってから室長に話を聞けばいい。
もう今日は休んでしまおう。
「あぁ・・・そうだ、その前に南アフリカ政府に避難した旨だけは伝えないと・・・」
小河原は核兵器投下に関する戦果確認のために派遣されたわけだが、流石にこれ以上マダガスカルに留まりたいとは思わない。必要な調査はほとんど出来たわけだし、十分だろう。
小河原はいつの間にか重くなった自分の身体を引きずりつつ今日最後の仕事を片付けに行く。本国と南アフリカに連絡を取り、それで終いだ。
そう言えば、核兵器の戦果確認に対する報告書をまだ全然仕上げてなかった。
まあいいか、明日には明日の風が吹く、というやつだ。
扉を開け、夜ということで赤色に切り替えられた証明の照らす廊下に出る。
なんというべきか、廊下はとても静かだった。