クソ提督だなんて呼ばせない!   作:Qriver

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今回はちょっと描写が過激かもしれません。ちょっとだけね。
若干の性的(?)描写がありますので苦手な方はご注意ください。
それではどうぞ。


ハロー榛名

 

「ふぅ……」

 

 

吹雪から持ってきてもらった資料に目通していたらすっかり遅くなってしまった。チラッと見た窓の外は既に真っ暗だ。

 

 

こんなに真剣に何かを読んだのっていつ以来だ? 大学受験……いや、必死こいて勉強している連中を尻目に適当に遊んでいただけだったからな。ほとんど勉強などしなかった。

 

 

おかげで滑り止めに受けた大学にしか受からなかった、ってそんな話はどうでもいいか。俺が馬鹿だって事がバレる。

 

 

そんなことより腹が減ったな。こっちに来てから何も食べてないから当たり前なんだけど……どこに行けば飯が食えるんだろ? 吹雪にそれとなく聞いておけば良かったな。

 

 

コンコン、と

 

 

「は、はい。どうぞ」

 

 

ドアをノックする音が聞こえた。返事をして部屋に入るように促す。

 

 

「失礼します」

 

 

そう言って入って来たのは『榛名』、という名前の艦娘だった。

 

 

高速戦艦である彼女は先程出会った二人の駆逐艦の少女達と比べるとかなり大きい。年齢も俺と大して変わらなく見える

 

 

「提督、その……簡単なもので申し訳ないんですけど、夜食をお持ちしました」

 

 

「夜食?」

 

 

「はい、提督はまだ夕食を召し上がっていないようだったので……迷惑でしたか?」

 

 

まじかやっと飯にありつけるよ! すげーな榛名、気が利くめっちゃ良い娘じゃん……俺、感動して泣きそうだ。結婚してください。

 

 

「ありがとう。せっかくだし早速食べてみてもいいか?」

 

 

「は、はい。でも提督のお口に合うかどうか……」

 

 

おいおい、女の子がせっかく俺の為に(正確にはこの身体の持ち主の提督の為であって俺の為ではない)作ってくれたもんを不味いなんて言うわけないだろ。

 

 

早速、お皿に乗っていたおにぎりを手に取って口に運ぶ。

 

 

「……」

 

 

「ど、どうですか……?」

 

 

「うん、美味いよ榛名!」

 

 

「ほ、本当ですか?」

 

 

「ほんとだって」

 

 

おにぎりの皿と一緒に出された味噌汁を一口飲んでから。

 

 

「これ、榛名が作ってくれたのか?」

 

 

「はい。でも既に夕食の時間は終わってしまっていて大した材料が残っていなかったのでこんな簡単なものしか作れませんでした……」

 

 

しゅん、と見て分かるくらいに肩を落としている榛名。

 

 

「お、おいおい。わざわざ作って持ってきてくれただけでもありがたいってのに文句なんてあるわけないだろ? そんな事気にすんなって」

 

 

「? 提督……?」

 

 

榛名は不思議そうな顔で俺を見つめている……って、やばっ! つい、いつも通りの口調で喋っちまったぜ! やっぱりこの身体の持ち主はこんな喋り方じゃなかったのか!

 

 

「あ、いや、俺が言いたいのはだな、その……榛名の気持ちが嬉しかったから……」

 

 

やばい、なんて言ってあげたらこの場を切り抜けられるんだろ。考えがまとまらず、どうしても歯切れが悪くなってしまう。彼女いない歴=年齢の俺が女の子にかける言葉なんて分かるわけがない。

 

 

「提督? ひょっとしてどこか具合でも悪いのですか?」

 

 

「……ええい!」

 

 

心配そうに近づいてくる榛名を見て、ヤバいと思うと同時に考えるのが面倒になった俺は思わず大きな声を出していた。その事に驚いたのか、榛名の意外にも小さなその肩が、ビクッ! と震えた。

 

 

「俺が言いたいのは一言! ありがとう! これだけだし、もちろん具合なんて悪くないから安心してくれ!」

 

 

「え、ええ……だったら良いんですけど。あ、それと……」

 

 

まだ何かあるのか。これ以上はマジでボロが出そうだから今日の所はもう勘弁してほしい。おにぎりを持って来てくれたことには感謝しているが早く出て行ってほしいと思いながら俺は何故か言いづらそうにしている榛名の言葉を待った。

 

 

「今日は榛名がお相手しますので、その……」

 

 

「相手?」

 

 

ゆっくりと躊躇うように言うと同時に榛名はこれまた何故か自分の着ている服に手をかけると。

 

 

「できるだけ、優しくお願いしますね……」

 

 

着物の上半身の部分を脱ぎ去ってしまった

 

 

「……え」

 

 

それを見た俺の思考は初めて見た女の身体に興奮とか欲情するというよりも先に、完全に空白になった。

 

 

理解が追い付かない、と言った方が正しいだろうか。どうして榛名が自分の服を脱ぎながらこちらに近づいてくるのか。

 

 

「提督……」

 

 

俺のスペックの低い頭でも導き出される答えは一つしかなかった

 

 

「ちょ、ちょっと待って!!」

 

 

「きゃっ!?」

 

 

榛名が椅子に座ったままの俺の身体に手を触れたところで、俺は彼女をグイッと遠ざけた。

 

 

「い、いきなりすぎんだろ! いくら艦娘と提督がイチャイチャできるって設定があったとしても、そこまで求めてないから! いや妄想していたことは否定できないけど実際にされたら心の準備ってものがーーハッ!?」

 

 

先程まで深刻そうな表情だった榛名が呆気にとられたような顔をして俺を見ている。

 

 

「提督……?」

 

 

やばいやばいやばい、詰んだか? 詰んでしまったのか? ひょっとしてこのクソ提督と榛名はそういう仲だったのか!? 羨ましいぞ俺と同じ顔してるくせに生意気だぞ!!

 

 

「あの、やはり榛名では提督のお相手はできませんか……?」

 

 

不安そうに俺を見てくる榛名。未だに露出したままになっているその肌はいつの間にか部屋に差し込んできていた月の光に薄っすらと照らしだされていてとても綺麗だった。

 

 

「あ、いや、その……」

 

 

意識してしまったせいで直視できなくなって思わず目を逸らす。これ以上直視してしまったら俺の豆腐のように崩れやすい理性が正気を保っていられるとは思えない。

 

 

俺は立ち上がって榛名の傍に行くと、自分が着ていた上着を脱いで榛名に着せた。やはり榛名は不思議そうに俺の顔を見つめているが仕方ないだろう。とりあえずその乙女の絶対領域的な部分を隠さない事には話が進められない。

 

 

「榛名、今日はその、相手? してくれなくていいから。ああ、別に榛名が嫌いなわけじゃないぞ」

 

 

むしろ大好きです。決して声には出さないが。

 

 

「ただ、今日はそういう気分じゃないだけだから深く気にしなくてもいいぞ、うん」

 

 

本音はがっつりそういう気分になりました。あれが本物の女の子の肌か……いかんいかん、よだれが。

 

 

って待てよ?

 

 

「今日はって言ってたけど、明日は誰だったっけ」

 

 

「明日、ですか? 明日は確か……曙ちゃんだったと思います」

 

 

こんのクソ提督がああぁぁぁァァァァッ!! 見た目的には合法(?)な榛名はともかく、見た目的に完全にアウトな駆逐艦にまで手を出しているなんてどんなクソ野郎だよ鬼畜提督め、そのツラ拝んでみたいわ! あ、鏡でも見ればいい話かチクショウ!!

 

 

「提督? 先程からどうなされたのですか?」

 

 

「あ、いやただちょっと自己嫌悪に陥っていてな……」

 

 

件のクソ提督が自分と同じ顔だという事を思い出して頭を抱える。これが並行世界の自分の可能性の一つですなんてSFチックな話だったのなら死にたくなる。

 

 

「とにかく、その、榛名は今日の所は下がってくれ。それから曙や他の子達にもこれから『そういう事』はしなくても大丈夫だって伝えておいてくれないか」

 

 

自分から言うのは何となく気まずい上に、こんな事をしていた報復に主砲の一発や二発撃ち込まれたって何の文句も言えないのだ。曙ちゃんとはできる限り顔を合わせないに限る。

 

 

「もちろん榛名もそうだからな……今まで嫌な思いをさせてしまってごめんな」

 

 

身に覚えのないことを謝るなど妙な気分だが、もう一人の僕的な存在だと思われるクソ提督の尻拭いは俺がやるべきだろう。

 

 

榛名は驚いた様子で俺を見ている。そりゃそうだ、きっとこの身体の持ち主は艦娘に頭を下げるなんて事はしたことがないのだろうから。今までの吹雪や睦月の様子からそうだと想像できる。

 

 

「提督、榛名の事は、その、気にしなくて大丈夫ですから」

 

 

「いや、いいんだよ。実際に俺が悪かったわけだしな。それでも勝手な言い分だとは分かっているが、これからも俺の為に榛名の力を貸してほしい」

 

 

とにかく頭を下げる。今の俺にはこれくらいしか彼女にしてやれることはない。

 

 

「そ、そんな提督! 頭を上げてください!」

 

 

「頼む、俺にはお前の、お前達の力が必要なんだ」

 

 

右も左も分からないこの世界において艦娘の力を借りなければ生きてはいけないだろう。どこにも確証なんてないがそんな気がした。

 

 

「提督……」

 

 

榛名は羽織っている提督の制服の裾をぎゅっと握りしめて、

 

 

「はい! 榛名、提督の為に精一杯頑張ります!」

 

 

真っ直ぐ俺の顔を見つめてそう言った榛名の瞳には涙が溜まっていた。本当に俺自身は何もしていないがとんでもない罪悪感に襲われてしまう。この調子ではこの鎮守府にいる艦娘全員に頭を下げなければいけない気がする。

 

 

最期におにぎりと味噌汁のお礼を言って榛名には下がってもらった。あの子も笑顔が素敵な子だよなぁ……

 

 

「はぁ」

 

 

誰もいなくなった執務室の椅子に、ドカッと腰を下ろして息を吐く。

 

 

「これから艦娘と仲良くやってける気がしねぇ……」

 

 

仲良くなるどころか下手をすれば後ろからドカン、とやられてしまうかもしれないという恐怖に怯えなければならない。ストレスがマッハなので胃薬を常備しておいた方が良いかもしれない。おっと、榛名に貸した上着を返してもらわなくちゃな。忘れてそのまま帰しちゃったぜ。

 

 

……とりあえず曙ちゃんに会ったら土下座して踏んでもらおうと思った。あ、俺にドM属性はないのでその行為はご褒美ではなく純粋にお仕置きである。ほ、本当だからね!

 




感想、評価等いただけたら嬉しいです。
ここまで見てくださってありがとうございました。

おっさんになってどこがアウトで何がセーフか分からない……
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