今回は前からやりたかった所なのですが、やはり1つの場面で複数人が同時に動く描写は下手くそだorz
読みにくかったりカオスだったりする可能性が今話は高いですがどうか暖かく見守ってください(=゚ω゚)
それと何人からか質問が来たのでここに追記及び次話の頭にも書いておきますがTSしたヴァーリの見た目はSAOのアスナを銀髪、青瞳にした感じです。
では本編へどうぞ。
「ほれそろそろ行くぞ」
魔法使い達が倒れているのを無視しずっと先輩に抱きついていた私とギャーちゃんは先輩のその一言で惜しみながら先輩から離れる。
「シノン達がいるから大丈夫だろうがそれでも向こうが気になるからな」
そう言って先輩はゆっくりと歩き始め、私達はそれについて行った。
外に出ると真っ先に目に入ったのは数十或いは百にも届きそうな数の得体の知れない獣と私達を襲ったのと同じローブの魔法使いが数百人。そしてそれの中心にいるなにやら黒いオーラを纏った長髪の女性にそのそばにいる白龍皇だった。
「っち、ヴァーリてめぇも俺の元から去るのかよ‼︎」
遠くからは片腕を失った中年の男が叫んでいる。背中から生える翼とその数、そしてあそこにいることからおそらく彼が堕天使総督であるアザゼルなのだろう。
「言ったでしょ?私は強い奴と戦えればそれでいいって。まぁ、クロメちゃんがまさか悪魔側、しかも彼の眷属になるとは思わなかったけど」
「白龍皇が無限龍に降るのか⁉︎」
「まさか?あくまで協力するだけだよ。『アースガルズと戦ってみないか?』なんて魅力的な誘いを受けたら、自分の力を試してみたい私が断るわけないよ。アザゼルはヴァルハラ……アース神族と戦うことを嫌がるでしょ?戦争は好きじゃないもんね」
「俺はおまえに『強くなれ』と言ったが、『世界を滅ぼす要因だけは作るな』と言ったはずだ」
「関係ないよ。私は永遠に戦えればそれだけで充分だから」
「……そうかよ。いや、俺は心のどこかでおまえが手元から離れていくのを予想していたのかもしれない。おまえは出会った時から今日まで強い者との戦いを求めていたものな」
「今回の下準備と情報提供は白龍皇ですからね。彼女の本質を理解しておきながら放置しておくなどあなたらしくない。結果、自分の首を絞めることとなりましたね」
とヴァーリとアザゼルとの会話を邪魔するように長髪の女性が笑いながら声を上げる。
「私の本名はヴァーリ。ヴァーリ・ルシファーだよ」
長髪の女性の横で彼女は両手をひろげながら高らかに宣言する。その言葉にそれを知らない人たちが驚いています。かく言う私も少なくない驚きがありますが、正直先程の先輩の余韻が残ってるのでそこまで入ってきません。
遠目からその光景を見ていると校舎からシノンさんを筆頭に会長やアーシアさんなど続々と人が出てくると、サーゼクス様達首脳陣と合流していく。そして会議室に出席すると言っていた人達が先輩以外全員合流するのを見届けると不意に先輩が胸ポケットを探り始める。
「停止世界の邪眼の効果が切れたからみんな動けるようになりつつあるな」
そう言いながら取り出した腕輪をギャーちゃんに投げ渡す。
「ギャスパーこれつけとけ。これ付けとけば何があっても暴発はしねぇから」
「は、はい‼︎」
渡された腕輪をギャーちゃんが腕につけたところで向こうの方々がこっちに気付いたみたいです。
「ギャスパー‼︎小猫‼︎大丈夫だった⁉︎」
真っ先に心配の声を上げたのは部長でした。
「2人とも怪我とかねぇから大丈夫だよ」
「よかった……」
そんな部長の声に先輩が答え部長から安堵の声が漏れる。
「っおい、八幡‼︎てめぇ協力者ってなんだおい‼︎」
「シノンから聞かなかったか?」
「聞いたが納得できるか⁉︎」
次に声を上げたのはアザゼルです。なにやら切れてますが、協力者って言葉やこの言動からなにやら先輩に出し抜かれたのでしょう。
「そもそもクロメはお前のとこで保護される以前に俺の眷属候補になってんだ。むしろ見抜けなかったあんたのミスだろ。挙げ句の果てには白龍皇を敵側に渡す始末だし」
んぐっとあまりにも正論なことにアザゼルは思わず黙ってしまう。
「ってか、あんなの相手に片腕失うって油断しすぎじゃねぇか?」
「そうね、油断しすぎね」
「甘々」
「アザゼルはいつもこんな感じ」
「おめぇら俺に辛辣すぎねぇか⁉︎」
先輩の言葉に続けるようにシノンさん、ユウくん、そしてクロメと呼ばれていた子が次々とアザゼルに言葉の暴力を振るっていく。
言われたアザゼルは体を震わせながら声を上げるが、アザゼル以上に声を上げたのは長髪の女性だった。
「あんなの…ですって⁉︎それは私が真なる魔王の継承者であるカテレア・レヴィアタンだと知って言ってるのかしら?」
青筋を浮かべながらそう言う彼女に先輩は笑いながら返す
「とてもお前さんが現四大魔王に勝てるとは思えんが?」
「言わせておけば……」
そう言ってアザゼル以上にふるふると震える彼女を他所に先輩は次々と自身の眷属に指示を出していく。
「シノンは全員を守ってろ。お前が1番適任だ。ユウはカテレアの周りにいる合成獣をやれ。そこそこの強さはあるから
『了解(ん、わかった)』
相変わらず先輩は頼もしく、敵が周囲にいる現在でも安心感を覚えさせてくれるなにかがある。
先輩に言われ各々が動き始める。
そんな中それは突然起きた。
「ひゃっ⁉︎」
「わっ⁉︎」
「えっ⁉︎」
アーシアさんとギャーちゃん、そして私の声が唐突にその場に響く。その声は何故かその場によく響いた。アーシアさんはイッセー先輩に、ギャーちゃんはユウくんに、そして私がシノンさんへと飛ばされる。
「先輩、なにを……⁉︎」
そして私達を飛ばした張本人である先輩へと振り向き言葉をかけようとしたがその言葉が最後まで出ることはなかった。
私だけじゃない。周囲の人達全員が絶句している。
ポタリ、ポタリと赤い液体が地面へと垂れる。
私達を飛ばした先輩の胸には銀色の剣が刺さっておりその剣の漆黒の柄を握っていたのはカテレアと同じ黒いオーラを纏った私の大嫌いな長髪の女性だった。
『先輩⁉︎(八幡⁉︎)(ハチくん⁉︎)』
その場に全員の絶叫が響き渡った。
小猫 side out
阿朱羅丸 side in
「っは、はははははははは、私を馬鹿にするからそのような目にあうのよ」
そんな絶叫の中、カテレアが笑い声をあげながらその光景を見下ろしている。
「雪乃、あなた……一体なにを⁉︎」
グレモリーが声を震わせながらハチの胸に剣を刺した相手に問う。
「なにって、決まっているじゃないですか?」
逆になにを言ってるのと言った様子で彼女は答えた。
「彼がいなければ私の人生は狂わなかった。彼がいなければ、姉さんや私の周りの人達は死なずに済んだ。彼がいなければ私がこんな目にあうこともなかった。だから復讐しただけよ?」
そういう彼女の目は黒く澱んでいた。
「おっと」
そんな彼女に水の針が襲うが彼女は騎士のその能力を使いその場からカテレアの元へと移動する。
ーーふーん魔力を体力へと変換してるのか。それに他の奴らに気づかれないようにしたのも魔力の応用だね。魔力総量自体は低いのに扱いには秀でてたし、無限龍の蛇で魔力を増やした結果1皮、いや3皮くらい剥けたって感じか。まぁわざとじゃなきゃハチは喰らわなかったんだろうけどーー
「よくも……よくも八幡くんを⁉︎」
怒り、彼女に真っ先に攻撃したのはソーナだった。そこにはいつもの冷静な彼女の姿はなく、怒りに身をまかせている、そんな感じがした。
「八幡さん……⁉︎」
そんな彼女の後ろではアーシアが治療をしようと試みるが銀製の剣に阻まれてしまう。
「少し失礼します。」
そう言ってアーシアの前に座り、ハチに刺さる剣を抜いたのはミカエルだ。
「あ、ありがとうございます」
「いえ、彼には協力者などいろいろ聞きたいことがある。こんなとこで死なれては困ります」
アーシアは礼を言いすぐさま治療に移る。その周囲には駆け寄ったイッセーや木場、小猫にギャスパーが囲っていた。
そのさらに後方、少し離れたところではサーゼクスとグレイフィアに2人がかりで抑えられている女性の姿があった。
「離して……サーゼクスちゃん、グレイフィアちゃん。私……あの子を殺さなきゃ……」
そういう彼女には普段の巫山戯た様子が一切ない。目からハイライトは消え、今にも学園ごと消し飛ばしそうな勢いの彼女をサーゼクスたちは必死になって止めている。
しかし、意外にも最もキレそうな八幡の眷属たちが一切その場から動いていない。ゼノヴィアだけ当初動こうとしていたが、側にいたシノンになにか耳打ちされると、あっと目を見開きながら声を漏らすと、そのまま落ち着いてしまう。
ーーあー、これはバレてるね。まぁハチの過去を知ってれば当然か、むしろセラフォルーとソーナが慌てすぎなんだよなぁ。サーゼクスとグレイフィアは抑えるのでそれどころじゃないみたいだしーー
「ゆきのん⁉︎どうして⁉︎」
「何度も言わせないでちょうだい由比ヶ浜さん。復讐のためと言ったでしょ?」
「でも、ヒッキーは関係ないじゃん‼︎それに狂わせたって、中学のあれは全面的に私達が悪いのに‼︎」
一方グレモリーと姫島の近くでは由比ヶ浜が雪ノ下に声を張っていた。彼女は友人に問う。どうしてと。しかし友人の言葉は彼女には受け入れられないものだった。
「なぜそんなことを言うのかしら?彼がいなければ私たちはこんな不快な目に合わなくて済んだのに?彼さえいなければ……」
まるで狂ったように言ってくる彼女に由比ヶ浜は恐怖すら覚えた。壊れてる。彼女は初めて友人のことをそう思った。
「ゆきのん……」
そう呟いた時、彼女の胸に黒い氷が刺さった。
「ゆ、結衣⁉︎」
突然攻撃された由比ヶ浜に驚き、彼女を見た後グレモリーはそれをやった本人を見る。
「それにね、由比ヶ浜さん。貴方も悪いのよ?貴方は殺すつもりはなかった。なのにあの男とやり直したいなんて言うから。だから貴方が悪いの」
雪ノ下がそう呟くと由比ヶ浜は膝から崩れ落ちる。
「結衣⁉︎」
グレモリーが慌てて彼女を支える。
驚いているのは彼女だけではなくグレモリー眷属達全員だった。
「リアス先輩……」
薄れていってる意識の中由比ヶ浜がグレモリーを呼ぶ。その声に反応して彼女を見たグレモリーに彼女は告げる。
「今まで本当にすみませんでした」
「騙して眷属になって、その上足を引っ張るだけ引っ張って、本当にごめんなさい」
他にも言いたいことはあるだろう。雪ノ下に対して問い詰めたいこともあるだろう。でもそれをせず彼女は真っ先にグレモリー達へと謝辞を述べる。それは彼女自身、もう助からないとわかっているからだろう。
「結衣、今そんなこと言わなくても……」
そういうグレモリーだがわかってしまう。彼女の命が尽きることが。だからこそ、彼女の瞳から雫が落ちてくる。
「リアス先輩……ありがとうございます」
私なんかのために涙を零してくれてと……彼女は礼を述べる。
グレモリーにとって経緯はどうあれ彼女は眷属だ。故に泣くのなんて当然だ。しかし、その当然のことが由比ヶ浜には嬉しかった。
ふと由比ヶ浜の視線がアーシアの治療を受けている彼を捉える。アーシアは由比ヶ浜の方を見ながらも悔しそうに八幡の治療をしている。本当ならば由比ヶ浜の方にも行きたいのが目に見えてわかった。そして眠っているように倒れている彼に由比ヶ浜は最後の力を振り絞るように呟いた。
「できれば……ヒッキー…と………もう一度だけ……やりなお……したかった……なぁ……それで……しっかりと……ごめんって……あやまり…たか………った…………」
万感の思いを込めた呟きを残し、グレモリーが支えていた体は消え、彼女の手に戦車の駒だけが残った。
「雪ノ下……てめぇ八幡だけじゃなくてどうして由比ヶ浜まで‼︎」
そう言ってハチの側にいたイッセーが真っ先に声を荒げた。
「言ったでしょ?彼女が悪いと。それに私はその男をやれるというから
「ってめぇ」
そう言って拳を握り立ち上がろうとしたイッセーの横を小猫が通り過ぎる。
「小猫ちゃ……⁉︎」
呼びかけようとしたイッセーから思わず声にならない悲鳴が出る。
「………」
なにやら呟いている小猫はおよそ人が放つものではない何かを纏いながらゆったりと歩いていく。その正体に気がつけたのは極一部の者だけ。
ーーあれは、仙術だね。無意識下に漏れ出てるし、なにより纏ってるのが負のものばかり……このままじゃまずいけど、まだ終わらないの⁉︎ーー
ーーうっさい、この馬鹿に言いなさい。あれほど心臓は避けるように言ったのに見事に心臓をやられてるんだからーー
そうして小猫が走り出そうとし、サーゼクス達が抑えていたセラフォルーが2人を引き剥がし、その力を解放しようする。
「ストップよ」
「まつ」
そんな2人を止めたのはシノンとユウだった。
「どいてください」
「どいてユウくん」
「退くわけないでしょ?あんた達このまま学園ごと吹っ飛ばしかねない勢いなんだから」
「シノンちゃんはなんで怒ってないの?」
あまりにも冷静なシノンにセラフォルーはその目に怒気を込めながら問いかけた。
「ハチがあんなモブ達にやられるわけないでしょ」
「なんですって」
やれやれといった様子で彼女が呟くとカテレアが叫ぶ。いちいち叫ぶ点シノンの言う通りモブらしい。
「雪乃が刺したのは刺すと同時に光の属性を帯びる特殊な剣なのよ?それも心臓を刺されて生き延びられるとでも思ってるの?」
「本当に貴方達は何処までもその屑を盲信してるのね?」
カテレアと雪ノ下が2人して笑いながらこちらを侮蔑してくる。
「あんたもそう思ってるの?」
そんな2人を無視してシノンは2人の後ろにいるヴァーリへと問いかけた。
「……わからないなぁ」
『ヴァーリ?』
そんな彼女の発言にカテレアと雪ノ下が振り向く。
「カテレア達が言うように普通なら死ぬ。だけど八幡君ならって気がどうしても消えないんだよね。なにより…….」
そこまで言うと彼はハチの方へと視線を移し気になっていたことを呟く。
「アルビオンが感じたことだけど八幡君の生命力がまるで落ちてない。なによりも……アルビオンとドライグ……二天龍がああまでいった男がそう簡単にやられるとは思えないんだよね」
そう言って彼女はシノンへと視線を戻した。
「ですってよセラフォルー様」
「だから小猫も落ち着く」
『でも⁉︎』
そう言っても尚引き下がらない2人に仕方なくユウが告げた。
「むかし、にぃがサタンと戦ったときのこと、おもいだす」
『え?』
その言葉に2人の動きが止まった。
そして彼女達の中で思い出されるのはハチが話していたこと。そう彼はかつてサタンに魔力の光線で貫かれた後……
まさかと思い、2人が振り向こうとした時、その先で声が上がる。
「ひゃっ⁉︎」
「八幡君⁉︎」
「八幡⁉︎」
「お、お兄ちゃん⁉︎」
阿朱羅丸 side out
八幡 side in
「っー、心臓を刺すのはやめてくれっての。死にはしないが痛いし直すのにも少し時間がかかるんだから……っとやっぱり身体を変えるのは間に合ってなかったから光のせいでまだフラフラすんな」
そんなことを言いながら俺は何もなかったように起き上がった。周囲を見渡すとみんな驚いているがそこに由比ヶ浜の姿はなく代わりにグレモリーが泣きながら何かを握っていた。
(由比ヶ浜が逝ったか……)
かつて1度は心を許しかけた相手が消えるのはやはり気にしていなくても思うところは少しだけあったのか目を伏せてしまう。
そんな俺の周囲では唐突に起き上がった俺を見て驚きの声が上がっていた。
「ひゃっ⁉︎」
「八幡君⁉︎」
「八幡⁉︎」
「お、お兄ちゃん⁉︎」
『馬鹿な⁉︎』
俺を確実に殺れたと思っていた雪ノ下やカテレアも同様に声を上げた。
その声につられるように離れていた奴らも俺に飛びつくように迫ってくる。
「ハチくん‼︎」
「八幡君‼︎」
「先輩‼︎」
「っごは⁉︎」
弾丸さながら飛んできたセラフォルー様とソーナ、小猫が抱きついてくるのだが、一応病み上がりのようなものなので辛い。
「いでででででで、痛い‼︎傷とか治ってるけど、普通に締める力強すぎですから⁉︎」
あまりの辛さに思わず声を上げる。
助けてくれと視線で信号を送ると、やれやれといった様子でシノン達がセラフォルー様達を引き剥がした。
「あんた。なんで避けなかったのよ」
ようやく解放されふぅと安堵の息を漏らすもすぐさまシノンに問い詰められる。
「いや、咄嗟だったし、仕方ねぇだろ」
半分は本気で半分は嘘である。
咄嗟だったのは本当だが避けようと思えば避けれた。それをしなかったのは手っ取り早く三大勢力に理解してもらうため。俺という鬼呪龍神皇がどれだけ規格外であるかということを。まぁ、そのために心配はかけてしまったのは心が痛むが……
シノンもふーんと言いながら目を細めているから完全には信じていないだろう。
「にぃ、あのタイミングでやられるのはウケ狙い?相手を笑った後にその刺客にやられるって」
「八幡あれってわざとかな?」
「死んだフリとはいただけないな」
そして次々とほかの眷属達がジリジリと迫ってくる。
「ハチ君わざとって何⁉︎わざと受けたの⁉︎なんでそんなことしたの⁉︎」
「八幡君……貴方は自分の身体をもっと大切にといつも言っているのに……」
「先輩、酷いです……」
それに追随するように引き剥がされた3人も俺に再びジリジリと迫ってくる。
「いやいや、それよりもなんで無事なんだよ⁉︎普通そっちを疑問に思うだろ⁉︎」
そんな俺たちに耐え切れずアザゼルが突っ込んだ。
『それは八幡(にぃ)だから』
「なんでだよ⁉︎」
眷属一同に一言でバッサリ切られたアザゼルは声を上げるがそれを無視して彼女達とセラフォルー様達はどんどん俺へとにじり寄ってくる。
《あはははは、もうバレてるんだから仕方ないね。後々のお仕置きは甘んじて受け入れなよ》
『⁉︎』
そんな中突然阿朱羅丸の声がほかの奴らにも聞こえる様に放たれた。
「あーちゃん?」
「この声って……」
「なんだ?(です)」
周りの奴らが反応する中俺はため息まじりに呟く。
「おい、なんで出てきたんだよ」
《いやいや場を整えてって言うハチの意見はわかるけどここまでカオスになった場はそう簡単に収まらないでしょ?まぁ、カオスにしたのはハチ自身だけど。だから僕が納めてあげようと思ってね》
「むしろ余計にカオスにならねぇか?」
《いやいや、簡単なことだよ。僕が出ればある程度の説明はすぐ終えられる、百聞は一見に如かずってね。まぁ、さっきも言ったけどシノン達の怒りは尤もなんだから、それは今晩にでも殺られるといいよ♪》
他を無視して繰り広げられる会話に周囲がポカンとしつつある中、仕方ないかと決心する。
「シノン、それにみんなも叱りは後で全部聞くからこの場は引いてくれ」
俺の言葉にシノン達はりょーかいと言っていたが目は一切笑ってなかった。
「なぁ、アザゼル、ミカエルお前らは俺の神器について知りたがってたよな?」
「あ、ああ」
「ええ」
「なぁ、白龍皇お前は強い奴と戦いたいんだよな?」
「うん?そだよ」
阿朱羅丸の声できっかけを作り、少しだけ落ち着いた場で俺が彼らに問いかけた。
「なら見とけよ」
そう言って俺は刀を取り出す。
取り出した刀は宙へと舞い俺の言葉に反応し翡翠色の装飾が光り輝いた。
「
その言葉と共に刀を影が多いつくし、その影はやがて人の形へと変わっていく。
その様子を全員が見ている中、影が剥ぎ取れた瞬間、その姿に彼女を実際に見たことある者やその声を知る者は声を上げた。
「はぁ、こうやってこっちでハチ以外の奴と会うのはいつぶりかねぇ……って合宿の時に小猫ちゃんにはあったか。魔王様達は久しぶり、前はハチの身体経由だったからこうして会うのは初めましてになるかな?それに会ったことのある奴もちょくちょくいるしね」
「お前は⁉︎」
『まさか⁉︎』
「どういうこと⁉︎」
アザゼルとミカエルは顔を知っているのか驚きの声を上げ、セラフォルー様やサーゼクス様は突然現れた彼女に驚愕の声を上げる。
それ以外の奴らも突如現れた阿朱羅丸を見て目を見開いて驚いている。俺の眷属を除いて……
「僕は阿朱羅丸。鬼呪龍神皇阿朱羅丸さ。多くの者には吸血の女王と呼ばれているけどね」
《貴様‼︎》
《どうして出てこられている⁉︎》
彼女の自己紹介を前に声を上げたのはアルビオンとドライグだった。いきなり声を荒げた二匹の宿主達はどうした?といった具合に問いかけているが。
「あははははやっぱり驚くよねぇ。神器に閉じ込められてる筈の僕がどうして出てこられるかって」
そう、それがここにいる多くの者の疑問。
本来神器に宿る者はその魂だけを封じられている。故に外に出ることなど不可能なはずなのだ。だが、阿朱羅丸はその常識すら嘲笑うように周囲に告げた。
「簡単なことさ。ハチに宿る神器は……否ハチの神器はイレギュラーな物なんだよ。まぁ、それこもれもそこに宿ってる二天龍達のおかげなんだけどね」
《どういうことだ⁉︎》
敢えて俺に宿るという言い方を訂正し、二天龍を煽るように言った阿朱羅丸の言葉にアルビオンが敵意丸出しの声を発する。
「この神器はね、聖書の神が作り出した神器というシステム外にある神器なんだよ。なんたって聖書の神の力を使って僕が作った神器なんだからね」
両手を広げながら得意げに彼女は語る。その語りを俺や眷属達は既に周知の事と黙って聞いているが他の奴らはそんな余裕はない。開いた口がふさがらない状態だ。
「かつて僕は二天龍を戦争の中に誘き出し、その混乱に乗じて聖書の神の血を吸った。まぁ、それはそこの天使長様が知ってることだろ?」
「はい……ですが貴方はそれだけですぐに姿を消してしまった」
阿朱羅丸の言葉にミカエルに注目が集まると彼はそれを肯定した。
「まぁ、聖書の神の力が欲しかっただけであとはどうでもよかったからね。でも十数年前、調子に乗ってムゲン達が争ってるところに突撃していってね。流石に二匹を同時に相手にするのはきつくて再起不能の重傷を負ってね。それでこのままじゃ死ぬと思って済んでのところで僕は神器を生成したんだよ」
誰もが彼女の言葉を疑った。ムゲン達に突撃していった。神器を生成した。ありえないとばかりに目の前にいる存在を疑っている。
「そして僕は神器を作る時、僕自身の身体の一部を使うことで新種の神器を……この世界で唯一無二のイレギュラーな神器を作った。そして神のシステムを利用してそれと最も適性のある人物を探した。そうして見つけたんだよハチをね。僕が作った神器、宿った者或いは両者契約の元身体と魂を取り込むことでその力を復元する神器"鬼呪装備"をね」
その言葉に今度こそ全員が固まってしまう。何を言っているんだとほとんどの者の思考が停止した。
「なんで外に出られるか?簡単だよ。この神器の能力は力の復元。それの極致である"
そう言って阿朱羅丸は俺のそばに降り立つと不敵に笑いながら更に爆弾発言を続ける。
「それにこの神器はハチが使う刀が神器の本体じゃない。あれは僕という存在が強く入っているものであって本体は既にハチと同化しているからハチから神器を取り出すこともできない」
「え⁉︎」
阿朱羅丸のその発言はシノン達も知らないことであるが故に彼女達も声を上げた。
そう、これがバロールが言っていた面白いものの真相、何者でもないにも関わらず何者にもなれる由縁。阿朱羅丸の身体の一部を使って作った神器とほぼ同化している俺はもう、悪魔ですらない。俺自身が鬼呪龍神皇になっている。それ故に阿朱羅丸の補助がない状態でも阿朱羅丸の使う力は使うことができるのだ。
「だからこそ、今ここで君達にしっかりと告げさせてもらうよ。ハチは
そう言った彼女は俺の両肩に手を置く。ふふふ、と悪戯が成功した子供のように笑っているがやってることが規格外のためその笑みには何処か黒いものが含まれている。
「さぁてと、それじゃあそろそろ殺り合おうかな?白龍皇ちゃん。殺り合いたかったんでしょ?」
そうして言いたいことを言い終えた彼女は不意にヴァーリへと言葉を向ける。
「っ⁉︎いいね。面白そう」
ヴァーリも先ほどの言葉に呆気を取られていたが阿朱羅丸の言葉に意識を戻しその顔に笑みを浮かべる。
「ヴァ、ヴァーリ‼︎あれは危険です。私たちも手伝いますよ。雪乃」
「ええ、わかってるわ」
そう言って無限龍の蛇で力を上げた2人が加勢に入ろうとするがそれをヴァーリ自身が止めた。
「やめて欲しいなぁ。アレは私が1人で相手をしたいんだから」
予想もしなかった拒絶の声に戸惑う2人だがそんな2人に阿朱羅丸は笑いながら話しかけた。
「あー、大丈夫だよ。君達の相手はもう到着するみたいだし」
「な、なにを……」
カテレアが阿朱羅丸の言葉に疑問を上げようとした時、その声は突如2方向から地面へと飛来した物の轟音によって掻き消された。
「っな⁉︎」
その飛来した物の正体を見て彼女は思わず大声をあげてしまう。
それは本来ならば後詰めとしてやってくるはずだった彼女の眷属や仲間と魔法使い達だった。否、だったものといったほうが正確だろう。着ていた衣服から判断こそできるが、彼らは肉塊と化していたのだから。
「やれやれ、遅くなっちまったか?っとなぁんでハチのやつは地べたに座ってんだ?なんだ?サボりか?」
「ひゃひゃひゃ、旦那がサボりなんてありえねぇだろ。おおよそまたなんかやってシノンの姉御達に怒られたんだろ」
「もう、早く行ってくだせぇ。あっしはこの後も行かなきゃいけねぇところがありやすし、ここで見られるわけにはいかねぇんで」
飛来した方向を見ると空中にまるでトンネルのような黒い穴が出来ておりそこから漏れ出すのは3人の男女の話し声。
「ひゃひゃひゃ、別にいいじゃねぇか。なんならロリっ子、お前さんのケツを……」
「この変態がぁぁぁああああっす‼︎」
「うぉぉぉおおおおおい⁉︎」
そんな声が聞こえ見覚えのある白い長髪の男性が吹き飛んでくる。しかし、そこはさすがというべきか空中で3回転ひねり繰り出し着地する。
「あ、旦那お疲れ……」
「あー、お前は‼︎‼︎」
そんな男性の声をヴァーリが妨げた。
「あれ?知ってるの?」
「こいつ私から逃げる時に人の胸を揉んでってた変態だよ‼︎」
阿朱羅丸の問いにヴァーリは怒りながらその男を睨みつける。
「おお、あんたはあの時の揉み級準1級のスーパーボインドラゴンのおねぇちゃ……「へぇ」ひぃぃぃいい⁉︎」
そんな男が巫山戯倒しているとシノンが周囲を凍らせながら彼に近づいて行った。
「さっきの様子じゃあの子にもセクハラしたようだし、白龍皇にもしてたのね。アーシアちゃんの時にみんなでお仕置きしたけど足りないみたいね?」
「あ、姉御……ちょっとまっ………おぅぇぇええええええええ」
と途中まで叫んだ男は次の瞬間蹴り飛ばされ猛スピードで吹き飛ばされた。そうして飛んで行った先にはユウがおり、そんなスピードで飛んで行った彼は当然のごとく……
「ふん‼︎」
と飛ばされた男の脇腹を容赦なく左ストレートで打ち抜く。
「ごっはぁぁぁああ」
そうして飛ばされた先にいるのは刀を片手に立っているクロメであり、先日の件からもこの男とは仲が悪い。となるとその行く先は目に見えており。
「こっちに来るな」
ズバンと刀を鞘に入れたまま男を吹き飛ばす。
「ぐぇぇぇえええ」
そうして飛ばされた男は先ほどとは違う意味で3回転ひねりを起こし俺の前に飛んでくる。当たりそうになれば流石に俺も吹き飛ばそうかと思ったが極めて残念なことに手前で止まってしまった。
とりあえず顔をこちらに向けしゃちほこのようになってるこいつに聞いておく。
「おーい、フリード大丈夫か?」
「あ、ああ。でも旦那……助けてくれても」
「いや、確実にお前が悪いからな」
そう言って俺は手前で止まったフリードの頭に拳骨を落とす。
「ぐげぇ……なんで旦那まで……」
「悪かったな白龍皇」
「う、うん……今の見たら少しだけスッとしたからいいよ……」
様子からして仲間のような振る舞いだったのに容赦のない様からヴァーリも少し引いていた。
「んじゃ、俺も行ってくるから、じゃあな」
「へい、お疲れっす」
そう言って穴からもう1人中年のおっさんが出てくると穴は閉じてしまう。
ドンと結構な高さから落ちたにも関わらずまるでなんでもなさげにこちらに歩み寄ってくる男は呆れ顔でつぶやく。
「お前さんはそのセクハラ癖なんとかしないとそのうち女性陣に殺されるぞ?」
「うっせぇ、おっさんは黙ってろい」
「お疲れさん阿伏兎。大丈夫だったか?」
「大丈夫だったかじゃねぇよい。歯ごたえがないにも程がある。それよりもお前さんどうしたんだ?お前さんがあんなんに殺られるとは思えんのだが」
「まぁた、何時ものよ」
阿伏兎の問いにシノンが答えるとまたかいと阿伏兎ため息を吐く。
「だ、旦那、旦那が効率とか重視するのはわかりますけど自分の身は大切にして欲しいっす」
それに続くように起き上がったフリードがまともなことを言う。
「フリード、あんたもまともなこと言えるのね?」
シノンも俺と同じことに驚いていた。
「いやいや、普段ふざけてるだけで真面目な時は真面目にやりますよ俺っちは⁉︎」
「存在が巫山戯てるのに?」
「クロメちゃんは黙ろうかぁ?このロリっ子が」
「なに?この間の続きやる?」
「おう、上等だ。姉御たちもいるからここで一発お前にかまして……」
「ちょっちょっと待ってくれ⁉︎」
ヒートアップしていく内輪ネタに耐えきれなくなったゼノヴィアが声を上げる。
「フリード・セルゼン。お前は敵のはずだろう⁉︎どうしてそんなに「仲がいいのってか?」そ、そうだ‼︎」
頭に疑問符を浮かべていたのはゼノヴィアだけではない。周囲の多くの人物がただでさえ阿朱羅丸の説明が追いついていないのにフリードの登場に理解できずにいた。
あ、そういやフリードのことゼノヴィアにも言ってなかったな……
「ひゃひゃひゃ。なら今ここで聞いとけよ。俺っちは天使側に始まり一部の堕天使や数ある無法者たちのところに潜り込んだ協力者フリード「ほれよ」って旦那タイミングそこ⁉︎」
フリードの話を遮るようにフリードに兵士の駒を投げ当てる。すると話途中だったフリードの身体が輝き出し彼は仕方なくしゃべるのをやめるしかなくなった。
「まぁ簡単に言えばこいつも協力者ってこった」
「旦那ひでぇな……まぁ、そういうことだよ。あん時言っただろ?手加減してやるって。あんな脆い剣じゃ俺様の実力の半分も出しきれねぇっての」
そう言いながら蝙蝠の翼を広げバサバサとまるで確認でもするように振るうフリードだが彼を知っているイッセーたちだけでなく、そこにいるほとんどの者が考えられる容量のキャパを超えていた。それほどまでにこの数分で多くのことが起きすぎているのだ。
「うーん。しかし、1人も倒れてないのに全員揃っちまったし……少し変えるか。ユウと阿伏兎であの合成獣達を、クロメとゼノヴィアで魔法使い達を、フリードがカテレアの相手をしてシノンは雪ノ下を見張っとけ」
そう言って俺は重い体を立ち上がらせる。
「別にいいけどそうしたら守りはどうするの?」
「ああ、こいつにやってもらう予定だぞ?」
シノンの疑問に俺はもう1つの眷属の知らない者を呼び出す。
突然出てきた緋色の刀にイッセー達だけでなく眷属一同も不審に思っている中、ギャスパーだけがやけにキラキラした目でこちらを見ていた。
「んじゃまぁ、頼むぞクルル」
そう言うと先ほどの阿朱羅丸同様に黒い影が集まりだす。違うのはそこから現れる人物。
「はぁ、ようやく私もお披露目ね」
そう言って現れたのは腰よりも下まで伸びたピンク色の髪をなびかせる緋色の瞳の少女。
その場にいる全員がまたも呆気を取られる中その少女が発した言葉は敵味方上司眷属関わらず全員の度肝を抜いた。
「初めましてになるわね。私はクルル・ツェペシ。吸血鬼の始祖にして鬼呪龍神皇の姉よ。以後よろしく頼むわ」
そう言って彼女はにこりと笑う。
何人かは、はぁ⁉︎と再び声を上げそれ以外が、主に首脳陣を中心とした人物達が俺の方へと視線を向ける。
「ああ、さっき阿朱羅丸が言いましたよね?宿った者或いは両者契約の元身体と魂を取り込むことでその力を復元するって。クルルは数年前に会って俺の神器の中に入ったんですよ」
向けられた視線に答えた俺の言葉に首脳陣達の心が初めて1つになった。
『もうとりあえずこの場を収めてくれ』と。
あまりの出来事の連続についていけなくなった彼らは遂にこの場を納めればとりあえずそれでいいと考えたのだった……
いかがでしたか?
これは書き始めようと思った時から雪ノ下がここで裏切り由比ヶ浜はここで死ぬという設定にしようと思っていたのですが……
感想お待ちしております(^◇^;)汗
次回会議編は終了します。