冥界編を入る前に数人のキャラとの過去回想回や親しくする様子を描写した回を書けたらと思います。
何はともあれ本編へどうぞ。
「ウォォォオオオオン」
夏休み開始を1週間後に控えた今、俺たちは釣り糸を垂らしながらボーッと海を眺めていた。何が悲しくて野郎だけでここに来にゃならんのかと悲しみに明け暮れていると、そんな俺の気分を晴らすかのようにユウが雄叫びを上げた。見れば魚を釣ったことに対して雄叫びを上げているようだ。
「おーい、あんまり叫ばんでくれよ。なんせこんな時間だ。近所迷惑になっちまう」
そんなユウに対し苦笑いしながら声をかけるのは同じく釣り糸を垂らすアザゼルだ。そもそもここに俺を呼び出したのはこいつなのだがまさかとは思うが暇つぶしのために俺を呼んだのだろうか?もしそうなら即刻乱闘だ。乱闘パーティだ。
まぁ…ユウは普通に俺についてきたが。
「駄元帥殿は気楽でいいねぇ……で?なんか話でもあんのか?ないなら帰りたいんだが?というか帰っていいか?いや、帰る」
「駄元帥ってなんだ⁉︎すげぇやな響きなんだが‼︎⁉︎……まぁ、待て待て。別に冷やかしとかで呼んだわけじゃねぇんだ。どうしてもお前さんに頼みたいことや聞きたいことがあって呼んだんだよ」
なんだよ。素敵な響きだろ駄元帥って。
地上ニ階六畳一間に住んでる某ライトノベルの魔王幹部みたいでいいだろ?あいつはガチNEETだけど……
「んでなんだよ?」
「はぁ、これはサーゼクスからもそのうち来るであろう話なんだが……お前さんの知り合いでもなんでもいいが、誰かスカウトできたりしねぇか?」
「スカウトだぁ?」
「もちろんお前さんのとこじゃねぇ、リアス・グレモリーのところにだよ。正直な話、サーゼクスからこいつらを強くしろって言われてもまず戦力が足りねぇんだよ」
ああ、なるほど。
確かに今回の件でグレモリーは眷属が減ってしまったし、元々眷属の数が多いわけでもない。確かに早急に見つけなければ今後の活動にも支障が出かねないだろう。
まぁ元のメンツがそもそも使えてたかは甚だ疑問ではあるが。
「あー、ならいいのがいるから夏休みに帰省した時にでも紹介するわ」
「お!マジでいるのか?」
「まぁな……元は俺のとこに入るかってことになってたんだが諸事情でうちに入るのはやめた方がいいってことになった奴がいてな。今は冥界にある俺らの家で使用人として勤めてる。っても実力はあるぞ。少なくとも木場を圧倒するくらいは剣の腕が立つ」
まぁ、リアス・グレモリーのとこなら大丈夫だろう。女性が多いのはあれだが、そのほとんどは既に好意を抱いている相手が限定されてる。リアス・グレモリーや姫島先輩、アーシアはイッセーに夢中だし、ギャスパーや白…小猫は俺らの方にいることが最近多くなってきちまってるしな。
それに若干そっちの気がありそうな木場いるし、なんだかんだでイッセーとも仲良くやれるだろうから今度連絡しておくか……
「そうか!ならその時にでも紹介してやってくれ」
その言葉にアザゼルは満足そうに頷くと竿を一度引き上げる。そのタイミングに合わせて俺は声をかけた。
「んで、それで終わりなら帰っていいか?この調子じゃここら一帯の魚が全部ユウの腹の中に収まっちまうんだが?」
「うぉぉい⁉︎どんだけ食ってるんだ⁉︎」
俺が気怠げに指をさすとアザゼルがその方向を見て声を上げた。
「ん?」
そこではユウが釣った魚を片っ端に丸呑みしていってる。その上もはや普通に釣っておらず仙術を行使しているため魚が海からどんどんユウの方向へと飛んできていた。
「……にぃも食べる?」
俺たちの話を聞いていなかったのかユウが一匹の魚を俺の近くへと近づけてきた。
「ユウが食べていいぞ」
「ん」
俺がそう言うとコクリと頷き再び食事に戻る。
本当によく食うやつだ。近いうち有希を公にした後眷属内で大食い選手権でもやってみるか。
「ってことで他にあるなら早めに言え。下手したら生態系が壊れる……」
「いや、なら止めろよ……はぁ、まぁいい。お前さんの眷属の神器についてなんだ「断る」が……ってはえぇよ」
ユウを見たアザゼルは軽く嘆息をもらすとヒョイっと糸を海に垂らし、おそらく本題であるであろうことを語り始めるがそれを俺は速攻で断った。
「いいじゃねぇか。あのフリードとかいう奴の人工神器ってのもすげぇ気になるだよ。そうじゃなくてもクロメやお前みたいな規格外の神器持ちが揃ってて更にはユウや阿伏兎だったか?そんだけの実力者がお前の元に集ってるんだ。
所持してる神器がなにか気になるのは当然だろ?」
そんな否定した俺に対しアザゼルは諦めずに話し続ける。その瞳は完全にうちの天才っ子の興味全開モードと同じものだった。
(ああ、駄目だ。こいつどこまでも食いついてきそうだな……)
《なら、ここで消し炭にしとく?》
《そんなことするわけないでしょ?ちょっと頭の中をグチャグチャにするくらいにしときなさい》
(やめてやれ……)
「俺が知る通常の“
俺の中では今日はいる阿朱羅丸やクルルが物騒なことを呟いているがそれを知らないアザゼルは尚も語り続け、途中話を区切り一息ついた。すると竿の先に向けていた視線を俺に向け真剣そうに続けた。
「そんな実力を持った奴とまるでなにもないかのようにお前の眷属は接してるんだ。つまり……あいつらの実力もそれと近いところにあるってことだろ。そうなりゃ神器マニアとしてどんな神器を持ってるか気になるのは仕方のねぇことだろ?」
真剣に見える瞳もそこにマニアとしての精神が宿っているからかどこか子供のような感じがしてならない。
「まぁ…言いたいことはわかる。」
「なら‼︎」
「でも教えねぇぞ」
「うぉい⁉︎」
そんなアザゼルに俺はやはり断った。
「幾らなんでもそうホイホイは教えられねぇよ。会議でも決めたろ?俺自身に手を出す分はかまわねぇが、身内に手を出すってんなら話は別だ。無論お前にそんな気持ちがねぇってのもわかっちゃいるがそれでもあいつらの情報を俺が簡単に渡すわけねぇだろ」
「……」
「そんな顔しても駄目だ……ってかきめぇぞ」
本当にキモい……その顔をシノン達がやるならば効果は絶大だったろうが相手は男だ。それもユウのような可愛い系の男の娘ではなくおっさんがそんな顔しても需要はない。
「はぁ、まぁ駄目元だったからいいが……1つだけ答えてもらってもいいか?」
「答えられることならな」
俺の答えは想定内だったらしく渋々ではあるが引いたアザゼルが顎に手を当てながら問いかけてきた。
「お前さんの眷属は鬼呪龍神皇であるお前さんから見ても強いか?」
「ああ。俺には勿体無い程にな」
その問いに俺は素直に答えた…自慢の眷属だと
「そうかい……ならこれだけは言っとこう。堕天使陣は……少なくとも俺はお前さんやお前さんの眷属に害を与えるつもりは全くない。何があってもな。俺個人からすりゃお前さんの神器みたいなイレギュラーを間近で見ていられることが何よりも退屈しのぎになるからな」
そんな俺に対しアザゼルも気分が良さそうに、豪快に笑いながら思っていることを口に出した。
「俺は玩具かよ……」
「あながち間違いじゃねぇだろ?セラフォルーやサーゼクスから聞いたところによると、プライベートじゃあセラフォルーの弟みたいな立ち位置らしいじゃねぇか。姉にとって弟ってのは可愛い家族であると共に愛でたい玩具でもあるだろうよ」
「……確かに………」
その言葉に否定はできなかった。
振り回されたり、愛でられたり、無茶振りされたりと割と思い当たる節がある。
「まぁ、そういうこった。なんか困ったら言ってくれ。できる限りの手伝いはするさ。神器に関しちゃ俺も相当の知識だ。役に立てることは多いだろうさ」
そういうとアザゼルは立ち上がり竿を片手に帰っていく。
「その言葉が変わらないことを願うよ」
《まぁ大丈夫だと思うよ?》
《あの男は自分の勢力とハチの力の差をよく理解してるから大丈夫よ》
俺の呟きに阿朱羅丸とクルルが応える。
ユウも俺の呟きが聞こえたのか首を傾げながらこちらを見ていた。
「はぁ、帰るか」
「♪♪♪」
そう言ってクシャクシャとユウの頭を撫でると気持ち良さそうに喉を鳴らす。そんなユウと俺は立ち上がり家へと歩を進めた。
翌日!
駒王学園では夏休み開始の前日に終業式があるがその終業式の前には5日間ほどのテスト休みがありその前には期末テストの返却日がある。つまりは今日なわけだがかつて俺はセラフォルー様の眷属の天才の師匠2名に鬼の教育を受けたこともあるので高校生の問題で躓くことはまずない。それは結果が物語っており俺の学年順位はいつだって88番だ。さすが8まん。
1年から毎回88番をとってることにいったい何名が気づいてるのかはわからないが、毎回この順位を取るのは中々骨が折れるのだ。なんせ周りがどれくらいとるか予想しなければならないのだから。まぁ、暇つぶしにはなる。
なんてくだらない事を言うくらいには俺には余裕があるのだが、問題は俺ではなくバカ2名だった。
「ど、どうしよう……」
「私は赤点は避けれたがどれも平均点以下だったよ」
オカ研の部室では現在イッセーとゼノヴィアが暗い顔で床に手をつけていた。
悪魔側では今回の期末テストでほとんどの者が一定以上の成績を収めており、特に問題がないように思われたのだが、今回2人のおバカが発見された。
「しょうがないイッセーね。私が勉強を見てあげるわ」
「あらあら、リアス。イッセー君の勉強は私が見るから大丈夫ですよ」
「あ、あのイッセーさん。英語なら私も教えられます」
そんな地に伏すイッセーにオカ研のイッセーラブ勢はここぞとばかりにイッセーに声をかける。イッセーは涙目になりながらリアス・グレモリー達の手を取るがたぶんあいつは後悔するだろうな……
《グレモリーはきつい勉強メニューをやりそうだね》
《そうね》
グレモリーの瞳から何かを感じ取ったのか阿朱羅丸とクルルがそう呟く。イッセーには悪いが俺も同意見だ。グレモリーの特訓、こと肉体疲労しない類のものに関してはあいつはやたら厳しい節があるので恐らくイッセーは精神的に大ダメージを受けることになるだろう。
「……そ、その八幡……」
そんなイッセーを見ていると不意にゼノヴィアが語りかけてきた。瞳を潤ませながら。
「別にうちじゃそういう系のノルマはねぇぞ?実際こういう学校のテストをうちの眷属で受けさせてみれば、お前と同じような点を取る奴も数人はいるだろうしな。適材適所だよ。適してない奴が無理にやろうとする必要はない。適してない部分は最低限修めて、適してる点を伸ばせばいいんだよ」
そんなゼノヴィアを見て思っていることを瞬時に悟った俺はすぐさまゼノヴィアのフォローに入る。眷属のメンタルケア大事……
「八幡……」
「まぁ、赤点を取ってたら流石にシノン達が黙ってなかったろうが別に赤点はとってないし、基本平均点と赤点の中間だろ?なら俺は別に怒ったりしねぇぞ?それにここ最近ずっと特訓ばっかやってたんだ、ある程度は仕方ねぇさ」
そう言って俺はゼノヴィアの背を軽く叩いた。
「っま、頑張れ。夏休みは冥界に帰って本格的な特訓ができる。それを全部終われば実力もそうだが勉学の方もできるようになるから」
「そ、そうなのか⁉︎」
「おう、だから楽しみにしとけ」
「ああ‼︎」
力強く頷いたゼノヴィアは瞳をキラキラと輝かせている。
ああ、これは……
《うん。ある種特訓マニアだね》
《特訓狂にならないことを祈るわ》
うん。思ってたから言わないでくれ2人とも。やっぱ、俺の眷属は癖のあるやつしか揃わないのだろうか……
《そだね》
《そうね》
はぁ、と2人の言葉に嘆息して窓から外を見渡す。蝉の煩わしい鳴き声に太陽の強い日差し。例年と変わらない暑い夏を感じながら俺は休みのない夏休みの予定をどんどん練っていくのだった……
そしてその日の夜!
昨日は休んでいたからか今日もまたゼノヴィアたちの夢の中に特訓へと旅立っていた阿朱羅丸達だが俺はというと珍しいことに本当にやることが何もない夜を過ごしていた。
そんな久々の暇な夜中なら寝ればいいと言う話なのだが、悪魔は本来夜の方が元気なため久々に夜道の散歩をしていた。
しばらく歩き公園に着いた俺は本来なら立ち入り禁止である芝のエリアへと入るとそこに転がり空を見上げる。
空には数多の星々が輝いている。
春は夜桜夏は星、秋には満月冬には雪
それだけでも世界は十分綺麗に見える。
それでも世界が汚く見えるならそれは見ている本人の心が病んでいる証拠だ。
俺の男の方の師匠はそう言った。普段寝てばかりなのに何格好つけているんだとその後女の方の師匠に怒られていたが。
でもよくよく考えるとあの2人天才軍師って言われてた頃からそんな漫才のようなことを続けているのか……そう考えるともはや熟年の夫婦だな……なんであの2人結ばれないんだろう……
とまぁ余計なことはさておき……
でもその格好つけられた言葉は間違いではなかった。その証拠に今この世界はこんなにも綺麗に映っているのだから。
「もう10年近く経つのか」
ふとその言葉が漏れた。
セラフォルー様やソーナと会ってから俺の日常は変わった。辛いこともあったが、それ以上に格段に楽しい思い出がある。
阿朱羅丸に出会った。
この世界の裏を知った。
悪魔になった。
師匠達にしごかれた。
セラフォルー様やセラフォルー様の眷属達といろんな思い出を作った。
そして、守りたいもの達ができた。
眷属ができた。
信頼できる者たちが、背中を、心を預けられる家族ができた。
そしてクルルとも出会った。
眷属達とレーティングゲームに出た。
その中に悲しい、辛い思い出が全くないといえば嘘になる。悲しいことも辛いこともあった。それでも、それ以上の出会いが、縁があった。
今の俺があるのは。
セラフォルー様達や眷属達や俺の大切な友人達がいてこそだ。
「いろんなやつらに助けられてきたな」
セラフォルー様やソーナにはその出会いそのもので俺という存在を救ってもらった。
サーゼクス様やグレイフィアには悪魔になりたての頃、度々世話になっていた。
師匠方には女王としての振る舞いや知識、戦いの戦術を教えてもらった。
阿朱羅丸には昔からなんだかんだで助けてもらっていた。
クルルは付き合いはまだ長くないが既に手の指では数え切れないほど助けてもらっている。
眷属達に関してもそうだ。
あいつらは俺が助けていると言うが違う。
助けてもらっているのはこっちの方だ。
あいつらがいなければ俺はここまで心を他人に開いてはいなかっただろう。
そういう意味であいつらは俺にとっているだけでも助けになっているのだ。
特に俺の過去をすべて知ってるシノン達に関して言えば感謝しきれない程よくしてもらっている。
「らしくねぇか……こんなん」
暇だったからだろうか。
みんなに対する感謝の気持ちで心が溢れていく。今でも昔から続く捻くれた性格は完全には治っていない。親しい者達だけでいる時はどうも捻くれてしまう。そして、その捻くれを受け入れてくれるあいつらとの空間が恋しくてたまらないのだ。
「人間強度がずいぶんと下がったもんだな」
昔のボッチの俺からは想像できないほど下がっている。大切なやつが出来すぎた。そしてそれをもはや手放すことができない自分がいる。
「だからこそ……か」
だからこそ強くならなければいけない。守れるように。自分だけではなく。大切な者達を。
「暇ってのも考えものだな」
暇だとどうしても昔のことやみんなのことを考えてしまう。普段は仕事が多くて云々言っているが、なんだかんだで仕事がある方が俺はいいらしい。あぁ、なんと素晴らしき社畜魂か。
「こんなことあいつらに聞かれたら本当にまずいな……」
そしてまたポツリと呟かれる。
こんなことを聞かれたらあいつらからどんな反応をされるかは想像に難くない。少なく見積もっても1週間は側に居続けられる気がする。
そうして呟かれた言葉は風に乗って消えるはずだった。少なくとも俺はそう思っていた。
「何がまずいの?」
「おぅわぁ⁉︎」
しかしその呟きは突然の来訪者によって受け止められてしまった。本当になんでここにいるのかわからない来訪者によって。
「な、なんでお前がここにいるんだよユウキ⁉︎」
「えへへへ、ようやく仕事が全部終わったから来ちゃった♪後1週間もすれば八幡達が冥界に帰ってくるのはわかってたけど我慢できなくて。それにシノン達だけズルいよ‼︎僕だって八幡と一緒にいたいんだからね」
そこには満面の笑みを浮かべるユウキがいた。
いかがでしたか?
次回はユウキ回突入。
今後閑話で少しずつ眷属との出会いやら関係やらを出せていけたらと思っています。このキャラとの閑話回を早めに出して欲しいとか要望があれば感想でコメントお願いします。希望が多ければ、そのキャラとの閑話を早めに書けるように思考していきますので。
ではでは。感想お待ちしております。