魔王少女の女王は元ボッチ?   作:ジャガ丸くん

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俺は……お久しぶりです。



……更新お待たせしましたm(__)m





【閑話】病の子《ユウキ編②》

〜〜〜

〜〜〜

 

春。

 

木組みの家と石畳の街並みを僕はいつも部屋の窓から眺めていた。昔は人通りも多く活気の満ちていたらしいが、今では本当にそうだったのか疑わしい。確かに今でも人はいるがそこには活気がまるでない。まるで街全体が死んでいるかのように、人々の瞳には英気がなかった。それが、こどもの僕でもよくわかった。或いはこどもだったからこそ、そういったことを敏感に感じ取ったのかもしれない。

 

 

父さんと母さんは今日も何やら研究に没頭している。いつもいつも、四六時中研究ばかりで僕の相手なんてほとんどしてくれない。

 

それでも僕は2人のことが好きだった。

僕と違い、誰かの役に立てているあの2人のことが誇らしかった。

 

 

 

お姉ちゃんは今日も僕の手を握り家の中を駆け回る。そんな元気な彼女も僕と同じ病に侵されている、らしい。実際侵されているかどうかは今の技術ではまだはっきりできるほど進行していないが、十中八九感染しているというのが父さんたちの見解だ。

 

ううん。僕やお姉ちゃんだけじゃない。

この街にいる全ての人が病に侵されている。

 

それこそがこの街が死んでいるように見える理由。この街は世界から隔離されていると言ってもいい。でも、今こうしている間も隔離区は広がっている。病の範囲を広げないように隔離を繰り返しても、それは収まることなく今も周囲の街に広がっていた。

 

 

そんな病が広がる理由を父さんたちは研究している。

 

 

 

 

 

 

夏。

 

 

お姉ちゃんが病に侵されていることが断定された。お姉ちゃんはわかってたことだからと僕に笑顔で応えるが、その瞳が滲んでいたのを僕は見逃さなかった。わかっていたことでも、それでも恐怖に駆られるお姉ちゃんに、僕はただ抱きしめ、大丈夫だよと自分より大きな姉を抱きしめる。結果として身長差から抱きつくような形になってしまったけど、それでもお姉ちゃんはありがと、と一言発して僕を抱きしめ返してきた。

 

 

それから少しして母さんが歩けなくなった。病が進行して自分では歩けなくなり、今は車椅子で生活をしている。

 

 

それでも母さんは諦めず研究に明け暮れていた。辛いはずなのに、それでも私たちがやらなくちゃと言いながら、苦しそうに……

 

 

 

 

 

僕はそんな母さんに対して何もできなかった。母さんの役に立つものを僕は持ち合わせていなかった………

 

 

 

 

 

 

 

秋。

 

遂に父さんと母さんが病が広がる理由を突き止めたらしい。でも2人はちっとも嬉しそうじゃない。むしろ逆で、顔を青くしていた。

 

 

この時からだろうか。

今まで病気のために飲んでいた薬や、週一で使っていた機械を使用しなくなったのは。

 

 

 

僕はこのとき知らなかった。

 

 

 

 

 

母さんたちが突き止めたこの事実が、もたらす災厄を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして冬。

 

その日は唐突に起きた。

 

 

街に宇宙服のような服装の人たちがやってきて。街を燃やし始めた。

 

 

逃げる人達は炎の中を通る弾丸によってその身を貫かれ倒れていく。

 

人が死んでいく。

街が消えていく。

 

 

父さんが母さんの車椅子を押して、姉ちゃんが僕の手をとって走り、街の外へと出て行く。

 

先日降り積もったはずの雪は街から出た熱風により溶けて水溜りに変わっていた。そんか水溜りを踏みしてながら、走って走って峠に差し掛かる。

 

呼吸が乱れて苦しい

走り続けて足がガクガクと震え始めている

 

 

ねぇ、どこにいくの?

 

 

 

パァン

 

 

 

そんな疑問を上げようとした時、乾いた音がそれを遮る。それと同時に父さんの身体がぐにゃりと曲がり地面に倒れた。

 

それと同時に母さんの悲鳴が響く。

父さんは動かず、ただ腹部から赤い液体が流れている。

 

 

父さん?

 

 

 

ふらふらの足で父さんに近寄ろうとすると、僕らが走ってきた道からあの宇宙服の人達がやってくる。

 

 

その人が手に持っているものを僕に向け

 

 

パァン

 

 

と2度目の乾いた音が響く。

 

それとほぼ同時に僕の目の前に母さんが覆いかぶさった。

 

 

母さん?

 

 

なにこれ?

なんか暖かくてネットリとしたものが僕の手に流れてきた。これって……

 

 

 

 

遊んであげれなくて

見守ってあげられなくて

一緒に生きられなくて

 

"ごめんね"

 

 

 

戸惑う僕の肩に顔をのせて、母さんはそういった。

 

 

 

 

 

っぁ……

 

 

その出来事に身体が硬直する。

思考が追いつかない。

 

 

 

そんな僕に構わず、宇宙服の人達はもう一度僕のほうにモノを向け……

 

 

 

 

パァン

 

 

 

3度目の音。

 

 

しかしそれが鳴ると同時に僕の身体が突き飛ばされ、峠の道の外へとその身を投げ出される。

 

 

 

呆然とする中、僕が最後に見たのは口から血を流しながらもこちらに微笑みを向けている姉の姿だった。

 

 

 

"にげ……て"

 

 

言葉には出ていない。

でも最後に見た時、姉の口はそう動いていた。

 

 

 

 

 

峠から落ち、自由落下する中で今起きた光景が高速再生のように何度も何度も頭の中で駆け巡り、下に流れている川に落ちるその直前で、僕は絶叫を上げた。

 

 

 

 

〜〜〜

〜〜〜

 

 

「ッゲホゴホッ」

 

ビチャビチャと水音を立てながら、力を振り絞り、陸へと上がると共に口から吐瀉物を撒き散らしてしまう。

 

 

どれくらい流されたのだろうか?

ここはどこなのか?

 

 

身体が痛い。川に落ちた時に身体全体を打ってしまった。それに寒い。先ほどまで炎に迫られそれから逃げるように走り続けていた時とは異なり身体から体温が逃げて行っている。いつの間にか降り始めていた雪がそれを余計に促進させる。

 

それに走り続けていたのと着水の衝撃でもう立てない。

 

 

 

 

「っぐ……父さん……母さん……ねぇちゃん」

 

 

動かせる腕を使い、這うように川から全身を新雪が積もる陸へと移動させていると、口から言葉が漏れ出す。

 

 

「どうして……どうして⁉︎ッゲホゲホ」

 

先ほどの光景が思い出されて、再びえずいてしまう。

 

 

頭からあの光景が離れない。

 

 

死んだ……

 

父さんが

母さんが

姉ちゃんが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ズッ、ズッ、ズッ

 

 

 

 

 

「っあ⁉︎………はぁはぁ……っぐ……逃げ……なきゃ……何処かに……」

 

 

みんなの死で思考が正常に機能しない中でも新雪を踏みしめる音を聞いた僕は身体を引きずって身体を無理やり動かしていく。

 

冷たい。痛い。辛い。苦しい。

 

 

新雪が積もる地面の冷たさが。

身体を動かすたびに響く痛みが。

みんながいない辛さが。

 

それらをひっくるめた苦しみが僕を襲ってくる。

 

 

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 

 

そうしてしばらく動いた後、逃げようと動かす身体が動かなくなる。力を入れようにも全身が震えて動けない。

 

 

「はぁ…………………はぁ………………」

 

呼吸も苦しくなってきた。

身体に雪が積もり始め、服が凍り始め、身体が先ほど以上に重く感じる。

 

瞼も重くなってきた。

 

 

 

 

僕も……ここで死ぬのかな………

 

 

 

近づいてくる足音を聞きながらそんなことが脳裏によぎる。

 

 

 

ザッ……

 

 

 

うっすらとあいた視界に誰かの足が入り込む。

 

この人が僕を殺すのか……

 

 

 

そう思い、瞳を閉じる。

 

 

しかし、いつになってもその時が来ない。

 

不思議に思い、重い瞼をあけ、グググッと首を上に向ける。

 

 

「よう」

 

 

そこにいたのは宇宙服ではなく黒いローブに身を包んだ男性だった。頭から飛び出たアホ毛を揺らしながら膝をつき僕の近くに寄ってくる。

 

 

静まり返った雪景色が広がる中、あまりにも気楽な声色に僕は困惑しながら問い返す。

 

 

「君は……だ……れ?」

 

 

そう言った後僕の視界は歪んで行った。

 

薄れていく意識の中、何か温かいモノが僕のことを包んでくる気がした。

 

 

 

 

 

>>>>>>>>>><<<<<<<<<<

 

 

 

 

「ひでぇ光景だな」

 

 

その景色を見ながら俺は一言呟いた。

 

数日前任務のついでで寄った時は白銀の雪景色が広がっていたその風景は今や灼熱の炎によりその姿を消失させていた。

 

街は燃え、人の悲鳴があがり、周囲には焦げの匂いと血の匂いが広がっている。

 

 

《やっぱり、人間は醜いね。自己の欲のためにこういうことを平気で行う。罪悪感も感じず、むしろ嬉々として。ホントに胸糞悪いよ》

 

 

そんな光景を見た阿朱羅丸が吐き捨てるように言葉を発した。

 

 

「……阿朱羅丸……」

 

《そんな顔しなくてもハチの事はそういう風に思ってないから大丈夫だよ。ハチには感謝してるし、それに……ハチは僕の家族だからね》

 

 

阿朱羅丸のその言葉に俺が苦しそうに彼女の名を呼ぶと、彼女はすぐさま俺の思っていたことを否定した。

 

 

《だからしっかりしなよ。爵位も悪魔の駒も貰って名実共に上に立つ存在になったんだから。》

 

 

「ああ、そうだな……」

 

さすがは吸血の女王とまで言われていただけあって、上の立場に着くということを彼女は俺以上に理解していた。

 

 

やはり年の功か……

《ハチ?》

ごめんなさいなんでもないです。

 

 

 

《はぁ、そういうところは相変わらずだね。まったく……まぁいいよ。もう慣れたから、ハチのそういうところも僕は受け入れたわけだし》

 

 

「……ありがとよ」

 

阿朱羅丸には本当に感謝しているよ。

長い時間の中でこいつと和解できたことが、俺にとって最近では最も嬉しいことだ。こんな風に話すのなんて前は考えられなかっただろう。

 

 

 

《ん?ハチ……あっちになんかあるね》

 

 

そう思っていると、阿朱羅丸がなにかを感じ俺に告げてくる。

 

 

《これは……神器だね。神器と凄い感情のうねりだ。これを出してる本人が気づいているかはわからないけど、ここまで強い感情のうねりは久々に感じたよ》

 

 

「…………」

 

 

《いくのかい?》

 

「お前が教えたんだろ?」

 

《教えただけだけどね》

 

ケラケラと笑いながら阿朱羅丸は続け

 

《まぁ、ハチならそうするよね。そう思ったから言ったよ》

 

悪びれもせず話してくる。

 

 

「お前な……」

 

《あはははは、大丈夫だよ。もう前とは違う。僕がしっかりと力を貸してるんだ。それにいざとなったら今はまだ寝てるクルルの力を少しだけ借りればいいだけのことさ》

 

 

俺はそんな阿朱羅丸の言葉に嘆息を吐きその場から消えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辿り着いた場所では1人の少女が震える身体を引きずっていた。

 

 

 

「よう」

 

《ハチ、死にかけてる子に対してその気軽さはどうかと思うよ》

 

 

「君は……だ……れ?」

 

 

《もう意識を失う数歩前だね。その状態でハチに会うのは厳しかったかな?》

 

え?なにそれ?

それは俺の目の腐り具合や気持ち悪さを揶揄しているのか?

 

《まっさかー。いたいけな少女を背負ってあげるハチはすっごくやさしいねー》

 

 

おいこら棒読みになってんぞ

 

 

《ロリコン》

 

なんでだよ⁉︎

 

見た目からしてもこいつと1つか2つしかかわらねぇだろ⁉︎

 

 

《…………》

 

 

急に黙るのやめてくれませんかね?

ホントに……マッカンあげるから……

 

 

 

 

そんなコントのようなことをしながら俺は少女を背負い、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 







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