魔王少女の女王は元ボッチ?   作:ジャガ丸くん

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割と早めにかけた。

履歴書書く合間に書いてたのでクオリティに不安が残りますが投稿します(*・ω・)ノ


タイトル通り。
ユウが義弟だった。
ならば義妹もでてくる。
だって出したかったんだもんw(*・ω・)

では、どうぞ。





アホ毛の義妹

 

それは真っ白な空間だった。

 

周囲には何もなく。

 

ただ永遠に広がっている白の光景。

 

先ほどまでの死闘が嘘のような無音の世界。

 

無音ゆえにキーーンという独特な耳鳴りが聞こえてくる。

 

 

私はこの場所を知っていた。

 

ここは私がいつも夢の中で訪れていた場所。

 

 

悪魔となったあの日から、強くなるためにひたすら剣を振るってきた場所だ。

 

 

そして今、私がここにいるということは……

 

 

 

 

 

「……私は………負けたのか……」

 

 

『うん、そうだね。君は負けたよ』

 

 

拳を強く握りしめながら漏れ出た言葉によく知る声が背後から聞こえてきた。その声に反応するように振り向けば、やはりよく知る人物が……よく知る人物達がいた。

 

 

『ドラゴンはどうだった?』

 

「……強かった……私なんて足元に及ばない程に……終始手加減をされていた気がするよ」

 

 

『そうね、タンニーンは手を抜いていたわね』

 

『まぁ、アレでも一応はドラゴンだからね。悪魔になってもその強さは健在さ』

 

 

彼女達の言葉から、やはりあのドラゴンが手を抜いていたことを理解する。それと同時にあのドラゴンのことを知っていたということも。

 

 

「………」

 

 

『勝てなくてへこんでいるのかしら?』

 

『へこんでるんじゃん?』

 

俯いたままの私に対し2人は軽口を叩くが今の私に言い返す余裕はなかった。

 

ただ、勝てなかった。

そのことを再認識し拳に力が入っていく。

 

 

『……悔しかったのかい?』

 

「……違う」

 

先ほどの軽い感じではなく真剣な声色の阿朱羅丸の言葉を否定した。

 

『……情けない……そう思ってるの?』

 

「………」

 

クルルの言葉に黙ったまま拳に込める力が更に強くなっていく。

 

 

ピチャリ

 

 

握り締めすぎたその拳から血が滴り落ちた。

 

 

図星……なのだ。

 

 

悔しさもある。

でもそれ以上に情けない。

その想いが自分の中で膨れ上がっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

勝てないと八幡から言われた。

でも、それでも私は……勝ちたかったのだ。

私が私であるために。

私が女王(わたし)であるためにも。

 

弱い自分が嫌だった。

女王という駒を貰っておきながら、私は彼の期待に応えられているのか。心の中で不安だった。その想いは彼の眷属に会ってから更に加速していく。

 

自分にはユウキのような才能はない。

ユウのような天性の力もない。

フリードのように予測できない動きもない。

阿伏兎のような豪腕もない。

クロメのような剣技もない。

 

そしてリタのような強大な魔術もない。

 

 

皆がわたしにないものを持っていた。

対してわたしはどうなのだろう。

 

デュランダル

 

伝説級武装であるこの剣しか私にはないのだ。私はただこの剣を振り回すことしかできない。それ以外の力を持っていないのだ。

 

 

情けなかった。

女王であるのに最弱であることが。

恩があるのにそれを返せないでいることが。

 

彼はいつも私を気遣ってくれた。

プールの時も、修行の時も、学園の中でも、私生活の中でも彼は悪魔になりたての私を気遣い、そして優しくしてくれた。

 

 

だからこそ認めて欲しかった。

 

彼にだけではない。

同僚である彼女達にもだ。

 

初めて会った時の彼の目を私は今も覚えている。体育館に八幡が私を呼んだ時、あの時会ったユウの目だ。

 

何故こんなのを……

 

そういった目だった。

 

無論今では彼がそう思っていないのは知っている。でも、時折思ってしまうのだ。彼らが普通に接してくれるのは、八幡から言われたからではないかと……

 

心の奥底では私が女王であることを蔑んでいるのではと……

 

 

そして、それはユウに限った話ではないのでは………と。

 

 

 

 

だからこそ勝ちたかったのだ。

勝って胸を張りたかった。

 

私が八幡の女王であると。

証明したかった……

 

 

でも私は……

 

 

 

 

 

『弱い……なんて思ってるなら勘違いも甚だしいわよ』

 

『そうだね、傲慢にもほどがあるよ』

 

「え?」

 

 

ふと沈んでいた顔が上がり目の前の2人が視界に入る。瞬間、自分の身体が硬直する。何故かわからない。でも間違いない。この2人は今…….

 

 

 

 

 

 

怒っていた。

 

 

 

 

『はぁ、どうしてこうもわかってないのが多いのかな』

 

『ギャスパーと同じね』

 

『全くだよ』

 

 

そんな怒りのオーラを出しながら、2人は呆れたように語り合っている。

 

わからなかった。

何故2人が怒っているのか……

 

『あのねぇ、ゼノヴィア。ハチやハチの眷属を舐めすぎだよ』

 

『そうね、ついでに言うなら私達のことも舐めてるわね』

 

「そ、そんなことは『あるよ(わ)』……っ⁉︎」

 

彼女達の言葉を否定しようとするが、2人の声に遮られビクリと身体が揺れる。

 

 

『修行を始めて1ヶ月、それだけの期間でドラゴンに勝てると思ってるなんて傲慢もいいとこだよ』

 

それはわかっている。

それでも私は……

 

『そして何よりもみんながあなたのことを心の中で蔑んでいるなんて考えを持つのもいただけないわね』

 

ドクンと心臓が跳ね上がる。

どうしてわかったのか……

なんで?と口に出したいが出せずにいた。

 

『自分が弱いからみんなに認められない』

 

『他者と比べ自分に才能がないと決めつけて沈んでいく』

 

『そうして勝手に落ち込み』

『勝手に腐っていく』

 

そんな行為を……

 

『『人は不毛という』』

 

 

 

その言葉に思わず声をあげたくなる。

 

知ったようなことを言うなと。

 

初めから才能がある存在が

 

初めから強き種族が

 

弱い自分について知ったようなことを…と

 

 

しかし、その言葉が出る前に彼女の前に来た阿朱羅丸が私の頭を叩いた来た。

 

痛い。

 

精神空間でも、痛いものは痛い。

 

 

『知った口を…と言いたそうだね。でも、それはゼノヴィアにも言えることだよ?』

 

 

何……を

そう言おうとすると阿朱羅丸は少し距離を取り指を弾いた。

 

 

ピシっ

 

 

空間に亀裂が入り、そこからある光景が見えて来た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈しっかし、嬢ちゃんは気持ち良さそうに寝てるねぇ〉

 

〈アレだけの力を使ったんだから当然ね。全く力の使いすぎで倒れるなんて、タンニーンが本当に敵なら死んでたわよ〉

 

〈よく言うわねリタ。ゼノヴィアが倒れて1番慌ててたのあんたじゃない〉

 

〈ひゃひゃひゃ、全くだ〉

 

〈リタ、慌ててた〉

 

〈んなっ!?わ、私は別に慌ててなんかないわよ!〉

 

〈リタ諦めた方がいいよ。誰がどう見ても慌ててたから〉

 

〈リタは八幡と付き合いが長いだけに似てるからねぇ。敢えて憎まれ口を叩かれるようになろうとするところとか〉

 

〈クロメにユウキまで!?違うわよ!誰があんな不完全な技を撃つような子を心配してなんて〉

 

〈誰も心配してなんて言ってないわよ〉

 

〈っぁ!?〉

 

 

 

〈おいおい、墓穴にも程があるだろぅ。それよか不要な意地なんて張るもんじゃねぇぞ。お前さんも見てただろあの技。コイツァ大した奴だよ〉

 

〈そうね。本当に大した子よ。初めて会った時とは大違い。自分の見る目のなさに軽くショックを受けたわ〉

 

〈それ、ユウも同じ……ゼノヴィア強い〉

 

〈ひゃひゃ、そうだな俺が会った時なんて雑魚もいいとこだったんだぞ?正直1ヶ月でここまで化けるなんざ、並大抵の努力じゃねぇ〉

 

〈うん、ゼノヴィアは頑張ってる〉

 

〈八幡が言ってた通り、ボク達もうかうかしてられないね〉

 

〈……わかってるわよ。この子のアレが凄かったことくらい。でも、あんな無茶な技やり続けたらこの子がもたないじゃない……このバカと同じようにいつまでも無茶し続ける〉

 

〈お前さんが差し向けたんだろうが〉

 

〈だから、わかってるわよ!でも、それでも私はこの子が、家族が無茶するのは見たくない〉

 

〈親切さだけでなく、気遣いや優しさの方向もぶっ飛んでるなぁ、お前さんは〉

 

〈仕向けたのは慢心させないため?〉

 

〈けけ、おおよそやり合って負ければ、オーバーワークをやめさせるきっかけになると思ったんじゃねぇか?〉

 

〈オーバーワーク?〉

 

〈ユウキ、あんた気づいてなかったの?この子明らかなオーバーワークで疲れが溜まってるのよ?私たちが前に緩めるように言っても修行内容変えないし、リタもここで負けさせれば少しの間落ち込んで修行をやめるって考えたんじゃないの?〉

 

〈………〉

 

〈結果はその真逆。新技出て来て大変なことになっちゃったけどね〉

 

〈まぁ、その辺はこの夏俺たちが仕込めばいいだろう?〉

 

〈うん〉

 

〈まぁ、それもそうか〉

 

〈早く起きないかしら?〉

 

 

 

 

 

 

 

 

「っぁ………」

 

そこには倒れている自分を囲むように会話をする彼らの姿があった。

その光景に。その言葉に、パタリと思わず膝から崩れてしまう。

それと同時に視界が滲んで行った。

 

「私は……私は………」

 

ひとりよがりだったのだ。

彼女らは自分が思っていたような事を考えてはいなかった。

勝手に決めつけて。

勝手に判断して。

 

これじゃあ、阿朱羅丸達からあんなふうに言われても仕方ないじゃないか。

 

 

『はぁ、わかった?そもそもが間違ってるんだよ』

 

『みんなあなたのことを家族だと思ってる。そしてあなたのことを想ってるのよ』

 

 

ああ。

そうだった。

女王だとか、才能があるとか、彼女達と自分の関係はそんなものでは無い。そんな簡単な関係では無いのだ。どうして気がつけなかったのだろう。

 

『まったく。ゼノヴィアは思い込みが強いね』

 

『そうね。やっぱり考えちゃダメなタイプな』

 

酷い言いようである。と、普段なら言い返せるが、今の状況では言い返すこともできない。

 

『ということで、家長からのお話ね』

 

『おとーさーん』

 

「誰がお父さんだ、誰が」

 

びくんっと再び身体が反応した。

目の前の2人ではない、別の声が。

よく知る声が背後から聞こえたからだ。

 

恐る恐る振り返ってみれば、

 

 

「はぁ……悩みすぎなんだよお前は」

 

八幡(あるじ)がいた。

 

 

「っぁ、わ、私は…!!?」

 

驚きながらも必死に声を上げようとするが、それを遮るように彼は私の頭を撫でてくる。ふわり、と乗せられた手がワシャワシャと私の髪を乱していく。少しだけ強引で、いつもより少しだけ乱暴で、それでいて嫌ではない不思議な感触が私を包み込んだ。

 

 

「まぁ、アレだ。恩を返そうとか、自分が弱いとかそんなんで落ち込む必要はねーんじゃねぇの?まだ、悪魔になったばかりだ。俺たちゃこれまで積み重ねて来たもんがあるし、簡単に抜かれちまったら俺たちの立つ瀬がない」

 

 

それに……と彼は私の頭から手をゆっくりとおろし肩に手をかけると、こちらの目を見て優しく言葉を紡いだ。

 

 

「ゼノヴィアは弱くなんてねぇよ。阿朱羅丸やクルルが認めるくらいだぞ?お前を弱いなんて言う奴は2人の言葉を否定することになるんだ。それに……俺のゼノヴィアだぞ?弱いわけがない」

 

「っぅあ!!!???////////////」

 

 

不意打ち

 

幾ら何でも不意打ちすぎた。

 

いきなりの俺のもの宣言に私の顔が、身体が、一気に熱くなっていくのを感じた。

 

顔なんてもう真っ赤だろう。

 

「ん?どうしたボーッとして大丈夫か?」

 

「っぁぁああああ!?だ、だ、だ大丈夫かだ。も、も、も問題はない」

 

そう言って彼と目を合わさないようにしようと思わず彼に抱きついてしまう。

 

「ぜ、ゼノヴィアさん?」

 

何をやっているんだ私は!?

余計に身体が熱くなって来た!!??

 

 

だが、何故か離す気にはなれない。

いや、でも、このままじゃ………

 

 

そのあまりの羞恥心からか、私の意識はそこで途絶えていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ねぇ、アレ……』

 

『たぶん俺の家族的な意味合いでしょうね』

 

『でもアレだとさ……』

 

『仕方ないわ、ハチだもの』

 

『そうだね……ハチだもんね……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────

 

 

 

 

「お、起きたみてぇだぞ」

 

 

「ん?」

 

目が覚めてまずはじめに目に入ったのは私の仲間(家族)だった。

 

「ようやく起きたのね」

 

「まぁあっちでアザゼル達の説明も終わる頃合いだしちょうどよかったんじゃない?」

 

「ん、ゼノヴィアおはよう」

 

 

私の目覚めに気がついたのか皆が私の周りに集まりだした。身体を起こそうとするが身体が重く起き上がれない。

 

 

「シノンが治したとはいえ相当なダメージだったんだ。今日明日は安静だな」

 

その声聞き真上を見上げれば、八幡の姿がある。そして、今の自分の体勢に気がついた。

 

 

「っぁあああああ!!!???」

 

再び身体に湧き上がる熱を感じ、先ほどまで重く上がらなかった身体を反射的に上げる。

 

 

ギシッ

 

 

傷んだ床を踏んだような音が身体からなり、鈍い痛みが入ると共に声をあげてしまった。

 

「いっつ!!!!!!!」

 

「何やってんのよあんたは」

 

そんな私の様子を呆れながら見ていたシノンが再び私に回復の魔法をかけてくれた。

 

 

 

「……にぃと夢の中で何かあった?」

 

「っあ///////そ、それは」

 

 

『はちまん?』

 

そして顔を真っ赤にする私を見た瞬間、全員が八幡の方へと視線を向ける。

 

サーっと彼が視線を逸らせば、もはや恒例ともいっていいような説教が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふむ。起きたのか」

 

10分ほどだろうか。

絞られている八幡への説教、もとい問い詰めを止めたのはドラゴンだった。

 

 

「あ、あなたは」

 

「ふむ。しっかりと挨拶はしていなかったな。俺はタンニーン。元ドラゴンの同じ転生悪魔だ。先の一撃、見事だったぞ」

 

「あ、ありがとうございます」

 

ドラゴンの先ほどまでとは違う風格のある雰囲気にのまれつつも返事を返す。

 

「しかし、八幡。貴様どれだけの眷属を揃えれば気がすむのだ?」

 

「いや、別に俺は強い眷属を求めてるわけじゃないんだが」

 

『あっはっは。まぁ、僕がいる時点でハチの周りには強い奴が集まるようになるけどね。タンニーンもいい具合に切られてるし。ゼノヴィアグッジョブ!だよ』

 

「やはり貴様の中のやつを潰さねばどうにもならんか」

 

「おい、やめろ。それ俺も潰されるから。阿朱羅丸も煽るな。俺が潰れる。物理的に」

 

タンニーンが来たことで問い詰めから逃れた八幡だが、今度はタンニーンともめ始める。

正確には阿朱羅丸とタンニーンに板挟みにされている形だが。

 

 

そんな彼を見ていると、ようやく熱かった身体も普段通りに戻っていく。

 

でも完全に消えたわけではない。

 

暖かい。

 

心地の良い暖かさがこの空間にはあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ゼノヴィア side out

 

───────────────────

 

八幡side in

 

 

「おーっし、んじゃそろそろいくか」

 

イッセー達への事情説明を終えたアザゼルが彼らを連れて俺たちの方へとやって来た。正直俺は疲労困憊である。

主に問い詰めと板挟みのせいで。

 

俺がタンニーンと阿朱羅丸と板挟みにあっている間、シノンに治療され続けたゼノヴィアがシノンに肩を借りつつ立ち上がるのを確認した後イッセー達へと視線を向ける。

 

彼らの顔はうかない。

 

まぁ、小猫を除いてコテンパンにされたのだから仕方のないことだが。

 

むしろ小猫はよくやったとグレモリーに褒められていた。

 

ソーナ達の方では何やら今後の課題のようなものを眷属内で話しているが、まぁ、その辺は後々しっかりと話せ。今はもう早く電車に戻って寝たい。

 

明日はセラフォルー様が来て休めないのだ。ならば今日休みたい、所なのだが、あいにくグレモリー卿に礼がしたいと呼ばれているため休めない。なのでゆっくりできる車内に1秒でも早く戻りたい気持ちなのだが……

 

 

俺のこうした願望は得てして壊されるものである

 

 

 

「にぃ、何か来る」

 

 

俺以外で最初に気がついたのはユウだった。

 

そこから他の者達も気がつき始める。

 

「何か凄いスピードでこちらに来てるわね」

 

シノンもそのなにかの方角を見つめながらゼノヴィアをいつでも庇えるように構える。

 

 

「おいおい、結構な速度だぞ!?」

 

アザゼルもまた、驚愕しながらもグレモリーやソーナ達を庇うかのように前に出た。

 

 

 

そして……

 

 

 

ドガーーーーーン

 

 

せっかく瓦礫をどかし、ここに来る前と同じ形に戻した地形が飛来した何かにより崩れ去っていく。

 

 

【っぁああ、あの……小娘ガァァァォ!!】

 

 

そうして飛来して来たなにか……

 

飛来して来た悪魔が起き上がりながら咆哮をあげた。顔には青筋を浮かべ、明らかに切れていた。

 

 

『激おこプンプン丸だね』

 

阿朱羅丸……どこで覚えて来たそんな言葉。

 

 

【ちぃ!なんだてめぇらはぁ!!】

 

 

「それ、こっちのセリフなんだけど」

 

怒声をあげながら、俺たちに気がついた悪魔は声をさらに荒げた。

 

そんな言葉に至って冷静にシノンが応える。

 

「あ、こいつ今朝ヴィザが言ってたはぐれ悪魔じゃない。確かゴライオス、だったかしら?」

 

『は、はぐれ悪魔!?』

 

リタのその一言にグレモリーやソーナ達が驚きの声をあげた。

 

「ゴライオスってーとあれか?あの巨大化する神器持ってた」

 

「ええ、確か数日前に主を殺して指名手配されてるわ。レートはSSね」

 

『え、SS!!?」

 

そのレートに思わずソーナが声をあげた。

 

まぁ、SSクラスはそうそういないからな。最上級悪魔と同列だし。

 

【その髪色、てめぇ、グレモリーか。それに堕天使もいるってことはてめぇが堕天使総督かよ】

 

ソーナ達が驚く中、眼前のはぐれ悪魔は冷静にこちらを分析し始めた。

 

グレモリーやアザゼルのことについて知っているところを見ると、ただの筋肉ダルマということではないだろう。

 

 

【ちぃ、てめえらに構ってる余裕はねぇんだ、どけ!!!】

 

「リタ、こいつのはぐれになった理由は」

 

「ああ、それは【弱ぇやつを殺して何が悪い!】……だそうよ」

 

「はぁ……めんどくせぇな」

 

とりあえず、主殺しの理由を聞こうとすると本人があっさり吐いてくれた。できればまともな理由なら助かったんだけどな……

 

「とりあえず、見逃すのは無しだ」

 

そう言って俺は構えた。

いや、俺だけではない。

ユウキ達もグレモリーやソーナ達を庇うように前に立つ。

 

【ああ!なんだてめぇは!?聞こえなかったのか?俺は急いでんだ】

 

これから来るであろう衝撃に備えるために。

 

 

【邪魔するんじゃぎゃぁぁあああ】

 

 

そしてその時は来た。

 

突如飛来した斬撃の嵐がはぐれ悪魔に叩き込まれていく。俺たちのことがムカついていたのか知らんが、彼女の存在を……彼女から逃げていたということを意識から外したのが運の尽きである。

 

リタは言っていた。

 

今朝はぐれ悪魔討伐の依頼があったと。

 

そして、こいつはここに吹き飛んで来た。

ということはうちの誰かがこれをやったことになる。

 

基本的にこうした依頼は俺の眷属しか動かない。そして現在の俺の眷属において、今こうした依頼で自由に動ける奴は1人。

 

そして、ここに向かって来ていた、もう1つの気配とも一致する。

 

 

グレモリーやソーナ、及びその眷属を抱え、少し離れたところまで飛び退いた俺たちは静かに合掌する。

 

ゴライオス。

確かに巨大化の神器は強力だろう。

しかし、彼女の前ではそんなもの意味をなさない。

 

ここに吹き飛んでまだ死んでいないということは、彼女は神器を使っていなかったのだろうが、今の一撃は神器を使った攻撃(それ)である。そして、恐らくは今ので既に重症だろう。

 

 

そして、彼女がそれを出したからには。

 

肉片のかけらも残らないだろう。

 

それほどの巨大な力。

 

ユウ達のように特別な種族ではない

純粋な人間である。

 

 

しかし、彼女の祖先はかつて英雄とも言える偉人だった。

 

 

スタン、と岩の上に1人の少女が舞い降りる。

 

紅蓮の瞳と髪を持つ少女は独特な形の戟を片手にふぅ、と息を吐く。

 

 

その光景に彼女を知らない者達は目を点にしながらその光景を見つめる。

 

まぁ、俺らが動かなかったらグレモリー達も巻き添えで木っ端微塵になってた可能性があるので、その反応は仕方がないといえば仕方がないのだが。

 

そんな、彼女達を他所に赤髪の少女はこちらに気がついたのかチャームポイントである二本のアホ毛、もとい触覚……のような毛をピクピクと反応させながらこちらへと飛んで来る。

 

 

 

「ん……おにいちゃん………久しぶり」

 

俺の前まで来て止まると俺同様のアホ毛(ただし数2本)が撫でろと言わんばかりに高速でピクピクと動く。

 

そんな義妹の頭を俺は静かに撫でた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




わかる人にはこの赤髪の少女わかる。

というかこのキャラを知ってる人ならば、即わかってしまうレベルで特徴を書いてしまった。

感想お待ちしてます。

次回はようやくグレモリー邸につきます。
ではでは



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