楽しんでくれたら幸いです(・ω・`)
特訓の始まり『生きろ女王、超えろ猫娘』
それは、若手会合の翌日に起こったことだった。ニオ様から八幡の眷属と他の若手がレーティングゲームを行うと言われたあの後には、ソーナ・シトリーや、リアス・グレモリーから、そんな!?という驚愕の視線を、ライザー・フェニックスやサイラオーグ・バアルからは好戦的でどこか愉しげな視線を、他の者達からはやや怯えた視線を感じていた。
しかし。ニオ様や魔王様達はその発言を覆すことはなく、8月20日、会合が7月27日に行われたのでおおよそ20日間の猶予が若手には与えられた。
そして、その日他の若手からの視線を受けつつも私達はナザリックへと帰還したのだが……
「じゃあ始めましょうか」
現在。何故か伊達眼鏡をつけたリタがその後ろに多くの機材を運んでいる阿伏兎達と私を引き連れ、先日ライザー・フェニックスとヴィザ翁が戦っていた闘技場へとやってきていた。
眷属達全員が集い新参者である私の方へと視線を集めた。
「え……と、何が始まるのか説明を…」
「簡単なことよ、今からレーティングゲームまでの間のあんたの特訓よゼノヴィア」
クイッと眼鏡を持ち上げたリタは側に置かれた機材を次々と弄り回していきながら応える。
「現状、一番の不安要因はあんたよ。これは純然たる事実。悪魔になりたてっていうのもあるけど、もっとも私達と付き合いが短いというのもあるわ」
その言葉に先日のタンニーンとの戦闘を思い出してしまい、思わず拳に力が入りそうになるが
「けど、あんたの可能性は正直私じゃ見切りきれないわ。それこそ、阿朱羅丸が言ったようにうかうかしてれば私達が抜かれかねないくらいには」
次に続いた言葉にポカンと口を開けてしまっう。
「だから、レーティングゲームまで
そう言ってパチンッと最後のコマンドを入力し終えたのか、リタは立ち上がりパンパンとズボンについた土を払った。
他の者へ視線を向ければ全員がリタの言葉に同意を示すように頷く。
「反則な手?」
その言葉に嬉しさと、特訓という言葉にワクワク感を覚えながら、ふと疑問に思った言葉を口に出した。
「あー、反則な手っすね。20日間しか無いにもかかわらずそれ以上の時間を使って特訓することができるんだからなぁ」
その疑問に答えたのはフリードだったが、その顔はどこか暗かった。
「あんたはこの特訓受けたことあるからね。あの時のことでも思い出した?」
そんなフリードにシノンがクスリと笑いながら視線を移せば、フリードは苦虫を噛み潰したような顔になってしまう。
「20日間でそれ以上の特訓?」
どういう意味なのだろうか?
まるで言っている意味がわからず頭上にクエッションマークが咲き乱れた。
「百聞は一見にしかず、見てもらった方が早いねー」
そう言ってユウキが歩き出していく。
こちらとやや離れ闘技場の中央に着いた時こちらに振り返ると笑顔を見せてきた。
瞬間、世界が変わる。
「っっっっっなぁあ!!!????」
何が起こったのか私には理解できなかった。
一瞬。ほんの一瞬瞬きをしていた間に世界が変わってしまったのだ。緑生い茂る広大な土地に。遠くには塔のようなものも見えた。
「ようこそ、僕の夢の世界【アルヴヘイム】へ」
そう言って満面の笑みを浮かべるユウキとは対照的に未だに私は混乱している。一体ここは何処なのだと。夢の世界とはいったい……
「ここはね、僕の神器"
神器!?これが!!?
聞かされた答えに驚きながら周囲を見渡す。
澄んだ空気に、気持ちのいい風、それに揺られる草原。とてもでは無いがこれが夢であるとは思えなかった。
「そして大事なことが一つ。この世界での死は現実世界同様の死だ。夢だからって油断して死ねば向こうにはもう戻れないよ」
その言葉にゾッと背筋が凍る。
何故そんなことを言うのか……
まるで……
私が死ぬかもしれないようなことを……
「でも。そんな事とは別にいいこともある。それはここは夢であるがゆえに現実世界とは時間の流れが違う。ここで何日、何週間、何ヶ月、何年居ようが現実ではほんの数秒〜数分程度だ」
そんな私の疑問を知ってか、知らずかユウキは淡々と説明を続けていく。
「にもかかわらず、ここで得た経験はそのまま現実世界でも受け継がれる。修行するにはもってこいの場所だね」
「ただ……」
そこで一回、話を区切り彼女はこちらへと歩み寄ってくる。
「あまり長いことここで経験を積みすぎると現実で受け継がれた時身体が持たないこともあるから、やりすぎは厳禁なんだけどね」
そう言って彼女は私の肩を軽く叩きリタ達の方へと歩んでいく。
「そう言うわけでここでやるのは限界ギリギリまで。現実世界での1日で1回だけこの世界に入って特訓をするわ。ここ以外での特訓はしなくていい。だけど……」
そう言ってリタは眼鏡を外した。
「毎日出るここでの課題をクリアできなければ、ここから出ることはできない。1日1回しか入らないと言っても、その時間が数日、或いは何ヶ月もかかることだってある。1つのノルマをクリアするまで出ることは禁止。そう言うルールのもとで行うわ」
そう言った彼女の、そして他の面々の眼は真剣そのものだった。
「……やるやらないはお前の自由だゼノヴィア。正直オススメはしない。阿朱羅丸達とやってたやつの何十倍もきつくなることだからな」
それでもやるか?
今まで口を挟んでこなかった主から……
八幡から最後の確認を取るかのように聞かれる。
「私は……」
ギュッと瞼を閉じれば今も浮かんでくる。
タンニーンとの戦いが。
駒王で見た他の眷属たちの戦いが。
昨日の会合での皆の姿が。
自分には足りないのだ。
強さが。
力だけの話ではない。
心の強さすら私はみんなに比べれば弱いのだ。
でも、それでも
「私は……やる」
踏み出さなければ行けない。
こんなところで止まっているなど考えられない。だって私は……
「そう。なら私たちも全力で協力するわ」
そういうリタの顔には笑みが浮かんでいる。
いや、リタだけじゃない。
他の眷属や八幡も笑っていた。
そんな彼らに向けて私も笑みで返す。
そう、私はこんなところで止まるなんてありえないのだ。だって私は登り始めたばかりなのだから。
この先、果てしなく続いていく強者坂を。
その先で彼らは待ってなどくれない。彼らは歩み続けるだろう。それに追いつくには、走るしかないのだ。
駆け上がらなければ、彼らに追いつくことなどできない。
「なら、ここからは私達に任せてもらうわよ。ハチ」
「ああ、わかってるよ。ユウは連れてかせてもらうぞ?」
「ん、わかった」
私の言葉に満足したように笑った八幡はそう言ってユウを連れて、消えていった。
おそらく、この世界から出たのだろう。
「さて、それじゃあ始めましょうかゼノヴィア」
八幡の消えた跡をずっと見ていた私だが、リタの声で再び彼女へと視線を戻した。
「やるのは20日間。レーティング3日前には終了よ。あんたには1日1個、合計20個のノルマをクリアしてもらうわ」
彼女の顔には先程の笑みは消え、真剣な顔に戻っていた。
「だから私たちからまず言えるのはこの一言よ」
最初のアドバイスとも言えるその言葉を私は気を引き締めて待った。
「絶対に死ぬな」
「どんな特訓をする気だ!!??」
盛大にツッコンだ私は悪くないだろう。
side八幡
「にぃ、ゼノヴィア大丈夫?」
その瞳には目に見えた彼女に対する気遣いと心配が浮かんでいる。
「まぁ、あいつなら大丈夫だろ」
そういう俺も正直不安である。
ユウに大丈夫と返しておきながら、冷や汗を流していた俺はリタから昨日渡された書類に目を落とす。
【ゼノヴィア魔改造計画書】
made in リタwith ヴィザ
《ノルマ一覧》
1日目『神器を使わないフリードの撃破』
2日目『神器を使わないクロメの撃破』
3日目『マジギギカの試練withマギルゥ』
4日目『夜兎との鬼ごっこwith阿伏兎』
5日目『ヴィザから1本取る』
6日目『氷の試練withシノン』
7日目『ユウキから1本取る』
8日目『機械仕掛けの大試練withリタ』
9日目『ケモノ戦記with恋のペット達(ガチ)』
10日目『大乱闘スマッシュファミリー』
11日目以降
成長度合いによって変更
主にガチバトルを計画中
……あいつ死なないかな。
本気で思ってしまった。
全員が1回はタイマンでやり合うのはまだ、100……いや1000歩譲ってわかるとしよう。
だが9日目と10日目、そして11日目以降が問題である。
いや、その前も十分問題あるのだが、それにしてもだ。
恋のペット達(ガチ)はマズイ。
ドラゴンを筆頭に様々な幻獣がいる。
最悪ゼノヴィアが灰塵と化す可能性すら出てきている。その後の大乱闘スマッシュファミリーだ。あれは眷属同士による実力80%戦闘(バトルロイヤル)である。実力の80%までという制約を課して行うものだが、他のメンバーの80%を果たしてゼノヴィアが受けきれるのか……
「……」
「……」
横から覗き込んできたユウも俺と共に静かに空中に浮かぶ闘技場に向かい合掌を行い、再び丘へと歩みを進めていく。
そうして丘が見えてくる同時に丘の上で立っている存在が視認できるようになってきた。小柄なその存在は、しかし、強い決意を感じることができた。
「よぉ、小猫」
「ん、小猫、よろしく」
「はい……先輩、ユウ君。よろしくお願いします」
彼女は今度のレーティングゲームでは敵である。しかし、それでも彼は、彼らは彼女に手を貸す。彼女のために。
彼女の仲間はアザゼルから手ほどきを受けるだろうが彼女はそれを拒み俺のもとに来たのだ。ならば俺たちだって応えよう。
「じゃあ、移動するとするか」
そう言って俺は翼を出し空へと羽ばたいていく。それに続くように2人も空へと身を投げ出した。
向かうはナザリック空中施設が一つ。
"修練堂"
ゼノヴィアのようにユウキの
施設につき、翼をしまい、振り返れば、小猫はやや震えていた。それでも、彼女の決意が消えた様子はない。
「先輩……ユウ君」
振り向いた俺たちに対し彼女は言葉を続けた。彼女にとって大きな1歩となるその言葉を。
「仙術の特訓お願いします」
怯えは消えず、されど確かな1歩が踏み出された。
それに答えるのは世界を渡りありとあらゆる種族の血を吸い、力を模倣してきた鬼呪なる龍を宿せし存在と、ありとあらゆる仙術を自在に操る仙を司りし狼の血を引きし存在である。
ここに1人の猫魈の目の前に、仙術を恐れる少女の前に2人のエキスパートが彼女のために動くのだった。
今年あと1回は少なくとも投稿したいな(・ω・`)
ではではー