とーぅこぅ!
怖かった。
ずっとずっと。
呑まれることが。
自分が自分で無くなるのではないかと。
だからずっと目を背け続けてきた。
その力から、過去から。
全て姉のせいにして。
そうしていれば楽だったから。
そうしていれば傷つかなかったから。
でも、気がついたら傷ついていた。
大切な友人と差をつけられ。
想い人が離れていってしまうようで。
情けなくて、悔しくて。
辛かった。
だから……
逃げるのをやめました。
背けるのをやめました。
追いかけたい背中ができたから。
付いていきたい人達がいるから。
だから踏み出した。
踏み出せた。
それを大切な人たちは支えてくれたから。
そして恐れていたモノを制御できた時。
私の頭にはとあることが過ぎりました。
だから……
私はそれを確かめたい。
確かめなきゃいけません。
それが過去との決別となろうとも。
それが新しい関係の始まりだろうとも。
それが……
やり直すことができる結果になろうとも。
どんな結果になろうとも。
私は逃げません。
今日ここではっきりさせてみせます。
だから…………
「答えてもらえますよね?姉様」
「にゃ、にゃははははは…」
最初感じたのは匂いだった。
先輩やユウくんの特訓のおかげで仙術を完璧とは言わないまでも扱うこと自体はできるようになって、周囲の気や匂いに敏感になった今だからこそ、感じ取れた。
「少し、お手洗いに行ってきます」
自然と嘘を吐き、リアス部長達から離れていく。廊下に出れば次第にその足は速くなっていき、最後には走ってその場所に向かっていく。より強い匂いがする方に。
角を曲がれば、自分が走って近づいていたことに気がついたのか、黒猫が走っていた。
そして確信する。
すれば勢いは早まりほぼ全力疾走に近い形で走る。屋敷を抜け、森に入り、ようやくその黒猫は木の上で止まった。
それを確認し、私も足を緩める。
一歩一歩確かめるような速度へと変わり、目の前まで行くとそれは止まる。
「なんでここにいるんですか?」
そして止まった足の代わりのように口が動き出した。
「どうしてあの時私を置いていったんですか?」
かつての自分ならそんな勇気もなかっただろう。
「どうして姉様が暴走したなんて噂が広まったんですか?」
しかし、今は違う。
「制御できて。しっかり向き合ってわかりました」
今は覚悟も勇気もある。
「手助けがあったとはいえ私にできて、姉様にできないわけがない」
だから……向き合える。
「答えてもらえますよね?姉様」
「にゃ、にゃははははは…」
その一言をキッカケに黒猫は和服の女性に戻り乾いた笑みを浮かべた。
「にゃはは。白音元気そうだにぁ」
「答えてくださいよ、黒歌姉様」
久しぶりの再会に妹の安否を確認した黒歌はしかし、目を細めた妹の睨みに冷や汗を垂らしてしまう。
「し、白音。そ、そんな怖い顔しなくても」
「答えろ駄猫」
「駄猫?!!?」
実の妹から言われたあまりにもあんまりな呼び方に衝撃を受ける黒歌だが
「だ、駄猫は言い過ぎなんじょわぁぁぁあ??!」
「っち、外れた」
突如訪れた気弾に緊急回避で飛び退いき地面へと着地した。その後ろでは木々が無慈悲にも薙ぎ倒されており、先ほどの威力が伺えた。
「っちょ?!白音、これ、当てていい威力じゃないにゃ??!!?」
「そのくらいじゃ、姉様は死なないでしょ?」
「DEAD or ALIVE !!??!?」
無表情に言う妹に流石の黒歌も泣きそうになっているがその間にも小猫の周囲には仙気が集まっていく。
「姉様がどう言う理由ではぐれ悪魔認定されたのか知りません。主人殺しをしたからとか、そんな自分が見てもいないことを軽々と信じたりはしません。少なくとも私が知ってる姉様は無意味に殺しなんてしない。だから姉様にはもう、恨みなんてない」
「白n「だけど!」e?」
「私を置いていったことは別です。そのおかげでリタや先輩にも会えましたが。それとこれとは関係なく。置いていったこと自体に腹が立ちます」
「し、白音?」
妹が自分のことを恨みの対象にしていない。
その一言が嬉しかったが、その後膨れ上がる気に思わず後ずさりしそうになる。
「さぁ、答えろ姉様。なんで。なんで私を置いていった‼︎‼︎」
「にゃ、にゃぁぁぁああああ??!?!?」
荒れ狂う小猫の気弾を前に姉妹の追いかけっこが始まった。
「おーおー、荒れてるなぁ」
「ん、気を吸って、気分、高揚してる」
「ま、呑まれてなきゃ大丈夫か」
その様子をパーティー会場のベランダから見ていた八幡とユウはどこか気の抜けた声をもらした。
「うひゃひゃ、いい威力だなぁ」
「ありぁ、森が禿げちまわねぇか?」
フリードは笑い、阿伏兎は呆れながら
「おやおや、仲睦まじいですなぁ」
「いや、あれば仲が良いと言うのか?!」
ヴィザはほっこりしつつゼノヴィアに突っ込まれ
「姉妹ゲンカなんてあんなもんよ」
「たのしそうだねぇ」
リタは友人の生き生きとした姿に安心し、ユウキは混ざりたそうにしながら
「もふ…もふ」
「ほら、動かないの」
恋はシノンに撫でてもらいながら
「かっかっか、どっちが勝つかのぉ」
「黒猫に一票」
マギルゥとクロメはどちらが制すかを当てようとしながらその光景を見ている。
「まぁ、めんどくせぇけど行くか。ヴィザ頼むわ」
「かしこまりました」
「私もついていくわ」
そう言ってヴィザに頼みごとをした八幡はベランダを飛び降り、それについていくようにリタも飛び降りていった。
「にげるな!」
「逃げなきゃ当たるにゃ!」
「当たれ!」
「断るにゃーーーー」
「っそこ!」
「あ、あぶにゃ??!」
「っち、気弾で相殺しないでください」
「しなきゃ当たってたにゃ??!」
壮絶な姉妹の追いかけっこは当初は小猫だけが気弾を撃つ形だったが、それだけでは対応しきれなくなった黒歌が気弾を撃ち始め、結果として現在、互いが互いの気弾を落とし合う弾幕戦へと変化していった。
その練り込まれる気の量に被弾した場所は吹き飛び、次第に森の木々は削れていき、阿伏兎の言うように禿げ始めていた。
「だいたい姉様はいつもそうです。勝手に決めて。勝手に行動して!」
「な、なんにゃ!私だって色々考えて」
「無い頭で何を考えるんですか!」
「ひどいにゃ!?!??!」
しかし、当人たちはそんなことは気にせず気弾を撃ちながら喧嘩を続行していた。
「こ、小猫ちゃんなにやって?」
「「うるさい!!!」
「ごわぁぁあ??!?!!?」
流石に音に気がついた兵藤達がやってくるが、一言と気弾のもとに吹き飛ばされていく。
その光景に後を追ってきたリアスやその眷属は呆然とし、飛んできたタンニーンは森の状態に手を額へと当てた。
その直後
「あー、もーーー。白音もうしつこいにゃーーーーー」
先に我慢の限界にきたのは黒歌だった。
気弾の嵐についに我慢できず声を上げる。
如何に愛しの妹とはいえこれだけ気弾を浴びせられればたまったものでは無い。
「歪められし扉、今開かれん」
黒歌が言葉を紡げば周囲に黒い気が集まり始める。それを視認できたからこそ小猫もまた詠唱に入った。
「この名を以ちて戒めを刻め!」
対象的に白い気を集めた小猫。
その2人の仙術が打ち出される。
「ネガティブゲイト!」
「フラッシュティア!」
そして巻き起こる黒と白の仙術の軌跡。
互いが互いに術を打ち込んだそれは中央で激突し周囲に凄まじい被害を巻き起こしていく。
が、
「滅殺の小魔弾」
「鬼呪の小龍弾」
突如訪れた2つの弾丸によりその力は霧散していく。
「んにゃ?!!?」
「うぇ?!!?」
その当然起こった現象に思わず猫姉妹は目を見開いてしまった。
「そこまでしとかないかい?」
「予想以上に広がったなぁ。というか来るの早くねぇか?」
「なに、僕も初めから見ていたからねぇ」
聞こえてきた声の方へと視線を上げればサーゼクスと八幡、そしてその後ろに控えるグレイフィアとリタがいた。
「お、お兄様!??!」
兄の突然の出現に妹のグレモリーが先ほどの小猫達の弾幕戦以上に驚いている。
「やぁ、リーアたん」
そんなリアスに笑顔で手を振るサーゼクス。
「な、なぜお兄様がここに?そ、それよりもはぐれ悪魔の黒歌がここn「ああ、それは構わないよ」i……え?」
驚くリアスをよそに地面へ降り立ったサーゼクスは彼女を手で制すと黒歌の方へと視線を向けた。
「やぁ、久しぶりだね」
「……そういうことかにゃ?」
黒歌へと向けた挨拶に対し、黒歌は目を細めながら聞き返した。
そんな2人を訝しげに見るグレモリーおよびその眷属とタンニーンだが、魔王であるサーゼクスの口からは彼女らの思いもよらない一言が飛び出した。
「黒歌くん。禍の団への潜入任務ご苦労様。この時点をもってはぐれ悪魔の認定は解除、全悪魔に君の任務については通知することになる。本当に長い間の協力者としての潜入お疲れ様だったね」
「よーやくかにゃぁ」
その言葉に誰もが耳を疑った。
今なんと言った。
協力者と言ったか。
ということは……と全員が脳裏によぎったその時。
「やーっと戻ってこれたにゃあ!はーーちーーー「ふんっ!」ふぎゃぁあ??!?」
任の終了を聞いた黒歌が八幡へとルパンダイブを決め込もうとした瞬間、小猫による気弾がその脇腹を捉えた。
「っよし!」
「よくないにゃ?!??!!」
ようやく当たった気弾に小猫は拳を握り、当てられた黒歌は泣きそうな顔をしながら小猫に抗議した。
「なにするにゃ!?」
「先輩に飛びつくな泥棒猫」
「ひどいにゃ!!??!」
その後も小1時間程姉妹ゲンカは続いたという。
「かっかっか、賭けはわしの勝ちじゃのぉ」
「むー、無念」
尚、ベランダでどちらが勝つかかけていた2人。軍配はマギルゥに上がった模様。
商品は八幡の膝上権。
勝手に賭け事の商品にされた八幡だが、後日知らされるまで知る由もなかった。
尚、マギルゥが1時間ほど膝上を占拠した結果、後日膝上争奪戦が眷属内で始まったのは完全に別のお話。
多分こんな感じ
猿「あ、あれぇ?黒歌スパイ?なんで?!?なんでスパイ!!?」
眼鏡「なん……だと」
白龍皇「八幡くんは手広いわねぇ」
次回!
レーーーティングゲーーーーム