魔王少女の女王は元ボッチ?   作:ジャガ丸くん

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どうも!おひさしぶりです。


不定期な更新ですがお許しください。





終わりへのカウントダウン

 

「何故光を使わない、舐めているのか?」

 

 

黄金の炎槍を無数に放ち、空を高速で飛び回る相手に対して、ライザーは疑問を口にした。

 

「傷ついた身体でよくそんなこと言えるっすねー」

 

対する相手はおちゃらけながら返してくるがその間も炎槍を避け続けている。

 

「じゃあ聞くっすけど、ヴィザ翁やユウ達が全力を出したとして、若手が勝てる可能性があると思うんすか?」

 

「0だな」

 

「つまりはそういうことっすよ」

 

それだけの短い会話でライザーは理解する。理解できてしまう。

 

「つまりは制限か」

 

「正解っす〜♪」

 

笑顔で答える彼女、ミッテルトはパチンっと指を弾いた。ただ、それだけのことでライザーには無数の稲妻が降り注ぐ。光力が含まれていないそれだが、大地をライザーごと削り取っていった。

 

「っぐ、なるほど。リアスの女王とは比べ物にならん威力だな」

 

しかし、フェニックスたる彼は瞬時にその姿を取り戻す。

先程からこの繰り返しを互いに続けていた。

 

 

(これ程の威力。光力を含めばそれこそ上級悪魔だろうとタダではすまんな。制限がつくとすれば光力の使用禁止か…いずれにせよ長引けばそれだけこちらが不利になるのは間違いない)

 

だが、この過程を繰り返し続ければ周りが次々と倒され、状況的不利に追い込まれるのはライザーである。

 

「とーぜんっすよ。あーんな主人の危機よりも自分の都合を優先するやつと比べないでほしいっす」

 

ライザーの内心など知ったことではないミッテルトはさも心外そうに文句を言う。

 

 

こうして会話をしている間も互いに攻撃を続けている。しかし、その殆どはミッテルトに当たることがない。

 

 

「まぁ、あんたは弱くないっすけど。でもあんたの攻撃じゃあ、私を捉えられないっすよ」

 

 

(俺の攻撃は効かない。全力で穿てば落とせるだろうが。何よりこいつは速い。)

 

おそらく昇格によって騎士の速度を手にしているであろう彼女に己の全力を当てることはできないだろう。

 

「だんまりっすかー?」

 

 

(であれば、当てるだけの隙を作ればいい)

 

 

『リアスグレモリー兵士1名リタイア』

 

そこまでライザーが思案した時。

1人の退場が伝えられる。

 

 

「っお!ゼノっちはやったみたいっすね」

 

 

(そして、相手は油断している。ヴィザ翁と比べればまだまだ。なにより、そろそろだ)

 

 

「ふふーん。何考えても無駄っすよぉ。たとえ結界で囲って移動範囲を狭めてても」

 

 

「……気がついていたか」

 

 

彼の言葉に当然とばかりに口角があがり、ありありとした自信が見受けられる。

 

 

「とーぜんっす。移動しながら結界を縮小させてたけど、無駄なんすよねぇ」

 

 

「いいや、これでいい」

 

 

しかし、そんな彼女に対して、彼は真っ向からその言を否定した。

 

 

「なに?」

 

「結界内でこれだけの戦闘を行った。それだけで意味がある」

 

「なにをいっているんすか?」

 

 

結界の中で行った戦闘にこそ意味がある。

そう言い切った彼に対して、笑みが薄れた彼女は全くわからないとばかりに目を細めた。

 

 

「俺が大技を出そうとするときは必ず回避に移る。即ち俺の攻撃はお前に通じる」

 

 

「それがなんすか?」

 

「なら、当てる為の隙を作ればいい」

 

「そんなの作らせるとでも?」

 

苛立ちながら問い返す彼女の手には稲妻が走っていた。

 

「なぁ、知ってるか?」

 

「ぁあ?」

 

彼女の額には青筋が浮かんでいた。

 

「密閉された空間…結界内で俺の炎を…火を燃やし続けた後、この結界を破壊したらどうなると思う?」

 

 

「……は?」

 

しかし、その表情は彼の言葉にて呆けた顔へと変わる。

 

「答えは身を以て味わえ」

 

 

刹那、その空間を震わすほどの大爆発が起きる。

 

 

「ぐぅうううううう!!??!?」

 

突然の爆発に対応しきれず、爆風をもろに受けた彼女は苦悶の声を上げながら吹き飛ばされた。

 

 

 

─────

【バックドラフト現象】

密閉された空間で火が生じ不完全燃焼によって火の勢いが衰え、可燃性の一酸化炭素ガスが溜まった状態の時に熱された一酸化炭素に急速に酸素が取り込まれて結びつき、二酸化炭素への化学反応が急激に進み爆発を引き起こす現象のことを指す

─────

 

 

ライザーが結界を張っていたのは決して相手の回避範囲を狭める為ではない。この現象により、相手の虚をつくことである。

 

本来これは人が導き出した叡智だ。

幾星霜の時を得て人が解明した現象。

魔力という概念を念頭に置いた人外では探知できない方法である。

 

ヴィザとの特訓を経て、貪欲なまでに力を求め始めたライザーが目をつけた。

人という種の可能性。

次代に繋ぎ、未知を既知へと変えてきた力。

その恩恵ともいえる化学を悪魔たる彼が使ったのは。人間であったにもかかわらず、自身では決して辿り着けぬ境地に達している男の影響である。

 

鬼呪龍たる彼の強さを考えた時。

彼のルーツを。人間という種のルーツを辿り、調べ、考えた結果。

 

ライザー・フェニックスは自分なりの結論を出したのだ。人間の強さを。驕りを、先入観を捨て考えたが故に出た結論だった。

 

 

それを彼がこの場で使ったということは。

つまり、彼の中で人のそれは。彼にとって力足り得るということに他ならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っぐぅ。いまだ!!」

 

 

自身が起こした現象による被害を受けながらも、彼は決してその隙を逃さない。

 

ジワリと空間が歪む。

人型である彼の姿がぶれ始め、その周囲を金色の炎が漂い始めた。

 

 

 

 

 

まさにその時彼は目にする。

 

 

 

敵対者たる彼女を吹き飛ばした方向を。

 

そこにはまさに決着がつくように見える猫の姉妹がおり、吹き飛ばされた彼女はそれに気づいている様子はない。

 

 

 

 

「やろうテメェぶっころーーーー」

 

 

気がつくどころかこちらに対して暴言を吐いてる面を見れば、よほど自分のやったことが気に食わなかったのだろう。

 

 

しかし、それが彼女の運の尽きだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぎゃーーーーっす??!!?!?!」

 

「へ?」

「んにゃ?!」

 

 

 

それはもう見事なまでなフレンドリーファイアである。猫姉妹も素っ頓狂な声をあげているが、これはひどい。

吹き飛ばしたライザーですらそう思った。

 

 

 

『・・・八幡様、兵士1名リタイア』

 

 

 

………

 

 

 

「あの女を一撃で気絶させるか…流石は鬼呪龍神皇の眷属だな。不本意な倒し方ではあるが仕方ないか……大丈夫か?リアスの戦車」

 

 

「「っ??!」」

 

呆然としていた猫姉妹が彼の声に反応する。

 

 

 

 

「ライザー……フェニックス!!」

 

「一応は同じチームだがな。まるで敵に出会ったみたいに名前を呼ぶな……不本意ではあるが相手がいなくなってしまった。勝手ながら助力させてもらうぞ」

 

極めて冷静に見える彼だが、ただ、一周回って吹っ切れてしまっただけである。ただ、不本意なのは嘘偽りのない本心である。故に自分の気持ちを切り替える意味も込めて

 

 

「さぁ、挑ませてもらうぞ鬼呪龍神皇の眷属。仕切り直しだ!」

 

 

 

 

ライザーはキメ顔でそういった。

キメ顔で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミッテルト殿が落ちましたか。いやはや、ライザー殿の進歩も侮れない。まぁ彼女の油断が原因の可能性も否めませんが」

 

やれやれとばかりにその笑みを深めた初老の男性は直後、迫り来る水を吹き飛ばした。

 

 

「ふむ。会合するやいなや撤退しつつ牽制をする。友軍との合流を視野に入れつつも、可能であれば削りに来るその姿勢。実に良いものです」

 

 

「っつ。さすがヴィザ翁。やはりそこまでうまくはいきませんか」

 

 

所々に切り傷を負いながらも1人もかけることなく友軍との合流を目指すソーナに対し、ヴィザは感嘆の声をあげる。

 

しかし、ソーナ自身苦虫を噛み潰したような表情を浮かべていた。

明らかに手を抜かれている。

元々手を抜いてくることは予想できていた。

しかし、ここまで抜かれて尚一撃も入らないのだ。後退を主に置いているとはいえ、これはこたえる。

 

 

 

「卑下することはありません。開幕に落ちたアガレス、グラシャラボラス、アスタロトの3家。残るは王のみのバアル家や少数とはいえ落ち始めたグレモリー家。単騎で挑んでいるライザー殿を除けば、ソーナ嬢だけが誰1人落ちることなく、今尚奮戦している。魔力を使っていないとはいえ、これは誇るべきことです」

 

開幕落ちの方々は相手が悪かったですが…

 

と付け加えるようにヴィザ翁は呟く。

 

実際3家にはリタ、ユウ、恋が向かったのだ。手加減を知らない(しない)3人だ。

いかに制約を守っていようとオーバーキルは避けられない。

 

 

 

そんなヴィザの賛辞など彼女たちは気にも留めず他のチームとの合流に動く。

 

たしかに周囲は落ちているが、落ちるのにかかる時間が彼らにしては遅い。それは目の前の彼と同様に手加減を課せらている可能性が高いと踏んだが故だった。

 

少なくとも

 

 

 

「ですが…これだけ他の方々が落としている中で私だけ何も得れていない状態はいただけませんね、故に」

 

 

自分たちが合流できるまでは粘ってもらえると踏んでいた。

 

だが、それはもちろん

 

 

星の杖(オルガノン)

 

 

 

彼女たちが落ちなければの話であった。

 

 

 

「っな!!?!?」

 

瞬時に

 

 

 

『シトリー眷属・・・』

 

 

刹那、ソーナの背後にいた眷属の多くの脱落のアナウンスが流れる。

 

 

瞬きすらしていない。

しかし気がつけば、残るのは自分と匙のみとなっていた。

 

「っぐ、ぁぁぁああ」

 

その匙も足元に血だまりを作っているのを見れば、避けきれてなどいないのは明白だ。

 

 

話には聞いていた。

警戒はしていた。

それでも、避けることも、見ることもできなかった。

 

ソーナの額にたらりと冷や汗が流れ落ちる。

 

 

「これでようやく、私も面目が保てますな」

 

 

 

 

そんな彼女たちを前に熟練の老兵は、まるで何事もなかったかのように微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─戦局は大詰めを迎えようとしている。─

 

 

 

 

魔力なき少年は絶対的な能力差のある強者(夜兎)に対しそれでも尚抗う。

 

 

姉は妹や挑戦者(ライザー)を迎え撃ち。

 

 

老兵は若い芽を追い詰める。

 

 

役割を果たした者たちは先行きを見守り。

 

 

魔王の妹たる少女は、眷属が落ちるたびに悲痛な顔を浮かべるが未だ戦いは終わらず。

 

 

 

 

─されど・・・戦局は確実に終わりへと向かっていた。─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

─なぜならば。─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そろそろね」

開戦時、王の側に控えていた少女は戦場から最も遠い場所に訪れていた。

 

 

─彼女に課せられし命令(オーダー)は1つ。─

 

 

 

 

 

 

「後1人」

 

 

敵陣営が10人を切った瞬間に自身の持つ広域殲滅魔法(・・・・・・)を発動することである。

 

 

落ちる者は誰か?

 

サイラオーグか

ライザーか

ソーナか

匙か

或いは残るグレモリー眷属の者達。

リアスか

朱乃か

小猫か

木場か

ギャスパーか

アーシアか?

 

 

─しかし、1つだけ分かり切っていることは。─

 

 

 

 

 

 

 

「早く終わらないかしら」

シノンは呟く。魔力の練るその周囲にはうっすらと白い霧が広がっている。

 

 

 

 

 

 

 

 

─先に落ちていた方が遥かに良いと思えるということは間違いないということである。─

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「退屈ね」

遠くを見つめる彼女はまるで絵画。

美術品かと思えるほど幻想的だった。

何故なら、霧に覆われたその周囲は。

 

 

 

 

 

 

 

 

まるで時を止めたかのように凍り果てているのだから。

 

 

 

 






このレーティングゲームは後2話で終わらす予定。


不定期な更新ですがお付き合い頂けると光栄です。



今後の方針【キャラ】

  • ライザーを優遇しすぎだ!いいぞもっとやれ
  • 眷属と八幡の話を増やして
  • 番外編でもいいから新キャラを
  • それよりも本編をはよ!
  • どうでもいい

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